遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜   作:SOD

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 今回は主人公の過去の独白の回です。

 果たして信用出来ない語り手の語る過去話(よたばなし)とは


虚路居偽遊の過去(こどう)。虚ろな瞳の(クズ)

 

 

 「ハァ……ハァ……ハァ…………ッッ。おうぇっ!」

 

 しばらくお待ちください。Nice boat.

 

 とうとう吐いたよ……胃袋が痙攣してる。ひっくり返りそうだ。つーか、ヤバい。疲れた。もう寝たい。むしろ死にたい。

 

 「おうえええ〜〜吐いたぞコイツ! きっったねぇ〜〜!!!!」

 

 「………………」

 

 耳鳴りもして来た。なんか雑音が響いてる気がするけど、音声が分析出来ない。脳みそが処理できてない。気持ち悪い。吐きたい。胃袋ごと吐き出したい。

 

 ああ、そういやケツからエアーぶち撒けられた時に、糞が逆流して口から出すって言う感激の体験をしたんだったな。こればっかりは遊戯王オリ主で唯一俺だけの個性かもしれない。

 後は、赤ん坊の頃に親に森に捨てられて、身体に張ってきた虫を歯もない口ですり潰して喉を癒やしたくらいか? 熱とか下痢とかヤバいから、良い子は真似しないで欲しい。

 

 前世は誰も助けてくれない世界だった。だから俺も誰かを助ける気のない人間だった。ああ、とっても正常だ。無論皮肉だ。

 世界が糞だから、俺が糞でも正常。だから生きていることに、後ろめたさなんてない。

 

 

 でも……この世界は違った。

 

 清廉潔白に生きる主人公がいる。  

 

 親友の為に動かずにいられない奴がいる。

 

 兄の為に夜ふかしも辞さない少女がいる。

 

 我が子の為に黙って面倒を受け止める人がいる。

 

 見れば、見るほど。見るだけ。見せつけられた。

 

 

 

 一方こちら。俺というゴミそのものな存在。

 客観的に見ても何で生きてるんだこんなゴミって感じ。死んだほうがいい。いや、生まれるべきじゃなかったんだ。

 

 だってこんなに辛いんだ。だってこんなに苦しいんだ。

 

 頭も痛くなってきた。

 

 俺自身が俺の生存を望まない。ただ死ぬのが怖いだけ。怖いから死ねないだけ。産まれなければ死なずに済んだのに。でも産まれたからには死なないと。

 

 だって、俺はあの糞の世界だったからこそ。同族だらけのゴミ箱のような世界だったからこそ。生きていることを見逃される存在なんだから。

 

 

 事実。()()()死んでいれば、レイだってこんなことにはならなかった。

 

 事実。()()()死んでいれば、十代も亮も巻き込まずに済んだのに。

 

 いいや、そもそもこんなこと自体起こらなかったんだ。俺と言う、生きる価値も無い産業廃棄物が、この世界を犯した。

 

 

 

 

 

 

 「ハハッ………………ほんとさ。どうして産む必要があったんだよ。顔も知らねえ親父にお袋さんよお。

 

 森の中で破棄する命なら…………産まなきゃ良かったじゃんかよ。

 

 意識のないうちに、殺してくれても良かったじゃんかよ…………」

 

 

 「…………偽遊チャン…………」

 

 「…………はぁ………………」

 

 良し。そろそろ、蹲っていた身体を立ち上がらせろ。

 俺にはまだ仕事が残っている。愚痴なら地獄で言えばいい。野ざらしになって腐り落ちていくであろう身体と共に、この存在を終了させる日までが仕事だ。

 

 元社畜の数少ないメリットは、死ぬまで働くのに邪魔なリミッター。生存本能を無視出来るスキルがあることだ。

 

 (しかし困った。めぼしいカードは全て吐き出してる。

 メインデッキはサーチの時に全部把握したが、もうまともな戦力を出せるカードが無い)

 

 獣王アルファはピン刺し。ビーステッドは相手のデッキが分からないから未採用。墓地にリソースももう無い。しかもダーク・シムルグがいるから壁モンスターすら出せない。

 ……ぬう。

 

 

 「………………なあ、平等院」

 

 「ええ、どうしたの?」

 

 「今からでも俺とレイの役割入れ替えられないか?」

 

   

 俺がそう言うと、前と背後で同時に声が聞こえた気がする。

 まだ耳鳴りしてるので、相変わらず聴覚がバカだが、辛うじて声の分析は出来る。

 

 「どういう意味?」

 

 「あー……ほら、原作でもデュエルしてた本人達は両方無事だったろ?

 だから、俺が消えるからレイを助けてくれないか?」

 

 「!? 何言ってるの偽遊!! そんなの駄目だよ!」

 

 背後からレイの声が響くが、後方からの音はイマイチちゃんと聞き取れない。罵声とかだったらちょっと泣くかも。

 

 「……………………」

 

 「どうだろう、平等院」

 

 「………………それは無理よ。

 いいえ、正確には『その場しのぎ』をしたところで、結局レイちゃんはここから出られない。

 爆発に巻き込まれて死ぬ末路が変わってない。助けられていないのよ、偽遊チャン」

 

 「………………そうか」

 

 思い瞼をなんとか開けて、霞んだ視界で生徒手帳の時間を見る。

 残り時間、10分。

 

 「…………十代なら、或いは…………」

 

 「忘れたの? 彼は地下よ。今から来ても間に合わないし、何よりあそこから出る手段は無いの」

 

 「………………まいったな……ホントにもう詰んでるんだよな。

 急ごしらえでライフゲインを抜いて、防御カードを積み過ぎた。

 

 マジで主人公に縁が無いぜ……俺。ハハ……。

 

 もうこうなっちまうと、俺に出来ることって…………」

 

 俺は身体を後ろに向ける。なんかもう平衡感覚も駄目になってるわ。足取りが雑魚。

 

 

 

 

 

 情けない姿を晒して、レイに向き直る。

 

 「…………ごめん。レイ。

 

 俺は君を護れなかった」

 

 「………………偽遊っ」

 

 「せめて、未来あるキミの命を護りたかった。ごめん」

 

 「…………仕方ないよ。亮サマだって勝てなかった相手だもん。

 

 それに、偽遊は凄かったよ。偽遊は、ボクの知ってるデュエリストの中で一番強かった。ありがとう」

 

 なんて優しい言葉だ。報酬では無い言葉…………。

 

 

 「…………ありがとう。レイ。

 

 

 …………何かを出来なかったのに、褒められたのは初めてだ」

 

 

 そんな無償の優しさを貰えるなんて。ロクでなしには恵まれ過ぎた最期だ……ああ、いい人生だった。

 

 「………………。

 

 そうなの? お父さんやお母さんが褒めてくれたりしなかった?」

 

 

 「…………フフ。ああ。そうだね。そんなこともあったのかも知れないね…………」

 

 最後になるんだ。俺の生い立ちなんて、あと数分で死ぬ子どもに聞かせるような話じゃない。嘘でも何でも、優しさを騙ろう。

 

 「……………………………………………………。

 偽遊、こっち来て。ボクは動けないから」

 

 「ああ。何でもしよう。最後だから」

 

 

 左右にブレる足を前に出して、レイの元へ。

 行こうとしたが、足がもつれて転んでしまった。力が……入らない。

 俺の身体は、レイの小さな身体に重く伸し掛かった。

 

 「………………ごめん。マジでもう……力が………………」

 

 

 だっせえなぁ……男としても、大人としても。デュエリストとしても。終わってる…………本当に、終わった……………………。

 

 

 「お疲れ様。偽遊。

 

 ………………最後だし、ちょっとだけわたしからサービスしてあげるね」

 

 

 何だ……? どうしたって……? 頭でも撫でて貰えるのか?

 いいねえ…………実はすっげえ羨ましいなぁって、思ってたんだよ。

 アハハハ。

 

 心臓の鼓動が静かになっていく。おかげでレイの言葉がちゃんと聞こえそうだ。

 

 

 最後に、一言……何かを言って欲しい。レイ…………声を、聞かせ……て。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 視点:早乙女レイ

 

 

 

 

 「…………ありがとう。レイ。

 

 

 …………何かを出来なかったのに、褒められたのは初めてだ」

 

 そう言った偽遊は、泣きそうな笑顔を浮かべていた。

 ううん。本当は笑顔なんかじゃない。今にも眠ってしまいそうな虚ろな目だったし、浅い呼吸をするたびに、倒れそうになってる。

 息を吸う反動で、転びそうになっているみたいだ。

 

 でも、分かる。偽遊はいま、喜んでる。

 でも何で?

 

 「………………。

 

 そうなの? お父さんやお母さんが褒めてくれたりしなかった?」

 

 「…………フフ。ああ。そうだね。そんなこともあったのかも知れないね…………」

 

 息をするのも辛そうなのに、声に優しさが混じる。でも無理をしたから、もっと呼吸が荒くて浅くなった。もしかして、あんまり酸素を吸えていないのかもしれない。

 

 なのにそんな無理をしたのは、お父さんとお母さんがいないって言わないようにするためなのかな?

 

 何もしないけど褒められるって…………そんなに珍しいことじゃなきゃいけないのかな……?

 

 こんなに…………ボロボロになってるのに。

 

 せめて、最後にボクがいっぱい褒めてあげたい。

 でも何て言ったいいのかな? いざ何もしてないけど褒めようってなると難しいかも。

 感謝の気持ちはあるけれど、それって偽遊が喜ぶ言葉じゃないと思う。

 

 ………………うーん。偽遊の喜ぶ言葉…………あ。

 

 

 

 

 

 

 

 『俺と亮の生徒写真。亮の部分だけ切り取って帰りに印刷してお土産にしたげるね。血の涙を流しながら』 

 『わあ本当ですか! 偽遊先輩大好き!』

 『じゃあご褒美にお兄ちゃんと!!』

 『それは嫌です』

 『(´・ω・`)』

 

 

 

 

 ……………………よし。

 

 

 

 

 「偽遊、こっち来て。ボクは動けないから」

 

 「ああ。何でもしよう。最後だから」

 

 フラフラになりながらボクのところに来てくれる偽遊。でも、本当に限界そう。

 

 「………………ごめん。マジでもう……力が………………」

 

 やっぱり辛かったんだ。転んでボクの肩に覆いかぶさるようになって、起き上がることすら出来ないみたいだ。

 それに……何故かとても軽い。不安になるくらい。

 もしかしたら、ボクが偽遊に護られている間に、偽遊はずっと別の何かとも戦っていたのかな……? 

 

 

 「お疲れ様。偽遊。

 

 ………………最後だし、ちょっとだけボクからサービスしてあげるね」

 

 顔は見えないけど、嬉しそうなのが分かる。それじゃあ。最後にもっと……喜ばせてあげるね。

 

 

 うーん………………やっぱり恥ずかしいから、耳元でこっそり言おう。

 

 

 

 

 「頑張ってくれてありがとう。カッコ良かったよ。

 最後までボクが一緒にいるから、ゆっくり休んでね。

 

 

 …………お兄ちゃん、大好き」

 

 

 

 

 





 その時、その場の全員の鼓膜を撃つほど大きな『ドクン!!!!』という心臓の鼓動の音が鳴り響いた。

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