遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜 作:SOD
兎(未出演)
あざといイメージ。
蹴りが強い
『群れのボスに手を出すと、ウサギに蹴り殺されますよ!』
いつか出てくるかもしれない。
下の偽遊さんの男泣き事件が起きて一夜。現在朝の5時。
当たり前のように寝れていなかった俺は、しゃーことなしにデッキを構築していた。
最近デュエルせずにデッキばっかり作っている気がする。
「おはよーございまーす…………」
「ん……?」
何か小声が聞こえた気がする。
「………………………………遊乃か」
「よく分かったね偽遊さん。もしかして遊乃ちゃんに会いたかったのかな〜?」
こんな時間に敢えて気配を消して侵入しながら““おはようございます““なんて言う惚けた人類、お前以外にいると思うと吐き気がする。
「何の用だ。こんな朝っぱらから」
「やは〜ちょっとお見舞いにね」
そう言いながら遊乃が取り出してきたのは、少し厚めの封筒だ。
「何だ? 借金でも返しに来たか?」
コイツが編入してからまだそんなに経過していないが、負けが込んだと言っては泣きついてきて膨らんだ借金。今いくらになっていることやら。
「あはは。まっさか〜遊乃ちゃんが払える金をギャンブルに注ぎ込まないわけないじゃんか〜☆」
「臓器って高く売れるらしいな」
「あはは……いやだな〜偽遊さん。笑顔が怖いよ(涙目)」
「いつだって一番怖いのは人間なんだぜ?」
馬鹿な寝言を冗談1割本気9割で言いながら、取り敢えず封筒の中身を開けて見る。
入っていたのは、招待状?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「『満身創痍の貴方に猶予を与えてあげる。
一月後の満月の夜、再び相見えましょう。
誇り高きヴァンパイア一族の末裔、カミューラより』
なぁにこれえ」
「実は昨夜、私がカミューラを倒そうと思って城に行ったんだけどさ……」
「おい待てコラ。何を人の獲物横取りしようとしてんだテメェ」
「城の玄関……? 的な所にスタイリュッシュに飾ってあったんだよ。
多分偽遊さん宛でしょ」
何やら呆れたような顔をしつつうーんと伸びをする遊乃。無い胸が微動だにせずまな板だ。
「アイツ、すっげぇ中途半端だよね。何もかも。
キャラ定まって無いって感じ。そう思わない? 偽遊さん」
「キャラがブレるのも、属性過多なのも。軸が無いって意味じゃ一緒だと思うがな」
「何? 自虐?」
皮肉交じりに言ってやったつもりだが、遊乃は冷ややかな目線に嘲笑のような笑みで返してきた。
「なんのこっちゃ?」
「あーはいはい。どうせ誤魔化すんだよね。偽遊さんは。
……でも、今回ばっかりは流石に私も苛ついてるんだよね」
「何だ、生理か? 飯食って寝ろ」
「飯は食うし寝るさ。眠いし。
でもまずは、私はアンタに説教したい!」
「…………俺に?
何だ説教って。される覚えは無いぞ。この前勝手に俺の部屋の冷凍庫に置いていったダッツの大箱は全部食ったけど、代わりにホームランバー詰めて容れて置いたしイーブンだろ」
「…………………………そ、それについては後で詳しく聞かせてもらうね。偽遊さん?(泣)」
「墓穴を掘った気がしないでもない」
「…………コホン。ったく……。
んで、まず聞きたいんだけど。アンタ何でカミューラを庇ったの?」
「何」
「ーー何のこっちゃとか言ったらマジでキレるからな。私は今本気だぞ。
荒塩と荒い紙ヤスリも持参してる。勿論舌噛み切ったりしないようにする物もある」
「怖えよ、拷問でもする気かよ!?」
「似たようなもんだろ。私は今からアンタが隠してることを暴く。
…………思った以上に何も違わないねコレ……」
「お前、散々お金を貸して頂いている債権者にそんなことして良いと思ってんのかコラ」
「仕方ないよ。債権だけ持ってても死んだら切り取り様が無いし。まずは生きてて貰わないと。
だから、誤魔化さずに吐け」
「別に不思議なこと無いだろ。カミューラが殺されたらアニメみたく鮫島が元に戻らないかもしれないんだぞ?」
「それは鮫島校長にも一定の情があるって言ってるの?」
「マジで微塵もねえな」
「じゃあ何で。何でそんなバカ怪我負ってまでカミューラを助けたんだよ。
もし、美人に目が眩んだとかだったら分かる。
けど、アンタのロリコンも変態も、アンタが周囲に見せてる数少ない『本当』だ。
「……………………」
「都合が悪くなると
ねえ、アンタ一体何がしたいの? 何が本当なの?」
「…………………………………………」
「はあ……もう、いーー」
「………………命」
「え? 何、偽遊さん」
「
「……? 何の話?」
「………………『意味なんて無い』って話。ふふ……好きな言葉だ。ゲームだけどな。何かストンと腑に落ちた」
「……………………難しいよ。もっと簡単にならない?」
「なるぞ。要するに……『どうせ最後はみんないなくなる』」
「
そんな人間が、愛されるほど人を愛するもんか!!」
「愛……? 知らない言葉ですねぇ〜」
「だったら何でこのカードがここにあるのさ!」
遊乃がベッドの横に置いてあったシンクロモンスターを手に取る。遊乃がレイに頼まれて貸したカード。
『サーマル・ジェネクス』 『ワンショット・キャノン』 『ジュラック・メテオ』
「レイちゃんのことが心配だったから、このカードを受け取って大人しくしてることにしたんだろ!?
冷静に考えれば絶対に分かったはずだ! このシンクロモンスターは絶対にレイちゃんには召喚出来ないって!
私がどういうつもりでこのシンクロモンスターを渡したのかって!
普段のアンタなら絶対に分かった!! それがわからないくらい焦ったんだろ!?
私が呼び寄せるって言った『イリアステル』にレイちゃんが狙われるかもしれないって!
心臓にライフ連動の針なんて刺す連中だもんなぁ!?
何するか分かったもんじゃない!
自分が戦えば勝てるって思ってるはずだ! でもそれじゃあ一人しか相手出来ないから、万が一にも本腰入れられたら対応出来ない!
だからアンタは何が何でもレイちゃんに、狂徒に、【キマイラ教】に! シンクロ召喚を禁じたんじゃないのか!!」
「…………………………………………だったら何だ」
「何だじゃねえよ! そんな……っ、そんなに皆が大切なら……何で自分の命はそんな蔑ろなんだよ!?
私だって!! 皆だって!! 偽遊さんが死んだら嫌なのに!!!!」
遊乃の目からボロボロと涙が溢れる。いつものような涙ではない。聞くものの心を締め付けるような悲鳴の涙。
「アンタに分かるかよぉ!? 目の前で……目の前で好きな男が殺されかけてたんだぞ!
私だけじゃない。いつもそばにいた狂徒の子たちだって居たんだ! 知ってたはずだろ!?」
「……………………あー……まあ、アイツにも可哀想な所とかあるじゃん?」
「ふざけんなぁ!! カミューラが何だってんだよ!! 偽遊さんだって言ってたじゃん!
カミューラの復讐は『復讐』じゃない!! ただ主語がデカいだけの八つ当たりだ!!
そんなのに同情するタマかよ!」
「分かった。分かったから少し落ち着け。そろそろ頭に響く……」
「あっ……ゴメン」
そう言うと、遊乃はいつの間にか掴んでいた入院服の裾から手を離した。
「やれやれ……病人になんてことするんだか」
「…………ごめんなさい」
「まあ、お前の言う事は分かるぞ。
目の前で仲間を殺した奴を殺すとか、そいつの大切な者に危害を加えるとかなら『復讐』とも言える。
それこそ子供が殺された瞬間に首だけになってでもソイツをブチ殺したら文句無しの復讐だ。
でもアイツのソレは違う。
ほとぼりが冷めた後に何もかも忘れ去った『人類』に牙を向けたそれは、復讐じゃなくて八つ当たり。或いは侵略だ」
「そうだよ……ヴァンパイア一族を殺した人は、もう誰一人生き残って無いんだもん。
私だって『復讐は無意味だからやめましょう』なんて戯言言う気はないよ。
少なくとも私は『復讐』をそういう物だと思ってきたし、そういうふうにして来たし、これからだってそうしていくつもりだよ……」
「イリアステルねぇ……まあ、奴らの行動で迷惑被った奴をゼロにするのは不可能だろうしな。
大を救う為に切り捨てられた小に、『恨むな』なんてのは寝言なんてレヴェルじゃない。
お前があの遊星もどき達にどんな被害を被ったのかは知らんし、聞く気もない。
でも、戦争するってんならお前も命蔑ろにしてるのと変わらんだろ」
「綺麗事言うわけじゃないけど、偽遊さんと一緒にされんのは心底心外だよ。
私は偽遊さんみたいに『自分から死にに行く』わけじゃないから。
生きるために、生き残るために、アイツらと戦うの」
「……………………」
「怒鳴って少しだけ頭が冷えたよ。
でもあの時はほんっっっとうにトサカに来たんだからねっ!!」
「そうだな。生放送は間違いなくNice boatになったことだろう」
ボカッ!!
遊乃の本気の蹴りが偽遊の太ももに直撃した。
「〜〜っっ!?」
「痛いかっ! 私達の心の痛みはそんなもんじゃねえから!!」
「………………蹴りの振動で骨のヒビが広がった感じがした」
「………………それは、ごめん。まだ頭に血が昇ってたみたい。
まあ、もしそれで歩けなくなったら責任取って介護してあげるよ。
会いたくなったら何時でもラブコールして来てね、偽遊さん」
「ラブコールはレイたんで間に合ってるわ」
「…………なんだ。やっぱりちゃんと愛を知ってるじゃん」
「実は掛かってきたことねえけどな」
「……………………………………お、おう……」
「………………」
「………………じゃあ、私もう行くね。
またお昼にでも会いに来るよ。昨日はちょっとそれどころじゃ無かったけど、今日はぜったい」
「別に来なくても良いぞ」
「レイちゃんの今日の一日を動画で撮ってきてあげよう」
「待ってるぜ、遊乃!
うグッ………!???」
グッ! と力強いサムズアップをして更に胸骨に激痛が入り泣きを見る偽遊。
「バカなんだから。
じゃ、またねパパ〜死んじゃだめだよ〜」
笑顔でひらひらと手を振って、遊乃は保健室を出ていく。
「…………………………やべ、骨痛すぎてもう横になれない。
枕でも腰においと…………けない……だと!? 腰が回せねえ…………くっ! このままじゃチューチュートレインも踊れねえ!!」
この後、鮎川先生が来るまで直角90度の姿勢を余儀なくされる偽遊なのだった。
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「………………偽遊さん……」
保健室から出て女子寮へ戻っていく道すがら、遊乃は偽遊が死にかけた時の事がフラッシュバックしていた。
『ーーーー!!』
「偽遊さん…………サイバー・オーガ・2に殺される時………………希望に満ちた目で笑ってた………………まるで…………死ぬのが嬉しいことみたいに…………」
そして、倒れた後の偽遊の表情もまた……満ち満ちたものだった。
「…………………………ぜってぇ死なせねえぞあの野郎。
『二兎追う者は二兎とも取れ』だ。だって遊乃ちゃんは可愛いんだから!!」
「………………遊乃?」
「おはよう恵。調子はどう?」
オベリスクブルー女子寮の扉が見えた頃、遊乃の(自称)最愛の嫁ことレイン恵がしゃがんで森の方を眺めていた。
「…………大丈夫。私の身体は、温かいから」
「うん。そうだよね! 今日も可愛い恵が元気で私も嬉しいよっ」
レイン恵の楽しそうな様子に、遊乃はさっきまでの怒りが和らいで笑顔になっていく。
「…………『結婚』したもんね」
「うん。そうだよ。
だから恵。楽しいこと、いっぱいして。そして……『夕ご飯』には帰ってきてね」
「…………うん。約束、した」
「ふふふ。それじゃあこのまえ夕ご飯に遅刻した罰にスリスリさせろぉ〜!」
「きゃっ!? ゆ、遊乃。くすぐったいよ……」
「遅刻した悪い子はだれじゃ〜! こちょこちょ〜」
「くふっ……! く、くしゅっ……っ。ぷっ、あはははは!」
「うりうり〜!」
「あははは! くすぐったいよー遊乃〜」
「旦那さんを心配させる良くない奥さんはこちょこちょ〜」
「もー! わた、私は……『ママ』と違ってこちょこちょ苦手なのぃ〜! あはははは!」
「………………ほんとに、よく笑うようになってくれて嬉しいよ。
「……? 遊乃……どうしたの?」
「ん〜? 恵は世界一可愛いよ〜!」
「ほんとう? 『ママ』と同じくらい可愛い?」
「もっちろん! 親子揃って一番だー!
こちょこちょ〜」
「あ、こちょこちょだめぇ〜! もー!」
「アハハハハハハ!!」
無口無表情キャラが脇弱いの良いよね。