遊戯王GX〜社畜童貞のオッサン、糞上司の悪意でキマイラと共に転生する〜 作:SOD
代表選手対抗試合、最終戦がついに決着。神楽坂が勝利を収めた瞬間、客席中から歓声が湧く。それはノース校の生徒も例外ではかった。
「おおおおおーー!!!! あの神楽坂がやったぞ!!」
「ああ!! コピーデッキばっか作って意味の分からないポカばかりして情けなくボロ負けしていた神楽坂がやったぜ!」
「理屈ばっっっかで実践はからきしな半端なコスプレ野郎だっただけが個性の神楽坂がやったんだ!!」
「「「デュエルアカデミア本校の勝利だー!!!!」」」
「やりましたね江戸川さん!! あの火武羅遊乃が負けましたよ!!」
「ああ……やったんだ……!!!! 火武羅遊乃が負けた!!
これで、約束通り…………っっ、元四天王とオレとで5対1でデュエルで負けて以来ずっとやらされていた算数ドリル一日1時間の刑から解放されるんだあああああー!!!!(号泣)」
「辛く苦しい日々でした…………っっ! これでもう、オレたちはミカンの数を答える必要はなくなったんです!!(号泣)」
「毎日毎日一人ずつ図書室に呼び出されて、指折り数えて足し算しなくていいんだ!!(号泣)」
「オレ、あの女のせいで危うく指を使わずに算数出来るようにさせられるところでした!!(号泣)」
「もうたかし君のお使いという文字を見なくていいんだああああー!!!!(号泣)」
「「「「「ざまあみろ火武羅遊乃!!!! オレたちは一生算数とおさらばだ!!!!」」」」」
「うう……っ! アイツら、足し算も出来なくてどうやって生きてくつもりなんだよ……つーか! 毎日一時間みっちり算数教えてんのに、何で12までの足し算が出来ねえんだよお!!
バカルテットがあああああああああーーー!!!!!」
「………………ノース校に行くことにならなくて良かった……ッッ!!」
火武羅遊乃の叫び声に、虚路居偽遊は心から自分の環境に感謝した。
あと火武羅遊乃に対する好感度が少し上がった。
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ラーイエロー寮。虚路居偽遊の自室。
転生者が二人、ベッドと机に座って向かい合っている。椅子には偽遊。ベッドは遊乃。
「あ、あのぉ……偽遊さん……? わ、わたしぃ〜シンクロモンスター売りに……行きたいなぁ……?」
クソほど気まずそうな顔をしながら、ご機嫌を伺うようにして、自分の主張はしっかりしてくる。
「…………お前の目的は?」
「私の目的? だからシンク……」
ドン!! 机を殴る音がした。
「ひっ!?」
「お前の目的はァ?」
「だ、だからぁ……! 私はぁシンクロモンスターを売って一儲けを……!!」
ボロボロと涙と鼻水を流しながら答える遊乃。腰は完全に引けている。
偽遊の眼光は、今にも獲物を殺しに掛かりそうな殺気を放っている。間違っても元社畜が放っていいような物じゃない。
「………………」
「な、なにぃ……? 何でそんな怖い顔で無言なのぉ……!? ねえ偽遊さん!? 私なんにもしてないよぉ!」
「…………面倒くせえ。小一時間ぶん殴ってみっか」
重い腰を上げるように立ち上がる偽遊。
それを見た遊乃は……。
「い、いや………………や、やめ……!! きゃっ!?」
顔を真っ青にして後ずさった。焦っていたのかベッドと壁の隙間にスッポリハマって身動きが封じられる。
「縛ったりするテマが省けたな。
転生者が学園代表戦のルールに干渉してまでシンクロモンスターを販促して、学園で出店開いて、んでやりたいことが金稼ぎ? もう少しマシな言い訳考えておけや」
さっきのデュエルをすべて見ていた人間にはもはやこの女がただの顔芸してたバカであることは周知の事実だが、意味の分からない長考から、チューナーサーチ。そこからはバロネスを出すまでの間デュエルを観戦していない偽遊にとって、この女は未だに警戒対象だった。
「ハァ……ハァ……!
や…………やめて……痛いのは、やだ。殴られるのは、やだぁ……!」
「……………………」
「ハア……ハア……! いや……いや……もう痛いのは嫌……!!
わ、わたし色々出来るよ!? ほ、ほら……よく見てよ、わ、わたし……可愛いでしょ……?」
泣き顔を晒して可愛いもあるまい。それで可愛いと思うなら、寧ろ加虐性は増すだろう。そんなことも分からない程に、火武羅遊乃はパニック状態だ。ただ痛みから逃れるために、その他のことを何でもする覚悟。ただそれだけ。
偽遊は何を考えたのか、ドーマ製の鋭利なデュエルディスクを手に持ったまま展開する。
その後、ナイフのように首元に押し付けた。
「やぁ!! いやぁーー!!」
「お前の目的は?」
「ーーし、シンクロ……! お金……っ!! あと、あとぉ……!!」
混乱している。自分が何を言うべきなのか。頭を回して。ボロボロと溢れる涙を構わずに。
(これが演技だとしたら、もう俺みたいな素人じゃ先に進めねえ。
ガチでビビってるってことにして、ここまでにしとくか。
そろそろ、ありもしない人の心が痛くなってきた気がする)
偽遊はディスクを離して、遊乃の腕を引っ張り寄せてベッドに戻した。
「嫌だああああああーー!!!! 殴らないでぇ!! 他のことなら何でもするからあああー!!!!」
「もういい。その事件性しかない悲鳴を引っ込めろ」
「そ、そうだよイリアステル!! わ、わたしアイツらを倒そうとして、誘き寄せるためにシンクロを拡めようとしてます!!」
「…………は?」
終わった後を蒸し返すように、とんでもない爆弾が投下された。
「………………何でそんな馬鹿なことを?」
「わ、私……っ! 恵と……レイン恵と結婚の約束して、それで、一緒に色んな次元を回ったりしてたんだけど、コナミ君みたいな帽子被った奴らに襲われて……! 戦って…………! 勝ったんだけどっ、終わらなくてぇ……………!! そ……それでぇ……!!」
「分かった一回落ち着け。急ぎすぎて呼吸が疎かになってるぞ!」
「ひぃっ!? ご、めんな……さいっ!! 殴らな……い……でぇ……!!!! 」
「クソ! 女のボケたキャラにラインを読み間違えたか……っ!! これじゃあまるで虐待を受けたガキみてえじゃねえか……!」
虚路居偽遊は失念していた。順風満帆に生きて死んだ人間が、どうしてこんな世界の転生者になどなろうものか。
転生者の不幸の差は程度の差。親が赤ん坊の頃に捨てるのも、虐待を受けてトラウマを植え付けられようとも、それは同じく『
「大丈夫だ。俺は殴らない。もう大丈夫だ。お前に暴力を振るう奴はここにいない」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…………!!」
「大丈夫……大丈夫だ……」
「はぁ……………はぁ……………!」
「よしよし……大丈夫……!」
偽遊は遊乃のカラダを抱き締めると、頭の先から腰まで、酸素を行き渡らせるように撫で下ろす。怯えないようにゆっくり。ゆっくりと。
「はぁ…………はぁ…………っ」
「よし、呼吸が戻ってきたな。偉いぞー」
「…………………ふぅ…………」
「よしよしよし。いいぞー……」
「………………ぎ、偽遊さん…………」
「ああ。ようやく落ち着いたか」
「………………も、もう駄目……うぷっ」
「へ?」
「ーーおうぇぇぇぇ……!!!!」
ゲロゲロゲロゲロ………………
「…………………………」
「………………はぁ……はぁ……」
一通り出し切ったあと、遊乃はもう一度呼吸を整えると一言。
「…………口の中が気持ち悪い。偽遊さん、お水ちょうだい……」
「………………おう」
普段なら殴ってやるところだが、原因が原因なので、黙って冷蔵庫から水を出して渡した後、服を脱ぎシャワーを浴びて、ベッドのシーツを洗う偽遊なのだった。
その後、いつの間にかいなくなっていた遊乃は、シンクロモンスターを着々売り捌いていた。
「大量大量〜♪」
「………………アイツなんなん?」
偽遊が遊乃を自室に攫うーー招く前。
「神楽坂、初勝利の祝いは何がいい?」
「ーー!!!!
せ、僭越ながらこの神楽坂、一生のお願いが!!」
「祝いだっつってんだろ。もっと気軽に言えよ…………」
「で、では……!!!!」
「それでは撮りますよー(全然気乗りしてない辰)」
「勝利の祝いに男同士でツーショット頼む人間とか、遊戯王次元に唯一無二かも分からんぞ。良かったな神楽坂」
「はい!! ありがとうございます!!!!」
(そう言えば、神楽坂の格好何かどっか違う気がする。イメチェンかな? でも何処が変わったのかちょっと分からんなぁ……でも変わった気がする…………うーん? どこだろ? あ、シャツの色? いや、もっとこう……根っこから違うような……????)
【挿絵表示】
この後、フィーチャリング虚路居偽遊の姿の神楽坂は、偽遊の髪型がただの寝癖がそのままになっているだけであったことを知るのだった。