遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜 作:SOD
謎のオリ主がデュエルします。
「喰らえ……スカイスクレイパー・シュート!!」
「我がアンティーク・ギア・ゴーレムがアアアアアアーーッッッ!?(脳天に残骸直撃)」
遊戯王GXのアニメで、このシーンを見たのは一度や二度じゃない。何度も見返した。やっぱりGXの第一話、入学試験でクロノスをワンキルし、後に恩返しデュエルで再現されることになるこのシーンは、感動と共に、実家のような安心感があった。ましてこれが、現実として目の前で起こったとなれば、元社畜童貞アラサーオタクの転生者が、元の世界に未練も何も無くなるのは無理からぬ事だろう。
「偽遊! オレ、デュエル・アカデミアの実技担当最高責任者に勝っちゃったぜー!」
「……ああ」
俺にしてみれば、目の前で無垢な少年の笑顔を浮かべる主人公ーー遊城十代が勝つのは当然の現象だ。けど、お前にとっては本当にどうなるか分からないデュエルなんだよな。嬉しいのも、当然だ。
「次はお前の番だぜ! 楽しいデュエルを見せてくれよ!」
「ああ」
なんて返したら良いのかはよく分からないけど、年齢不相応に若返っただけのオッサンには、
「あの子、遊城十代の友達みたいね。もしかして彼も同じくらいの実力があるのかしら?」
「ソレはこれから証明されることになるだろう。どうやらクロノスは、あの少年ともデュエルをするつもりでいるみたいだぞ。引っ込む気配がない」
ギャラリー席では、ヒロインの天上院明日香と、カイザー亮が十代のキリング・ショットの熱狂が冷めやらないとばかりに、次の受験生の登場を待っている。
「まさか……あの受験生までクロノス教諭が直々にデュエルすると言うのか……!?」
また別のギャラリー席では、中等部からエリート枠として一年に進級した万丈目準が、忌々しいとでも言いたげに眉間にシワを寄せていた。
「………………
デュエルフィールドに上がったスーツを着た少年がクロノスに礼をする。長く伸びて逆立った髪が、牙を向く獣のようだったが、それでも元社畜の転生者らしく、しっかりとした礼だ。
「シニョール偽遊。アナタもシニョール十代と同じく、デュエル・アカデミアの受験という重大な日にも関わらず遅刻するという不心得な学生ナノーネ。
ワタクシ、クロノス・デ・メディチは、デュエル・アカデミアの実技担当最高責任者として、ドロップアウトボーイに二度も負けることなどあってはなりませンーノ!
覚悟するノーネ!」
「…………覚悟など不要です」
「なんですーと?」
偽遊は、名前の通りの虚ろで黒い瞳でクロノスを見据えて言い放つ。
「負け組の、コンプレックスがブクブクと肥え太ってきた醜いブタが、こんな御馳走の山みたいなところに放り込まれたんだから」
「何を言っているノーネ?」
「クロノス教諭。貴方のその自信…………俺のデッキが喰い散らかす」
偽遊の口角が上がり、獰猛な獣のような笑みを浮かべた。
(な、何なノーネ……この男の笑みは!? 虐げられたサラリーマンが人生を投げ捨てる覚悟で上司に刃物を向けているかのような、目標の無い暴力的な笑みナノーネ)
「さあ、始めましょうか。もう……お預けを待ち切れない」
「グッ……でゅ、デュエル!!」
「デュエル……!」
クロノス LP4000
偽遊 LP4000
「ワタクシのターン、ドロー!」
先攻を取ったのはクロノス。この獣に先手を取らせたくないという本能的な警鐘が、我先にとクロノスに先攻を取らせた。
「魔法カード、融合発動!! アンティーク・ギア・ゴーレムを三体融合! 現れるノーネ、アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレム!!!!」
アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレム ATK4400
クロノスが悲鳴のような宣言と共に喚び出したのは、幻のレアカードと謳われたアンティーク・ギア・ゴーレムを融合素材とする、クロノスの真の切り札だ。
「アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレムだと!?」
「アンティーク・ギア・ゴーレムよりも更に攻撃力の高い融合モンスターですって!?」
「クロノス教諭の……アレが本物の切り札……そうか、クロノス教諭、本当に完膚なきまでにあの受験生を叩き潰すおつもりなんだ。
いや、当然か。エリートに二度の敗北など、世界が滅んでもあり得ない!!」
カイザー亮、明日香、万丈目が驚愕の声を上げたのをよそに、別の所から見ていた十代が心底嬉しそうに声を上げた。
「すっげえええー!!!! クロノス先生、あんな切り札も持ってたのか! くぅ〜! もう一回デュエルしたいぜ!!」
「受験生相手に、恥も外聞もなく。これがワタクシの全身全霊ナノーネ!! カードを一枚伏せて、ターンエンドしますーノ」
「ふふふ……終わった。今度こそ、あっちの受験生の方は終わりだ……!!」
クロノスの絶叫のターンエンドに、偽遊は一言、ターンを貰いますと言ってドローした。
「……メインフェイズ『幻爪の王 ガゼル』を召喚。召喚成功時、デッキから『大翼のバフォメット』を手札に加えます。」
「ガゼル……バフォメット!? そのモンスター達は、伝説のデュエルキング、シニョール武藤の使ったモンスター達!!」
「……速攻魔法、合成獣融合を発動。場と手札のガゼルとバフォメットを融合。『幻獣王キマイラ』を融合召喚」
幻獣王キマイラ ATK2100
「今度はキマイラまでいるの!?」
「ガゼルの効果発動。
融合召喚に使用して墓地へ送られた場合、デッキから『幻想魔族』のモンスターを手札に加える」
「幻想魔族だと? そんな種族聞いたことがないぞ!?」
「ガゼルにバフォメット。そしてキマイラ。更には全く聞いたことのない種族のモンスター。あの受験生……何者なんだ?」
「墓地の合成獣融合の効果発動。このカードを手札に戻す。
そのまま発動。
幻獣王キマイラ ミラーソードナイト コーンフィールド コアトル で融合。
融合召喚ーーレベル8 幻想魔獣キマイラ」
幻想魔獣キマイラ ATK3100
(デュエルキング武藤遊戯のモンスター、キマイラを更に進化させたモンスター。凄まじい威圧感を感じるノーネ)
「しかしカカシ!! キマイラの攻撃力は3100ポイント。我がアンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレムの攻撃力は4400ポイント。攻撃力の数値は絶対であり、例え伝説のモンスターであろうとも、アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレムの足元にも及ばないーノ」
(ワタクシのリバースカードはサイクロン。装備魔法で攻撃力を上げても元に戻せる。同じ轍は踏みませんノーネ)
「バトルフェイズに入ります。
キマイラでアルティメット・ゴーレムに攻撃」
「何を考えているの、あの子!? キマイラの方が攻撃力が低いのに」
「フハハハハ! ヤケになったか……!!」
幻想魔獣キマイラ ATK3100 VS アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレム 4400
キマイラがゴーレムに爪を突き立てる。だが、鋼鉄の装甲は侵入を拒み、追撃の二頭の牙も物ともせずに受け止め、鉄の拳での反撃を繰り出した。
『グオオオ……ッッ!!』
ゴーレムの拳に打ち倒されたキマイラの腕の刃が投げ出され、偽遊の頬を切り裂いた。
偽遊 LP2700
「攻撃力がどちらが高いか分からないとーは、どうやらアナタは算数のお勉強が必要なようですノーネ?」
「…………」
『グルルルル…………』
勝ち誇ったクロノスだったが、倒れたキマイラが起き上がったことで、目を見開いて驚愕した。
「何故キマイラがフィールドに残っているんデスーノ!?
まさか、戦闘破壊耐性……!」
「いいえ、違いますよ。幻想魔獣キマイラは、戦闘を行う場合にお互いのモンスターが破壊されない効果を持っています」
「なんと、自分だけでなく相手モンスターも破壊されないんデスーノ? それではいつまでもアンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレムを倒すことは出来ませんノーネ!」
「ええ。おかげでいつまでも獲物を弄べる」
「いくら戦闘で破壊されずとも、攻撃力で劣っていては、なぶり殺しにあうのはそちらのモンスターでスーノ」
「それはどうかな」
そう言いながら、偽遊がゴーレムを指さした。クロノスもその方向に振り向いた。
すると、ボロボロと装甲が崩れ落ちていくアンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレムの悲惨な姿が映った。
「マンマ・ミーア!? 何故アルティメット・ゴーレムがボロボロにぃ!?」
「獲物はまず弱らせてから狩り取る。キマイラの効果は、キマイラと戦闘を行ったダメージステップ終了時、モンスターの攻撃力を0にして、効果を無効にする、狩る側の能力!」
アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレム ATK0
「ししし、しかし、もうキマイラの攻撃は終了してーー!」
「幻想魔獣キマイラは、融合素材にしたモンスターの数だけ、モンスターに攻撃出来る。そしてキマイラの攻撃はあと二回残している」
「oh!! ディーオ!!!!
何故ナーノ!? 何故このワタクシが二度もドロップアウトボーイニイイイイイイイイイイーーー!!!?」
「喰い散らかせ!! キマイラ!!」
「ノオオオオオオオオオオーーー!!!!」
幻想魔獣キマイラ ATK3100✕2 VS アンティーク・ギア・アルティメット・ゴーレム ATK0
クロノス LP−2200
「悪いな、クロノス教諭。
俺、改めて改心前のアンタは嫌いなんだ。原作をなぞらなきゃ困る訳でもなし。早めに変わって欲しいもんだ」
見切り発車のため、次が出るかは分かりません