遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜 作:SOD
祝。挿絵機能復活
※警告。
今回の話には決闘者の心身に多大な負担を掛ける恐れがあります。
地獄を愉しみなァ。
十代とのデュエルに勝利した偽遊だったが、当の十代はデッキを交換したまま走り去ってしまった。
その様子を見送った偽遊は。
「……………………帰るか」
「帰るって……十代のこと追わないの!?」
「ああ。突然走り出したくなる時もある。青春ってそんなもんだからな」
「青春って、偽遊……!」
「わりい、レイ。俺、疲れた……」
それだけ言うと、偽遊は元来た方へ歩き出す。
その背中に勝者の威厳も余裕も無く。ただ、何か虚しさだけを漂わせているだけ。
こうして、不可能とも言えるようなデュエルに勝利した虚路居偽遊は、賞賛の声一つ受けることなくその場を後にするのだった。
潮風を浴びながら来た道を戻っていく偽遊とレイは、丁度来る時に見つけたベンチまで差し掛かる。
「…………ふぅ」
そこで偽遊は深いため息を一つ付いて、ベッドに倒れ込むかのようにベンチにうつ伏せになった。
「どうしたの偽遊?」
「……………………疲れた」
口から溢れる言葉には覇気が無い。まるで完徹して家に帰ってきた社畜そのもの。
「………………………………何か飲み物買ってこようか?」
「……………………気持ちだけ貰っておく」
あれだけの性能差を覆すデュエルをした。疲労してもおかしくはない。だが、偽遊のこれは異常だ。
投げやりのような、自暴自棄のような。そんな人間性は平時のものだが、今の彼はまるで軽度のうつ病のようだ。
「…………何かしてほしいことある?」
「ひとりになりたい」
今度は少しだけ言葉に生気が籠もっていた。
「………………………………分かった」
一人にするのは余りにも不安ではあった。
それでも、レイは偽遊の望みに答えることを選び、後ろ髪を引かれながらも帰路に着くことを決断した。
『誰かが一緒にいると気が休まらない人がいる』
これが幼い少女が、このどうしようもない男とずっと一緒にいたことで学んだ一つの答えだ。
(…………ボクがどれだけ頑張っても、偽遊の助けにはなれないんだ。
でも……)
「……………………いつか絶対、無理矢理にだって助けてやるんだから……っ!」
目尻に涙を浮かべつつ、それでも少女の顔はまだ諦めには染まってはいなかった。
「…………ばか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……………………ゴホッ……!」
レイの姿が見えなくなって、偽遊が咳をした。それまでずっと噛み殺していたものだ。
「ガハッ……ゴフッ……!!」
咳と一緒に血が混じった何かを吐いた。
「ゴホッゴホッ……ガフッ……!!」
ベンチと下の土が赤く染まっていく。咳は次第に強くなり、体温が急激に下がり身体が痙攣し始めた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……っ!!」
半眼に開いた視界が次第にぼやけていく。唯一見えているのは、水気が蒸発して老人のように萎びていく己の手。雄弁と死期を語っている。
「ハッ……ハハハ……!!」
今にも自分の命が消え去りそうだと言うのに、偽遊は心底嬉しそうに笑った。
「死ね。死ねえェ……!! ハハハハハハハハハ!!!!」
己の意思で指を動かすことも出来なくなっていく身体に、十全の憎悪を籠めて呪う。
狂気に輝く瞳は、普段の獣のものとは違う恨みの瞳。
「ヒャハハハ……!! ヒャハハハハハハ!!!!」
笑いながら、喀血して、乾いていく身体。
今こそ悲願が叶う。己の死が……。
「……………………もう、いいだろ」
瞼が重くなって、瞳を閉じる。安らかな笑みを浮かべて。
「アハハハハ」
心の憶測に封じ込めた最も己の根幹となる記憶が脳裏に過っては振り払い。
「死ぬには良い日だ」
自身の
「…………!」
「ん……?」
…………………………………………それからしばらくして、偽遊は己の身体に力が戻るのを感じた。
「……………………?」
「…………あ、やっと起きたな。こいつめ……」
誰かの声がした。あまり聞き慣れない声だった。
偽遊は鬱陶しそうに重い瞼を開けていく。
「はあ……びっくりしたよ。久しぶりにキミに会ったと思ったら、
目を開けた先に居たのは、金髪で童顔の美少女だ。青とピンクを基調にしたコスプレ衣装に身に纏った、初対面ながら実に良く見知った美少女の顔。
「……………………ブラック・マジシャン・ガール」
「むう。何で名前で呼んでくれないのかなぁ?」
呆気取られて溢した言葉に不服な様子のブラック・マジシャン・ガールは、頬を膨らませて無言で名前の呼び直しを要求している。
あざとい。彼女こそがきっとこの次元でもっともあざとい美少女だ。
「……デュエル・アカデミアの文化祭だ。
居ても不思議は無いが……何故、キミは俺の名前を知っている?」
「何でって、名前はキミに教えて貰ったじゃない。
それに! キミもお師匠様に教わったよね!?
キミは
普通なら精霊を召喚してもダメージなんて無いも同然だけど、キミは
ってお師匠様言ってたよねえ!?」
「……へえ、そうなのか」
(謎が一つ解けたな)
「そうなのか、じゃないよっ!
キミの
辛い思いや苦しい思いをして魂に傷が付く人はたまにいるけど、キミのそれは人が一生の内で負える傷の量を飛び越えてるよ!
「分かりやすい説明どうも。
『人の
カカッ、なるほど。そりゃあ理屈的にも納得だな……」
「カッコつけるような話じゃないよ。
私が偶然お散歩して通りかかったから良かったものの、あのままだったらキミは死んじゃってたんだからね!!」
「俺はそれを望んでる」
「望んでるって…………キミほんとうに何かあったの? さっきから様子がおかしいよ。
わたしで良かったらお話聞かせてくれない?」
「お気遣いどうも。ついでに余計なお世話もな」
「余計なお世話って…………もう!! こんなに汗だくになるくらい頑張ってたのに。
偽遊くんのばーか!
もう。取り敢えず着替えよっと」
プンプン。などと擬音が付きそうなむくれ顔をしながら、ブラック・マジシャン・ガールはステッキを振るって自分の服装をニュートラルなブラマジガールの衣装から、ギャルが好みそうな肩出しの服装に切り替えた。
「…………は? 何その服」
「え、これ? えへへ。可愛いでしょ〜。この前別の次元のデュエル・アカデミアに行った時に、購買部に売ってたんだ〜。
あの次元は制服でも私服でもオッケーのデュエル・アカデミアでね? 可愛い服とか小物とかいっぱい購買部にあったんだよ。
私のマスターのお金で買っちゃった♡ えへへ」
「なんてこった。何も話に着いていけない。
あのブラック・マジシャン・ガールが、酒に飲まれて酔っ払ったような与太話をしている……」
「酔っ払ってないよ! それに、またブラック・マジシャン・ガールってよんだぁ!
ちゃんと自己紹介したじゃない! わたしの名前は『マナ』だよっ! マナ!!」
「あーウンウン。そうだね。ブラック・マジシャン・ガールの子はみんなそう名乗るんだよ」
「おまわりさんみたいなこと言い出した!?
だから私は酔っぱらいじゃない!!」
「ってか、別の次元って何? アンタこの世界の『ブラック・マジシャン・ガール』じゃないの?」
「えぇ……おかしいなぁ。偽遊くんが全然なんにも覚えてないよ。
私たち、転生の間で会ってお話だってしたじゃない!」
転生の間。それは死者が転生前になんかそれっぽい超越的な存在と邂逅するための空間である。
時に空の上のような景色だったり、時に閻魔の法廷とかだったりする。
「……………………おかしいな。
地獄で閻魔帳を閲覧したが、俺がブラック・マジシャン・ガールと邂逅したなんて記録はどこにもなかったが?」
「そりゃあそうだよ。そういう記録は、生者の世界のものを記録するんだから。
モンスターが召喚されたら、そのターンに召喚されたとか、このターンに攻撃を行ったとか肉眼では見えなくてもゲームの世界に記録はされてる。
けど、墓地に行ってる間の情報は何にも記録されないし、召喚を無効にされても記録は始まらないでしょ?
転生の間は言うなればデュエルモンスターズの手札と場の間の『どこでも無い世界』だからね。そこで何をしているかなんて、記録するものは存在していないんだよ」
「なるほど、納得した。
それで? 俺の知り合いらしいキミは何故、此処に居る?」
「だからお散歩だってば。
私のパートナーの子が、久しぶりに優乃ちゃんと会えたから二人でお話したいって言ってね。わたしはお邪魔しない虫だよ」
「へー」
(優乃ちゃんって誰だよ)
「でも、わたし色んな次元を旅してるけどいっつもデュエルアカデミアにしか移動しないからもう退屈で退屈で。
……! そうだ偽遊くん。わたしとデュエルしてよ!
あれからちょっとデュエル覚えたんだ~」
「ブラック・マジシャン・ガールとデュエル? 翔が聞いたら全身の毛穴から血涙を流す程羨ましがるだろうな。
俺は面倒だからパス。
レッド寮へ行くと良い。ブラック・マジシャン・ガールの姿で行けば、キミとデュエルしたい男で長蛇の列になるさ」
「ええー!? 何でそんな意地悪言うのよ。偽遊くんがデュエルしてよぉ」
「断る。
俺は疲れてる」
「ちょ!? 本当に行っちゃうの!?」
「はぶあないすでー。良い一日を」
向き直りもせずにひらひらと手をふる偽遊。
するとマナの表情が暗くなり……。
「…………呪っちゃうよ」
「え?」
「デュエルしてくれないと黒魔術で呪います」
ピタリ。偽遊のカラダが静止する。
「…………おいおいマナちゃんよお。そんなことしたらマハードが泣いちゃ--」
「『強欲で金満な壺』で引けるのは『強欲で金満な壺』や『強欲で謙虚な壺』」
「--!?????????」
「『増殖するG』が手札に有るとき、相手には必ず『墓穴の指名者』があるの」
「ッッッッッ!?????」
偽遊に冷や汗が流れる。嫌な記憶を思い出しているようだ。
「前のターンに『墓穴の指名者』で無効化された『灰流うらら』を素引き。相手の手札には『増殖するG』に『原子生命態ニビル』」
「ハァハァハァハァ……!?????」
「先攻を取ったらターン⒈制限の手札誘発のフルハウス。
後攻を取ったら一回止められたら機能不全の事故札になる呪いを……」
「うわアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!???⁇⁇⁇⁇⁇⁇⁇」
虚路居偽遊は、崩れ落ちた。決闘者としてこの濃厚な呪詛の圧力に耐え切れなかったのだ……。
「…………偽遊くん♡ わたし、偽遊くん
「…………はい」
完全敗北である。
「やったー! 偽遊くん。わたしアレから修行頑張って強くなったんだよ。
しっかり見せてあげるからね!」
「アレからの『アレ』を知らねえんだよォォォォ……!!」
「対戦よろしくね。偽遊くん」
マナから『ちゅっ♡』と投げキッスのファンサをしつつ、両者のデュエルが始まるのだった。
↓偽遊の心境
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