遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜   作:SOD

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思ってたよりずっと早く症状が治まったじゃん?
でも自宅隔離じゃん?
隔離厳守じゃん?
暇じゃん?
小説書くじゃん?

じゃーん。 


これが欲しかったんだろぉ!? 情報の絨毯爆撃じゃー!! オラオラーー!!!!

 

 虚路居偽遊 LP0

 

 

 偽遊のライフポイントが0となり、デュエルが決着した。

 敗者の偽遊は、頭を垂らして肩で息をして立ち尽くしている。表情は前髪でほとんど見えない。だが、口の端が説明を無粋とするほど満足そうに上がっていた。

 

 「……………………偽遊……??」

 

 その光景は夢か幻か。まるで現実味を感じないままでいるのは、デュエルの途中でやってきたレイ。メタウマ。ポチと巳。

 

 特に、レイの困惑とも絶望とも疑問とも現実逃避とも取れる様子で微動だにしない。

 ポチも巳も開いた口が塞がらない。

 メタウマだけは苦い表情ではあったが、レイの肩を抱いて気を使うくらいには状況を受け入れている。

 

 「…………お師匠様……」

 

 それとほぼ同時期に精霊フルール・ド・バロネスに乗って空中からやって来た人物が二人。

 

 「主様……?

 主様!!」

 

 「え!? ちょ、おい!!」

 

 足場までの高度は約10メートル。辰はそれを物ともせずに飛び降りて。優雅に片脚で着地すると偽遊に駆け寄る。

  

 

 「…………ったく、あのバカ。明かす気がないならせめてもう少しくらい気ィ使えよな……」

 

 

 半笑いでそう言うと、同じくバロネスと一緒に来ていた遊乃も飛び降りると、こちらは着地と同時にくるりと前転して衝撃を逃した。

 

 『…………………………っ!』

 

 そんな二人と異なり、空中に留まったままのバロネス。実体化を解くでもなく、遊乃の側に行くでもなく。たらりと一筋汗を流した。

 

 『………………デュエルアカデミア全体に闘気が溢れている。

 

 虚路居偽遊……一体どんなデュエルを……』

 

 手に持った槍と盾を握る手の力が緩められない。

 バロネス視線の先には、実体化もしていない一体の精霊(カー)。いや、そのあり方は『魔物(カー)』と呼ばれるほうが相応しいだろう。

 

 

 幻想魔獣キマイラが、全身を歓喜に震わせて島を覆う闘気。すなわちデュエル・エナジーを喰らっている。

 

 

 『これが目的で……主に従うでもなく、一緒に居たというのか。キマイラ!!』 

 

 

 『(クフフフフ…………当たり前だ、ヒトガタの精霊。

 これ程の『心の闇』が無くば、誰がニンゲンの如き劣等種の側に居るものかよ)』

 

 『魔物とは言え、貴様もデュエリストと共に戦うカードの精霊ではないのか!』

 

 『(グフフフ……笑わせるな小娘。我はコヤツを殺すために憑いていた。

 心の闇を喰らうためだけにな)』

 

 『何だと……!?』

 

 『(だが、結果的にはこれが最善だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、それではここまでの心の闇は漏れなかっただろうよ)』

 

 『負けるように……運命力を喰っていた……!???』

 

 『(つまりは、アレは金の卵を産むガチョウ。腹を裂いても卵は無いと言う事だ。

 危うく極上の心の闇、喰いそびれるところだったわ!

 

 グワーハッハッハッハッハ!!!!)』

 

 『コイツ……っっ!!』

 

 デュエリストのカードに憑く精霊として、バロネスは遊乃の下僕であることに不満は無い。高潔とは決して言い難い少女だが、それでも彼女は選んだ主と胸を張って共に戦う。

 

 だが、この魔物(カー)……『魔獣(キマイラ)』は、主と共に戦うどころか、常に決闘の邪魔をして、挙げ句目的は殺傷と心の闇だと言う。

 

 

 『…………虚路居偽遊もまた、人としてはともかく。デュエリストとしては私が共に戦いたいとまで思った御仁だ。

 

 キサマ、そのデュエリストに切り札として扱われていて……何も思うところは無かったのか!?』

 

 『(不遜に過ぎる。所詮はニンゲンなどエネルギーのタンクと依代の運び役に過ぎん。

 

 ただそれだけの存在が、我を下僕(きりふだ)だと!? 身の程をわきまえよ!!!!)』

 

 

 バロネスの言葉に激昂したキマイラが、咆哮を上げた。

 

 ドオオオーーン……!!!!

 

 鳴り響く怒りに呼応するように、デュエルアカデミアの火山が僅かに噴火する。

 

 『ッッ!! 実体化もせずに、人間界に影響を!?』

 

 『(当然だ!! 我を誰だと思うておる!?

 喰らえば喰らうだけ喰らえる物が増える。そこに()()無し!

 

 故に我が名は『魔獣(キマイラ)』!!!!)』

 

 

 (…………耐えろ。耐えるんだ私。屈辱だが、今コイツと戦っても勝てないのは明白だ……それに…………)

 

 

 バロネスがキマイラから意識を外さずに偽遊を視認する。

 よくよく見れば、全身が血に濡れて、足元は靴から足場まで一色で同化している。

 これで死んでいないのは、ひとえにラインを結んで憑いている魔獣。キマイラのチカラが流れ込んでいるが故だろう。

 

 (つまり、万が一に勝てたとしても。そうなれば虚路居偽遊が助からない。

 

 私には、打てる手が無い……ッ!)

 

 

 『(フフフフフ……!!!! 美味い。実に美味い!!!!

 

 下等なニンゲンとは思えぬ、極上の心の闇!!!! どうすればここまで熟成するのか、想像すら出来ぬわ!!

 

 

 グワーハッハッハッハッハーー!!!!!』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 「……!! お前は浅倉仁!」

 

 「ん? …………ああ、お前どっかで会ったな。

 火武羅遊乃だったか」

 

 遊乃が辰の後を追ってくると、偽遊の対戦相手が視界に入った。

 偽遊を倒した相手がどれほどの者かと思い意識を向けると、それはかつて遭遇したことのある者だった。

 

 「何でお前がGXにいるんだ!?」

 

 「さあな。俺は別に渡る次元を定めてねえ。

 海に手紙の入ったビンを放るようにして、次の世界に渡るだけだ」

 

 警戒心を剥き出しにする遊乃。一方、浅倉にはそれまで湯水のように溢れていた狂気が無い。

 

 「5Ds(あの世界)はここの未来だぞ。なのに、どうして横に渡る次元移動でここに来れるんだよ!」

 

 「世界の『定義』の問題だろうな。

 【次元】移動は、お前の持つ【時空】移動より融通が効くってことだろうな。

 

 俺が答えられるのはこんなもんだ。

 

 それで、どうする? あの次元では一度もやんなかったが、俺とやるか? H()E()R()O()使()()

 

 浅倉が軽く笑みを浮かべて宝石で出来たデュエルディスクを構えた。

 

 「………………それ、昔の話だから」

 

 「昔ってか、未来だろ?」 

 

 「へえ〜未来(むかし)と違って、随分ニンゲンらしい会話が出来るようになってるじゃん。

 いつから人間の真似が出来るようになったわけ?」

 

 「クカカ……! 賢者タイムってやつだな。

 あれだけ満たしてくれた後なら、いくら俺でも紳士的にもなってくるってもんだ。もっとも……一分後にはどうなってるかは知らねえけどな。

 

 こっちとら戦闘狂(デュエリスト)。いつだって滾ってる」

 

 「…………」

 

 

 遊乃は浅倉の心底満足気な顔を見ながら、偽遊の方を見た。

 

 重症の死に体だが、口角が上がりっぱなしだ。

 

 思い出の揺り籠に揺られて眠る無垢のように。

 

 

 「…………さてと。

 やらねえんなら、そろそろ行くぜ。もうすぐやつの罰ゲームが始まるからな」

 

 「!! 罰ゲームって……!!」

 

 「()()()()()()()()

 

 焦った顔で睨む遊乃に、浅倉は一言口にする。

 

 「次にやる時は、つまらねえ怪我なんざ関係ねえデュエルがしたいんでね。

 

 

 罰ゲームの内容は『全身の肉と骨がゆっくり粉微塵になってから完全回復する』だ。クハハハハハハ!!」

 

 そう言い残すと、浅倉のカラダに焦点が合わなくなり、一秒後には消えていた。

 

 「ソレ、死んだほうがマシな地獄(やつ)じゃねえかあああーー!! 

 こらぁー!! バカ倉ー! もっとマシなやつに変更しろおおおー!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

  

 

 「主様! 主様!!」

 

 辰の懸命な呼び掛けに応えることなく脱力していた偽遊のカラダが、突如ビクリと痙攣した。

 

 「主様!?」

 

 ブチュ……パキ……グチュ……。

 

 

 

 「ぐ……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

 喉が張り裂けるような絶叫を上げながら、血を流し始めた。

 頭から、腕から、足から、口から、耳から、目から、鼻から。

 

 ダラダラと流れる液体に、グチュグチュと溢れる肉だったもの。

 

 ゆっくりと、煎じるように。丹念に。周到に。

 カラダの内と外を磨り潰している。

 

 「偽遊!? 偽遊っっ!!」

 

 

 それまで呆然としていたレイが、その惨状を見てようやく動き出した。何せ初めての光景ではないもので。船の中の出来事は、過去とするには新しすぎる。

 

 「レイ様! 駄目です!!」

 

 偽遊に駆け寄ろうとしたレイを、メタウマが一歩遅れて反応して引き戻す。

 

 「離してよメタウマ!! 偽遊が!! 偽遊がぁ!!」

 

 「いけませんレイ様! 酸化した人の血液は、意外と他人にとっては有害で……!!」

 

 「そんなことどうでもいいよ!! 

 

 偽遊が痛がってるの!! 傷付いてるの!!

 

 

 もう二度とこんな目に合わせたくなかったから、ボク一生懸命デュエルの修行してたのに…………偽遊が、偽遊がまた傷付いてるのおおおおーー!!!!」

 

 「くっ……!!」

 

 必死に抵抗するレイだが、メタウマとの体格差は歴然。全く自由になれない。

 

 「自分のことが大切なら離してよ!! ボクは偽遊に命を救われたんだから、死ぬなら偽遊と一緒に……!!」

 

 「ーーっっっ!!」

 

 衝動的な行動に出そうになったメタウマの手が、レイの口を覆った。呼吸は出来るように鼻は外してる辺り、冷静さが見える。

 

 

 「………………止めてよレイ様。あの人に生きてほしい私たちが、命を大切にしなかったら、誰があの人に『命は大切だよ』って教えてあげるんですか…………」

 

 

 そんなメタウマの消えそうな声は、レイの暴れる声に掻き消されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 痛みを感じる。痛み。反射にも似た拒絶反応で逃避したくなるような、生物として忌避すべき刺激だ。

 

 

 

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………………………!!」

 

 

 

 グシャグシャに。グシャグシャに。グチャグチャに。

 赤ん坊が食べる離乳食のように、くいちらかす。

 

 

 この痛み、前世で上司にエアを打ち込まれて内臓やら眼球やら潰された時みたいな、内側から潰すものとは違う痛みだ。

 

 なら、ダムの水で押しつぶされてカワサキサンドイッチになった時は?

 あの時は、ダムの瓦礫やら鉄棒やらが刺さったり抉ってきたりで大変だったが、外側から削る痛みともまた違う痛みだ。

 

 

 

 

 『…………………………………………………………いや、ちょっと待て。

 

 俺、何で2()()()()()()()()()()()()()()んだ?』

 

 

 

 

 普通、命って一人一個だよな? 独り占めにするとか出来るものでも無いし、ヘソクリみたいに隠すことも出来ない。

 

 どっちかが偽り? いや、或いはこの身体の本来の持ち主の記憶…………?

 

 有り得ない話ではないだろう。

 『俺』ではない『虚路居偽遊』がいて、そいつが転生者で、何やかんやで俺の魂が乗っ取ったパターン。

 

 だが、持っていた【キマイラ】のデッキは間違いなく俺のデッキだ。

 何か謎パワーの影響か、俺のカードもアニメ仕様の頑強さになってたから外してあったが……あのデッキ。公式スリーブ付けて、そこにプリ●ズマイ●ヤの水着スリーブを重ねて更にそこから透明のスリを重ねる3重スリーブだったんだ。俺、痛スリーブ愛好家だったからね。

 

 元この身体の奴が使っていたデッキとしては、スリーブ入りのデッキなんておかしい。まして上記の三重スリ。デュエルディスクにもカード入んないし、一般人的には人様に見られた段階で心の傷を負っても不思議ない。

 

 因みにこの外観、俺は割といい男だと思っているので気に入っているのだが、前世はちゃんと社畜非モテ童貞のアラサーおまいらなので安心してほしい。俺は仲間だ。モテナイナカマコワクナイヨー。 

 そんなわけで、浅倉みたく転移者って事もない。

 

 

 何か大事なことが思い出せない。記憶が封印されているような気がする。

 

 

 始まりからして、俺は何で電車事故からのスタートだったんだ?

 切符もあった。両親も付属。この時点でこのカラダにはそれ以前の歴史があるということではないのか?

 俺がそれを覚えていないのは、やはり憑依だからでは?

 

 じゃあ何で俺、前世のカード持ってたんだ?

 

 それに、マグロになった他人とは言え両親の葬式なので、供養ついでに両親の血縁とか付き合いとか探したけど、知り合いどころか親戚1人見つからなかったんだよ。これいくら何でもおかしいよな? 住民票とかの常識的な探し方から、探偵まで雇ったりしたんだぞ。

 

 でも見つかったのは大会の優勝成績と、某予言の子の両親見てえな銀行の預金(遺産)ぐらいのもの。

 

 

 『私は誰だ……何故ここにいる?』

 

 

 

 まさにこんな感じ。誰が産んでくれと頼んだ? までセット。

 

 

 ブチュ……。

 

 

 ア……ノウが…………シコ……ウ………………ガ………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナニモ…………カンガエ…………。

 

 

 

 

 

 「………………かゆ

 

 うま…………」

 

 

 

 





『偽遊、お前全然余裕だろ』
って思った人は正直に手を挙げなさい。

挙げましたか? 降ろしていいよ。特に意味はない。




 偽遊をこんなスプラッターにしたのは作者の趣mーーゲフンゲフン! ああ、コロナの咳が……。
 
 偽遊をこんなスプラッターにしたのは、なにをどうやってもコイツ絶対に自分の意志で本音語らないからです。心の声すら本音言わねえんだもん。
 誰だこんな捻れ過ぎて直線の荒縄みたいなやつに育てたやつは!!
 
 じゃけん、脳をぶっ壊して理性を潰して本音を語る機械に変えましょうね〜。
 カットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカァーーット!!!!
 これじゃただのサイコロステーキ先輩だわ……。





偽遊の謎、興味は湧きますか?

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  • NO
  • 日々考察はしていた
  • ばななあ

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