彼にも彼女にも、刻まれる新しい1ページを
“3月〇日”
『明日から新生活が始まる。
と言っても何も変わらない。
強いて言うのであれば環境が戻った。
あれから数年。彼女は元気にしているだろうか。』
さあ明日から平凡な生活がまた始まる。
もう寝ようか。
おやすみ、僕。
いつか会えるといいな。
“澁谷かのん”
~表参道~
あの日、あの瞬間、忘れない。
私は二度と忘れない。
そして心に決めた。二度と歌わない、と。
かのん「チッ、あーー歌えたら苦労しないっつうの…」
あのトラウマ。
頭にこびりつくほど鮮明に覚えているあのトラウマ。
なにこれ?フラッシュバック?
イライラが止まらない。
「おねえちゃーん!?おねえちゃーーん!?」
うるさい妹の声。
いったいなんだというんだ。
ありあ「あ!もー!いるんだったら返事くらいしてよ!」
かのん「あー…」
ありあ「あーって何その返事!」
かのん「で、一体何の用?」
ありあ「いや今日入学式でしょ!?遅刻するよ!?」
かのん「分かってまーす」
なんてできたうるさい妹なのだろう。
言われなくても行くに決まっているだろうに。
かのん「入学式、か…」
“ねぇ、お母さん。――くんは?…え?”
“知らない!あんな奴!知らない!!何も言わないでいなくなるなんて!そんなの…!”
“――くんの、馬鹿…!”
またもや思い出されるフラッシュバック
もう何年前の事だろう
あんな思い出…いや思い出にもならない。
かのん「…うざ」
嫌な気分だ。
通したくもない“制服”に身を包み
私は階段を下りる。
食欲も湧かなければ元気だって出ない。
かのん「行ってきまーす…」
かのん母「おはようでしょ?朝ご飯は?」
かのん「いらない」
朝のテンプレ。
これからの始まりに期待も持てない平凡なテンプレート。
かのん「あ、マンマル…行ってくるね。」
かのん母「あ、かのん!」
かのん「…何」
かのん母「“制服”、似合ってるわよ!」
かのん「余計なお世話!!」
そうして私は自前のヘッドホンを付けた。
周りの、私の、嫌いな“音”を遠ざけるために。
かのん「よし…」
しかしそれが仇だった。
「うわ…!」
かのん「ぷぎゃっ!?」
かのん(ぶ、ぶつかった!?全く聞こえなかった…というか誰?隣の人?)
「…」
かのん「いったぁ…す、すみません…」
「…いえ、こちらこそ」
その人は無愛想な感じで去ってしまった。
まさか家出てすぐに人がいるなんて。
お隣さんは大分前に引っ越ししていたはずだから恐らく新しい人が越してきたんだろう。
かのん「…なんか嫌な感じ。」
ふと下を見るとどうやら落とし物だった。
学生証。私と同じ高校一年生。
私の高校から割と近い高校だった。
かのん「ふーん…」
名前は、と見た時、私に変な悪寒が過った。
かのん「え…?」
だってそこには私にとっての一番嫌いな“あいつ”の名前が書かれていたのだから。
かのん「鏡谷、凛音…」
“4月〇日”
まさかだった。
突然の再会で驚きが隠せなかった。
あっちは気付いていないかもしれない。
僕から話をするべきなのだろうけど、今さら会って話をしようだなんて
虫が良すぎる。
辞めよう。もう彼女とはこれっきりで終わらせよう。
ただぶつかってしまっただけ。
P.S.
学生証がない…再発行か…
また次回
きまぐれに