好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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拙作第五話です。

前書きにて謝罪を。
戦闘シーンまで進めませんでした…
長ぇとお思いのことでしょう。
なんと作者も思っています。

次回は戦闘シーンを…というかアニメ第三話終わらせます。


ロクデナシの顔を拝みに来たんですよ

 想定外の遭遇から数分。

すでに驚愕から立ち直った男──万里は拾い集めた情報から考察を再開した。

 

 なるほど、これで大体の違和感は拭えるな。

ミカさんのあの肉体…現在に至るまで男性を見かけていないことと年齢を考えると少女たちを指導、教育する立場か。

軍人を彷彿とさせる?それはそうだ。彼女たちは正しく訓練を受ける立場だった。

ミズキさんはOG…いや、彼女に訓練を受けたもの特有の姿勢は感じられない。別の立場…オペレーターや先ほど俺を迎えに来た車の運転手のようなものだろうか。

 

 問題はクルミちゃんか…

彼女のその容姿とは裏腹に滲み出る知性は、錦木さんや井上さんどころかミカさんと同じ目線に立っている。

それに彼女が渋々配膳を手伝っているのを観たことがあるが、一般人と比べても明らかに非力だった。

 

 明らかに戦闘員ではない…しかしこれ以上の情報を得るのは現時点では不可能…ここまでだな。

 

 あっさりと思考を手放した万里は、現状の快復に意識を向けることにした。

というのも、行きつけの喫茶店の看板娘、錦木 千束とここまで自分を連れてきてくれた春川 フキは大変折り合いが悪いらしい。

 

 万里の姿を見て驚愕した千束は、同じ車から降りてきたフキの姿を認めるやいなや田舎のヤンキーのような難癖をつけて絡み始めた。

 

「オイこらフキこらてめなんで神楽くんと一緒に車から降りてきてんだアァン!」

 

 千束はどうやら『万里がここにいること』よりも『フキと万里が一緒にいること』のほうが気になるようだった。

当然フキもこんな絡みをされて大人しくしているほど丸くできていない。

 

「なんだコラ千束ォ!DAから先生引き抜いて出てった癖に文句あんのかコラァ!」

「今先生関係ないでしょ答えなさいよフキィ!」

 

 なんか一周回ってこの二人絶対仲いいでしょ…などと万里が考えていると、右後ろの服が引っ張られていることを認識した。

 

「どうしたの、井ノ上さん」

「あの、神楽さん。なんでここに」

「あー、話せば長いんだけどねー」

 

 ここで言葉を切り、言外に今言う気はないよ、と視線で訴えてもたきなはつまんだ服を離すことなくしっかりと目を見据えてきた。

そうだった、この子ちょっと真面目過ぎて空気読めないところあるんだよなぁ…

 

 知り合って数週間、話した回数は数える程度なれどその程度の観察は終えている。

ここは何か言わないと引き下がらないな…でも全部説明するのは時間が足りない。

そこまで考えた万里は、どうせ後でいくらでも説明できるし…と言葉少なく理由を答えた。

 

「端的に言うと、この子達脅してここに連れてくるよう誘導したんだよね」

 

 今の今まで口論していたフキだが、万里のこの言葉で内心頭を抱えた。

なんで寄りにもよってそんなややこしい言い方するんだこいつ!

 

 案の定千束もたきなも驚きを通り越してきょとんとしている。

 

 決して長くはない付き合いだがフキの彼に対する印象はたった今決定した。

 美しい容姿に昨晩見せた比類なき運動能力。

 そして仮説を組み立てる考察力とそれを補強する観察眼。

 ここまで揃っていてなおこいつ、ちょっとアホだ!!!

 

 

★★★

 

「初めましてと言っておこうか神楽 万里」

 内心の憤りを隠そうともせず、司令は神楽に話しかけた。

 

「私は楠木。この治安維持組織『DirectAttack』通称DAの司令を務めている」

「これは楠木女史。お会いできて光栄です。ご存じかとは思いますが、俺は神楽 万里と申します」

 

 私──春川 フキはいつ神楽が司令のたんまり設置された地雷を踏み抜くか戦々恐々としていた。

体力測定をしなければならない千束と別れ、司令に用があるというたきなとサクラを引き連れて司令に声を掛けたら、この空気。

 

「すまないが、私は忙しくてね。あまり時間がない。用件を聞こうか」

 

 私たちリコリスが司令に同じ目をされたら縮み上がってしまうような絶対零度の視線を真正面から受け、神楽は小揺るぎもしなかった。

それどころかいつもの微笑を携え、何でもないことのように言った。

 

「あ、いえ。これといって用事はないです。興味があってここに来てみたかっただけで」

 

「なに?」

 

 司令の目がさらに鋭さを増し、神楽を睨みつけた。

 

「どういうことだ。私の記憶違いでなければ、貴様からフキに『キミたちの組織の長に会わせろ』との要求があったと聞いたが」

「ええ、その通りです」

「では用件は」

「いえ、ですからないです。というよりも会うのが用でしたので、もう済みました」

 

 苛立ちが限界を超えそうになっている人間の顔を初めて見たかもしれない。

司令の表情を見た私は、現実逃避のようにそんな思考に耽った。

 

「ふざけているのか、貴様は」

「いいえ、滅相もない。ただ会いたいから会いたいと言った。そして会うことができた、だから終わり。それだけの話です」

「なるほど。では会ってみての感想は?」

 

 瞬間、神楽の顔が待ってましたと言わんばかりの笑顔を形作った。

これが言いたくてここに来たのだ、と言わんばかりに。

 

「ええ。犯罪者をこの世から消したことで秩序を保った気でいる、そんな組織。本来であれば蝶よ花よと育てられ、好きな人や好きなスイーツのことだけを考えていれば幸せな年代。そんな未来を奪い殺人を命じて治安維持組織などと胸を張るロクデナシの顔を拝みに来たんですよ」

「ずいぶんと険しい顔ですよ、楠木女史」

「なにか嫌なことでもあったんですか?」

 

 こいつの心臓は、超合金か何かだ間違いない、絶対にそうだそうに違いない!

楠木司令の顔を恐る恐る見上げると、いろんな感情が混ざり合い、それらすべてが限界を超えてから一周して、なんかもう無になっていた。

 

「険しい顔、か…それは済まないな」

「いいえ、お気になさらず。俺はあくまで客人ですが、赴いた先での責任者が睨みつけていようとも、そんなことで気分を害するほどガキではありませんので」

「………」

 

 もういい!頼む!しゃべるな!胃がぁ!!

なぜか周囲の重力が強まった気さえする、そんな空気の重さだった。

 

 そしてそんな空気を作るのがこの男なら、壊すのもこの男だった。

 

「さて、俺の用事は済んだことだし、井ノ上さん」

「…ぇ、あ、はい?」

「楠木女史に用があるんでしょ、俺の用事はすぐに終わったし余った時間で今済ませちゃえば?」

「!」

 

 こいつ…これが狙いか?いや、たきなと鉢合わせたこともたきなが司令に用があると言い始めたこともこいつには予想外のイレギュラー。

ということはつまり、ここまではたきなと会って、たきなが司令への用を口にした瞬間に組み立てた道筋!

たきなは空気が読めず、真面目が過ぎる。この場に部外者である神楽が居ようと、千載一遇のこのチャンスを逃さず司令に用件を伝えるだろう。

そして神楽は堂々と盗み聞きし、情報を集めていく。

なんて奴だ……

 

 ここまで何度抱いたかわからない感想を改めて神楽に抱くことになる。

 

───

 

 案の定、たきなは司令に思いの丈をぶちまけた。

曰く、自分は銃取引の新情報となる写真を獲得し、提出した。

曰く、銃取引の日、通信障害が発生し司令部と連絡が取れなくなったため、人質の救助のためやむなく発砲したが、結果的に銃取引の時間がずれており自身が射殺したことにより武器が流失したわけではない。

 この戦果だけでは、DAに復帰することはできないのか…と。

 

 たきなは一息に言い切ると、司令の返答を待った。

 

 たきなの要望が通ることはない。

DAが所有するAIコンピュータ…通称『ラジアータ』

 

 情報が伏せられているが、作戦当時このラジアータにサイバー攻撃を仕掛け、システムをクラックしたものがいる。

当然DAとしてはそのような事実は伏せなければならず、よってたきなの主張は通らない。どれだけ正当性を叫んでも…

 その証拠にすでに後任としてサクラが着任している。

 

 つまり司令の返答は決まっている。

 

 私が気になるのはむしろ…

この場にいる唯一の部外者。前提知識をいくつも必要とするたきなの報告では、得られる情報などたかが知れているはずである。

 

──この男が相手でなければ──

 

 神楽は、否応なく人の目を惹く笑顔を輝かせていた。

何度か見たあの表情。パズルをしている子供が、ぴったりとハマるピースを見つけた時のような無邪気な笑顔。

 

「…っ!」

 なんか思いつきやがったなあいつ。

それでも私はあいつを止めようとは不思議と思わなかった。

あいつも自分の考えをこの場で発表する気はないようで、そのまま静観している。

 

 そうこうしている間に、司令はやはりたきなをDA本部に戻すとは一度も言っていない、とたきなを突き放した。

 

 たきなは顔を俯かせ、数舜佇んだかと思うと、たまらずといった様相でどこかへ走り出してしまった。

 

「…おい」

「ん?なんだい、春川さん」

「たきな、追わないのか」

「追うって…俺が?」

「…」

「馬鹿言っちゃいけない。訪問先の施設で勝手に動き回るほど馬鹿ではないつもりだし、そもそも向かった場所がわからない。ついでにわかったとして行き方すら知らないよ、俺は」

「そうかよ」

 

 嘘だ。

いや、行き方云々はそうだが、そもそも神楽にはたきなを止める意思がない。

もし止める気ならば、こいつが追い付けないはずがないのだ。

 

 私も何を言っているんだ。こいつがもし追いかけた場合、必然的に私も駆り出される。大人しくしていてもらった方がいいに決まっているのに。

 

「ああでも…」

 私の、自分でもよくわからないもやもやを払おうと自身を納得させようと考えをまとめていると、神楽が声を発した。

 

「俺も井ノ上さんとは知り合いだからさ。知り合いの女の子があからさまに落ち込んでいるのに無視するのも気が引ける」

「春川さんの言う通り、俺も追いかけることにするよ」

「そうすると、春川さんにもついてきてもらわなきゃなのかな、よろしくね、春川さん」

「さて、そうと決まれば行こうか」

「ああでも向かった場所がわからないな…よしこうしよう」

「春川さん。まずは錦木さんの場所まで案内してよ。彼女体力測定に来たって言ってたから、決められた場所にいるでしょ」

 

 一息に言い切り、私を連れだすことを勝手に決めやがったこいつ!

というかまたこいつの筋書き通りかよ!思い通りに事が運んだ瞬間矢継ぎ早に話すのやめろトラウマんなるわ!!

 

「というわけで、楠木女史。要求を一つ思いつきました」

「言ってみろ」

「今から井ノ上さん連れ戻しますので」

「それが叶ったら、誰でも結構です」

「俺と模擬戦、やってください」

 

 『遠路はるばるやってきたので、日本の治安を維持してきたというその実力見せてください』

と、悪意のかけらもない表情で悪魔の提案をしてきた。

 

 それもやめろ!トラウマが増える!!




第五話でした。
みんな大好きフキさんです。当然作者も大好きです。
しかし、アニメを見ながら書いておりますが、この話までのたきなさん動きなさ過ぎて難産です。

そろそろ覚醒させていきましょう。
フラグも植えていく所存。
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