遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜   作:SOD

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 数年ぶりに、あの男が登場します。

 二年生編に向けて、しっかりフラグを建てていかねば……。




痛いのは嫌なので

 

 

 

 4対1のデュエルが決着し、少しの静寂が場を包んでいた。

 海から流れる潮風が木の葉をくすぐる音だけが僅かに空間の支配権を持て余すだけ。

 

 そんな中で最初に声を出したのは、5人のうちの誰でもない部外者だった。

 

 

 「よもやよもや……ってところかしらね」

 

 

 浮浪叉夜遊の背後に突如空間の歪みが発生し、中から白いフードを被った長身の男が現れた。

 

 

 「…………………………………………やあ、何しに来たんだい? 平等院(びょうどういん)栄狩(はかり)

 

 僕は余韻を味わうのに忙しいのだけれど…………」

 

 

 浮浪叉夜遊は、少しため息を吐いたあと、背後に現れた知り合いに……

 

 

 「ーー詰まらないことを言いに来たのなら……殺してしまうよ?」

 

 

 険呑とした目で、殺意を向けた。

 

 

 「ーーっっ!!!!」

 

 

 その殺気に真っ先に反応したのは、勝利したにもかかわらず何故か呆然としていた火武羅遊乃。

 デュエルが終わってガンモードに戻っていたディスクを反射で構えた。

 

 

 「…………っ、絶頂の余韻を邪魔したのは悪かったわよ」

 

 

 フードを脱いで顕になった顔は、目元や額にタトゥーの入った美人とも言えるがはっきりと男だと判る。

 かつてレイが赤錆た船に攫われた際に敵側に居たオネエ口調のオカマ。平等院栄狩がソコに居た。

 

 

 「貴方、あの時偽遊と戦った人……!!?」

 

 「ええ。お久しぶりね、レイちゃん。

 少し見ない間にとってもキレイになったわね。

 

 『恋』だけでなく『愛』を知ったかしら?」

 

 

 若干の緊張と警戒心を持って話すレイに、平等院はあくまでも既知の知り合いと久しぶりの再会としての口調で話す。

 

 ワタシは敵ではない、と言外に伝えるために。

 

 

 「………………知り合いに会いに来ただけかい?」

 

 

 「まさか! 夜遊チャンが勝手に交わした約束の帳尻合わせに駆り出されたに決まってるじゃない!!

 

 …………とは言え、リーダーに言われた時は何の冗談かと思ったけどね。

 

 【無敵の白(インビンシブル・ホワイト)】が、まさかあんな芋ジャージのお嬢ちゃんに負けるだなんて……全く予想外よ」

 

 

 「うぇ……?」

 

 

 私ですか? と言う表情で自分を指差す(マナ)

 

 

 「フフフ。そう言えば名前を聞いていなかったね。

 キミ、何ていう名前なんだい? お嬢さん」

 

 

 「ふぇぁ!? あ、えっと……う、内倉(マナ)でふーーっ!?

 

 か、噛んりゃ……」

 

 

 「内倉(マナ)……か。覚えておくよ。

 

 まさか僕が負けるなんて。こんな素敵な体験は久しぶりだよ。

 

 

 キミなら……或いは僕のもう一人のプリンセスになりうるかもしれないね」

 

 

 「ぷ、プリンセス!? お姫様!? わ、わたしが……! えへへ……」

 

 

 夜遊の言葉に満更でもなさそうな様子でえへえへと笑う(マナ)に、平等院が訂正を兼ねて声を掛ける。

 

 

 「ねえ、内倉さん? アナタ何かウォルト的なお姫様(プリンセス)を想像しているのかもしれないけれどね?

 

 彼の言う『プリンセス』って、要するにこの男の嗜虐的なデュエルでなぶり殺しにする相手って意味よ?

 殺人鬼に殺されるタイプのオペラ座的な姫のことなの」

 

 

 「え。あ、痛いのは嫌です無理ですごめんなさい。

 

 もうナイフでお腹刺されるのは真っ平ですので」

 

 「フフフフフ。案外クセになるかもしれないよ?

 

 ナイフ捌きには自身がある。ほら……」

 

 夜遊がホルスターから黒いナイフを抜き、一振り放つ。

 

 すると、頭上にそびえ立っていた樹木が一つ倒れてくる。

 

 

 「え!? 何今の!? ナイフで大木を斬った!?!?」

 

 

 「マナちゃん。あんなん、あのバケモノには児戯だよ。

 

 ロケランでも傷一つ付かなかった機皇帝の兵士の装甲をバターを切るみたいに切断してくる。

 

 だから間違っても今そのロッドに貯めてる魔力(ヘカ)をアイツに撃とうとしないでね」

 

 「………………はい」

 

 

 

 ズドンと低い音を立てて地面に倒れ伏す大木をなぞりながら、夜遊が(マナ)に近付いてくる。

 

 「ちっ!!」

 

 遊乃がガンから炎の弾丸を撃ち放つ。

 

 だが、火球は夜遊のカラダを擦り抜けて背後の平等院に向かった。

 

 「キャン! ちょっとアナタ!

 

 アタシはその子と違って当たったら燃えるし死ぬのよ!?」

 

 「だったらソコ退いてろ!! 銃の射線上で殺されて文句言う馬鹿がいるかぁ!!」

 

 叫びながらも撃ち続ける遊乃の炎は、全て夜遊のカラダを擦り抜けて背後の木々を焼き払っていく。

 

 「遊乃さん! 落ち着いて!!

 

 デュエルアカデミアが火の海になるよ!!」

 

 「クソが……!! マジで何で当たんねえんだよバケモノがアアアーー!!!!」

 

 

 

 「イメージが足りないよ……もっと強く、僕の死をイメージしないとね…………」

 

 

 そう言いながら、夜遊の視線は(マナ)だけに注がれている。

 

 視線が合うだけでも悍ましい死の予感が全身を揺さぶるような目が、(マナ)を見下ろし、視姦している。

 

 

 「フフフフフ……見れば見るほど僕好みだ。

 

 身の程をかなぐり捨てた大望……いや、欲求かな? 押し潰されそうになって、まだ求めている。

 

 地上全てがキミの『欲求』の対象かい?」

 

 「……………………」

 

 夜遊びが(マナ)の頬に手を当てて愛撫するように撫でる。

 髪を梳き、親指で唇をなぞった。

 

 (マナ)はただされるがまま。返事を返すでも、反応を返すでもなく。そこに立っているだけ。

 

 

 「(マナ)ちゃん!! 逃げて!!」

 

 「………………?」

 

 

 「その愚かしさがたまらない……キミが、欲しいな……フフフフフ」

 

 

 顎をクイと上に上げ、捕食するように口を開けた夜遊の顔が(マナ)に近付き…………。

 

 

 

 

 「(マナ)ちゃんー!!」

 

 「ーーあ、はい。何ですか? マナさん」

 

 

 自分を呼ぶマナの声に反応を返して、(マナ)はマナの方へ振り向いた。

 自身を求めていた夜遊の手を、少し邪魔だなと言った様子で退かしながら。

 

 

 「え……?」

 

 「え……? あ、えっと……何ですか……??」

 

 

 それまで微動だにしなかった相棒(バディー)が、自分の呼びかけに反応して何事も無かったかのようにしている。

 困ったように眉を下げ、オドオドとした、自信など何も無さそうな様子でマナへ質問を返すだけ。

 

 

 「……………………今のは……?」

 

 

 一方、無視される形になった夜遊は、(マナ)の様子に何を視たのか一瞬思案すると、(マナ)の背後から手を引き寄せて自身の瞳と強引に目を合わせた。

 

 浮浪叉夜遊の視線に晒された者の大半は、怯えるか、攻撃するか発狂するかだった。

 

 だが、今の(マナ)は…………。

 

 

 「………………」

 

 「今、何を感じているかな? 内倉(マナ)

 

 「私、痛いのは嫌なので。貴方には興味がありません」

 

 

 まるで興味のないの無いものを写すだけの瞳が見つめ返しているだけ。

 

 

 「は、ハハ……!」

 

 「それとも、私の望む『愛』を与えられるように、()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 ただ、己の望むものを与えられない存在に、無関心か変革を求めるかをするだけだった…………。

 

 

 「……………………(マナ)、ちゃん……?」

 

 

 

 「すみません。マナさんが呼んでいるので、手を離して欲しいです」

 

 「フッーーフフフ……!! なんてことだ……なんて……」

 

 「腕が痛いです。私の腕を持ち上げないで。離して欲しいです」

 

 

 余りにも無関心。あまりにも無感動。

 

 あまりにも……この浮浪叉夜遊と言う、身の毛もよだつようなバケモノを前にして。

 内倉(マナ)は、目の前の相手を『自分を愛してくれそうか』『そうでないか』でしか見ていない……!!

 

 

 「なんてことだ、内倉(マナ)……!! キミも、僕と同じじゃないか……ハハ、アハハハハハ!!」

 

 「痛いです。離して……」

 

 

 夜遊が歓喜に震えて笑っている。

 目の前の女は同類だ。かつて自分を討ち倒した『プリンセス』にすら無かった、『同じもの』と言う実感が全身を打ち付けている。

 

 『同じもの』だ。内倉(マナ)は!! 同じ存在だ。同じ。同じだ。

 同じ同じ同じ同じ!!

 

 

 

 「キミは僕と同じだ!! 僕と同じ…………自分にとって価値あるもの以外の存在に意味を感じない!!

 

 僕と同じ……キミもヒトデナシのバケモノだったんだね!! アハハハハハハハハ!!!!」

 

  

 「……………………離して」

 

 

 歓喜の叫びを上げ続ける夜遊に、(マナ)は心底どうでも良い声でただ解放を望むだけなのだった。

 

 

 「ねえ! キミが望む『愛』って何?」

 

 「……? 私が望む『愛』……?」

 

 「欲しいんだろう? 僕が与えよう! だから、キミは僕のプリンセスになってよ!」

 

 「嫌です。痛いのは嫌いです」

 

 「ああ。良いさ。キミが望むならそうしよう。

 先ずは手を離すよ」

 

 「はぁ……やっと腕を下げられる」

 

 

 「(マナ)ちゃんっっ!!」

 

 

 (マナ)が夜遊から解放された瞬間、マナが駆け寄って(マナ)を抱き寄せて夜遊から離れた。

 

 

 

 「わっ、あ、マナさん……ど、どうしたんですか……?」

 

 「大丈夫だった!? (マナ)ちゃん、怖くなかった!?

もう離さないからっ!!」

 

 「あ…………えへへ……」

 

 

 

 それまで温度の無いガラス玉のような瞳で夜遊を見ていた(マナ)が、マナに抱きしめられたことでいつも通りのどもった口調に戻り、幸せそうに笑った。

 

 

 「…………なるほど。

 

 これが『愛』……なのかな?」

 

 その様子を見て夜遊は理解したようなしていないような顔で首を傾げている。

 

 「ねえ、平等院栄狩。ちょっと練習させてよ。アレ」

 

 「イケメンに抱かれるのは嫌いじゃないわ。けど、アータが今やろうとしているとこは断じて『愛』ではないから。

 

 ハグと愛の籠もった抱擁の違いを理解するには、先ずLikeとLOVEの違いを理解出来なきゃ無理よ?」

 

 「? LikeとLOVE? どっちもオモチャにするってことだろう?」

 

 

 「はいはい……アータには先ず『人の道』と『道徳』について帰ってからネッチョリしてあげるわァ……!!

 

 さあ、先に帰っていてちょうだい。

 

 『リーダーとか向いてないけど暴れるのに使い勝手の良い組織が欲しいから組織に入れて欲しい』って売り込んできた時からオカシイと思ってたけど……これはアタシ、教育係とかする必要性が出てきたわね……」

 

 

 「……? まあ、良いか。

 

 きっと今は何をしても内倉(マナ)は僕に無関心のままだろうし。

 

 ああ、そうだ……」

 

 

 夜遊がパチンと指を鳴らし、空間の歪みを発生させる。

 そのまま帰るのかと思いきや、まさかのもう一度(マナ)の元へ歩み寄った。

 

 マナが(マナ)を庇って抱き締める。夜遊の視界には殆どマナの背中と金髪しか見えない。

 

 

 「ねえ、内倉(マナ)

 また会いに来るよ。それと、コレを上げる」

 

 「…………? 指輪?」

 

 「さっき倒した木で掘り出したんだ。

 キミのネックレスに着いたハートの飾りと同じ彫り物もしてみたよ。

 

 次ぎに会う時までに持っていてよ。生半可な魔力より、よっぽど強力な力を込めておいたからね……フフフ」

 

 「…………頂きます」

 

 「ああ。いただいておいて」

 

 

 マナの豊満な胸の抵抗を受けつつなんとか出せた左手で、ソレを受け取ろうとする。夜遊は、一瞬の内に木のリングを薬指にはめた。

 

 

 「じゃあ、またね。

 

 今夜はすっごく……愉しかったよ。フフフフフフ……」

 

 

 

 上機嫌な笑い声を上げながら、浮浪叉夜遊は空間の歪みへ進んで行き、この次元の外側へ去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぅ…………一時はどうなるかと思ったけど、白い悪魔にも春が来たってことかしらね。

 なんにしても気が逸れてくれて助かったわ……」

 

 

 

 

 そして、最後に残ったのは平等院栄狩だけだった。

 

 彼がここに現れた理由とは如何に……?

 





 内倉(マナ)

 前世では優等生系の主人公路線で愛されようとした結果惨敗だった。
 主人公は何も完璧でなければならないわけではない、と言うことに気付き、前世での失敗を反省した結果彼女の立ち振舞いはーー

 優等生→誰の目から見ても弱者

 と言う方向性にシフトした。


 詰まる所。内倉(マナ)。化け猫被って今のオドオドの振る舞いを意識的かつ計算的にしています。

 素の振る舞いはかなり無機質で、愛してくれないと判断した、又は自分の望む愛のカタチではない相手には全く無関心です。

 マナの呼び掛けに応えるまで黙ってされるがままになっていたのは、()()()()()()()()()行動するのを止めておいたため。

 




こんな女が、虚路居偽遊と出会ったらどんな化学反応を起こすのだろうか……?


偽「これ以上俺の周りにヤバい女増やさないで欲しい件」
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