好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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ハーメルンよ…私は帰ってきた!(二日ぶりくらい)



本編は終了しておりますが性懲りもなく投稿してしまいました。


本編終了後
待ち合わせ


 万里の様子がおかしい。

 

 

 

 ボクらが一斉にそう思ったのは、ハワイから帰国しリコリコでの営業を再開して一週間経ったころだった。

 

 

 万里が自ら休みを希望してきたのだ。

 

 

 無論有休は労働者に保障された権利であるし、それでなくてもフィジカルチートのあいつは休むということを必要とせず、ミカやミズキに言われなければ休まない男だ…それ自体に否やはない。

 だが、妙だ。

 

 それにあいつはボクたち以外に知人と呼べる人はほとんどいないはずなのに、最近は仕事中に誰かしらとメッセージのやり取りをしているところを複数人が目撃している。

 …一度万里のスマホをこっそりハッキングしようとしたが、音もなく背後から肩を叩かれ3mほど飛び上がって驚かされてからはその隙もなくなった。

 

 それはともかく、そんなことがあったと記憶に新しい中での休暇の申請…ボクたちはすぐさま心を一つにした。

 

 

 

「んで?どうやって万里くんが誰と会うつもりなのか特定すんのよ」

「ここはやっぱり尾行かな…」

「いやムリでしょ。万里さん相手に尾行なんて、下手したら数十センチで気付かれちゃうんじゃないです?」

「…だね」

 

 ミズキの問いかけを皮切りに、万里がすでに帰宅した店内で僕たちの作戦会議は始まった。ミカはまだカウンターの中にいるが、止めることを諦めているのか遠い目で食器を拭いている…おいミカ、そのコップ五分くらい拭いてないか。

 

 

「…シンジ…私たちの娘は、好きな男を尾行しないかと提案する子に育ったぞ…」

「ハイそこうるさい!」

 

 ミカ()の嘆きを千束()が一喝する。

 話が逸れてしまいかねないので、ボクは軌道修正に入った。

 

「…人の尾行が気付かれるなら、ドローンを飛ばして上から視るしかない」

「…けどクルミ、あんたのドローンとはいえ万里くんはそれすら気付いちゃうんじゃない?」

「もちろんその可能性はある。だが当然人よりは気付かれにくいし、望遠カメラを取り付ければかなりの距離を取って撮影できる。…それでも気付かれたら…」

「…気付かれたら…?」

 

 ミカを除く周りの奴らがごくりと唾を呑む。ボクは満を持して答えた。

 

 

「『遊んでいたら偶然』で押し通す!」

「「「おおぅ……」」」

 

 千束たちが揃って顔を引き攣らせているが、実際これは有効な手だとボクは考えている。

 万里は身内にとんでもなく甘い…それも特にボクには。ボクには!!

 

 そんなヤツが偶然だと言われれば、案外すんなりと受け入れそうな気がする。

 

 

 そのような理由をつらつらと並べると、ボクには特に甘いというくだりで一人残らず般若になったものの渋々納得した。

 

「まぁ実際万里くんが怒るとは思えないし…ほかに方法もないしその手で行きますか!」

「ですね」

「しくじんじゃないわよ~クルミ~」

「誰に言ってる酔っ払い」

 

 

 かくしてボクたち女性陣は、『万里と密会してるやつを特定しよう大作戦』の決行と相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

──当日

 

 

「よし…万里が家を出たぞ。店とは反対方向に向かって歩いてる…これは駅の方向だな」

「「「……」」」

「今のところドローンには気付いた様子はない。…後方50mの距離を保っているから本来なら気付かれる心配なんていらないんだが…」

 

 ドローンから届く映像に映る万里は、あいつ自身という最高級の素材を存分に活かしたこれ以上ないシンプルなシャツとデニムパンツを身に纏っている。

 どこにでもいそうなコーディネートでも道行く人が皆振り返るのは、やはり()()()()()()なのだろう。

 

「……てかクルミ、あんたさ…」

「…ん?どうした千束」

「……なんで万里くんの家知ってんの?」

「………」

 

 …千束の目、こんなに真っ黒だったか?

 

「……」

「「「クルミ?」」」

「………あ、ドローンの操作しないと…」

 

 無理だ。たきなとミズキも同じ目をしている…これ以上見ていると夢に出てくる。ボクはホラーが苦手なんだ。

 

 

「お、おいほら! 万里のやつ女子高生の集団に声掛けられてるぞ!」

「なにぃ!」

「どこの小娘です?」

「たきなあんた…年齢的には同じでしょ。それはそうとどこの小娘よ!」

「ミズキが言うと言葉通りの意味だね~」

「はっ倒すわよ千束?」

「ごめんちゃい」

 

 よし…何とかこの包囲網から脱した…難易度ルナティック。

 

「あ! この娘お店によく来る子だよ!いっつも万里くんに話しかけてる!」

「ええ。月、水、土日両日が基本ですね。さらに学校の友人を毎度連れてくるせいで万里さんのファンがネズミ算的に増えていくその元締めです」

「元締めってあんた…仮にもお客さんよ…」

「それとこれとは話が別です」

 

 ふむ…やっぱり一番タチが悪いのはたきなだな。

 そう呟いたら全員から『クルミが言うな』と叱られた…解せん。

 

 納得いかない気持ちを抱えていると、万里は件の女子高生たちと写真を撮り始めた。

 

 

 

 

 

「写真…万里さんと写真…私もまだ集合写真しか撮ってないのに…」

「あー腕組んでるーいけないんだー」

「今度からこやつらの注文する団子に味付けするのやめようかしら」

 

 怖ぇよその目やめろ…というかだな。

 

 

「…お前らいまさら何言ってんだ?万里の写真なんかネットで調べりゃいくらでも出てくるぞ」

「「「!?」」」

 

 知らなかったのかこいつら。

 

「『喫茶店 イケメン』とか『錦糸町 イケメン』とか適当に調べてみろよ。働いてる時の万里とかその辺散歩してる時の万里とか山ほどあるぞ」

 

 最後まで言い終える前にスマホを取り出して猛烈なスピードでエゴサを始めた…自分のことじゃないからエゴサではないか…パブサ?

 

 

「うわマジじゃん! これリコリコで給仕してる時の万里くんだ!」

「公園のベンチで読書してる万里さんの写真もありました!」

「これは…!イッヌと戯れる万里くん…!…メスじゃねぇよな?」

 

 各々お気に入りの写真を見つけたらしく、それぞれ周りを気にしながらそっと自分のスマホに保存したようだ…気持ちはわかるから指摘はしないでおいてやる。

 

 

 

 

 三人はワイワイと検索を続けるが、ボクは以前一通り検索を終えているため万里の監視に戻る…いまだドローンに気付いた様子はない。

 

──万里はいったいどこに向かって誰に会うつもりなんだ?

 

 そんなことを考えていると、先ほどまで姦しかった背後から一切の音が消えていることに気付く。

 

「どうしたお前ら?」

 

 振り返ると、たきなのスマホに千束とミズキも集まって一つの画面を見ているようだ。

 

「…クルミ?」

「どうしたたきな」

「………これ、なんです?」

 

 たきながボクにスマホの画面を見せてくる。千束とミズキもボクの反応を窺っているようだ。

 

 いやな予感を感じてはいるものの、名指しをされた上に返事までした状態で今更どうしようもない…観念してたきなのスマホ画面をのぞき込んだ。

 

「!!!」

 

 そこに映っていたのは、ボクの身長に合わせるために膝立ちになり、ボクの右頬とソイツの左頬をくっつけるように近付きピースを作る我が喫茶店が誇るMr.パーフェクト…すなわちボクと万里のツーショット写真だった。

 

「……」

「「「クルミ?」」」

「…」

「「「クルミ?」」」

 

 万里が写真撮影に応じている隣をたまたま通ったボクにも目を付けた女性客の一人が、超絶イケメンと美少女ロリのツーショットを撮りたいだなんだと寝言を言い出した。

 無礼な物言いに憤懣やるかたない勢いだったボクも、万里の『クルミちゃんと写真を撮ってみたいな』という純度100%の笑顔と言葉には拒絶の言葉は出なかった…惚れた弱みだ。

 

 …因みにこの写真を、万里に気付かれないように女性客に頼んで送ってもらい、ボクのプライベート用PCの壁紙に設定してあることは墓場まで持っていくつもりだ。

 

 だがまさかその写真がSNSに公開されているとは…。つい最近のことなのでチェックし忘れていた。

 

「「「クルミ?」」」

「あー…それはその…そう!万里のやつ今度皆とそれぞれツーショットで写真撮りたいって言ってたような!」

「「「!!!」」」

 

 

 

 何とか絞り出した言葉で、千束たちは大きく目を見開きすぐさまそれを輝かせた…すまん万里…ボクのためにみんなと写真を撮ってくれ。

 

────────────────────

 

 

──これは、クルミちゃんのドローンかな。

 

 自宅を出て数分、一定の間隔と一定の高度を保って飛行する気配を感じ取った俺は、正確すぎるその軌道から機械だと断定。そんなことができそうで尚且つやりそうな人物を俺は一人しか知らない。

 

 今日のリコリコは通常営業で、俺が休みを取っているから他の皆は通常勤務。最近の繁盛具合から考えてもクルミちゃんが抜けられるようなタイミングはない…おそらく店全体がクルミちゃんのこの行動を黙認もしくは加担している。

 

 恐らく俺が珍しく休暇申請したものだから理由が気になったのだろう…あの子の好奇心は俺と似通っているからよくわかる。

 特についてこられても困るような用事でもないので、日ごろの恩返しの一環として、彼女の尾行を許し好奇心を満たしてあげよう。

 

 

 そんなことを考えながら歩いていると、待ち合わせ場所が見えてきた。

 

 

 

──『彼』が待ち合わせ時間に間に合わせるようなタイプには見えなかったんだが、念のため五分前行動をしておいて正解だったな。

 

 

 指定された公園のベンチに足を向けると、あんな場所から落ちたというのに半年余りで目立つような怪我を完治させているその男に声を掛けた。

 

 

 

 恋愛漫画ならだーれだとかやるんだろうけど…男同士でやるモノではないし、そもそも彼の耳を欺くのはこの距離では不可能か。

 

 現に彼は既に俺の到着に気が付いているらしく、記憶に新しいあのニヤリとした特徴的な笑みをこちらに向けている。

 

 

 

 

「やあ。待たせたかな」

 

 

 

 

 

 

 

「いいや。俺も今来たところだぜ…大将」




筆者の妄想100%なので、皆様の意見やリクエストなど参考にしたいのですが募集の仕方すらわからん…
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