遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜   作:SOD

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 偽遊くんのアタッシュケースには、生前デッキにせずに持っていたカードだけが四次元ポケット式に収納されています。よって、環境デッキを組むことは出来ませんが、大会を考えなければ充分強いようなカードやカテゴリーは無数に持っているのです。そんな彼が使う今回のデッキはとは……………

 「あ、そうだ。これ使おう」




天然VS解析不能

 デッキの調整が終わり、鉛のような軽い足取りで、俺は実技場へ向かっていた。

 

 「身体が(かる)い。まるで足の関節一つ一つに(六芒星の呪縛)が張り付いてるみたい。どうあがいても絶望(もう何も怖くない)

 

 やりたくない。全くもってこれっぽっちもやりたくない。夏休みの宿題を手を付けずに登校日を迎えるような倦怠感を感じる。この気の進まなさ加減は、ゲボカス糞ボケワキガ上司に休日に家に呼び出された挙げ句に、鼻垂れウンコパンツ汗かキッズの夏休みの宿題を強制された時のものに匹敵する。

 

 (もう、帰宅(ゴール)しても良いよね。うん。帰っちゃおう。そうしよう。急に腹が痛くなったことにしよう)

 

 「あ! ようやく見つけたわ!」

 

 (ビクッ!??)

 

 こ、このよく通る高めの凛々しい声は……っっ!!

 

 「虚路居くん。2時間も遅れて来るなんて、何かあったのかしら?」

 

 ああああああああああーー天上院明日香だあああああーー!!!!

 ここは事前に決めた作戦、コード・ストマッケイクを使うしかねえ!!

 

 「あ、いや、その、ちょっと頭が悪くて」

 

 「?? 頭が悪い? 迷子になったってことかしら?

 

 まあ、普段使わない教室って迷うことがあるわよね。ほら、こっちよ。着いてきて」

 

 言いながら手を差し出してくる天上院明日香。何? お手々繋ぐの? 若い女に触れるとか無理なんだけど。手汗とか気になる。

 

 「や、その。別に手を繋ぐとかは……」

 

 ガシッ。

 

 (あ、有無を言わさずですか。そうですか)

 

 「さあ、行くわよ。みんなが亮と貴方のデュエルを待ってるんだから」

 

 (あああああ……女子の手って、何でこう握りづらいって言うか、力が抜ける構造してるって言うか…………全身の力が抜けていって、その下品なんですけどもね。ウンコ漏れそう)

 

 

 

 

 「………………なぁにこれえ」

 

 ようやく実技室にたどり着いて天上院ハンドの呪縛から解放されて正気を取り戻した俺の視界に入った光景は、受け入れ難い状況だった。

 

 “やっと来たぞ!! (キマイラ)だ!!“

 

 “ラーイエローの身の程知らずが!! カイザーの力を思い知れ!!“

 

 “カイザーこそが、オベリスクブルーなんだ!!“

 

 “カイザー!! カイザー!! カイザー!! カイザー!!“

 

 

 「え、見世物(コロセウム)?」

 

 「………………」

 

 本来空っぽだったはずの席に、無粋な観客が埋め尽くされている。天上院明日香の方をバレないように見てみると、どうやらこの乳袋も預かり知らぬ事態だったらしい。

 

 「おーい! 偽遊ー!! 頑張れよー!!」

 

 俺がうんざりしていると、近くから十代の声がした。

 

 「十代ー! 何これ!!?」

 

 「それがさー! さっきのカイザーへの宣戦布告、聞いてたやつが何人かいたみたいでさ、5分くらい前にこんな感じになったんだー!」

 

 ……………なるほど。よくよく考えてみれば、防音も何もないレッド寮で、あんなバカ声で騒いでて、近隣の部屋の住人に聞こえないわけがない。なんなら寮全員が聞いてたとしても不思議がない。

 そして、レッド寮の中にイエローやブルーの生徒と繋がりがあるやつがお喋りしちまえば、そこから波紋のように広がって、こうなることもあり得るってわけか。風が吹けば桶屋が儲かるとは良く言ったもんだ。

 

 

 「………………」

 

 既にスタンバイ万全のカイザーは、腕組をしながらずっと俺を待っていたらしく、微動だにしない。クールぶっちゃって天然がよお。

 

 

 「………………じゃあ、始めますか」

 

 

 “遅れておいて謝罪も無しかラーイエロー!!“

 

 “格下如きが、カイザーにデュエルしてもらえるだけでも生意気なんだよー!!“

 

 “無様に負けろ人でなしー!!“

  

 流石はカイザー。人気が凄い。おかげで五月蝿いヤジが飛び交う飛び交う。あと最後の奴は多分俺にボコされたやつだろうな。

 

 ま、どうでもいいや。さっさとやって終わらせて……

 

 

 

 

 

 「ーー騒ぐな!!!!」

 

 

 

 

 

 一喝。まさにその言葉が相応しいだろう。カイザーがたった一言放ったその言葉で、観客席のフーリガン共が一斉に口を閉じた。

 それにしても、まるで解釈違いの行動だな。

 

 「……亮??」

 

 長い付き合いであろう天上院明日香ですら、呆気に取られている。

 

 丸藤亮が、まるで帝王が号令でも出すかのように命令するような口調で言葉を発した場面なんか、ヘルカイザーの時ですら覚えが無い。

 

 「全員黙って見ていろ! オベリスクブルーの帝王(カイザー)、丸藤亮のデュエルを!!

 

 そして、ラーイエローの(キマイラ)、虚路居偽遊のデュエルを!!」

 

 「………………お兄さん……?」

 

 

 「この決闘(デュエル)は、遊びじゃないんだ!」

 

 そう観客席に言い放つと、カイザーはデュエルディスクを構えて、俺に向き直った。

 

 なんだ? このシリアスな空気は? 何だ、あの闘志は? まるで……

 

 「まるで、決闘だ」

 

 「そうだ。決闘だ!」

 

 俺の独り言に、カイザーは応える。なんとも熱い眼差しだ。知らない。全く知らない…………。

 

 

 「全く知らない、キャラ崩壊(丸藤亮)だ。フッ……」

 

 

 感じる。燻っていた、決闘者としての魂の燃えカスに、火が灯っていくようだ。

 

 これまでの流れも何もガン無視で、物語のご都合(フラグ)などお構いなしに。

 

 でもしょうがないよな。男は幾つになっても成長しないって言うだろう?

 

 「準備は良いか!!」

 

 「ああ、駄目だ。全然駄目だ……男の子だぜ?

 

 そんな()で誘われちゃ……盛り上がっちまうに決まってる!!」

 

 

 周りのことなんて知るか、理解など不要(むかち)。男同士の戦いなんざ、本人たちの自己満足だけあればそれで良い!!

 

 

 

 「行くぞ、キマイラ!!!」

 「来い、カイザー!!!」

 

 

 

 

 「「ーーデュエル!!!!」」

 

 

 

 

 




予定だともっとこう……後味悪そうな展開になるつもりだったのに、何かカイザーが急に吠え出したんですよね。何があったんだろう?
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