好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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拙作では第四話、原作アニメ第三話です。
ややこしいなこの表記…

さて、長くなったので途中で区切りました。
誤字脱字はある程度確認していますが、他人様の目に触れてこそわかるミスもあると思います。

その際はよろしくお願いします。


これはさすがに想定外、だね

──神楽 万里が春川 フキ率いるDA所属のリコリス達と邂逅するその数時間前──

 

 

 鏡に映る自分の顔を確認し、あの日負った傷跡が綺麗に消えたことを確認しながら、井ノ上たきなは思い出す。

 

 あの日、司令部からの通信が途絶え、同僚である蛇ノ目 エリカを人質に取られた。

抹殺対象である武器商人を即座に打倒しエリカを救出するには、自分がとった行動が一番勝算が高いと今でも思っている。

 

──けれど、結果が左遷(これ)

 

 自分の行動がDA本部の、ひいてはフキたちリコリスにとっても歓迎されるものではなかったということ。

けれど後悔している暇はない。一刻も早く結果を残し、DAに戻る。

そして…

 

 とそこまで考えたところで

「たきな~。お店開けるよ~」

と声がかかった。すぐに行くと返事し、たきなはその場を後にした。

 

 

──────────────

 

「という訳でぇ~、閉店ボドゲ会スタート!!」

 

 その日の営業を終えた喫茶リコリコ。入口の札を準備中に変えた錦木 千束の高らかな宣言でその場は大いに盛り上がった。

 

 たきなはその声に流されず一人黙々とレジ締めを行い、引き留める千束や常連の声をピシャリと跳ね除け帰路に就くため更衣室へ向かう。

 

「混ざってきたらどうだ」

 更衣室の戸に手を掛けると、背後から壮年の──ミカの声が響いた。

 

「そうすればDAに戻れますか」

 突き放すようなたきなの返答に、悲しげに肩を落とすミカ。

 

 聞いた自分が馬鹿だったというように、たきなはミカへ目礼すると更衣室の戸を今度こそ開いた。

 

「ねぇ~たきな、一緒にゲームやろ?ね?」

 後を追ってきているのは分かっていたがやはり千束であった。

 

「もう帰るので」

「じゃ~明日は?」

「明日は定休日ですよ」

 なにを当たり前のことを、と思いながらたきなは話を終わらせるために更衣室の戸を閉めながら続ける。

「着替えるので」

千束を甘く見ていたのか、ただ空気が読めないのか千束は話し続ける。

「そ~。だから明日も集まってゲーム会するんだけど…」

 

 そこまで千束が話したところで「千束」と彼女を呼び止めるミカの声が扉越しに聞こえてきた。

 

「健康診断と体力測定は済ませたのか」

「あ、いや、まだ…あんな山奥まで行くのダルいしぃ」

 ミカが諭すようにライセンスの更新に必要で、期限は明日までだ。と続けた。

 

 それに対して千束は、先生から司令の楠木にうまく言ってくれと甘えている。先生の頼みなら聞いてくれるだろうから、と。

 

 その言葉が聞こえた刹那、着替えが途中なのもお構いなしにたきなは更衣室の戸を開けた。

 

「司令と会うんですか」

「おぉい!馬鹿!服ぅ!」

 千束の他の追随を許さない動体視力を遺憾なく発揮し、神速で扉が閉められた。

 

 そのままミカを睨みつける千束と、千束の視線から逃れる様に明後日のほうを向くミカを尻目に、着替えを終えたたきなが自分を連れていくよう頭を下げた。

 

 結局、根負けした千束がたきなの同行を許し、決着した。

 

──────

 

翌日、千束と共にDA本部へと向かう道中、自分が楠木司令に会って話す内容や、千束の飴玉摂取を整然と説き伏せたのち、たきなは気になっていたことを尋ねた。

 

「そういえば、最近よく来ますね」

「ん~?」

「神楽さん」

「ふぅえは!?」

 

 嘘みたいに動揺するな、この人。銃乱射されても眉一つ動かさないくせに。

そんなことを思うたきなを前に、千束の動揺は勝手に加速していく。

 

「か、か、かぐらくん!?そうね、よく来るね!?」

「常連さんとも仲良くなるの早かったですよね」

「そうだね!?かぐらくん人当たりいいし落ち着いてるし博識だし話してて面白いんじゃないかな!?」

 

 なんでこんなに早口なんだこの人。目がマンガみたいにぐるぐるしてるし、手はわちゃわちゃ動いて騒がしいし。

この反応…やはり千束さんって…

 

「千束さんって…もしかして…」

「へぇ!?なになに!?」

「神楽さんのこと嫌いなんです?」

 たきなもやはりズレていた。

 

「なんでそうなるの!?」

「いや、誰に対しても話しかけに行く千束さんが、神楽さんに対してだけはそんなことないですし」

「う!?」

「神楽さんから話しかけても、顔を真っ赤にしてすぐ話そらしますし…」

「うぐぅ!」

「嫌いなのかなと」

「ぐぉぉ!」

 

 たきなは、このところ抱いていた疑問をぶつけることができてすっきりとした面持ちであった。

後は回答を待つだけなのでそれも当然である。

 

 なにやら打ちのめされていた千束も、やっとの思いで体を起こし、普段では考えられないほど小さな声でぽつぽつと答えた。

 

「嫌いってわけじゃなくてぇ~むしろ逆っていうかぁ」

「逆?」

「子供のころからDAにいたからぁ同世代の男の子と関わったことないしぃ」

「はぁ」

「嫌いってわけじゃなくて…むしろ…恥ずかしくって顔見れないぃ…」

 

 耳まで顔を真っ赤にしながら、両の人差し指をつんつんと合わせながら窓を見ながら告げる千束。

──これが、歴代最強のリコリス…いや可愛いけども…

 

 使い物にならなくなった千束を尻目に、二人を乗せた電車は最寄りの駅に到着した。

ここからは使いの車が迎えに来ているはずだ。DA本部まで、あと少し。

 

 

★★★

 

 楠木司令に話を通した春川 フキと乙女 サクラは、数人のサードリコリスと共に万里をDA本部へと迎え入れた。

 

 

「これはこれは、ずいぶんと山奥だねぇ」

 迎えの車の中で万里は緊張感のかけらもない様子で嘯く。

返答を求めていない独り言だと理解しているが、退屈凌ぎに少しでも情報をいただこうとサクラはちょっかいを出すことにした。

 

「そっスよ~。万が一何か起きたとしても、誰かに目撃される心配はないっス」

 ジャブだとばかりに、本部内では背後気を付けた方がいいっスよ?と声音を低めて告げてみる。

 

「おお、それは怖い…忠告ありがとう」

 お礼に俺からも、と万里は続けた。

「俺は怖いものは苦手でね…脅かされようものならその者に木刀を振り抜いてしまうかもしれない…」

「そのあと俺はあまりの恐ろしさに、震える足で全速力で施設から脱走したのち、キミたちの殺人シーンを録画した動画を全世界にアップしてしまうかもしれない…」

「そうならないためにも、俺は背後を気を付けるから…キミたちは360°全方位気を付けた方がいいよ」

 お互いのためにね。と笑顔を向ける万里を見て、藪をつついて悪魔を出してしまいかけたことを理解したサクラは、肝に銘じておくと告げるにとどめた。

 

 万里とサクラのやり取りを黙って聞いていたフキは、サクラに内心余計なことをといら立ち半分、同情半分の心持ちだったが、頃合いを見てそこまでだ…と話を区切った。

 

「おい神楽、あんまりうちのモンをいじめてやるな」

「そんなつもりはなかったんだがね…ところで春川さん」

「なんだ」

「今日はやけに機嫌が悪いね。何か嫌なことでもあったのかい」

 どの口がっ!と衝動的に嚙みつきそうになった自分を鋼の意思で自制し、心当たりしかないので口を噤んだ。

 

 抹殺対象が現場に意識不明のまま倒れている不可解な事象の原因──万里と接触したことを、昨夜楠木に報告したフキに待っていたのは、膨大な量のお小言だった。

なぜすぐに連絡をよこさないから始まり、とにかく詰められた。しかもその後、万里が本日接触したがっていることを報告したため、報告の順番が悪いとお小言を追加された。

 

 しかしそれを目の前の人物に告げる気はない。これ以上情報を与えたくなかったし、さすがに八つ当たりであることを理解しているからだ。

人の気も知らずに万里の情報収集は止まらない。

 

「おお、あれが本部への入口だね」

「この先国有地…か、なるほど。さすがに大掛かりが過ぎるから、政府もキミたちの組織の存在は認知したうえで、必要悪だと黙認しているものと思っていたが、それどころか正式な認可が下りていそうだね、これは」

「門の上に監視カメラ…ここに来るのは迎えなしではおよそ不可能…てことはつまり、これは侵入者などの第三者を警戒しての監視ではなさそうだ…どちらかといえば、中に入れたものを警戒している。キミたちは本部への出入りも管理されているのかな」

「さらにその恰好…今日俺が来ることがわかっており、それをアポ取りしたのはキミたちだ…キミたちが俺の迎えに来ることは想定内…しかし、やはりその制服だね…こんな日にキミたちが任務に向かうことは考えにくいから…もしかして私服の着用も許可制かな」

 

 ──頼むからこれ以上解き明かすな!これ以上知りすぎると、司令はお前を…

 

 フキの祈りが通じたのか、万里はここで思考を言葉にすることをやめた。

しかし上機嫌なのは相変わらずで、鼻唄でも歌いそうな態度でこう締めた。

 

「さて、ここまでにしておこう」

「これ以上は後のお楽しみに取っておくとして、鬼が出るか蛇が出るか…」

 成人にも満たないような女の子に引き金を引かせる教育を施す、その本丸のトップ。

──果たしてどんな、ロクデナシかな。

 

──────────

 

 違和感はあった。

筋トレが趣味、なんて理由では説明がつかない実用的な肉体の店主。

軍人を彷彿とさせる…大きな組織の所属経験を匂わせる規律の整った従業員。

お酒が入っていても、お店が混みだした途端杖を突いている店主の代わりにお店を回す情報処理能力。

どこからどう見ても幼女なのに、にじみ出る知性が容姿以外のすべてからただの幼女ではないことを伝えてくる幼女。

 

 そして。

客が注文をしようと顔を上げたり、手を上げようとしたその刹那。

視界に収まってさえいれば、声を上げる前にその動作に気付きすぐさまオーダーを取っていた彼女。

 

 何度か店に通ううち、知らず知らず観察していて、そして気付いた。

あれは、動体視力の極致だ。

おそらく、筋肉や皮膚の緊張具合や、服のたわみ方などで判断しているのだろう。

──只人が到達しうる限界を、生まれながらに踏み越えたもの──

 

 俺と、同じだ。

 

 とはいえ

「これはさすがに想定外、だね」

 

 そういえば彼女たちの私服姿を見たことがなかった。

お店でしか会わないのだから当然ではあるが。

 

「なんで…っここに……」

「……」

 

 太陽のようないつもの笑顔は跡形もなく、ただただ驚愕に目を見開く彼女──千束と。

これまた普段の、凛とした雰囲気が吹き飛びただ訝し気にこちらを睨む彼女──たきな。

 

 二人が身にまとっているのは、これまで散々俺がフキらに指摘していた身分証明としての制服。

詳しい階級の説明はまだ受けていないが、わかる。

 

 千束が身にまとっているのは、赤。

 

───彼女は多くの少女たちよりも、階級が上ということだ。




第四話でした。

なんか不穏な空気のところで切ってしまいましたが、作者に曇らせの趣味はございません。
次回アニメでも大人気の戦闘シーン。
主人公には大暴れしてもらいましょう。
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