マイルのシンボリルドルフ、ニホンピロウイナー。
ミスターシービーと同期であり、皐月賞を大敗した後は裏街道と呼ばれた短距離マイル路線で走った。
昨年のマイルCS勝ち馬でこと1600メートル以下では無敵の皇帝だった。
今日までは。
「読売マイラーズカップ、勝ったのは二冠牝馬マヴ!三冠の皇帝を倒す前にマイルの皇帝を倒しました!やはり桜花賞馬、怖かった!」
『前よりははしりやすいわね』
「やっぱり直線短い中山は避けておいたほうがいいな」
追い込み脚質のマヴにとって、最終直線の距離はバカにできない。
有馬記念は消化不良だったため、マヴのストレス発散としてこの読売マイラーズカップを初戦に選んだのだ。
『マイルのシンボリルドルフをたおしたから、つぎは本馬をたおしてやるわ。まさとさん、帰るわよ』
「まだ帰らないで、口取りあるから!ちょ、ちょっとー!?」
やはりマイペースなマヴであった。
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マヴは放牧を挟んで宝塚記念へ出走。
天皇賞春の覇者シンボリルドルフも、もちろん出走することとなった。
『あら、皇帝サマじゃない』
『小娘……いや、マヴだったか。』
『あんた今から調教?私は帰るところよ』
『見ればわかる。で、何の用だ。』
『ふん……芝コース、ちょっと剥がれててダートになってるところがあるから足をとられないように気を付けなさいよ』
『……なんだお前、俺のことを心配してるのか』
『ちっっっがうわよ!明日、今度こそ万全の状態のあんたに挑みたいの!別に心配してるわけじゃないの!』
『それを親切心というと思うんだが。でもまあ気を付けておく』
『……むぅ』
マヴの言った通り、芝コースの一部が剥がれてダートがむき出しになりあやうくルドルフは転びそうになったがなんとか持ち直した。
これによりルドルフのオーナーが、阪神競馬場の杜撰な芝管理に激怒することがあったが、ルドルフ自身に怪我も何もなかったので予定通り宝塚記念へ出走。
「よかったな、マヴ。ルドルフはなにも異常はなかっただってよ」
『ヒトが忠告してたのに転んだなんてカッコ悪いもの。面目保ててよかったわね』
そして、宝塚記念が来た。
牡馬と互角にやりあった二冠牝馬マヴと無敗の三冠馬にして五冠馬シンボリルドルフ。
その二強対決と目されたが……馬券人気はシンボリルドルフのほうがずっと上。
強さは牝馬<牡馬の意識が強かったせいであろうか。
『むかつくぅ……』
『すまないな、一番人気で』
『大してファン人気はないくせに……』
ファン人気では母親も二冠牝馬で父親が天馬トウショウボーイ、勝つときも派手な追い込みをするマヴが圧勝である。
「いつも通りとはいえ無茶苦茶耳絞ってるし…」
「ルドルフは楽しそうだ。マヴをただの牝馬じゃなくて対等に戦う馬だと認識してるかもな」
気性が荒いと言われてるルドルフに容赦なく威嚇してるマヴの上に乗った新発田は震えた。
噂のライオンな皇帝がマヴを怖がらせるんじゃないかと。
『ぜったい、かつんだから、こんどこそ』
「皆に目にもの言わしてやろう!」
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「宝塚記念スタートしました。横に広がったきれいなスタートです。ウインザーノット先頭に……少しヨレました。スローな展開です。外からミスタールマンでありますがこれが二番手。三番手にシンボリルドルフ。最後方につきましたいつも通りの追い込みかマヴ。」
「……今日は大人しいな」
『もう思春期は終わったんだから!』
いつもは掛かったり頭を上下に動かすくらい落ち着きのないマヴが大人しくなってる。
新発田は感動した。
具体的には涙が出そうになった。
「とうとう先生たちの苦労が報われたか……!」
『なんかしつれいなこと考えてるきがするな~』
むむっ、としたがマヴは我慢することにした。
今日はいい子の日なので。
「2コーナーを回って、グローバルダイナが二番手に上がります。シンボリルドルフやはり三番手変わらないか。メジロトーマスが一馬身離れて四番手。マヴはぽつんと最後方、折り合いはどうでしょうか」
で、できてる……!!??
マヴの気性を知ってる観客たちは少しざわついた。
マヴにしては大人しい……!?
『なーんか噂になってるきがする……』
むむっ、としたがマヴはここも堪えた。
落ち着いて最後方からの競馬をして、道中のロスなく余り脚なく全力を出せば勝てる。
シンボリルドルフは強い。
安定して強い。
その強さの秘訣には、賢さも関係してるのだろう。
だけど、そのゴール板を理解してる馬だからこそ、きっと大外からやって来るマヴの策にハマる……!
「先頭スナークアローに変わりましたが、今800を通過。さあ早くも一気に仕掛けて参りましたスズカコバン。マヴも外に持ち出して、4コーナー回って残り400。先頭はウインザーノットかステートジャガーか。いやいやシンボリルドルフやはり上がってきた!」
ルドルフがいつも通り好位抜け出しで先頭に躍り出る。
反対にかなり厳しい位置を走るマヴ。
ロスなく内で競馬をしたルドルフと、落ち着いて道中走ってたものの外に持ち出して後方一気を仕掛けるマヴ。
まさか、まさかあの位置から届くはずがない……そうほとんどの人が思っていた。
『……ふぅ、』
ビュンッ。
擬音をつけるならこうだろうか。
ひとっ飛びで大きなストライドで駆けるマヴ。
阪神競馬場がざわつく。
「まさかその位置から届くのか届かせるつもりなのかマヴと新発田政人!シンボリルドルフ粘っている!三馬身のリード先頭!だが、あっという間に並んだ、いや並ばず交わしたー!!!」
『お前、いつの間に……!』
『お先に、皇帝サマ』
涼やかに、麗しく、軽快に駆けていく。
大外から直線一気。
鮮やかな追い込み勝ち、これぞ二冠牝馬マヴ。
牝馬は牡馬に勝てないなど誰が言ったか!
ゴール板を駆け抜けた直後、新発田は力強いガッツポーズをした。
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「和多オーナー、残念でしたね宝塚記念。でも次は予定していた通りキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスですよね」
「……いや、天皇賞秋に出る」
「え?でもそれだとシリウスシンボリ一頭だけ……」
「マヴ……牝馬に負けて、海外に行けるか!やるとしても来年だ!」
「そ、そうですか……」
『マヴ……ジャパンカップでは、俺に先着した牝馬。有馬記念でも二着で、今日は一着……。面白い牝馬だ……次はないぞ』
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