遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜 作:SOD
夜。それは犯罪者が最も好む闇のフィールド。罪を咎める光も無ければ、理性を呼び覚ます人の目も塞ぐクズの温床。
「よう、犯罪者。暗視カメラにしっかり顔が写ったぜ」
「ーー!!?」
例の灯台部の逢い引き場所に、無粋な影が二つ。人のカードを捨てるカスと、面白半分で人の運命を翫ぶゴミクズ。どちらもまるで生きる価値を感じないひとでなしだ。
「夜に他寮に侵入し、ペンキ塗りたての部屋の前に置かれた机からカードを窃盗し、挙げ句それを投げ捨て海を汚した。
侵入罪は多めに見るとして。それでも窃盗罪に、器物損壊罪、ポイ捨てに自然破壊。下手すりゃ海の生き物が間違って食って間接的な殺生。満貫だぜ、万丈目準」
「…………
憎々しげに俺を睨む万丈目。盗人猛々しい話だが、所詮去年まで中防。右手が恋人の坊主の逆恨みだ。大目に見よう。アレ、なんか涙が……。
「俺がコイツをクロノスに……いや、学園中に観られるようにしとけばそれでお前はおしまいだな」
「ぐっ……!! お、オレに何をさせたい……?」
おお、良い子だ。腐っても大企業のボンボン。交渉に関しては余分な説明が要らないのは楽でいい。
「まずはその捨てたカードを拾え。話はそれからだ」
「バカなっ! この暗闇で海に潜れってのか!?」
「お前が撒いた
「ぐっ…………くそっ!!」
ドボーン。追い詰められると発揮する根性でマジで海に潜っていく万丈目。夜の海に潜るとか普通死ぬけど、まあ、デュエリストだしなんとでもなるだろ。城之内くんなんて、夜のプールから夜のフェリーまで飛び込んで無傷だったんだ。灯台から飛び込んで死ぬとか甘えも良いところだ。なんなら城之内くんはお前みたいに自業自得じゃない。世界一美しい友情の形の一つだ。
「ハァ……ハァ……ハァ……!! よ、よんじゅう……まい。これで満足か!」
「は? 何イキってんの? テメェのケツをテメェで拭くのは当たり前だよなぁ? それとも吹いてほしいのか? 尻晒すか? おん?
俺の用事はこれからだよ」
「く……くそっ……!」
「とっととついて来い。こんなとこで二人でいるとこ見られて腐った勘違いでもされたらかなわん」
デュエルアカデミアに腐女子がいない保証も無いしな。なんならモモエが怪しい。
そんなわけで移動したのは森の中。例の翔を修業した場所。ジープの近くだ。
「こ、こんなところにオレを呼び出して……何をしようって言うんだ」
「そうだな。ホモのお友達でもいれば面白半分で掘らせて心をへし折ってもいいんだが、そんなことしても良いこと無いしな」
ぶっちゃけ俺的には万丈目がノースに行く意味って、『サンダー』って渾名が付く以上には存在しないんだよね。アームド・ドラゴンくらいなら俺持ってるし。なんならサンダーアームドもあるので、そこからサンダー名乗らせるのも面白くはある。
「…………っっ!?」
万丈目が尻を庇いながら後ずさる。オイオイ止せよ。俺にそっちの趣味は無いが、弱味を見せられると虐めたくなるだろうが。
「お前に拒否権や人権があると思うのか?」
「ま、待て! それだけは……!」
「お前、いい声で鳴きそうだな」
「ひいっ!?」
ついに恐怖と嫌悪感が限界を迎えたのか、万丈目が尻尾を巻いて逃げようと走り出す。
「いいのか? ここで逃げたらお兄ちゃん達に迷惑がかかるぜ?」
「ーーっっ!? お、お前なんでそれを知って……!?」
「いいのか? そんな態度で。俺はいつでもこの映像を使えるぞ? 政界の人間が、身内に犯罪者がいるなんて知れたら……どうなるかなぁ」
「あ……ああ……!!」
「ほら、こっちへ来い。ポチ」
「………………………………分かった」
すっかり元気を無くした万丈目が、肩を落としてこちらへ歩いてくる。
「因みにデータはもう他のところにメールで送ってるから、余計なことしても無駄だぞ」
「………………オレに、何をさせたいんだ」
それまで僅かに残っていた気概が死んだニオイがした。
さて、充分遊んだし本題に入ろうか。
「うむ。では万丈目。お前は明日この最強のユニオンデッキを使って三沢と戦え」
海に物を捨てたらちゃんと拾う。これはケジメです。