司令及び司令ファンの皆様、扱いひどくて申し訳ございません。
それからクルミちゃんを中心に該当のバーを探し当て、会員制の為顧客情報を偽造することとなった。
「大人数で言っても目立つし、女だけで行っても目立っちゃうから、メンバーは私とたきな、相手役に万里くんね!」
「ああ、それでもかまわないよ」
「偽造は何でもないが…こんな店で仕事の話するか?逢引きじゃないのか?」
ふむ、一理あるか…
しかし、ミカさんや楠木女史のことをよく知る二人に真っ向から否定された。
『ないないないないないない』
「なんでだよ。あり得る話だろ?」
『ナイナイナイナイナイナイ』
ないらしい。
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『あいつと同じように非殺傷弾を使ったやつの噂があった』
「へぇ…」
『電波塔事件は知ってるだろ?』
「ああ…折ったの俺だからな」
『え、どゆこと?』
「で?」
『あぁ…テロリストたちはコイツ一人に倒されたとか…』
「……ハッ!あいつか!」
あん時は小さかったが、あれから年月も経ってる。確かにこんなやつだった。
──手も足も出なかった。
「こいつは…運命だな…」
それにしても…
「なんで
『あのねぇ…DAのシステムは規格外のAIが制御してるんだけど、入り口を物理的に内側に用意しないと、アクセスしただけでこっちがパクられんの!』
「よくわかんねぇが遠くからちょちょいとできねぇの?…世界一のハッカーなんだろ?」
『くっ!!…これを作れるのは僕だけなんだぞ!DAのAIにハックすることができるのは世界に二人といやしないんだ!それを成し遂げれば、僕がトップランカーとして…』
「あーわかったわかった。お前さんの夢が掛かってるわけね…」
通話の向こうで、ヒステリックな叫び声が聞こえた。自分にできないことはほかの誰にもできないと思え、か。頼もしいこって。
「コイツを所長のPCに挿してくればいいんだな?」
『そう。それが君の計画を成功させるために必要なことだ』
「俺たちの、だろ」
そんじゃまぁ、ぼちぼち行くか。
「とりあえず、通信ジャミングに逃走経路の確保、頼んだぜ?トップハッカー」
『五分で終わらせろよ』
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「都内21か所で対処すべき事案を補足」
「ラジアータが各所で複数の爆発物の所持を確認」
「同時にか…」
なにが起こっている?…悠長に考えている暇はない、すべてに人員を配置する。
『こちらチャーリー。ポイントF7に現着。当該人物は確認できず』
「これは…」
「ダミー映像だ。…やってくれる」
脳内で、あの男の声が響く。
『爆発物を堂々と持ち運ぶような人間が、そんな簡単に監視カメラに映るわけないでしょう。それも複数人となれば同時多発テロを疑って当然。参考程度に伺いたいんですが、爆弾はどう処理するつもりだったんですか?リコリスに回収させるつもりだったんですか?…爆発する恐れのある危険物を、本拠地であるDAに?新手の自殺志願者ですか?それに万が一首尾よく爆発物を発見できても、回収するところを誰かに見られたらその時点でゲームオーバーです。夜も更けた時間帯に、制服を着た複数の女生徒が、大きな荷物を抱えて走り去る姿が各所で目撃される。それだけでそこそこ事件性を感じますよ、一般の人は』
幻聴…止めてくれ…
「…すぐにリコリスを呼び戻せ…」
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押上警察署前─
「リコリスホントに来ねぇの?」
『僕がいれば、地下鉄の時のように包囲されかけるようなことにはならない。ただし、初動を遅らせるだけだから急げよ』
「どういう仕掛けだ?…ああいい、どうせ聞いても分からねぇだろうし」
ハッカーとの通信を終えた俺は、警察署前の警官に呼び止められた。
「君達…警察相手にそんなおもちゃはいかんよ?」
平和ボケした日本の警察は、徒党を組んでやってきた男たちの手に銃のようなものが見えてもおもちゃだと判断するらしい。
「おもちゃ…ハッ」
とりあえず、指示された分の仕事はしますか…
「すまんなぁ、こんなおもちゃで…」
俺が空に向けて撃った一発の弾丸が、スターターピストルのように夜空に響き渡った。
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昨夜の警察署襲撃のニュースがワイドショーを賑わせている中、喫茶リコリコに珍しい来客があった。
「千束はいるか」
「お~フキ!いらっしゃい」
「やあフキ、サクラさんもこんにちは」
「……ああ」
「こんちは~っス」
フキはなぜかものすごいスピードで俺から目をそらすと、千束に見せたいものがあると言って着座した。
あ。よりによってクルミちゃんの隣に。
「ああ?見ない顔だな」
「で、で、で、DAの者です…」
「そうなのか?」
「あ、あ、あ、うん…うちのコンピュータの人…」
「んじゃちょっと借りるぞ」
千束に話を振っている隙に逃げようとしたクルミちゃんだが、フキにPCを半ば無理やり奪われて身動きが取れなくなった。…不憫だ。
フキが流した映像には、先ほどニュースで流れていた警察署襲撃の署内の監視カメラの映像だった。
「紋々じゃねぇじゃん!」
「報道はカバーされてるに決まってるっしょ!」
「報道前に何とかするのがあんたらの仕事でしょ~」
「ブー」
確かにミズキさんの言う通りだが、トップがあれではほとんど間に合わないんだろうな。
「おや、珍しいお客さんだな」
「!」
奥からミカさんが顔を見せると、フキの様子が変わった。
なんだか妙に嬉しそうだな。
「抹茶団子セット一つお願いしていっスか?」
「抹茶団子セットね。フキ、お前は?」
「いえ。任務中ですので。お気持ちだけありがたくいただきます」
「そうか…。もしフキも何か頼むなら、キミのコーヒーは俺が入れてみたかったのに」
「…!ち、千束!どうだ!どいつが真島だ!」
「あーそんなに大きな声出さなくったって聞こえるよ。…後悔するなら飲めばいいのに」
千束が何事か呟いた後、流れていた映像を指さして叫んだ。
「あ!コイツコイツ!ねえたきな!」
「ですね!」
「やっぱ髪型私のじゃん!」
「髪だけじゃないですか!」
なぜか言い争いに発展する千束とたきな。仲いいね。
「コイツが…。サクラ、行くぞ!」
「え…。まだ団子が…」
「うっせ!私なんて断っちま…」
フキの言葉の途中で扉が閉まってしまい、最後まで聞こえなかった。
初めて気付いたが、なかなかの遮音性だな。
二人が帰ったことでようやくゆとりとPCが戻ってきたクルミちゃんが、表示されたままの画面を見て何かに気付く。
「おい、コレ…」
クルミちゃんが指し示す画面には、ぼろぼろにされた署長室の壁一面に、大きく文字が描かれていた。
───勝負だリコリス!! 決着をつけようぜ大将!!
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「腹減った~」
「おうどんでも湯がきます?」
「食べま~す!」
例のメールに記載されていた約束の日は本日。
みんなそうだが、特に千束が少しソワソワしているな。
「すまないが、私は用事で外出するから、戸締りを頼むよ」
ミカさんがそう言って扉を閉めた瞬間、俺を除いた全員がすぐさま準備に取り掛かった。
しかし今日気付いたところだが、この扉遮音性高いんだから気を付けないと───
「言い忘れてたんだが」
『!!!』
言わんこっちゃない。
「ガスの元栓…どうした?」
「いや?うどんはどこかな~と」
「ここにうどんはありませんでしたぁ」
頑張ったね。咄嗟にしてはいい誤魔化し方だ。
でもミズキさん?あなた体側伸ばしてるところ一度も見たことありませんよ?
クルミちゃんに至ってはそれ誤魔化しじゃなくない?どういう格好してて何を誤魔化そうとすればピョンピョン言いながらウサギみたいなジャンプ繰り返すことになるのさ。可愛いから撫でるけれども。
「ミカさん。後はすべて任せてください。お時間大丈夫ですか?」
「ああ…。万里くんがいてくれるなら安心だな。ありがとう、行ってくるよ。ちなみにうどんは納戸だ」
そう言ってミカさんが今度こそ店を出ていく。四人とも崩れ落ちた。
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「そろそろだ。三人とも準備はいいか」
「俺は問題ないよ」
「私も」
「大丈夫~」
千束は最後にいつものペンダントを首から下げた。
それを見たたきなが、今日もテレビで金メダルを獲得した人が下げていたと言った。
「私にもそういう才能あっちゃうかなぁ」
「弾丸避けるとかだれにでもできることじゃないと思いますけど」
「ありゃ勘だよ。万里くんみたいに弾丸より速く動けるならメダル獲れるんだけど」
「ミズキ、そこ右だ」
「まあ金メダルは獲れなくても誰かの役には立てるでしょ…DAに戻されてる暇はないのよ」
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「やべぇなこの雰囲気!」
「ああ。いかにも既得権益者が好みそうな内装だ」
「おお…身も蓋もない」
しかしタイミングを逸して伝えられていなかったが、これだけ言っておかなければ。
「千束、たきな」
「どったの」
「なんでしょう?」
「そのドレス、二人にとてもよく似合っている。綺麗だよ」
うむ。綺麗な人には綺麗と言わなければ失礼に値する。とびぬけて美しいこの二人ならば尚更だ。
時間がない中用意したからか、二人は色違いで同じドレスを着用していた。
千束が赤で、たきなが青。たきなは帽子を被らず、長く美しい髪を編み込みサイドから前へ流しており、大胆に空いた背中と胸元が、彼女たちをより大人の女性に魅せている。
一人で満足していると、千束とたきなの様子が変であることに気付いた。
───そういえば、リコリコで着替えて車で来る道中も、話はしても誰も目を合わせてくれなった。これはミズキさんとクルミちゃんもだ。
全員顔を赤くして俺と目を合わせないようにしていた。
なんだろう、俺は気付かないうちに何かしたのだろうか。
「あ、あ、あ、あり…がと…」
「あのあの、万里さんもよくお似合いですね!?」
「そうかい?ありがとう。嬉しいよ」
キョロキョロと突然落ち着きを失った二人だが、俺の装いをほめてくれた。
俺は今、ある日街を歩いていると『あなたに合わせたスーツをぜひとも作らせていただきたい。お題は結構なので完成した暁には一枚だけ写真を!』とやたらガタイのいい壮年の男性総勢6名に土下座をされた末、恐怖のあまり頷いてしまった際に作ってもらったスーツを着用している。
服には詳しくないが、これが大変質の良いものだということは分かる。年齢的にそろそろ一着持っていてもいいかと思っていたところだったので渡りに船ではあったのだ。…人生で三本の指に入るくらい怖かったのも確かだが。
──さて。
「キミ達の美しい装いも堪能したし、褒めてももらえた。そろそろ行こうか」
───ミッションスタートだ。
「…ねぇクルミ」
『…なんだ』
「…今カメラで私たちのこと見えてるよね?」
『…ああ』
「…万里くんの今の恰好、写真にして後でちょうだい!」
「私にも!」
『私にも!』
『ミズキまでか…まあいい、ボクもそのつもりだった。あんみつ三つでどうだ』
『異議なし!!!』
行かないのかい、キミ達。
来ちゃだめだシンジ。
もう筆者から言えるのはこれだけです。