好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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戦闘まで行けなかった…


馬鹿一号と馬鹿二号

 味方のはずの皆から魔王認定されてしまった万里くんは、思いのほかショックだったようで立ち直るのに少しの時間を要した…ごめんて。でも魔王じゃん、さすがに。

 

 

 彼は銃を構えたまま動かないリリベルたちに向き直り、困ったような様相で首を傾げた。

 

 

「えーと、こっちはいつでもかかって来てくれていいよ?」

 

 平然と言う万里くん。キミたちと戦うのに俺には準備なんて必要ないよ、と言っているようにしか聞こえない…相変わらずごく自然に敵を煽る。

 そんな煽り─本人にそのつもりはないが─を受けたリリベルの赤服君は、不愉快そうに眉を顰めるも戦闘も対話も撤退もせず待機したままだった。

 

 万里くんは相変わらず不思議そうな顔をしているが、一応リコリスの私は分かる…あれは本部からの指示を待っているのだ。

 

 私やたきななどの例外を除いて、リコリスは本来作戦にない行動は基本的に取らない。おそらくリリベルも同様なのだろう…偏見だが、あの赤服君は特にそういうことを嫌いそうだ。

 

 とにかくこのままではらちが明かないし、ストレス発散ができなかった万里くんが後で何をしでかすかわからないので、思ったことを彼に言ってみよう…後は知ーらないっと。

 

 

「万里くーん!多分だけど、リリベル今指示待ちっぽいよ~!」

「指示待ち…なるほど。恐らくは現在臨時で指揮を執っている指揮官が、リリベルの()()()ということかな」

 

 飼い主という単語に、またも赤服君の眉がピクリと動いた…この千束ちゃんの目は誤魔化せませんよっと。意外と精神的に未熟なお坊ちゃんかな?

 赤服君の反応には気付いているはずだが一切取り合わない万里くんは、フキに声を掛けた。

 

 

「すまないフキ、通信機を貸してくれるかな。あの馬鹿含めその指揮官とやらと話がしてみたい」

「…………ほらよ」

「ありがとう」

 

 苦虫を一万と二千匹ほど嚙み潰したような表情でフキは通信機を渡した。恐らく何を言っても言いくるめられると予測して、それならばと好感度を上げるために素直に言うことを聞いたのだろう…思春期め。

 

 

 万里くんは難なく通信機をゲットし通信を開始した。この通信は当然リリベルも聞くことができるし、フキもサクラの通信機に近付き一緒に聞いている。

 とどのつまり全員が彼らの会話を聞くことができる状態になってしまった…お願いだから万里くん、手加減してあげてね…。

 

────────────────────

 

『あー、あー…通信の仕方これで合ってる?…合ってるんだね、ありがとう。こちら神楽…楠木という名の馬鹿と、その馬鹿から指揮官の座を交代している馬鹿二号…応答しろ』

 

 

 通信機器から聞こえてくる悪魔(神楽)の声に、本部の空気は凍り付いた。それはそうだろう、まがいなりにもここのトップである私と、さらにその上に位置するジジイ両方を同時に貶める発言だ…組織に携わるもので恐怖しない奴はいない。

 

 

 指令室の一角を陣取っていた虎杖は、一見普段と変わらない様相で通信に応じた。

 

 

「初めまして神楽くん…私はキミの言うところの馬鹿二号である虎杖という者だ…」

『そうか、馬と鹿に虎の字を当てるとは滑稽だな…まあいい。俺は今からリリベルを殲滅する。殺しはしないから安心しろ…そして命令がなければ戦闘すら行えないらしいから許可しろ。以上だ』

 

 

 なぜあの男はノータイムでそんな切れ味の罵倒が言えるのだ…余談だが、周りの空気はさらに凍り付いた。

 

 

「…リリベルを殲滅?何のためにだ。そもそもそんなことができると思っているのか?だとしたらそちらの方がよっぽど滑稽だな…」

『彼らは俺の大切な人たちを殺しに来たそうだ、どこかの馬鹿二号の命令でな…理由はそれだ。そして出来るか出来ないかなど論じていない。俺がやると言っているのだからそれは決定だ』

 

 

 神楽は真面目に言い切る…それはそうだろう。こと戦闘において、ヤツにできないことなど恐らくない。

 

 

 だが虎杖──馬鹿二号にはそれは伝わらない。これもまた道理だ…このジジイは最強を知らない。

 

 

「…威勢のいい奴だ。だがまあいい、戦闘を許可しよう…リコリスのみならずリリベルの存在を知った貴様を生かしておくことはできん」

『どうも。鉛玉が飛び出す程度のおもちゃではしゃぐしか能がない彼らに、戦闘と呼べるほどの何かができるかどうかせいぜい祈っておけ』

 

 

 最後にそう言って神楽は、とうとう矛先を私に向けた。

 

 

『そして栄えある馬鹿一号こと楠木。そこにいるんだろう?』

「……なんだ」

『旧電波塔で千束とたきなが撃破した真島さんはどうなった?』

「……現在クリーナーと呼ばれる事後処理部隊が回収に向かっている」

『そのクリーナーは、戦闘ができる者たちか?』

「……なに?」

『…何度も同じことを言わせるな。真島さんの回収に向かった者たちは、戦闘を熟せる人材かと聞いている』

 

 

 嫌な予感がする…何度も味わった、自分の不手際を目前に突き付けられるときのあの感覚だ。

 

 

「…クリーナーに戦闘を修めた人物はいない」

『…なるほど、さすがだ』

「…何?」

『馬鹿の面目躍如といったところだな。やはりあんたは一号にふさわしいよ』

「…どういう、意味だ」

 

 通信機から深いため息が聞こえる。

 

 

『千束やたきなから報告を受けたはずだが、もう忘れたのか。真島さんの真骨頂はその異常発達した聴覚。音だけでモノの場所や形、距離感まで把握し戦闘にすら用いることができるほど洗練されている…だがもう一つ。ロケットランチャーが間近で爆発しても数日で動き回る程回復して見せるその肉体も十分な脅威だ』

『!』

 

 本部内全員…いや、通信機から千束やたきなたちですら息を呑む声が響く。

 

 

『非殺傷弾を何度も撃ち込まれ気を失ったのは事実だろう…しかし、彼の回復速度から考えてもすでに意識を取り戻している可能性は十分ある。ワイヤーガンで手すりに拘束しているとは聞いているが、クリーナーとやらが真島さんを回収するにはワイヤーを解く必要がある。もしも彼がその時意識を取り戻していたら、目を閉じたままでも人数からなにからすべて把握できる彼を、非戦闘員であるクリーナーが止める術はない』

 

 

 どうやら私は、また考えが至らなかったようだ。

 

 

『真島さんを回収に向かったクリーナーに連絡を取れ…もしすぐに連絡が取れなかった場合は先ほど述べた仮説がほぼ確定する。その時はもう深追いするな。音を支配する彼が逃げに徹した場合は誰も相手にならない』

「……しかし」

『しかしもかかしもあるか。…いつまでも馬鹿でいれると思うな…あんたらのハリボテの洗脳は、崩れ始めているぞ』

 

 

 

 神楽はその言葉を最後に通信を遮断した。




主人公様口が悪すぎじゃありませんこと?
不快に思われた方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。
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