遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜 作:SOD
あまり関係のない話だが、コアラの親父さんは薩摩示現流の使い手として、世界中に名を轟かせた伝説のデュエリスト……というウワサがあるらしい酒屋の親父だ。頑固おやじのようなイメージがあるが、いきなりやって来た十代の話に耳を傾けて折衷案を出したり、負けたら強制送還と言いながら、結局は認めた相手と息子を尊重する柔軟さと優しさも併せ持つ遊戯王界では極めて極めて珍しい『良い大人』だ。多分両手の指で足りるくらいしかいない。親父さんにクロノス先生に遊星達のオカン代わりのオバちゃんに遊矢のオカンに柚子の親父に、ブルーエンジェルの兄ちゃん。ラッシュのアラフォーロリおかん。続編はヒロインに股間が反応せんかったから知らん。
「はじめまして、前田くんのお父さん」
「ん?」
深夜の時間帯、本来なら十代と翔と隼人の三人でデッキ構築に精を出していた時間だが、失礼してちょっと厠へ行くタイミングを見計らって、俺は親父さんに声を掛けた。
因みに盗聴器とかじゃない。レッド寮の壁が政治家の信頼並みに薄い上に酔っ払いのデカい声。このマジックコンボのおかげで見てから動くの余裕でした。
「夜分遅くに失礼します。私は虚路居偽遊と申します。
この度はご子息の隼人さんに依頼され、コーチを務めることになりましたので、遠路はるばるお見えになったお父様にご挨拶をしに伺いました」
「ほう。若いのに随分と礼儀正しい男じゃわい。見たところ、隼人よりも後輩なんじゃなかね?」
「ご慧眼の通りです。私は今年入学した一年生で、校長室で先んじて挨拶に伺った遊城十代の同級生です。
お父様としては年下の後輩に教えを請うご子息に思うところがあるかとお察し致しますが、恐縮ながら『年下に教えを請うほどに本気で取り組んでいる』と見ていただければ幸いです」
「うむ。その制服はラーイエローのものじゃね。年下であろうともデュエルの腕はまた別。この年まで生きとれば、おいにも幾らか覚えがある。
じゃけんど、隼人のヤツは年齢だけの問題ではなか。オシリスレッドという、常に危機感を持って過ごすべき落第ギリギリの立場でありながら、更に留年しておる。あやつにデュエリストとしての才能は……
厳しい顔をしながら語っている。けど、前世でこどおじだった俺にだって分かるくらいに、その瞳は、我が子を愛している父親の瞳だ。原作で息子を負かしながらも身を引いたのは、偏に成長と、友情を感じ取って安心したがゆえだろう。
だが俺は、その本筋に介入して、愛する息子の心の成長を妨害しているとも言える。
「言葉にし辛い現実ではありますが、正しくその通りです。
私が指導していなければ、隼人さんはデス・コアラを攻撃表示で召喚してしまうようなデュエリストでした」
「そうか。やはりロクに勉強しておらんかったか。
ならばなおの事、デュエリストに見切りを付けさせて、家業を継がせるしかなか」
今時の若者には、きっと理解出来ない価値観だと思うが、何もこれはこの親父さんがただ自分の考えを押し通したくて言っている訳じゃないことは頑として伝えておきたい。
事実として、原作で前田隼人はペガサスの会社
何より、そもそも3年間デュエル・アカデミアに在学中の学費だって払っているだろう。
留年が決まった時に息子の踏ん切りを付けるためだけにオーストラリア旅行まで許してくれた。(旅行資金が隼人に払えるとは思えないので、おそらくその資金も出してくれてる)
その上で結局ウダウダ留年しやがって、そのクセ留年生活が始まっても十代に触発されるまではベッドでダラダラ45ってただけという糞なゴミと言って差し支えない
少なくとも俺はこの人に、
「……………………すみません前田さん。俺は、貴方の気持ちを踏みにじろうとしています」
「うん? 一体なんのことを言っとるんね?」
「…………俺が、デュエルを教えれば。少なくとも。昨日までの自分には絶対に負けないデュエリストに鍛え上げられます。
その位、
分かっていた筈なのに、俺は隼人に頼まれるがままに、協力してしまいました。
俺は、『現在の前田隼人を見定めに来た』お父さんの、邪魔をしてしまいました」
この世界に来て、あまりにも前世の無力さと無縁の状況に、都合の良い世界と言う酒に酔っ払っていたんだろう。それが、この親父さんと向き合って……初めて、まともな大人と話をしたことで急激に頭が冷えていったんだ。
「ふむ……」
もしもこの人が、自分勝手のクソ親父なら、いつものようにヘラヘラ笑い飛ばしていただろう。だが、この人はそうじゃない。思慮の浅いガキの言葉にしっかりと耳を傾けて、その上で『気持ち』を認めたならば、それ以外の『大人の事情』を黙って引き受けるような……『俺がなりたかった大人』だ。向き合えば向き合うほど、自分の愚かさと無様さを映し出す、真実の鏡よりも直視出来ない、
「やってしまった以上、無かったことにはなりません。だから、俺に言えるのはたった一つです」
「ふむ。言ってみい」
ドッシリと構えた頼れる身体と、優しくも力強い眼差しに包まれながら、俺は一人の男として最後の
「どうぞ持ちうる全力をぶつけて下さい。隼人さんには、それだけの力を与えました」
なんとも都合の良い話か。結局後始末もせずに丸投げだ。滑稽で、愚かな話だ。だと言うのに…………
『ガッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!』
目を奪われるほど豪快に笑いだした。
「ーー!?」
「なるほど。あいわかった!! 実の息子を相手に全力で戦える機会など、中々あるものではなか!! 子が一人前になる頃には、父は既に現役を遠く退く。これが世の常と思っとったが、まさかおいどんの全力ば、隼人にぶつけられる日が来るとは思うちょらんかった!!
ーー感謝するばい、偽遊くん!!!! そして、隼人にはまだまだおいに勝つのは百万年早いと言う所を見せつけてやらねばならん!!
これは楽しくなってきたばい。おいはデッキの調整をせねばならんのでこれで失礼するき。今夜は徹夜じゃ!! ガッハッハッハッハッ!!!!」
「………………( ゚д゚)」
俺が呆気に取られている間に、親父さんはそのデカい身体で上機嫌に歩いて……少しして振り返った。
「ああそうじゃ! 厚かましい頼みじゃが、もしよかったらあと数倍くらい隼人を強いデュエリストに育てておいてもらえると有り難いでごわす!! それでは明朝八時に!!
ガハハハハ!!!!」
「……………………………………やっぱ、敵わねえよなあ。無駄に年食っただけで、ガキの一人も育てたことないこどおじじゃあよ。
現世ではちゃんと結婚して、家庭持って、子ども作れるような、立派な大人になろう。うん」
まるで海を眺めるような、己のちっぽけさを鼻で笑う気持ちで、俺はレッド寮へ戻って行くのだった。
次回はどうなるのか
隼人の親父さんのデュエルが見たいかー!??
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応!!!!(OCGのみのオリデッキ)
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否(親父さんの命運が…………)