好奇心は猫をも殺す   作:やまぎ

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お久しぶりです。

一朗君とのお話を書き上げた直後、PCが天に召されました。
萎えました。

萎えましたのでいったん別の話を投下です。

そして投稿していない間にお気に入り登録が100件以上増えておりました、ありがたい限りです。

このような駄文にお付き合いいただきまして本当にありがとうございます。


馬鹿二号、襲来(こちらから出向く)

 

 

 

 

「直接会うのは初めてになるな」

 

 

 

 誰一人として口を挟めそうにない冷えた司令室に、抑揚のない声が響き渡る。

 

 

 

「改めて自己紹介をしておこう。私は虎杖という者だ。君は一般人故、機密事項に値する所属を名乗ることはできないが…以前それはそれはお世話になった君影草(リリベル)の司令官とでも理解してくれたまえ」

 

 

 

 言葉を切ると同時に目の前の机に両肘をつき、組んだ両手の上に顎を添え『私こそがトップだ』と言わんばかりの傲慢な態度。それでいて誰にも否定させないほどの権力を実際に有しているのだから手に負えない。

 

 実際この男がひとたび命じれば、私たちリコリスの命など吹けば飛ぶような塵でしかない…もちろん抵抗しますけどね、拳で。

 

 

 

「ご丁寧にどうも」

 

 

 

 けれどこの人にそんなことは関係ない。DAに所属しているわけでも軍門に下った訳でもないのだから。

 

 普段と何一つ変わらず…それどころか至極面倒だという態度を隠すこともせずに彼は答えた。

 

 

 

「俺の名前は神楽 万里…見知り置く必要はないよ。猿山の大将気取りに興味はないんだ」

 

 

 

 そう言って彼…万里さんは、コンビニでもらった割り箸の空き袋を見るよりも冷めた瞳で虎杖司令を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 万里さんを含めた喫茶リコリコの従業員全員がDA本部に召集されたのは数日前のことだ。

 お店に顔を出したフキさんが、以前万里さんとひと悶着あった虎杖司令…彼曰く馬鹿二号が、万里さんと直接会って話したいと要請していると話を持ってきた。

 

 

 

「要請、ねぇ…」

 

「…万里の言いたいことも最もだ。これは要請とは名ばかりの命令だ…すまん」

 

「フキが謝ることじゃないよ…しかし話すことなんか何もないと思うんだけどね」

 

「…延空木で、お前はリリベルを完膚なきまでにボコボコにしたろ。どうせそのことについてネチネチ嫌味でも言いてぇんだろ」

 

「どうやらフキもあの馬鹿二号のことが気に食わないようで何よりだ…俺たちはやっぱり気が合うね」

 

「…フン」

 

 万里さんの言葉に顔を赤らめながら鼻を鳴らすフキさん…否定しないあたりそれを狙って好感度を稼ぎに来ましたね?

 

 

「それで、万里くんと距離が近くて断られづらいフキがリコリコに来たってわけね~。…フキぃ、あんたファーストの癖にパシリとか…うぷぷ」

 

「ブッ飛ばすぞ能天気スイーツファーストォ!!」

 

「やってみろや年中思春期ツンデレヘタレェ!!」

 

 

「おお…ボクですらドン引きの低レベルな争いだ…」

 

「ていうか何気に千束の悪口のキレ上がってない? あれ万里くんの影響よね多分」

 

「いやいやミズキさん…俺は悪口なんて言わないですよ?」

 

「「「………………」」」

 

「あれ?たきなやクルミちゃんまで、どうして目を逸らすんだい?」

 

 ……黙秘権は憲法上認められた権利であります。

 

 

「?…まあいいや。さてフキ」

 

 

 よし…万里さんの関心がフキさんへと戻った。声を掛けられた彼女は千束と繰り広げていた小競り合いを止めて万里さんに向き直った。

 

「その要請とやら、受けるよ」

 

「…そうか」

 

「ただしそれには条件がある。上に伝えてくれ」

 

「条件?」

 

「ああ。喫茶リコリコの従業員全員を同行させること」

 

「万里さん、それは…」

 

 思わず口を挟んでしまった。店長は元教官、ミズキさんは元内部の人間だからその話は通らないこともないだろうけれど。

 

 

「オイ万里…まさかお前、ボクを狙ってる組織の本拠地に連れて行くなんてこと…」

 

「心配ないよ。俺がいるんだから」

 

「でも…」

 

「心配ない。クルミちゃんを狙ってくるのが千人だろうが二千人だろうが、キミには砂埃一つ付けないよ。あんみつでも食べながら俺の後ろでふんぞり返っていればいいさ」

 

「……ぁぅ」

 

 

 万里さんの微笑をモロに直撃したクルミは、おおよそ言語とは言えない音を発したのちにピクリとも動かなくなった…気持ちはわかる。万里さんの笑顔を直視したら、悪臭漂わせるドブ川も見る見るうちに透き通る真水に浄水されると言われている(言われていない)

 

 

「でも万里くん? そもそも私たちが同行する意味って何なの?」

 

 万里さんの笑顔を直視しないよう愛用の眼鏡から黒塗りのサングラスに素早く入れ替えたミズキさんが万里さんに尋ねる。

 

「意味ですか…大したことではないんですけど、改めて宣言しておこうと思いまして」

 

 

 彼はミズキさんに向き直りながら妖しく嗤う。

 

 

「『今俺と一緒に居る人たちにくだらないちょっかいを掛けたら、ぶん殴りますよ』ってね」

 

「……ぇぁぁ」

 

 

 万里さんの美貌が形作る所謂ワルい顔が、ミズキさんの思考を彼方へ消し飛ばした音がした。いくらサングラスをしていても、太陽を直接至近距離で見るとこうなるのは至極当然です。

 

「さて、たきな」

 

「はい」

 

 万里さんが私に向き直る。たゆまぬ訓練(こっそりと撮影した万里さんの写真をベット真上の天井に張り付けるなど)を施した私はちょっとやそっとじゃ理性を手放さない…せいぜい足に力が入らず震えているくらいなので余裕だ。

 

「どうせ出掛けるんだ…皆の分のお弁当を作って迎えの車の中でちょっとした行楽と洒落こもう。手伝ってくれるかな?」

 

「はい!」

 

 新妻だ…新妻でしかない。古来よりキッチンで二人並んで料理をこさえることそれ即ち結婚と言い伝えられている(伝えられていない)

 

 

 

 

 

「…ああ、もしもし。突然済まない。…ありがとう、あなたに一つ頼みたいことがあってね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことがあって、出頭命令とは思えないほど和やかな道中を過ごした私たちは、これ以上ないほど和気あいあいとしながらDA本部の門をくぐったのである。

 

 

──せっかく気分よくここまで来れたというのに、台無しですね。

 

 

 馬鹿二号…虎杖司令は、自分が蔑ろにされた経験が著しく乏しい様で万里さんの虚無の態度にわかりやすく苛立ちを見せた…そしてそれを見た万里さんはさらに興味をなくすという悪循環だ。

 

 私たちといえば、千束はそもそもこんなことで気圧されるような生ぬるい性格をしていない。両手を頭の後ろに組んで暇そうにしているし、ミズキさんはお酒こそ飲んでいないものの興味なさそうに爪をいじっている。店長はDA本部が万里さんに対しての悪手を打ち続けている現状を嘆いて目頭を揉んでいるし、クルミに至ってはDAの機材を見て鼻で嗤った後は、本当に持参してきたあんみつに舌鼓を打っている。

 

 虎杖司令の威嚇など誰一人として通用していなかった…本部にいた頃の私には効果的だっただろうけれど。

 

 

「…さて神楽くん。君と話がしたくてここに呼び出したのは私だ。改めてになるが、延空木ではリリベルがお世話になったね」

 

「気にすることはないさ。偶然出会った小動物にじゃれつかれただけだ。少し構ってやったからといって恩に着せるつもりはない」

 

 

 

「貴様ぁ!」

 

 万里さんの言葉に被せる様に、部屋の両隅に控えていたリリベルが口々に罵倒の声を上げた。当然彼はそんなことを露ほども気にしない上に、つつくべき穴を見つけたとばかりにその笑みを深くしている。

 

「そら、虎杖司令。あんたのところの子たちがキャンキャンと鳴いているじゃないか。お腹がすいているんだろうし、そろそろ解散にしようか」

 

 言うが早いか彼はそのまま踵を返し本当に部屋を出ていこうとする。その背中に私たちもついていこうと動き出すその刹那、いくらか苛立ちの色が濃い声が届く。

 

「…待て。話は終わっていない」

 

「話がしたいというのなら、話し合いの場に黙って話を聞くこともできない人間を連れてくるなよ。どうしてもというのならまずは黙らせてみたらどうだ」

 

「…………静まれ」

 

 虎杖司令の号令により、リリベルたちは口を開くことを慎んだ…表情にはありありと不満を浮かべてはいるけれど。

 

「…これで満足かな」

 

「全くもって満足ではない、こんなことは言われずともやれ。ボス猿を気取りたいなら自分の猿山くらい統治して見せろ」

 

 

 万里さんの口撃は留まるところを知らなかった。そして意外なことに万里さんに悪し様に言われることにおいて他の追随を許さない楠木司令が、笑いがこみ上げるのを耐えるような仕草をしながら、それでもこぼれてしまう笑みを隠す様に天井を見上げている。

 自分以外の、それも目の上のたん瘤である虎杖司令がいい様に言われている様子が可笑しくてたまらないのだろう…本部にいたときは気付かなかったが、楠木司令もかなり大人げない人のようだ。

 

 何はともあれ部屋を出ていく寸前だった万里さんも再度話し合いのテーブルに座りなおし、先ほどまで虎杖司令がとっていた『私こそがトップだ』の体勢を取る…当然挑発だろう。

 

 

 

 

 

 

「やっと静かになったことだし、可及的速やかに用件を伺おうか。ああ、済まない…さすがの俺も猿語は分からないから、わかりやすく簡潔に頼むよ」

 

 

 対面してまだ一時間と経っていないけれど、すでにこの場の格付けは覆しようがないように思えた。




たきなさん視点の地の文は何故か遊んでしまう。
キャラ崩壊もいい所ですが、そもそもヨシさん生きてるしもういいよね、突き抜けても。
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