「正直、牝馬はメンタルが繊細だしお前はもう無理だと思ったよ」
しみじみと新発田が鞍上で呟くと、マヴは不機嫌そうに唸った。
「ごめんって。でも未勝利戦は一発で突破して、デイリー杯三歳ステークスも勝利。この桜花賞に駒を進められたんだ。大丈夫さ、牡馬と混じって重賞を勝ったお前なら勝てる。」
『あのさ、まさとさんさあ。はなしながいんだけど、はやくはしらせなさい!』
「あ、やっぱりいつも通りだぁ……」
前脚を強く何度も踏みつけるマヴ。
これは機嫌がよろしくないときだ、刺激しないようにしよう、と新発田が気を遣ってゆっくりゲートインする。
全22頭のゲート入りが完了し、首を撫でてマヴを宥める新発田。
この馬は自分のレースをすることが大事。
そのためには気分よく走らせなければならない。
「さあ、行くぞ……!」
『まってなさい、シンボリルドルフぅ……!』
________________________________________________
スイートソフィア、ファイアーダンサーら人気馬が前目につけるのを横目に見て、マヴはいいスタートを切ったが最後方へポジショニングする。
マヴの脚質は追い込み。
その抜群の末脚で今まで勝利をもぎとってきた。
勝負は最終直線で、それまでになんとか……
『まさとさん、なんでうしろなの!?いちばんがいいー!』
このお転婆我が儘娘を卸さなくては……!
________________________________________________
「マヴの折り合い、どうでしょうか新発田政人。懸命に宥めているぞ。最終コーナー回って最後の直線。さあ先頭は早くもダイアナソロンだ。ダイアナソロンが最内から切り込んで先頭だ。」
「少し掛かってたけど……お前ならいける!」
『ちょっと、ようやくなの!?まちくたびれたんだけど!』
新発田が鞭を一発、振るうとまるでバネのようにマヴが伸びる。
『ちょっと、あんたたちどきなさい!』
大外から豪快に牝馬たちを撫で切る……いや呑み込む。
「うわあすごい脚だマヴ!まとめて呑み込んで先頭ダイアナソロンを……交わした~!!マヴ、マヴがもう先頭だ。桜花賞でさえも通過点なのかマヴ。二馬身三馬身と差を広げていくぞ」
「なんと、テイタニヤの娘マヴが桜の女王に君臨しました!」
「お前、ほんとすごいな……」
『ふん、ようやくみんなわたしのすごさがわかったようね!』
二冠牝馬テイタニヤの娘が勝ったということで、万雷の拍手が鳴り響く阪神競馬場。
「あっ、ちなみにシンボリルドルフは来週の皐月賞に出るらしいぞ」
『シンボリルドルフっていまいった!?なに、あいつもレースでるの!?ちょっとまさとさん!』
「うお、一気に暴れだした……お前ほんと負けん気が強いというか……。あっちは無敗の三冠を狙うみたいだから、俺らは史上初の三冠牝馬を狙おう」
『よくわかんないけど、いちばんになればいいのね!』
__________________________________________
「なんと勝ったのはトウカイローマン!桜の女王マヴは10着!」
「どうしたんだよマヴぅ……」
『あしがいたいんだもの、しかたないじゃない!』
この時代の追い込み馬って今と違って技術が発展してないから大変ですよね
感想お待ちしています