好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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ここからの予定として、アニメ第四話から五話の間の小話を二つ三つ投稿しようと思います。
物語が進んだりはしないので、読まなくても本筋に影響はありませんが、楽しんでいただければ幸いです。

この間一か月経つらしいので折角ならとりとめのない話をば。



好きな女性のタイプは頭のいい小柄な子

 コトの発端は私が以前、神楽くんが買い出しで席を外しているときにみんなにポロッと溢した呟きだった。

「やっぱり謎だな~神楽くん」

『!』

 

 呟いた瞬間、テーブルを拭いていたたきな、カウンターに突っ伏していたミズキ、座敷でゴロゴロとゲームをしていたクルミ。

 挙句の果てには、食器を拭いていた先生まで、ぴたりと動きを止めたと思ったら、ガバリと一斉に私に向き直った。怖!

 

「え、なになにその反応?」

『……』

「なんか言ってよ!」

 

 こっち向いたまま無言で固まるな!怖いわ!

 

「……クルミ」

「ウォールナットに任せろ」

 

 ミズキがクルミを呼び掛けた。クルミは心得たようにニヤリと笑った。こらこら。

 

「ちょい待ちクルミ!」

「なんだ千束。言い出しっぺの癖に怖気づいたか」

「調べろなんて言ってないでしょ~!」

「そうか。では千束に報告する必要はないな」

「ごめんなさい」

 

 あっさりと白旗を上げた。だって気になるし。

 

「たきなもミカもそれでいいな?」

「…」

「…程々にな」

「よしきた。とはいえ万里は組織だのに所属しているわけじゃないから、経歴と自宅にあるPCとかチョロっと見せてもらうだけだが。後は、人を使って街角アンケートにでも答えさせて、細々とした質問にでも答えてもらおう。なに、あいつはそういうの断らないだろ」

「うわぁ」

 

 えげつないね、クルミさん。ごめんね、神楽くん。

 

────────────────────

 

 こんなことがあって、今日。

 営業終了後の喫茶リコリコ。

 神楽くんが帰宅したことを確認した私たちは、クルミの調査報告に揃って耳を傾けた。

 

「5歳の時に万里一人を残して両親が蒸発、以来独り暮らし。近所の人の話では、両親が姿を消す数か月前から、万里を恐れているように見えたそうだ。ま、あんなチートキャラが目の前にいたら同情もするが、胸糞悪い話だな。

 さて、そこからの5年間、万里は様々なものに手を出している。医学、芸術、スポーツエトセトラ。大会だのなんだのと賞を総ナメにしたが、授賞式に参加したことはなく、すべてやめている」

 

 今の神楽くんからは想像もできない。私たちと同じ天涯孤独の身でも、過程が違う。

 初めから両親を知らないのと、目の前から消えてしまったのとでは、どちらの方が…

 

「ここまでの万里は、少なくとも学校では一言も話さなかったそうだ。クラスメイトはおろか教師相手にも。学校側も扱いに困っただろうな」

 

 確かに。一言も話さないくせに、教師よりもはるかに優秀な小学生って…属性盛りすぎでしょ、神楽くん。

 

「だが10歳の時、ヤツは変わった。成績は変わらず優秀だが人当たりもよく、教師どころかクラスメイトにすら一定の敬意を払って接するようになり瞬く間に学校一の人気者だ。ボクたちの知ってる万里になったってことだな」

 理由までは分からなかったが、とクルミ。

 

 うんうん、神楽くんはそういうのが似合ってるよ。

 

「そのまま小学校と中学校は滞りなく卒業。高校も、あえてそこそこのレベルの学校に入学して、学校をサボって海外を気ままに旅してたらしい」

 

 なんというかすごく()()()

 

「ここまでがヤツの経歴。ここからは街角アンケートを装ってヤツ自身に回答してもらったものだ。客で来ていたキレイどころに頼んでやってもらった」

「え…クルミ。お客さんに協力を依頼したんですか?」

「ああ。万里も男だ。美人からの依頼は断らんだろ」

「そうじゃなくて…」

「なんだよたきな。何か言いたいことあるのか?」

「万里さんが一度来たお客さんの顔、忘れるとは思えないんですけど」

「…」

「…」

「ま、まあちゃんとアンケートに答えてるってことは顔は覚えていても怪しんではないってことだろ」

 

 たきなの指摘にクルミの表情が引き攣った。クルミを除く全員が半眼でクルミを見やる。大勢が悪いと悟ったのか、私たちを無視してアンケート内容を発表した。

 

 

「神楽万里…身長181cm 体重68kg 利き腕は右 1月31日生まれのAB型

 趣味は料理と面白いことを探すこと 尊敬する人は…世界で『一』番『朗』らかな人…誰だそりゃ。特技は体を動かすことと手品。好きな女性のタイプは…っ」

 

 つらつらと読み上げていたクルミが初めて言い淀んだ。不思議に思った私たちは、クルミの顔を見て、唖然とした。

 クルミの顔が、少しとはいえ赤い。クルミは意外と表情を豊かに変えるけど、()()()()()()()()はめったにない。根本がクールだ。

 そんな顔、見たことないんですけど!!なんて書いてあんの!?

 

「クルミ!万里さんの好きなタイプは!?」

 

 だからたきな神楽くんのこととなると怖いんだって!

 

「す、好きな女性のタイプは…頭がよくて…小柄で…話の合う、小動物みたいな子…」

 

 そ、それって!!完全にクルミじゃん!

 確かにキレ者同士話が合うようで、二人でポンポンと小難しい話をしているのをよく見かける。

 クルミも最初の頃の警戒はどこへやら。神楽くんが畳に座っているとどこからともなくやってきて、神楽くんの広い背中を背もたれにぐでーッとゲームをしていたりするし、飲み込みが早い神楽くんに楽しそうにハッキング技術を教えている。

 神楽くんがいないところで、次のウォールナットは決まりだな、なんて冗談めかして言っていたっけ。

 

「くぅ!警戒すべきはたきなだけじゃなかったかぁ!」

 

 大袈裟に悔しがる私に取り合わず、クルミは赤い顔で目をぐるぐるさせている。実際悔しい。

 

 そうだ、たきな!

 ここにきて一番の危険人物に目をやった。こういう時のたきなはキャラが変わるのだ。

 

「………」

 

 怖っ!!

 目を見開いて瞬きもせずにクルミを凝視していた。クルミがトリップしてて助かった。今のたきなと目を合わせたら後ろにひっくり返って失神するんじゃない?

 

 混沌とした場にどうしようかと思っていると、限界に達したのかクルミが立ち上がり解散を宣言した。

 

「あ、アンケートはこれで終わりだ!今日は疲れたし、ボクは風呂に入ってくる!お前らも早く帰れ!」

「あ、クルミ!」

 

 これ以上顔を見られたくないのか、アンケート用紙をテーブルに放置しクルミはさっさと行ってしまった。

 

 仕方ないとばかりに帰り支度を始めた私たちだが、先生が放置されたアンケート用紙を拾い上げ唸った。

 

「これは…」

「ん?どったの先生」

 

 手を止める私たちに気付いたたきなとミズキも寄ってきた。

 先生は苦笑しながら、アンケート用紙を全員に見えるように構えた。

 

「え、先生これって…」

「クルミがちょっと不憫ですね…」

「クルミ…あんた」 

 

 アンケート用紙には続きがあった。

 正確には、アンケートは確かに終わりだが、アンケート用紙の一番右下に小さくコメントが添えられていた。見覚えのある綺麗な字は、神楽くんの字だ。

 

 ………クルミ、これはあんたの

「クルミの完敗、だな。万里くんのほうが何枚も上手だ」

 

 先生はそう締めくくった。

 

『好きな女性のタイプ…頭がよくて、小柄で、話の合う小動物みたいな女の子。

 

 

 

───それでクルミちゃん、これはなんの遊びだい?』




小話でした。

前書きでもお知らせの通り次も小話を投稿予定です。
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