遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜 作:SOD
「スパーク・フラッシュ!!」
「ドゥーブルパッセ!!」
ハロー現世。現在は深夜。目の前にはボートに乗ってデュエルする男女。そう、サンダージャイアント初登場のあの回の真っ只中だ。
原作通りクロノスに狙われた十代を狙った偽ラブレターに誤射されたイキリチビ……丸藤翔くんのヒーロー・シグナルを受けた十代は、このクソ真っ暗な空の下、わざわざ助けに向かった。俺は何故かそこにお呼ばれされたので、安眠と生で観れる原作デュエルを天秤にかけた結果、皿が地面にめり込んだデュエルを選んでの同行、観戦中だ。
ここで俺は一つの発見をした。なんと今、天上院明日香が使った罠カード『ドゥーブルパッセ』はOCG版だ。ライフ4000でこれは強い。なにせ自分のモンスターの攻撃力分のバーンダメージを与えた上で次のターンは直接攻撃出来るのだから。
エトワール・サイバーの1200に加えて直接攻撃の1700、計2900ダメージ。これは酷い。
「サンダー・ジャイアントの効果発動! 手札を一枚捨てて、サンダー・ジャイアントより元々の攻撃力が低いモンスター一体を破壊する!! レイパースパーク!」
「サンダー・ジャイアントもか……これはもしかしてこの世界のカード、全部OCG版なのでは? アルティメット・ゴーレムの時は普通に素材がゴーレム三体だったから気にしてなかったけど」
まあ、今はいいか。サンダー・ジャイアントが出たから、後は明日香のキャーな悲鳴を聞いてゲームセットだ。
「きゃあああああー!?」
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
さてと、後は別にどうでもいい荷物を回収して帰りますかね。見たいものは見れたし。映画とかでもそうだけど、見てる時は楽しいのに、見終わると妙に心が冷めてることない? 俺だけ?
「じゃあ、そこのアホ太郎君回収しますね〜」
「あ、アホ太郎!?」
「アホだろ。ラブレター贈ってくる相手が男子禁制の場所に呼び出して来るとかいう見えてる
「う……それは……」
「これに懲りたら反省しろよ翔。俺らにはある日突然学年で一番美人な女生徒がラブレター送ってくるようなミラクルはない。
お前に優しい女は誰にでも優しい。これは非モテ心の涙連合の絶対の不文律だからな」
「何スかその悲しすぎる連合!? そんなのに入るの嫌ッスよ!!」
「諦めろ、翔。入るとか入らないとかじゃない。モテない男はみんな非モテ心の涙連合なんだ。俺たちラーバモスの進化の繭は、攻撃表示じゃ生きられねえ。支え合って守っていくしかねえんだ」
「嫌だああああああああーー!!」
「こんなとこで騒ぐなウンコ食わすぞ。俺らここにいるのバレたら退学だってこと理解してないのかお前は」
そんな頭の悪いじゃれ合いをしながら十代が戻ってくるのを待っていると、先に天上院明日香のほうが戻ってきた。その途中で何かオッサンが頭を打ったような声が聞こえた気もするけど多分気の所為だとおもいました。
「お待たせ二人共! 俺勝ったぜ!」
遅れて戻って来た十代は、アニメ通りの満面の笑みでピースしている。ダメージレース的には大分不利を被っていたが、そこはドレインシールドや非常食と悪夢の蜃気楼コンボで帳尻を合わせていた。俺も使ってみたいコンボではあるけど、タダでさえチート同然のデッキを使っているのに現世でも未来永劫ぶち込まれているであろうチートドローカードまで使うのは、不動のデュエルの権現坂さんだって助走つけて殴ってくるレベルの非道だ。
(これは手抜きじゃない。自重と言うのだ。そもそも強欲な壺も天使の施しも第六感も使えるこの世界で、現世のカードプールもジュラルミンケースに入ってる俺が本気で勝ちに爆走すれば、ドロソ爆盛エクゾディアを握るのは必定。そんなオリ主は殺されたって文句は言えない。だからこれは手抜きではなくーー)
「ねえ、ちょっといいかしら虚路居くん」
「え?」
不意に天上院明日香に声をかけられた。初めてまともに顔を見たが、整ってるなこれは。ジョインがアイドルさせたくなるわけだ。
「クロノス先生を一方的に倒した貴方の腕前も是非体験してみたいのだけれど、よかったら私とデュエルしない?」
おいおい主人公とデュエルしたばっかだってのに俺ともやりたいって? ゲームは一日一時間、ソリッドビションデュエルは一日一回って鉄則を知らないのか。そもそも今何時だと思ってんだこの乳袋ちゃんは。
「あ、俺デッキ持ってきてないんで帰りますすんませんさよなら」
「え? あ、ねえちょっと!」
「じゃあ十代俺帰るから!!」
「おい待てよ偽遊ー! 翔、帰るぜ!」
「待ってよアニキー!」
はっきり言って俺は天上院明日香とデュエルする気は無い。だって絶対に弱いやん。本編で手札に『マインド・オン・エア』とか言うマニアックなオカズモンスターが映ってたような女だぞ。下手したら機械天使すら採用されていない可能性がある。
そして何より……キマイラで食い散らかすには、その……分かるだろ? 女性型モンスターだぜ? 効果だって消し去るからサイバー・ブレーダーだってぐっちゃぐっちゃだぜ? サイバー・チュチュとかにけしかけた日にはお前…………なぁ?
そうしてその夜は特になんのことも無くイエロー寮に帰って眠り、その後も特になんということも無く過ごした。
そして現在は第4話目。月一試験の日。分かりやすく言えば、万丈目さんのVWXYZ召喚童貞卒業記念日。『あんな激重モンスター出してなきゃ勝ってたろうに……あーあ』の日だ。
大抵こう言う所に転生してきたやつは主人公と一緒に戦うとか、好きな展開に成るように操作するとか、あるいは原作通りに進むように奮闘するとかするんだろうが、俺は別に何かしたくてここに来たわけでは無いので、気が向いたら原作展開を鑑賞したり、
デュエル? ああ、もう飽きた。だってデュエル・ディスクでデッキを回転させるの地味に手間なんだよ。一回一回ディスクにカードセットして発動。そのあとも一回一回ディスクから外して墓地へ送る。この動作を一手打つごとに強いられるので割とうんざりしている。いやほんと、ティアラメンツとか斬機とか持ってきてなくて本当に良かった。でも欲を言えばラビュリンスかエルドリッチ辺りを持って来たかったってのが本音だ。アレなら展開しなくていいし。
そんなわけで、もうデュエルとかわざわざ自分から行かなくていいなーとか思っていた今日この頃…………。
「フフフフフ…………っ!! この時が来るのを待っていたぞ、虚路居偽遊!! ついに貴様をこの手で倒せる……っっ!!!!」
俺は、実技試験の相手として万丈目さん(目が血走って興奮気味)と対峙していた。
ねえ、十代の相手はどうしたの? 決着着けなくていいの?
「それでーは、実技試験デュエルを始めるノーネ」
「すいませんクロノス先生、ちょっと良いですか?」
「何ですノーネ? シニョール偽遊」
「何故私の相手がオベリスクブルーの生徒なんでしょうか?」
お前初期は十代アンチやったやんけ何でわざわざ俺に万丈目ぶつけてきたんだよ。
「ソレはモチロン、シニョールが優秀な成績をーー」
「俺の成績が受験番号第一位の三沢大地より優秀だとおっしゃるのですか?」
「うぐっ!?」
「そんなわけありませんよね? 私が彼にテストの点数で勝っていたことなど無い筈です」
「ぐぬぬ……」
なんたってこっちとら元社畜童貞。底辺のゴミだ。言うまでもなく前世の知能も底辺級。遊戯王のデュエルに関する知識ぐらいしかまともに使える物はない。なんならテスト内容にバニラモンスターのフレーバーテキスト記入枠とか言う、歴史の登場人物の名前書くより難易度高い問題があった時点で2割は空欄だ。国数英社理決のいずれの項目であっても我らの
俺を三沢大地より優れた点数にしたいなら、点数上限無しのプリキュアのテストでも持って来い。
「クロノス先生、これはどういうつもりなのですか? 場合によっては校長先生に直接お尋ねすることになりますが?」
「いっ!? そ、それは困るノーネ!!」
「………………」
俺は思いっきり白い目でクロノスを見つめた。思いっきり脂汗を掻き始めた。高校生と思って舐めていたんだろうが、こっちとら失うものも無ければ法律に甘やかされる学生の身分を持った汚い大人だ。どうすれば困るかなんて、文字通り身を持って知っている。
「どうした虚路居!! アレだけこの万丈目さんをコケにしておいて……逃げられるとは思っていないだろうな!?」
万丈目さんが何か言っているが、少し待ってほしい。今大人の話をしているから。
「……………………」
「うぐぐぐぐぐ〜〜…………!!」
「偽遊!!」
「〜〜〜〜!!」
これだけ睨みを効かせておけば取り敢えず良いだろうか。
「クロノス先生、
貸し、つまり今回言うとおりにしてやる代わりに後日言うことを聞いてもらうと言外に宣言して、俺は万丈目さんと向き合いデュエルディスクを構えた。
「ーーほっ……」
あからさまに安堵した表情で胸を撫で下ろしたクロノスは、再度デュエル開始の宣言をした。誤魔化せたと思ったなら心底甘いぜ。なんせこっちは既にアンタの直筆の手紙(キスマーク入り)も押さえてるんだ。筆跡鑑定にDNA鑑定が太鼓判を押す、強力な生徒に対する不祥事の証拠をな…………フフフ。
「来年までにたっぷり証拠を押さえておかねえとな。なにせデュエル・アカデミアも俺の就職先候補の一つだ。5Dsのアンティーク・ギアの扱いを考えれば、強請れるネタは拾っとくに越したことはねえ。
俺の二度目の人生の為に、しっかり働いてもらうぜェ……クックックックック」
「何をゴチャゴチャ言っている! さあ、デュエルだ!!」
「あ、はい。どうぞ」
「「デュエル!!」」