好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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続きです。

ゼルダクッソ楽しい。


老害にありがちだよね

「四月の武器取引に始まり、地下鉄爆破、リコリスや警察署襲撃…これらすべての事件の首謀者がこの真島だ」

 

  現在、真島討伐作戦のブリーフィングにて、真島が起こした事件の詳細とこれからの作戦を司令が伝達している。

 真島は世界を股にかけるプロの戦争屋で、十年前にこの日本で起きた電波塔事件の犯人でもあるという。

 

「真島は国内外問わず多くのマフィアから依頼を受け、延空木を狙っている。その依頼者の一人を捕らえ、真島の潜伏場所が判明した」

 

 司令は私たちリコリスを見下ろしながら、改めて命じた。

 

「全力で攻撃する…見つけ次第、殺せ」

 

 その言葉に反応し、すべてのリコリスが立ち上がる。いよいよといった空気だ。

 そんな空気の中、たった一人立ち上がらず司令を呆れたような表情で見つめる者が一人……隣に座っている万里さんだ。

 

 彼は自ら口を開くことはなかったが、何か言いたげなのは誰の目から見ても明らかだ。

 司令もそんな彼が目に付いたのか声を掛けた。

 

「…何か言いたいことがありそうだな、神楽」

「いいえ、特に何も。俺はリコリスではないので真島さんを殺す気はありませんが、あなた方の作戦を邪魔する気はありませんよ」

「…」

「まあ、作戦と言えるほど上等なものではなかったので、この時間に意味があったのかは甚だ疑問ですが。『相手の居場所がわかったからノコノコ向かって行って殺す』なんて小学生のような作戦を、よくもまあこんな広い会議室で堂々と発表できたものだと感心しましたよ」

「…」

「あなた方にどれほど時間を与えてもこれ以上の作戦とやらは思いつかないでしょうし、いいんじゃないですかそれで」

 

 単純(シンプル)だし、と最後に付け加えて万里さんはそれきり口を閉ざした。

 …いつも思うけれど、この人だけは絶対に敵に回してはいけないと改めて誓った。

 

 物凄くキメて号令したら作戦を全否定されて言葉が出ない司令は、なんとか解散だけを告げて重い足取りで去っていった。

 

 

 

 

「万里てめぇ!頼むから笑顔でそこいらに爆弾投げるような真似すんな!」

「やあフキ、お疲れ様。サクラさんも」

「う~ス」

 

 司令の姿が見えなくなった途端、同じく会議に参加していたフキさんとサクラさんが歩み寄ってきた。

 

「というかフキ、俺はそんなことしてないよ」

「しとるわ!」

「っスね」

「してますね」

「おお…味方がいない」

「この件に関しちゃいるわけねぇだろ!…司令含めお前に好意的じゃないリコリスも山ほどいる。作戦参加を頼んだ私が言えることじゃねぇが、あんまり悪目立ちすんな」

 

 フキさんが声を潜めて忠告した。彼女の言葉は自分の立場や心情をまったく考慮せず、正しく万里さんの為を想ってのことだ。…DAにいた頃は知らなかったが、彼女は存外義理堅く情に厚い。

 

「…そうだね、ありがとう」

「…別に礼を言われることじゃねぇ」

「フキの気持ちが嬉しいんだ。だからありがとう、だよ」

 

 そう言って万里さんは、自分より30cmは低いフキさんの頭を、壊れ物を扱うような繊細な手つきでゆっくりと撫でた。

 

「これは…」

「…死んだっスね…思春期先輩」

 

 万里さんに何かアクションを起こされるたびにおでこまで真っ赤にしていたフキさんは、今回顔色を変えることはなかった。

 彼女がこの短期間に適応したとは考えにくい…ということは。

 

 

 私の予想を裏付けるように、彼女はゆっくりと後ろに倒れた。

───頭が状況を理解する前に、意識トんじゃったんですね…

 

 

 倒れる前に万里さんに抱きかかえるようにしてキャッチされたフキさんを見ながら、私はこの締まらない空気に嘆息した。

 

 というかくっつきすぎじゃないです?代わってくださいフキさん。

 

────────────────────

 

「心臓ねぇ…。お前らの関係は大体把握した。…悲しい勘違いだなぁ」

 

 あのアランリコリスが口にしていた『ヨシさん』なる人物を捉え、ヤツの事情を聞き出した。

 あいつの強さや行動を把握するために。

 

「しかし憧れの『ヨシさん』がこんな奴なんて、あいつに同情するぜ。…おかげで俺は電波塔で命拾いしたわけだが」

 

 こんな状況でも顔色一つ変えない目の前の男。…肝が据わっているわけじゃねぇ、殺されないと分かっている目だ。

 

「でもよ、思い通りにならないからって手を出すのはルール違反だろ。大丈夫なのか、お前」

「…彼女が道を間違えたのは私のミスだ。責任を果たす」

「なら俺も殺すか?」

「キミは優秀なチルドレンだよ。…銃は千丁で足りたかな?」

 

 なるほど、俺はコイツが嫌いだ。

 

「お前らもDAと変わんねぇ。次はお前らだ…」

 

 本丸はどこだ。そう言った俺にいけ好かねぇ伊達男は黙したまま小さく微笑んだ。

 

────────────────────

 

「逃げられたっスね…コレ」

 

 真島討伐作戦決行当日。

 

 規定時刻になり全員で突撃するも、真島どころか誰一人としていなかった。

 

 フキさんが、危険がないと報告しようとした刹那、部屋にあったスクリーンに真島の姿が大写しになり、リコリス全員が反射的に銃口を向けた。

 

『おーいっぱい来たなぁ。修学旅行か?』

 

 映像であることにいち早く気付いたフキさんの号令に伴い、みな銃を下げる。

 多くのリコリスの間を抜けて楠木司令が姿を見せると、真島はそれに反応した。わかってはいたがリアルタイムで通信されているらしい。

 

『おお、引率の先生もいるじゃねぇか。ナニモンだあんた』

「お前を殺す指揮を執っているものだ…真島」

『自己紹介は必要なさそうだな。リコリスの親玉ってことか』

「…目的は金か?」

『ハッ!それもある。仲間の生活もあるしな。…だがそれ以上に興味のある仕事だから引き受けた』

「マフィアに手を貸すことがか?」

 

 真島は続けて正義の味方気取りの悪党がどんな顔か見たかったと言った。

 今までの私であれば、真島の言葉に不快感を覚えただろう。

 

 けれどDAの在り方を知り、仲間の存在を知り、本当に守るべきものを知った今の私は、続けて司令の言った悪党はお前らだと断ずる発言にこそ違和感を覚えた。

 

『善悪の物差しは現代においては法だ。お前らは法の下に存在しているのか?』

「その法ができる前から我々は存在し、政治体制を超えてこの国の治安とモラルを育ててきたのだ」

『ハッ!』

「何様なんです?あなた方は」

 

 嘲笑した真島が何事か言いつのろうとした瞬間、私たちの最後尾に位置していた万里さんが前に出て口を開いた。

 

 

「やあ真島さん。元気そうだね」

『おお、大将か。なんだよ、あんたが来るならそこに残っときゃよかったか?』

「そうしてしまうと俺はあなたを捕らえなければならない。一応作戦参加者なんでね」

『そいつは残念。ガキどもはどうとでもなるがあんたはムリだ。…つくづくバランスブレイカーだな』

「そう言わないでくれ。一応自覚はしているから、こうして成功するはずのない作戦に参加しているんだ」

 

 

 万里さんが何気なく言った成功率0%。その言葉によせばいいのに司令が反応した。

 

「…どういうことだ、神楽」

「どういうこととは?」

「成功するはずがないとはどういうことかと聞いている」

「…はぁ?いやだって、さすがにこの作戦は囮でしょう?本命の部隊が別の場所にあって真島さんをこちらに釘付けにして別で叩くんじゃ?」

「…」

「…嘘でしょう。俺が今回限りの協力者だから伝えられてなかったんじゃなくて、本当に『討伐作戦』ってのがこれだけですか?」

 

 万里さんが驚愕している。彼が驚いているのなんて相当に貴重だ。…こんな時でなければ写真に撮りたい。

 

「いやいやいや!『居場所見つかった!全員で向かうぞ!見つけた、殺す!』って本気でこれだけ!?んなバカな!今まで散々情報戦で翻弄されて後手に回ってたのに、なんでここで全戦力注ぎ込んじゃうんです!?」

『…』

「マンモス追っかけてる原始人かよ!相手はプロの戦争屋!ブリーフィングであんた自身が言ってただろうが!真島さんの居場所情報がブラフで、そこにおびき寄せて爆弾で吹っ飛ばすなんてことされたらどうするつもりだったんですか?全戦力注いだんならここで仲良く全員で肉片ですけど」

『…』

「ああ、本部で指示を出しているオペレータの人たちがいましたね、全員ってのは言い過ぎか。…で、彼ら彼女らは戦えるんです?」

『…』

「挙句の果てになんで指揮官がノコノコ着いてきたの?ていうか何しに来たの?マイクついてんだから話は本部で聞けたでしょう。リコリスほどは戦えないだろうから戦力にもならない。あんたがいるからこそ囮としての効果が増すという作戦かと思って黙ってましたが、ここが本命ならいよいよもって意味が分からん。馬鹿が過ぎる」

 

 

 

 なんかもう、この作戦終わったら司令辞めるんじゃないだろうか。というか自殺しないかな、大丈夫かな。

 

 司令は見るに堪えないほど顔色を悪くしたまま黙っているし、リコリスは自分たちが恐れる上司が、完全論破では生ぬるいほどけちょんけちょんにされている空気に耐えられず目をそらしている。穴だらけの作戦に参加させられていることに気付いて顔面蒼白になっているものも多数。

 

 万里さんは万里さんで、彼の優秀な頭でも理解ができない超常現象を見たような驚愕の表情で頭を抱えている。…なんかもう本当に、うちの組織がすみません…

 

『あー、大将?』

「…ああ、済まない真島さん。…いつもいつも呆れはしていたんだけれど、まさかここまでとは…」

『確かに、俺も驚いたわ』

「何を言い出すかと思えば、『法ができる前から我々は存在している』とかドヤ顔で言いだすもんだから、聞いてるこっちが恥ずかしくなって思わず口挟んじゃったよ」

『ああ、それな!治安とモラルを育ててきたのだとか、お前らの成り立ちなんか聞いちゃいねぇっての!』

「まったくだ。老害にありがちだよね。今の話をしているのに、誰も聞いていない過去の話を引っ張り出してきて無駄に熱くなる」

『あ、ダメだ…。思い出したら笑えてきた』

「あなたはいいよ真島さん。こっちなんてそれ言い出したの一応味方だよ?」

『あー…ドンマイ』

「ありがとう…。さて、そろそろ時間もない。いくら馬鹿とはいえ、通信の逆探知くらいは始めているだろうし」

『ああ。俺らもそれは感知してるぜ』

「さすがだ。…最後に真島さん、『吉松』という神様気取りの三下の行方を知らないかい?」

『おお、あんたまでヨシさん探してんのか。人気者だな』

「俺自身はあんなのに興味はないよ。ただ用事があるだけだ」

『なるほど…。あんたの頼みでもそれに答えるわけにはいかねぇな。さすがにバランスが悪い』

「そうか、無理を言ったね」

『気にすんな。…そろそろ終わりだ、楽しかったぜ大将。それと、リコリスの親玉のお馬鹿さん』

「くっ!」

『そこにあるコーヒーもまだ温かいはずだ』

「ありがとう。頂いてもいいのかい?」

『ああ。毒なんて入ってねぇよ』

「わかっている。敵が淹れたコーヒーを飲むようなリコリスはいないし、それがわかっているあなたが飲まれもしないコーヒーに毒を入れるなんて意味のないことはしない」

『わかってんなぁ。…んじゃ、あばよ』

 

 

 終始テンポの良い会話を繰り広げていた万里さんと真島は、そのまま通信を終了した。

 真島に吉松の居場所を問いただそうと作戦に参加していた私だったが、彼が聞いてくれたおかげで目的も達成できた。

 

 万里さんがコーヒーを啜る音だけが響く部屋で、私たちはおそらく心を一つにしていた。

 

 

 

 

───なんかもう、この人(万里さん)が作戦立ててくれないかなぁ。




今回の主人公くんの疑問も、例のごとく筆者の初見時のものです。

この作品の中でもこれは一、二を争うものでした。
地下鉄爆破されたの知ってるよね?リコリス死んだよね?

地下鉄に関しては、真島さんやほかのテロリストたちがいてなお爆破されてるのに、なんでノコノコ行っちゃうの?

百歩譲って真島さんが逃げずにその場にいたとして、千丁の銃構えた千人のテロリストがお出迎えしてたらどうしてたの?
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