遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜 作:SOD
「……………………よし。出来た、お兄さんと戦うための、僕のデッキ」
肩で息をしながら、丸藤翔がつぶやく。
ボロボロな姿で立つ翔の足元の土には、彼の汗と涙とその他もろもろが染み込んでいる。
それでも、デュエルディスクとデッキだけは汚れていなかった。
「はぁ~やっとかぁ。長い拘束時間だったよ。時給にしたら幾ら儲かってたやら……」
「まったくですぅ、何の得にもならないのにこんなこと。ウサギもボスのお人よしがうつったですぅ……」
そして、ここまで代わりばんこに翔のデッキの調整に付き合っていた火武羅遊乃とウサギもドリンクを吸いながら愚痴を零す。それでも疲労の色を見せつつ、2人は笑顔だった。
「二人とも、本当にありがとうございました! おかげで、最高のデッキが組めました。
これで、お兄さんと戦えます!!」
「うん、そうだね。今までと比べても良いデッキになったと思うよ。
全力で戦ってきなよ。負けたことは気にすんな。挑んだことに意味があったんだよ」
「そうですぅ。努力じゃどうにもならないことはあるですぅ。
今日の敗北は、次のデュエルの力にすれば良いってボスも言ってましたぁ」
「まだ敗けてないが!? 何で玉砕しに行く感じで送り出そうとしてるんすか!??」
「「その意気だよ(ですぅ)」」
「へ?」
「校長室の時のキミなら、その言葉は出なかったんじゃない?
わがまま、
「ボスとやりあって、日に日に力を増しているカイザーは、眼鏡くんが入学した日の彼とは比較にもならない程強くなってるですぅ。
それでも敗北前提の気持ちにならないのは進歩ですねぇ」
「二人とも…………」
「銀の弾丸を撃ち込んで来なよ。ドラマチックは常に、逆転の致命傷を待ってるよ!」
「襲う時は寝込みか背中ですぅ。卑怯汚いは敗者の戯言。勝利に向かってドロップキックです!」
「--うすっ!!」
卒業模範デュエル当日。
「ついにこの日が来たな。カイザーと翔の兄弟対決。偽遊にデッキの相談をしていたみたいだったが、果たしてどんなデュエルになるのか……楽しみだな」
「フン。せいぜい情けないデュエルだけはしないで欲しいもんだぜ。この万丈目準の認めた、ライバルとしてな」
「翔はこの日の為に、滅茶苦茶特訓してたからな! きっと最高のデュエルになる筈さ。くぅ~ワクワクしてくるぜ!!」
「翔、オレも応援してるんだなー気張れー!」
≪レデイ―ス&ジェントルメーン。只今より、デュエル・アカデミア今期最後の公式戦。卒業模範デュエルを始めるノーネ!≫
クロノス教諭により始まりのゴングが予告される。
戦うべきデュエリスト達は既に戦場に立っている。
「…………翔、一年前はまさかこんなカタチでデュエルをすることになるとは思っていなかった。今はお互い、ただの一人のデュエリスト。兄弟の情に手を緩めはしまい。
--着いて来れるか。オレのエヴォリューションに!!」
「…………お兄さん。僕はお兄さんこそが最強のデュエリストだと信じて疑いませんでした。
でも、
--見ててください。僕のデュエルを!!」
≪両者とも、悔いの無いデュエルをするノーネ! それでは、デュエル開始ナノーネ!!≫
「「--デュエル!!!!」」
丸藤翔 LP4000
丸藤亮 LP4000
「僕のターン、ドロー」
「翔のヤツ、カイザーを相手に先攻を取りやがった。何か策があるんだろうな?」
「心配は無いだろうさ。翔は、この学園の誰よりもカイザーのデュエルを見て来た筈だ。その翔が本気で戦うために先攻を選んだ。無策ってことは無いだろう」
「それでも、オレなら多分後攻を選んじゃうだろうな~翔のヤツ、自信はバッチリって感じだな!
頑張れよー翔ー!」
「僕は、手札からスチームロイドを召喚」
スチームロイド ATK1800
(翔は以前と変わらずビークロイドのデッキ。しかも、攻撃を受けると攻撃力を500下げてしまうスチームロイド。
昔なら、それでターンエンドと言ったところだったな)
「そして、手札から永続魔法『魔法吸収』を発動。魔法カードが発動する度に僕はライフを500ポイント回復する。
そして、ライフ2000ポイントをコストにして、スチームロイドを対象に、手札から魔法カード『超逸融合』を発動!」
丸藤翔 LP4000→2000→2500
「このカードは先ず、対象モンスターと同じ地属性で機械族で、レベルが異なるモンスターをEXデッキから特殊召喚する。
スチームジャイロイドを特殊召喚!」
スチームジャイロイド ATK2200
「おお! いきなり翔のフェイバリットが登場だぜ!」
「そして、特殊召喚したモンスターと対象のモンスターで融合召喚を行う!
融合召喚。レベル10、スーパービークロイド-モビルベース!!」
スーパービークロイド-モビルベース DEF5000
「守備力5000の融合モンスターなんだなあ。あれならサイバー・エンド・ドラゴンでも、簡単には突破されないぞ!」
「しかし、モビルベースは相手の場のモンスターの攻撃力以下のロイドモンスターを特殊召喚するモンスターだ。
厳しいことを言えば、現状壁モンスターとしてしか役割を持たない。
ライフ2000と言う、大きすぎる代償を払ってまで、先攻第一ターンに召喚するべきモンスターだったのだろうか?」
「まだまだここからっす! 手札から『コンベックス・ナイト』を守備表示で特殊召喚」
コンベックス・ナイト DEF500
「コンベックス・ナイトは、特殊召喚した後に自身のレベルを他の機械族モンスターのレベル、またはランクと同じにすることが出来るっス。
よって、コンベックス・ナイトのレベルを10に変更!」
「あの防御重視の立ち回りばかりだった翔が、随分とノッてるじゃねえか。フフフ」
「コンベックス・ナイトの効果発動。デッキから地属性・機械族モンスターを墓地へ送る。
僕は『無頼特急バトレイン』を墓地へ送る。
そして、手札から魔法カード『アイアンドロー』を発動。
機械族モンスターが二体のみ僕の場にいるので二枚ドロー。そして魔法吸収でライフを回復」
丸藤翔 LP3000
「これで、超逸融合で払ったライフコストを半分まで取り戻したんだなあ! 良いぞ、翔ー!」
声援を送ってくれた隼人に笑みで応えながら、翔がEXデッキに手を伸ばす。
「僕はレベル10の『スーパービークロイド-モビルベース』とレベル10の『コンベックス・ナイト』でオーバーレイ!!
エクシーズ召喚! ランク10 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス!!!!」
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス DEF3000
「「「「「エクシーズ!!!!」」」」」
声が同時に響いた。十代の、万丈目の、三沢の、隼人の、亮の声が。
”エクシーズ!?”
”オシリスレッドの癖にエクシーズ!?”
そして、かつてアカデミアに新たな王が誕生した瞬間を目撃した者達の声が細々と上がる。
「これが、今の僕がたどり着いた通過点!!
グスタフ・マックスの効果発動。オーバーレイユニットのモビルベースを一つ取り除いて、相手に2000ポイントのダメージを与える!!」
(--っっ!! これは……!!)
丸藤亮 LP2000
凄まじいダメージが自身を襲う中、亮の脳裏には赤い革ジャンの女の姿がよぎる。
「なるほど……翔。お前は、偽遊以外にも力を貰ったんだな」
「はい。せっかく先攻で自由に動けるのに、防御の準備だけじゃもったいないって言われたので。
僕はカードを伏せて、エンドフェイズへ入ります。
墓地の『無頼特急バトレイン』の効果発動。デッキからレベル10・地属性・機械族のモンスターを手札に加えます。
僕はデッキから『夜行列車ブルートラベラー』を加えます。ターンエンド」
丸藤翔 LP3000
手札 3枚(夜行列車ブルートラベラー)
場
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス DEF3000(ORU×1)
伏せ1
丸藤亮 LP2000
手札5
「オレのターン、ドロー!」
丸藤亮のターン。万感の思いが右手に宿りデッキからカードを引き抜く。
(先攻で僕がやるべきことは全てやり切った。次はお兄さんのターンを凌ぎきるっス!!)
「相手の場にのみモンスターがいる場合、手札から『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚出来る!」
サイバー・ドラゴン ATK2100
「さっそく来た、サイバー・ドラゴン!」
「オレの場の『サイバー・ドラゴン』と翔の『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』を墓地へ送る!」
「この召喚条件は--!!」
「出でよ『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』!!」
キメラテック・フォートレス・ドラゴン ATK2000
「カイザー、いきなりフォートレス・ドラゴンを使うのか!?」
(キメラテック・フォートレス・ドラゴンは、機械族モンスターを問答無用に自分の力として吸収するモンスター。
翔のデッキに対しては絶対的なアドバンテージと逆転能力を持つモンスターだ。それをこんな再序盤に召喚するとは……なんという思い切りだ)
「行くぞ、翔!! キメラテック・フォートレス・ドラゴンで翔にダイレクトアタック!!
エヴォリューション・リザルト・アーティアリー!!」
フォートレス・ドラゴンの車輪の体躯から攻撃用の機械竜が出現し、翔に電子の一撃を放出する。
「リバースカードオープン。『進入禁止!
フィールドの全ての攻撃表示モンスターを守備表示に変更する!」
キメラテック・フォートレス・ドラゴン DEF0
「良いぞ、翔! カイザーの攻撃を防いだんだなあ!」
「そんなわけがあるか。あの男がそんなに単純な筈は無い!」
「手札から、速攻魔法『表裏一体』を発動!
闇属性・機械族・レベル8の『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』を生贄に、EXデッキから光属性・機械族・レベル8の『サイバー・ツイン・ドラゴン』を特殊召喚!!」
サイバー・ツイン・ドラゴン ATK2800
「サイバー・ツイン・ドラゴン……!! モンスター・プレイヤーを問わず二回攻撃が出来る、カイザーの準エースだぜ!」
丸藤翔 LP3000→3500
「行け、サイバー・ツイン・ドラゴン! エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
「うわああああーー!!!!」
丸藤翔 LP700
「これで終わるのか、何か手があるのか? 見せてみろ」
「僕がダメージを受けたことで、手札から『
このカードを特殊召喚する!」
「身を護るだけの一手か。それだけでは、オレ達の領域には踏み込むこともままならない!!
サイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃。エヴォリューション・ツイン・バースト、第二打!!」
サイバー・ツイン・ドラゴン ATK2800 VS
壁として召ばれたOMKガムは一瞬で塵となり、翔のフィールドは更地と化した。
「ぐっ……! 分かってる。今の僕じゃ、お兄さんや偽遊くん。遊乃さんや
でも、それが挑戦しない理由にはならないんだ!!」
「それで良い! 全力で向かって来い!!
オレのエヴォリューションを、背中で置き去りにするその日まで!!」
「はい!! お兄さん!!
僕と僕のデッキの全てをぶつけます!! そして、いつか辿り着くべき
観客席にて
遊乃「ところで偽遊さん今回どこ行ったの?」
ネズ「ちょっと忙しいから遅れて来るんだそうだぞ」
ウサギ「正確には『行けたら行く』だそうですぅ」
遊乃「来ないやつぅ……それじゃあアイアイは?」
マナ「裸で抱き合うの代案として、『暫く偽遊さんに引っ付いてて良い権利』を獲得したから離れたくないんだって」
遊乃「ドアインザフェイスかぁ。いや、最初は抱きしめてもらうだけだったところから四六時中引っ付いていられる権利に昇華したんだから、むしろドアでっかくなってるね。
やるなアイアイ。友達じゃなかったら焼いてるとこだよ……」
マナ「それは焼きもちの方だよね? 物理的に焼かないよね??」