遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜   作:SOD

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思ってたより反響あったので続き書きました。書き手は調子こくとすぐ更新しちゃうんだ。


虚路居偽遊

 フェリーに乗って、波に揺られて。潮風と太陽の光を満喫するという社畜には有り得ない心の充足を味わった後。ジュラルミンケースと最低限の荷物を持って、俺はデュエル・アカデミアの初めての一歩を踏み出した

 

 「ここからでもアカデミアの校舎が見えるのか」

 

 圧倒されそうなほどの存在感と、聖地に自分がいる高揚感。最高の気分だ。

 

 「でっけー! アレがデュエル・アカデミアか〜!! カッコいいなー!」

 

 そんな声と共に、赤い制服で正の感情をこれでもかと発揮している主人公の姿が映る。若さと持て余しているパワーが、太陽よりも余計に眩しい。

 

 「………………ハァ…………」

 

 一方、背後にはワイトも近寄りがたいほどどんよりとした濁った赤色達がお通夜ムードで肩をおろしている。

 無論のこと、全員オシリスレッド。落ちこぼれとレッドゾーンの負の烙印を抱える、ドロップアウト寸前の連中。本来なら俺はあっち側であり、十代よりもずっとずっと卑屈な仲間意識が芽生えるのだが……。

 

 「この制服じゃあ……ちょっと受け入れては貰えないよな」

 

 全身全霊の切り札を弄んでワンキルした上に、ダメージは自傷のみ。更には受験番号も普通に上位だった俺を、オシリスレッドに入れることはクロノスにも出来なかったらしく、めでたく俺はラーイエローの制服を着ているのだった。

 

 「偽遊。さっそく学校を探検に行こうぜ!」

 

 そんなわけで、受験時に遅刻寸前だったという人様にお聞かせ出来ない縁で気に入られた元社畜童貞の俺は、主人公とアカデミアを一緒に見て回ることになったのだ。

 

 

 

 

 「おおー!! ここがデュエルリングかぁー!!」

 

 色々見て回った後に満を持して訪れたのは、GXファンなら誰もが知っているデュエルリングのある部屋。そう、あの見るものが見ればブチ切れたくなるほど太い電線が散乱しているあの場所だ。

 

 「…………結束バンド、いやせめてロープとかで巻くとかさぁ……何だよこの歩くことをまるで想定してない乱雑さはよぉ……あ、あそこ配線剥き出しになってる……っっ(ピキピキ)」

 

 「ど、どうしたんだ? 偽遊」

 

 「あ、いや、何でもない」

 

 「ふーん? まあ良いや。せっかくだし偽遊。デュエルしようぜ! こんなでっかいリングあるんだし、やらなきゃ損だぜ!」

 

 「あ、それは止めたほうが良いな」

 

 「え? 何でだよ」

 

 「そりゃ、お前……」

 

 「おい! そこにいるのは誰だ!? ここはオベリスクブルーのリングだぞ!!」

 

 「と言うわけだ」

 

 俺が説明しようとすると、背後に現れたのはGX第二話の例に漏れず、万丈目さんの金魚のフン一号。興味もなければ価値もないので名前は知らない。便宜上うんこマン一号と呼んでおく。

 

 「あ、アニメより顔がブサイクだ」

 

 「なんだと貴様!?」

 

 「やべっ、声に出てた」

 

 こういう余計なこと口にしちゃう悪癖のせいで、前世でも結構大変だったのに。転生しても治っていないらしい。転生特典貰っておけば良かった。 

 

 「って、お前クロノス教諭を破ったやつか!!」

 

 おお、流れが原作に戻った。

 

 「有名だな、十代」

 

 「へへっ! でも偽遊もクロノス先生に勝ったじゃんか」

 

 「………………俺は、まあ、存在がチートみたいなもんだし」

 

 令和のイカれ小僧こと『斬機サーキュラー』の背中が見えるレベルのアドの取り方をする【キマイラ】でGX時代の【アンティーク・ギア】に負けるのはちょっとデュエリストとして死を意味するレベルで無理があるので。

 

 

 「万丈目さん、こいつらですよ! クロノス教諭を破った遊城十代と、虚路居偽遊です!」

 

 「ーーっっ! 虚路居だと!?」

 

 俺の名前に反応すんなよ準ライバルポジ。十代はこっちだぞ。大人しく十万しとけよ。

 などと思っていたら、ズンズンとこっちの方にやって来た。俺はとっさに十代を盾にして目を逸らす。

 

 「? どうしたんだよ偽遊?」

 

 いきなり盾にされているにも関わらず、それに対して特に怒った様子を見せずに聞いてくる十代。さすが陽キャ主人公。懐が深いぜメイン盾。

 

 「何故隠れる虚路居!!」

 

 「あ、いや……ちょっと、近いんで、離れてもらっていいですか?」

 

 「キサマ……っ! このオレを汚物を見るような目で……っっ!!」

 

 俺は忘れていないぞ。コイツは万丈目サンダー時代に「醤油の溢れたのを袖で拭いて制服を酸っぱい臭いにさせてた男だ。

 絶対にばっちい!」

 

 「誰が醤油の溢れたのを制服の袖で拭くか、誰の制服が酸っぱい臭いだあああああああーー!!」

  

 「ボクったらまたやっちゃったああああああーー!!!?」

 

 「そこまでこの万丈目さんをバカにするとは、タダでは済まさんぞ!!」

 

 そう言いながら万丈目さんはデュエルディスクを構えた。それを見て俺も当然左腕を持ち上げて……

 

 「俺の腕にデュエルディスクは無いぜ……(ドヤっ)」

 

 デュエル出来ない言い訳を最大限見せつけてやった。そりゃあ入学早々に校舎見学するためだけに荷物の梱包解いてデュエルディスク持ってくるわけないんだよなぁ。むしろ何でこいつら当たり前のようにデュエルディスク付けてるんだよ。俺もやってはみたけど地味に邪魔だから一日持たなかったぞ?

 

 「き、キサマ……デュエリストの癖にデュエルディスクを持ってきていないだと!?」

 

 「なんならデッキも持ってきてない!!」

 

 「フザケているのかキサマ!!!!」

 

 万丈目さんの怒りが頂点に達した辺りで、女性のものらしき声が聞こえた。

 

 「貴方達何をしているの? もうすぐ寮の歓迎会が始まるわよ?」

 

 「て、天上院くん!?」

 

 金髪巨乳ツンデレヒロイン、天上院明日香だ。

 

 「万丈目くん、ここでの私用のデュエルは禁止されている筈だけれど?」

 

 「い、いやぁ。これは違うんだ。そこのラーイエローがあまりにも無礼で……アハハハ」

 

 「貴方達ももう戻ったほうが……って、アレ? 一人いない?」

 

 

 「なっ!? い、いない!! どこへ行ったんだ虚路居偽遊!!」

 

 

 「偽遊ならもう行っちまったぜ? 

 

『俺は逃げる。逃げるが勝ちだ。否、負けてもいい! 負けても良いんだっっっ!! じゃっ☆』

 

って言って」

 

 

 「…………ふっ……ふふふ……どこまでも、どこまでもコケにしやがって…………ーー虚路居偽遊ウウウウウウゥゥゥーー!!!!」

 

 

 

 

 「ふう…………」

 天上院明日香が出てきたのを好機と判断した俺は、さっさとイエロー寮に逃げ帰ってきた。

 そしてそれなりの寮の食事を堪能し、風呂に入って、ベッドに身体を投げたのだった。

 

 「十代が言ってた通り、ラーイエローのベッドはフカフカだなぁ」

 

 ネットに繋がるPCもあるし、この世界にも動画投稿サイトはあるようだ。デッキパワーの関係上、デュエルに負けることもそんなに無いだろうし、このまま俺はこの世界でいい感じにプロとかになって生きて行きたいと思うよ。

 

 「前世は糞だったもんな……勉強もしないで遊戯王とかゲームとかばっかしてただけで、ドンドン生き辛い状況になっていくし。上司はゴミだし、挙句の果てに溶接作業中にケツにコンプレッサーエアガン撃たれて内臓破裂して目と口と鼻から出血、眼球ポロリで死亡して…………」

 

 (でも何で俺……GXの世界にいるんだろうか……?)

 

 実は俺こと虚路居偽遊。気付いたら電車の事故に巻き込まれていて、手にはデュエル・アカデミアの受験票とジュラルミンケースを持っていたと言う、記憶混迷系放置プレイを受けるタイプの転生者で、何で自分がここにいるのかもよく分かってないのだ。

 オマケに両親はその電車の事故の被害者になってマグロ状態だと言うことがあのデュエルの後分かったもんで。もう滅茶苦茶よ。

 

 「でもまあ、俺にとっては完全に赤の他人なので…………せっかくの異世界転生、終わる時まで楽しませてもらうさ。これが今際の際の夢でも、統合失調症による幻覚でも構わない。

 

 

 俺は、前世の総てに決別したい」

 

 

 不意に、通信機器のような生徒手帳が鳴った。メールだ。

 

 『虚路居偽遊。今夜0時、デュエルリングへ来い。お互いのベストカードを賭けて、アンティルールでデュエルだ! さっきのようにデュエル出来ない言い逃れは出来んぞ!!

 

 万丈目準』

 

 

 「……………………」

 

 

 俺はフッと笑みを溢して、メールを打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 『クロノス先生、虚路居です。夜分遅くに失礼とは思いましたが、万丈目くんにアンティールールのデュエルを挑まれました。校則違反なので報告させて頂きます。【添付画像】

 

 

虚路居偽遊』

 

 

 「寝よ」

 

 誰か好き好んで夜中に出勤したがるものか。睡眠は宝だ。時間とは有限だ。元社畜舐めんなクソガキ。

 




このあと万丈目はクロノスに呼び出されましたが、密告者が気に入らない偽遊だったので、大目に見られてお咎めなしになりましたとさ。
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