好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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続きです。

ロボ太の叫び声、いいですよね。


襲撃

「DAの場所!あんたらは知らないのか!?」

『知っていれば教えています。真島の怒りはあなたの作戦のせいなのですから、うまく彼の興味のバランスを取ってください』

 

 もう二日経ってる。時間がないんだ!

 そう言おうとした僕の言葉を待つことなく電話は既に切れていた。

 

「バランスバランスバランス…!おまえらー!」

 

 

 

 

 …見つけた。

 

 町中に飛ばしているドローンの一機が奴らの姿を収め、尾行することによって家を突き止めた…が。

 

「ただの児童盗撮犯じゃないか…」

 

 でも四の五の言ってられない。僕の命も危ないことだし。

 すぐに金で雇った連中に襲撃を命じた。

 

────────────────────

 

「じゃんけんの勝率はどの手も三割なはずのに」

 

 勝てない。何度じゃんけんしても一度たりとも勝てない。…むぅ。

 

 そんなことを考えていると、私の耳にけたたましいアラートが届いた。

 

「やれやれ。チンピラがまた来た」

 

 そう言って立ち上がった千束の後に続いていくと、男が二人ダミーの部屋で焦ったような声を上げていた。

 

 訓練など受けていないチンピラ崩れ、という私の印象は間違ってはいないようで、二人ともロクに抵抗もできずに千束に叩きのめされた後窓から外へ飛ばされ、悲鳴を上げて逃げて行った。

 

「このためのセーフハウスですか」

「そー。あんなのならいいんだけど、昔はリリベルも来てたから」

「リリベル?」

「あー…。男の子版リコリスみたいな?」

「それ、普段何してるんですか?」

「よく知らなーい。…なに?男の子に興味あるのぉ?」

 

 からかうような千束の声音。まったく…

 

「男の子というよりは万里さん限定ですけどね」

「…ん?」

「万里さん相手なら、何でも知りたいんですけど」

「…んん??」

 

────────────────────

 

 ドローンが記録していた一部始終を、何度も再生する。

 

「なんだこいつ…。これ見せれば、真島は興味持たないか…?」

 

 見えてきた希望に浮かれていると、僕の部屋のドアが吹き飛んだ。

 

「ドアァァァ!?」

 

 真島が、以前お世話になったマッチョ二人を連れてきた。

 

「もう三日経ったぞ」

「ど、どうしてここが…」

「そんで?」

 

 真島のその声で、マッチョ二人がボクを取り押さえる。

 だからなんで二人がかりなの!一人でも逃げられないよ!

 

「そんで?」

「待ってくれ!リコリスが…」

「リコリスじゃねぇよ…」

 

 真島の持つ銃が、眉間に押し付けられる。…被り物越しだけど。

 

「見てほしいものがあるんだッ!」

「ほかの奴らは死んでんだよ?」

「待ってくれ!映像を見て!すごい映像が…」

「バランス取らなきゃなぁ!」

 

 カシャッという小さな音と共に、PCにつないでいたすべてのモニターから、真島に見せようとしていた映像が繰り返し流れる。

 いったい誰が…。いや、今はそんなことどうでもいい!チャンスは今しかない!

 

「こ、こいつがトップのリコリスだ!DA襲撃前にこいつを殺しておかないと、お、お前らは全滅するぞ!」

 

 映像の中のリコリスをじっと見つめる真島。

 やがてヤツは押し付けていた銃口をあっさりと引っ込めた。

 

「明日ソイツを倒しに行く。作戦を考えろ」

 

 た、助かった……。

 

────────────────────

 

 クルミちゃんが操作するPC画面を、俺と千束は揃ってのぞき込んでいた。

 

「地下鉄襲撃未遂犯とリコリス襲撃犯は、例の奪われた拳銃を使っているようだな」

「あー。じゃああん時DAをハッキングしたのも同一犯かな?」

「え゛」

「リコリス襲撃に死者は出ていないって聞いてたんだけど、発砲された形跡があるのかい」

「あ、ああ…。DAの資料を見たところ、逃げようとしたリコリスの足止めのために数発な。威嚇射撃で、命中はしていないらしい」

「そうかい」

 

 しかし、地下鉄の時はなぜ…。襲撃は俺が説得したことによって未遂で終わったのに…。

 

「そうか…」

「ん?何か言った万里くん」

「いや、独り言だ」

 

 真島さん達が使用した銃はすべて闇取引で入手したもの。今から大量殺人を行おうというのに、使うエモノを確かめない者はいない。

 俺が駅に到着する前に、数発試し打ちか何かしたのだろう。

 

──しょうがない人だな、真島さん。

 

 現場に来てから試し打ちなんて、ドジっ子もいい所だ。

 

 心の中で真島さんに突っ込みを入れていたせいで、俺はクルミちゃんが動揺していることに気付かなかった。

 

「と、とにかくもうちょっと調べてみる」

「しかし、どうやってリコリスを識別してるんだろ」

「さあ、確かなことは言えんが…。その制服がバレてるんじゃないのか?」

「ああ!たしかに」

 

 やっぱり大物だよ、キミたち。

 

 

 

 

 

 話し込む二人を置いて表に戻った俺を出迎えたのは、たきなの唸り声だった。

 

「どうしたんだい、たきな」

「万里さん…。いえ、一回も勝てないんですよ」

「なにに?」

「家事の分担をじゃんけんで決めてて最近毎週やってるんですけど、一回も千束に勝てないんです」

「ほー」

 

 そりゃまた…。

 

「最初はグーでやってるでしょ」

「ミズキさん」

 

 訳知り顔のミズキさんとミカさんが、千束必勝のからくりを教えてくれた。

 

 曰く、最初はグーで始める時点で勝てない。

 千束はその類稀な動体視力で、筋肉や服の動きで相手の動きが読める。そのため、あいこから始めても最高であいこ。勝てる確率はゼロだと。

 

「千束にじゃんけんで勝つには最初の勝負で勝つしかない。あいこになったらもう勝てないし、ましてあいこから始めたら一生勝てないよぉ」

 

 なぜか嬉しそうにたきなにからくりを伝えるミズキさん。

 

──多分この人、昔同じ方法でぼこぼこにされたんだろうな。

 

「組長さんとこに配達行ってきまーす。…どしたの」

「いえ…。べつに…」

「えー。なになに」

 

 たきながむっすりとした表情を隠そうともせずに、千束に返事をした。

 反則をしたわけじゃないから文句も言えないし、かといって勝ち目のない勝負をそうと知らず何度も受け結果的に家事をすべて負担したことは悔しい。そんなところだろう。

 

 ともかく。例の襲撃を警戒してここ最近ずっと二人で過ごしているため、今回の配達もそうなるだろう。たきなも分かっているのか準備に取り掛かる。

 

「あ~大丈夫。制服がバレてるんだろうってクルミが」

「リコリス制服ですか」

「そ。これなら絶対わかんな~い」

 

 歌うように宣言する千束。彼女は制服の上に鮮やかな黄色のポンチョを羽織っている。これなら制服も隠れているし、夜道でも目立ついい服だ。

 

「千束によく似合う明るい色だ。可愛いね」

「ぇ、あ、どぅもぉ…」

 

 しまった。本当のこととは言え、最近ではこう言った発言は歓迎されるものではなかった。

 千束も怒っているようには見えないが顔が真っ赤だ。以後気を付けよう。

 

「私服じゃ銃は使えないんだぞ」

「警察に捕まっちまえ」

「わかってるよ。だからほら、下にちゃ~んと着てるよ」

「じゃあ私もそれで…」

「大丈夫。たきな、今日も夕飯楽しみにしてる~。んじゃ行ってきまーす」

 

 そう言って一人で配達に行ってしまった。

 本当に大丈夫だろうか。せめて俺がついて…

 

「あぁぁぁぁあぁぁ!!!」

 

 初めて聞くクルミちゃんの絶叫にほんの一瞬呆気にとられ、正気に戻った頃にはクルミちゃんがタブレットを俺たちに掲げていた。

 

「見てくれ!例の銃取引の時のDAのドローン映像だ!襲撃されたのはこの四人だ!この映像が流失して顔がバレていたんだ!」

 

 そう言ってズームした画面には四人のリコリスが映っていた。

 

「なんでそんなもんが流失なんて…」

「あの時のハッカーか…」

「そのハッカーはDAもまだ見つけられていないようです!」

「あんたの仲間じゃないの?クルミ」

 

「いや…最も可能性が高いのは…」

 

「ああ…。あの時のはボクだ」

 

『!』

 

 やはりか。

 

「依頼を受けてDAをハッキングした…。その時のクライアントに近づくためには仕方なかったんだ…」

 

 言いづらそうな声音で続けるクルミちゃん。誰がどう見ても悔やんでいる。

 

「あんたが武器をテロリストに流した張本人てわけ!?」

「それは違う!指定の時間にDAのセキュリティを攻撃しただけだ!」

 

「そーですか!おかけで正体不明のテロリストが…」

 

「そこまでだ」

 

『!』

 

「たきながDAを追い出されたことも、クルミちゃんがDAを攻撃したことも、四人のリコリス達が襲撃を受けたことも。そのすべては終わっている。今クルミちゃんを責めて得るものは、これから起こる『何か』に対処する時間を失うというディスアドバンテージだけだ」

「万里…ありがとう…」

「教えてくれクルミちゃん。キミほどの子が血相を変えて、俺たちに何を伝えようとしてくれたんだい」

「ああ…。っ!おい、千束はどうした!?」

「配達に行きました…」

「…流失したのは…これで全部じゃないんだ…」

 

 

 そう言って見せてくれたタブレットに映っていたのは、さっきまでここにいた看板娘の横顔だった。




がんばれ真島さん!もうすぐサイボーグがそこに行くぞ!
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