好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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続きです。

この駄作をここまで読んでいただいているような聖人の皆々様は既にお気付きでしょうが、この主人公にとってアラン機関は特大の地雷です。


ミズキさんと飲んでみたいってずっと思っていたので

「そして俺がここに残ってやりたいことなんですけど」

 

 万里くんが一通り自分の考えを私たちに共有した後、いつもの超ド級のイケメンスマイルで話し始めた。

 

───ホント今更だけど、非の打ちどころなさすぎない?ド畜生め。

 

 私がもう5歳…いや3歳若ければ、死んでも逃がさないのに!

 千束もたきなもクルミも人の気も知らないでイチャイチャしやがってぇ!全員一度シメちゃろうかしら!

 

 その笑顔でドブ川を覗き込めば、あまりの美しさに川が浄化されて綺麗になるんじゃないかと思うほどのスマイルが、私を見ていった。

 

「錦木さんの心臓の件、教えてほしいんです、ミズキさん」

「私が知っていることなら何なりとぉ!!!」

「ありがとう、やっぱり優しいですね」

 

 悩む余地なし!千束のプライバシーを生贄に、私の好感度を召喚!

 千束も別に隠してないし、これくらいは許しなさい!

 

「なあミカ。ミズキのやつ、万里に言われたら借金してでも車くらいなら買うんじゃないか」

「………言うな」

 

───何か言った?

 

────────────────────

 

「あれだけ運動しても問題ない人工心臓があるとはね。DAの技術開発部のサーバを覗いてみたいね」

「覗いても無駄だよ。DAの技術じゃないんだ」

 

 ボクの呟きをミカが訂正する。なるほど、ということは。

 

「やっぱ、コレか」

「アラン機関、だろうね」

「万里…。ミズキはどうした?」

「錦木さん達の移動の手伝いのために車で出たよ。俺が話を聞きたいために足止めしてしまった。申し訳ないことをしたよ」

「いや、あいつにとってもご褒美だったと思うぞ」

「?」

 

 ミズキを堕として情報を集めていた万里が、ミズキの話が終わったのかこちらへ合流しながら言った。

 

「…キミたちに秘密は通じない、か」

「命と引き換えに世界への使命を与えられた…。千束の使命はなんだい?」

「それは千束が自分で決めることだ」

 

────────────────────

 

 現在私──中原ミズキは、水上バスでの移動を終え、徒歩で観光している千束たちの足になるため車を走らせていた。

 そこへ、千束たちを尾行している奴がいるとクルミの茶化したような通信が入る。

 

『さっきから付いてきている奴がいる。ジン。暗殺者で、その静かな仕事ぶりから『サイレント・ジン』と呼ばれている。ベテランの殺し屋だとさ』

『サイレント…!』

『サイレントのほうで呼ぶんですね、ミカさん…』

『知り合いか?』

『15年前まで警備会社で共に裏の仕事を担当していた。私がリコリスの訓練教官にスカウトされる前だ』

 

 同様の通信を千束たちも聞いているため、オッサンがジンとやらの情報を伝えてくる。

 

 曰く、その実力は本物で、確かに声を聞いたことがないと。

 どうやって一緒に仕事してたんだソレ。まあいいや、そんなことより、と私はマイクに向かって声を掛けた。

 

「30m先に確認。こっちは顔がバレてないし、発信機つけに行くよ」

 

 全身黒ずくめのターゲットを追いかけて車を走らせ、やがてヤツは高架下の道を進んでいった。

 

『上から確認できない。ミズキのほうからは?』

「柱の横で止まった…っ!」

 

 ヤツはクルミが放っているドローンに向けて狙撃。一撃で破壊すると、私がいる方へ体を傾けた。

 

 まずい!急いで車を走らせると同時に叫ぶ。

 

「くそっ!バレてる!」

 

『ジンはまずいな…』

『あ、サイレントじゃなくなった…』

『万里』

『ごめん、クルミちゃん』

『よし』

 

──イチャイチャすんなアホリス!

 

『予定変更。避難させて一人攻勢に出るべきだ。予備のドローンとミズキでジンを補足次第攻撃に出る』

「そっちが美術館出たら車回すよ」

『了解』

 

 この声は千束か。たきなも通信は聞いてるから、一先ず情報を共有することはできた。

 

 私は、見失ったジンを探して何としても発信機を付けるため、車を降りて走る。

 

「がんばれミズキ~。ドローンがなきゃ何もできないぞ~」

「あんたもッサポートッしなさいッよ」

 

 しんど!

 運動不足だ。決して歳ではない、運動の習慣がないだけ。だからセーフ。…いやそれもダメか。

 

 必死に足を動かしていると脇腹に強い衝撃が走った。

 

「ぐぅっ!」

 

「どうした、ミズキ」

 

 痛みを堪えて正面を見ると、探していた人物の姿があった。

 このヤロウが!いたいけな乙女を蹴りやがって!

 マイクに向かって叫ぶ。

 

「ジンだ!」

 

 逃げる私をいとも容易く捕らえたジンは、周囲に助けを求める私の口を手で塞ぎ、人差し指を立てて静かにするようジェスチャーで示した。

 ジンの体を殴りつけるも、やはり私の力ではビクともしない。

 

──それでも、できることはある。

 

 やるだけのことをやった私の耳から外れたインカムを、ジンは容赦なく踏み壊した。

 絶対捕まえた後で代金請求してやるぅ!

 

────────────────────

 

「予備のドローンは!?」

「電源が入っていない」

 

 言いながらクルミは予備のドローンを窓から放ちすぐにジンを追った。

 

「チャンネルを変えて二人に連絡だ」

「俺も行くよ、ミズキさんが心配だ」

 

 ここまで静かに状況を見守ってきた万里くんが言う。

 

「行くといっても今からでは到底間に合わない」

「?俺がですか?」

「…」

 

 そうだった。

 

「すまん万里くん。頼めるか」

「ええ。報酬はコーヒーで結構ですよ」

「最高の一杯を約束する」

 

──素晴らしい。

 

 一言だけ答えると、彼の姿はすでに消えており、遅れてやってくる突風だけが彼が確かにいたことを証明した。

 

 呆けている場合ではない。

 私はすぐに二人に連絡した。

 

────────────────────

 

『ミズキとの通信が途絶えた。ジンが仕掛けてくるぞ』

「私に任せてください」

 

 止める千束の声を置き去りに、私は一人行動を開始する。

 

 クルミから通信が入った。

 

『屋内の監視カメラを顔認証にかける。野外は予備のドローンを向かわせたから、10分後に解析を始められる』

「ミズキさんは?」

『500m先で連絡が途絶えたままだ…が、そっちには万里が向かった。死んでさえいなければどうとでもなる。それより美術館の入口はデパートの通路側だから、館内のカメラで確認する』

 

 私は出口側に向かい、目視で確認しろと指示を受けた。

 よかった。万里さんが付くならそこが世界一安全だ。

 

『ちょっと待てたきな。ミズキがジンに発信機を付けてた。死してなおこちらに情報を残した!』

『まだ死んだとはわからんだろう』

『もう美術館に来てる』

 

 いる。ジンが。この近くに…

 

「外ですか?」

『後ろだ、たきな』

 

 言葉の意味を理解すると同時に、振り向くより先に身を屈めた。直後、私の頭があった位置が銃弾によって爆ぜた。

 

「ッ!」

 

 すぐさま銃を抜き、反転しながら動きを止めるためにジンの左腕めがけ発砲。

 しかし弾は貫通するどころか、ヤツの装備に阻まれ弾かれた。

 

「コートが防弾です!」

『そのまま千束たちから引き剝がせ』

 

 私の殺害に失敗したとみるや躊躇いなく逃走し、再度姿を消そうとするジンを逃がすまいと私は背中を追った。

 

────────────────────

 

「くそ!こなクソ!!!!」

 

 ジンに捕らえられ、縛られた上に物置へと押し込まれた私は近くを通った人が気付くようひたすら暴れて物音を立て続けた。

 人通りは少ないし、休むことなく暴れ続けて体力も残り少ない。でもやらないわけにはいかないでしょうが!

 

 何度目からわからない体当たりを物置の扉に叩き込もうとして、唐突に開いた扉に勢いを殺しけれず倒れ込む。

 

──やばッ、縛られたままじゃ受け身もッ

 

 ポスッ

 

「…?」

 

 襲ってくるであろう痛みと衝撃になすすべもなく、せめてもの抵抗で固く閉じた両眼を開いて。

 

「お怪我はないですか、ミズキさん」

「へぁ」

 

 奥まった位置だったので見つけるのに手間取りました。と申し訳なさそうにしている超ド級のイケメン。

 あらー、すごい綺麗な瞳の色。間近で見るの初めてだけどすごいわこれ。人の瞳って本当に輝いてるんだ。あ、万里くんだけか。そういうパッシブスキルかこれ。

 

「立てそうですか?」

 

 続いて響いた万里くんの言葉に、改めて現状を認識した。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

「何て仰いましたいま」

 

 私27歳未婚彼氏なしが、19歳男性超イケメンに抱き留められていた。これにて完結です。生きててよかった。いやこのために生きてた。

 

 ってそんなこと言ってる場合じゃない、ジンが!

 

「ありがとう万里くん、けがはないの。それより携帯貸して!」

「わかりました」

 

 万里くんが受け取った携帯を操作して…ていうか万里くんの待ち受け、この前店の前で撮ったみんなの集合写真だなにそれカワイイ好き──じゃなくてリコリコに電話を掛ける。

 

『どうした万里』

「私よ。いやーやられたわー」

『なんだミズキ。生きてたのか』

「なんだとはなんだ!」

『ミズキ。たきながジンを追いかけてる。東京駅の松下さんを迎えに行ってくれ』

「わかった!」

 

 そう言って通話を終えた私は、万里くんにスマホを返そうとするも

 

「持って行ってください。俺にはインカムがありますし、俺はたきなのほうへ向かいますので」

「了解、ありがとう万里くん。また何かでお礼するわ」

「でしたら、年明けに誕生日を迎えたら20歳になるんです。お酒、付き合ってください。

 ミズキさんと飲んでみたいってずっと思っていたので」

 

 なんだこの子は!魔性か!魔性だったわ!

 

「~~~~!もちろん!その約束忘れるんじゃないわよ!」

「ええ」

 

 そう言って私は、アルコール以外の理由で顔を熱くしながら東京駅と向かった。

 

────────────────────

 

『ジンが来ているんだね』

「…え」

『あいつは私の家族を殺した。確実に私を殺しに来るはずだ』

 

 どういうこと?松下さんは、自分の命を狙っているジンのことを知ってたってこと?

 私が呆気にとられているとクルミから通信が入った。

 

『たきながジンに撒かれた。気をつけろ』

 

 通信に気を取られている私に、松下さんは構わず話し続ける。

 

『日本にいる限り、あいつ(ジン)は必ず殺しに来る』

「なら、一度店に帰りましょう。避難してから、どうするか考えましょ?」

『私には時間がないんだ』

 

 どういうこと?何を言っているの、松下さん。

 考えがまとまらない私に、時間は待ってくれない。

 

「千束!逃げて!」

 

 声と同時に破裂音が響く。何度も聞いた──銃声だ。

 

 ジンへと接敵しながらたきなが放った弾丸は、ジンの持つ銃に直撃。

 銃を取りこぼさないジンもさるものだが、たきなは躊躇うことなく、ジンと共に東京駅の屋根から跳んだ。

 

「たきなぁぁ!」

 

 工事のために建てられた囲いの中から『ガシャァァン』という音が聞こえた後、プスっという炭酸が抜けたような軽い音が数度私の耳に届いた。

 

──大丈夫。最初の音は、工事のための足場に激突した音。そのまま地面にたたきつけられたわけじゃない。そのあとの炭酸が抜けたような音は、サプレッサーが付いた銃の発砲音。たきなは生きてる!

 

 それなら私がすべきことは、この鉄火場から一刻も早く松下さんを引き剥がすこと!

 

『私の本当の依頼はジンを殺してもらうことだ』

「え?」

『キミのペンダントの意味を私は知っている。キミには使命があるはずだ』

 

 なにを…

 

「おぉ~い。こうた~ぃ」

「ミズキ!松下さんをお願い!」

 

 

 ごめんね、松下さん。たきなを助けなきゃ。

 




長くなりそうなのでいったん切りました。

次でアニメ第五話が終了いたします。

以下愚痴です。

ドンドン頭の中のヒロインズが病んでいくんですけどどうしたら…と考えていたら
『一人が病むから周りとギスギスするんだ。全ヒロイン病めばそれがスタンダードさ』と囁かれました。脳内の自分にですが。

さすがに需要がないと思いますので頭の中だけにとどめておきます。
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