今年も拙作をよろしくお願いいたします。
また、更新していない間も定期的にご覧いただいている方や新たにお読みいただいた皆様にお礼申し上げます。
リリベルをこっぴどく撃退してから数日、私たちは元の平穏な暮らしへと戻ることができた。
…が、時を置かずまた別の問題が表面化することになった。
「千束、何か欲しいものはあるかな」
「え、いや~…特には」
「そうか…そういえば隣町に新しいパンケーキ屋がオープンしていてね、一目で千束が気に入りそうだと思ったものだ」
「あ、えっと」
「それにしても…千束はこのお店の制服がよく似合っているだが私としては和装だけでなく洋装も見てみたいと思うんだよし今度『服飾』の才能を持ったアランチルドレンをこの店に派遣するからその時に千束のコーディネートを」
「あ~も~!いい加減にして
万里さん曰く、『三下から親バカへの劇的ビフォーアフター』を遂げた吉松が、ことあるごとに店に顔を出し千束の気を惹くためにあれやこれやと貢ごうとする事件が多発するようになったのだ。
大体なんだこの中年オヤジは…以前千束の心臓手術の際に病室に見舞いに訪れ正式に謝罪。千束に許されてから日に日に気持ち悪…いやお節介になってきているではないか。
だが何よりも問題なのは、自他ともに認める千束の現保護者であり、この店の大黒柱である店長が…
「シンジ」
「ヨシさんだなんてそんな…またお父さんと呼んで……ミカか、どうした?」
「…お父さんと呼ばれるべきなのは、私だ…」
ものの見事に同時にネジが外れたからだ。店長と吉松は旧知の仲だったと聞くし、根本的に波長が合うのだろうか…だとしても二人一緒に壊れることはないだろうと思う。
──全く、いくら大切な人のことだからって、周りのことが目に入らなくなるようでは本末転倒じゃないですか*1──
「ちょいちょい!せんせいも!今営業中だから!」
「せんせいではなくお父さんと…」
「いい加減にしろやこのオッサンどもぉ!この私がお酒を一滴も呑まずに店内走り回ってる時に何やっとんじゃゴラァ!」
「仕事中に酒を飲まんのは当たり前だ馬鹿ミズキ」
「どさくさに紛れて喧嘩売ってんのかチビリス!」
なぜかミズキとクルミがべつのけんかに発展しかけている。いつものことといえばそうなのだが、これ以上店内を混乱させるわけにはいかない。
こんな時こそいついかなる時も頼れる私の*2ヒーローに…
「しかしあんたも大変だね、あんな親バカに仕えるのは俺だったら御免被るよ」
「…慣れてしまえばどうということもありません。それに、以前のあの人に比べて幾分か行動が読みやすく意図も汲み取りやすくなりました」
「へえ?」
「あの人に仕えたことを後悔したことはありませんが…『恐ろしい』と思うことがなかったかと言われると嘘になります。ですが最近は…」
「確かに…あんな馬鹿な男を恐ろしく思う方が馬鹿げている、か…それはそうと、自己紹介がまだだったね。俺は神楽万里という、好きに呼んでくれ」
「…ご丁寧にどうも…私は姫蒲と申します。フルネームは…今はまだ秘密ということで…」
「おやおや…好奇心の塊を自認する俺に秘密とは、俄然暴きたくなってきたね」
「フフ…お手柔らかに」
…そう言えばあの女、千束の心臓を壊しておきながらのうのうと生きているのはいくらご都合主義満載の駄作であっても許されることではないですねええ許されません読者様に許しを請う意味でも不穏分子は抹消しておかなければ
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「どったんスかフキ先輩?早く入りましょーよ」
「…帰るぞ…」
「帰る?なんでっスか?」
「…パパ活おじさんと酒乱とリスと女たらしと殺人鬼みてぇなやつが具材の闇鍋の蓋を開けたくねぇからだよ…今の空間千束だけがまともだったぞ…嘘だろ…」
「???」
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「久しぶりだね、一朗」
返答はない。当たり前だ、死人は二度と話さない。まして俺が語り掛けたのは彼が眠る墓なのだから。
だがそんなことはどうでもいい、墓参りなんてのは結局生者の自己満足だ…俺は俺が満足するためにここに来た。
「三年振りくらいかな…許してくれ、
まったく、あのクソジジイときたら俺がどれだけこの日に
「そうそう、最近仕事を始めてね…スカウトがあったんだ。俺の力が必要なんだとさ」
ファースト、だなんて番号で呼ばれるたびに業腹だがね。
「この世界に溢れかえっている悪意を持って事件を起こすような馬鹿共を粛清して回っている…いわゆる正義の味方だ」
…なんてな。俺は善人には程遠い。見たことも聞いたこともない人々のために戦うなど毛ほどの興味もない。思うことはただ一つ。
「お前が眠るこの街は…お前のご両親が暮らすこの街だけは、何の憂いもなく静かな夜を過ごせるように」
今の俺を見たら、お前はどう思う?
力を振りかざす俺を りつけるか?
結果的に人を護る俺を褒めてくれるか?
それとも、間違っていると自覚しながら歩く俺に、道を示してくれるだろうか?
「…そろそろ行くよ。これからまた仕事が入っていてね」
一朗の墓に背を向けながら、写真を取り出し次のターゲットの顔を確認する。
男が一人に女が四人…杖を突いた男性と、なぜか酒瓶を抱いて眠る女性。後はまだまだ子供が、クソジジイ曰く黒髪の少女と色素が薄い髪に弾けるような笑顔が特徴的な少女は戦闘力に優れるらしい。だからこそ俺が派遣されるんだろうが…
──
「万里!!!」
「!?」
歩き出した俺の背中に、泣き出しそうな叫び声が聞こえ咄嗟に振り返る。当然そこには誰もおらず、あるのは親友の眠る墓だけ。
「…気のせいか」
ああ、気のせいだ。たとえ先ほどの声が記憶にある一朗の声に瓜二つだとしても。
死人は二度と話さない。
後半の物は知人のとあるお祝いに欲しいものを聞いたらリクエストされた世界線のお話です。
いたく気に入っていただけたようですしせっかく書いたのでお尻にくっつけました。
恐らく続きはないですが。