ここが素晴らしき世界になるかどうかは貴方次第です!!   作:ふわふわおにぎり

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この素晴らしき世界に全能の神を!!

 

 

 目の前には床に座り込んだめぐみんがいる。

 

 そして、俺の隣にはエリスが座っている。

 エリスが居るということは、ここはエリスの部屋。

 エリスの部屋ということは、ここは死後の世界。

 

 

 いや、待て。

 どうしてこんなことになったんだ? 

 

 

 ──まず、状況を少し整理しよう。

 

 まず俺たちはクエスト中だった。

 クエストで魔王城に攻め込んだ。

 が、城にはアンデットや上級の魔物やらがゴロゴロいて、正直勝てそうになかった。

 

 そんな戦況の中、めぐみんが爆裂魔法を放った。

 そしてそれが、一体にいた火系スライムに引火し誘爆した。

 

 そして、俺とめぐみんは……死んだ。

 死んだ。

 

 そして、俺たちは為す術なく、死後の世界に来た。

 

「めぐみんめぐみん、なにか俺に言うことない?」

 

「えっと、まさか……すみません」

 

 めぐみんはたじたじと謝る。

 

 俺はこれから、どうしたらいいのだろう? 

 その事でさっきから頭がいっぱいだった。

 

 何故って、めぐみんが死んだのは初めてだからだ!! 

 

「めぐみんが死んだのって初めてなんだよぉぉぉ!!」

 

 俺は再度声に出して言う。

 めぐみん、というか、俺以外が死んだらどうなるかなんて、俺は知らないし、分からない!! 

 

 そして、それを唯一、知っているエリスはと言うと……。

 エリスは呆れてものも言えない表情で、椅子に腰かけている。

 

「ねぇねぇ、エリス様ァ、俺たちどうなるんです?」

 

 ふぅとため息を着くと、エリスは俺たちに向かって宣言する。

 

「生き返るのは難しいですね」

 

「え、えぇぇぇぇ!!」

 

 俺とめぐみんは同時に叫んだ。

 まさかめぐみんだと生き返れないのか? 

 元はと言えば死んだのもこいつのせいだが、それは不憫すぎる。

 

 そんな思考を読み取ったように、エリスは俺をちらっと見て言う。

 

「というか、毎度、生き返させられると思わないでください。カズマも今回ばかりは無理です」

 

「えぇぇぇぇ!! 俺もぉぉぉ!?」

 

 俺はエリスにしがみついた。そして足元にキスしかねない勢いで頼み込む。

 

「そんなぁ!! 何とかしてくれよ、エリスぅぅぅ!!」

 

 後ろでめぐみんが軽蔑の眼差しを浮かべていようと、知ったことか。

 俺は必死でエリスに訴えかける。

 

 が、エリスは今までにないほど、厳しい表情で俺を見下ろしたので、俺は固まった。氷のように冷たい視線だ。

 

「今回、アクアの贔屓が判明しました。そのためここにカズマやその仲間が来た場合、裁判を行うことになっているのです」

 

「さ、裁判……!?」

 

 俺は驚いて叫んだ。

 

 エリスはパッと立ち上がり、俺たちを見下ろす。

 それがあまりに神々しいので、俺たちは押し黙った。

 

「つまり、皆さん幸せになれるとは限らないということです、あなた達は地獄行き!!」

 

「へ!? 地獄行き!? 

 エリス、どうした? 今日テンション変だぞ!?」

 

 地獄行き地獄行きと、めぐみんは呟き始めた。

 俺はどうしたらいいか分からず、再度エリスのスカートに縋り付く。

 

「お、俺とアクアはともかく、めぐみんやダクネスは全くの無関係だ!!」

 

「そう言われましても……二人ともアクアの力を受けたことありますよね?」

 

「な、ない!! まっっったくない!!」

「ほ、本当です!! アクアさんに助けて貰ったことなんて、一度もないです!!」

 

 エリスは俺とめぐみんをじーっと見つめた。

 その瞳に、なにか優位思想的な何かを感じてたじろぐ。

 

「本当にどんな小さな魔法の施しも受けたことがないんですか……?」

 

「……いや、そ、それは……」

 

 その聞き方は反則だろ……。

 

 確かにアクアは駄女神だが、全く使えないわけでもない。

 むしろ水魔法や魔の者に関してなら、パーティー内で右に出る者はいない。

 

 ……だが、アクアの場合、マイナスがあまりにもデカいのだ。

 アクアの尻拭いをするためだけに、全てがパァになったこともよくある。

 

「そりゃ少しはあったけど、ほとんど足を引っ張ってるだけの駄女神ですよ……?」

 

「今なんと……?」

 

 そう言った瞬間、エリスの声の調子が変わった。

 目付きも鋭くなり、何だかエリスじゃないみたいだ。

 

「お、おい、エ、エリ……」

 

 ──ハッとする。

 そういえばエリスはアクアのことを呼ぶ時、必ず〝アクア先輩〟と呼んでいたはず。

 

 なのにさっき、エリスは、アクアをアクアと呼んだ。

 

「お、お前誰だよ!! エリスじゃないな!?」

 

 エリスは表情を変えなかった。

 だが、すぐに低い声が答えた。

 

「ほぉ? よく分かったな」

 

「め、めぐみん!! 俺の後ろに隠れろ!!」

 

 めぐみんは動かない。

 俺がハッとして見てみると、ポカンとしながら真上を指さしている。

 

 その表情に何かを感じて上を見てみると、エリスが縛られた状態で、天井からぶら下がっていた。

 

「ひぃ……!?」

 

 鎖のようなものが、エリスの体の関節全てに絡みついている。

 エリスは意識を失っているようだが、本人の意思でないことは分かる。

 エリスはこんな趣味ないだろうし。多分。

 

 ってことはやっぱり、こいつは偽物……!! 

 恐怖がじんわりと身体に広がっていく。

 

「アクアは私の可愛い部下だ。だがしかし、ここまで考えなしで動くと言うなら話は別だな」

 

 パチンと彼が指を鳴らすと、衣擦れの音と共に誰かが降ってきて、それをエリスが受け止める。

 

「わっ! なになに!? どうなってるの!?」

 

 降ってきた主はアクアだった。

 

 嫌な予感がしてならない。

 これがエリスじゃないナニカなのは確かだが、俺が戦っても勝てる気がしない。

 

「エリス? ちょっと離しなさいよ! あんたなんの分際で私をこっちに連れてきたっていうの!? 今ダクネスが……」

 

「あの娘ももうすぐ死ぬだろう。お前が居なくなったのならば」

 

 ハッとアクアの表情が凍りつく。

 そしてそのままの姿勢で、じっとエリスの顔を見つめている。

 

 そんなアクアをエリスは無表情で地面にすっと下ろした。

 アクアはトンッと地面に軽く降り立つと、すぐに……。

 

 ──アクタはエリスの足元に跪いた。

 

 俺はアクアらしくないその姿に、心臓がきゅっと痛んだのを感じた。

 アクア……? 

 一体、どういうことなんだ? 

 

「ゼ、ゼウス様。まさかゼウス様だとは存じず……申し訳ありません」

 

 アクアがその口から絞り出した言葉は、もっともアクアらしくない言葉だった。

 アクアの様子がいつもと違う。その事だけは分かった。

 

 めぐみんはその姿をどうしようもなく震えながら見ていたが、耐えられなくなったらしい。

 俺の後ろに這いずるようにやって来て、マントをぎゅっと掴んだ。

 

「アクア。お前はどうしてこの人間を贔屓してしまったんだ?」

 

「こ……この、人間がそうしろって……言ってたような気もしなくも……ない?」

 

「お、おい!? お前ぇぇぇ!?」

 

 いや、アクアは何も変わってなかった!! 

 こいつ、全てを俺たちに擦り付ける気だ!! 

 

「嘘をつくな」

 

 ゼウス様とやらは、アクアに冷徹な声を浴びせる。

 

 一瞬、アクアはぽかんとしたアホズラを晒したが、すぐにボロボロ涙を流して訴えかける。

 

「ゼ、ゼウス様ァ!! 違うの違うの許して!! 私はただみんなに幸せになって欲しくてぇぇぇ!!」

 

 なるほど。

 

 こいつのあの泣き落としはゼウスを誤魔化す過程で身につけたものなのか。

 俺は冷静にもそう分析した。

 

「お前には失望したぞ、アクア!! お前は下界行きだ!!」

 

 ガーンという音が聞こえそうなほど、アクアはその一言で意気消沈してしまった。

 そんな私女神なのに……と呟く声が悲しげだ。

 

「だが、お前たちはなんだ? 人間のくせに醜くくも神に縋り付いて」

 

「はぁ!? 縋りついてませんけど!? むしろ今みたいに縋りつかれてましたけど!?」

 

 めぐみんを庇いながらそう言うも、相手が聞く耳を持たないであろうことは分かっていた。

 ゼウスの非情な瞳がそう語っている。

 

「確かにアクアはまだまだ未熟な存在だ。

 しかし、それでも貴様らからしたら触れることすら恐れ多いはずだ」

 

「で、でも……」

 

 珍しくめぐみんが発言をしたので、俺は驚いて振り返る。

 めぐみんは俺の肩越しに必死になって、ゼウスに語りかける。

 

「アクアさんは私たちのパーティ仲間で、大切な友達で……」

 

「……貴様!! 友達だと? お前らには信仰心の欠けらも無いのか!? 」

 

 と、その時、その足をガシッとアクアが掴んだ。

 地面を張っているアクアは絵面的にホラーだったが、ゼウスは気にしていない様子だ。

 

「ああの、ぜうしゅさま……その、人間たちはエリスには信仰心を示してまして……その」

 

 恐怖やら何やらが入り交じった顔で、アクアは必死に続ける。

 

「私にも一部の責任はありまして……そのモノ達を地獄に送るのは時期早々かと」

 

 カズマはハッとする。

 分かりにくいが、いまアクアは俺たちを守ろうとしている? 

 

「ア、アクア……」

「アクアさん……」

 

 俺とめぐみんは同時にアクアの名を呼んだ。

 俺たちのことを庇おうと……アクア。

 

「アクア、お前……」

 

 が、俺がそう言った途端、アクアが凄い形相でこちらを睨みつけてくる。

 

「ひぃ!? な、なんだ!?」

 

「アクア様!! アクア様!!」

 

 アクアが必死にそう訴えかけてくる。

 髪を引きずり散らかし、目をかっぴらいているホラーアクアに、ついビビってしまった。

 

 ……が、アクア、お前の言いたいことは伝わった!! 

 

 俺とめぐみんは土下座しかねない勢いで身を低くしながら叫ぶ。

 

「ァ、アクア様!!」

「アクア様ァァァァ!!」

 

「ほらほら、ゼウス様!! こんな感じで実はものすごい信仰心を秘めているんです!!」

 

 アクアがゼウスの肩をガタガタ左右に揺らしている間に、俺たちは「ははぁー!!」といいつつ、へりくだった。

 

「は、何が起きているんだ?」

 

 そんなカオスな状況に降り立ってしまったのは、最後まで戦ってきたであろう、ダクネスだ。

 ダクネスは今までの異常事態を一切、知らない。

 

「は、ァァ、まず、い」

 

 声にならない声でめぐみんが呟いた。

 俺も同じ声が出そうだった。

 

「お前が……最後か。小娘め」

 

 が、ゼウスがダクネスに冷たい視線を送るや否や、ダクネスははっとしてすぐさま……。

 ──跪いた。

 

 俺とめぐみんはそのスムーズな動きに驚いて、目を見張った。

 

「な、何故だろう、身体が勝手に……服従してしまう……!!」

 

 どうやらダクネスのドMごころが擽られたらしい。

 

「ほぉら、なんて素晴らしい信仰心!!」

 

 CMの如く叫んでいるのはアクアだ。

 そうだった。ダクネスは最初からこういうやつだった。

 

「小娘、お前はアクアとどういう関係だ?」

 

「えっとこの人間は私の……」

「黙れ」

 

 アクアがすぐさま答えようとした所で、ゼウスが怒りの一瞥を与える。

 アクアは目に涙をためて、すっかり黙り込んでしまった。

 

 そんな様子を見て、ダクネスは跪いたままアクアとゼウスを不思議そうに交互に見つめる。

 

 ──頼む頼む頼む!! 

 ゼウスが望むような回答をしてくれ!! 

 俺は切に願った。

 

「私は……」

 

 ダクネスは問われたことの今をじっくり考えるようにしていたが、やがて決心したようにこう言った。

 

「私は、彼女を守る騎士だ。望むのであれば例え火の中水の中、どこにでも向かおう」

 

「その言葉は本当か……?」

 

「騎士であるなら当然のことだ、それが私の信念、嘘はついていない」

 

 俺はゼウスの表情を盗み見る。

 これは期待値高いんなんじゃないか? 

 むしろ模範解答だろ!! 

 

「素晴らしい……アクアにも遂に信者が生まれたのか」

 

 ゼウスはポツリとそう言った。

 めぐみんと俺はほっと一息ついた。

 

「は、はい!! ゼウス様!!」

「お前の信者が一人でも付いたら、お前の願いを叶える約束だったな」

 

 え、お前、どんだけ信者いなかったの? 

 そう思った言葉はさすがに飲み込んだ。

 

 頼むアクア……!! 

 俺たちを救うような願いを言ってくれ!! 

 

 ……いや、こいつの事だから違うこと言いそうだな。

 

 俺がヤキモキしている間にらアクアは、スっと立ち上がり、ゼウスを見つめた。

 俺はその真剣な眼差しにハッとさせられる。

 

「このモノ達の罪を軽くしてください……! 私も共に罰を受ける覚悟です……!!」

 

 ぽかんとしたのは、俺だけではなく、めぐみん、ダクネス……そしてゼウスもそうだった。

 今のアクアは正しく正ヒロイン、いや、女神と言っても差し支えないほどの威厳を持っていた。

 

「アクア。お前……成長したな。自ら罪を認める所をみたのは初めてだ」

「……へ?」

 

「それはもちろん我々が信仰心を持ってアクア様に全てを捧げ……」

「黙れ」

 

 口からへりくだる言葉が飛び出た俺に、ゼウスが再び言葉を放つ。

 

 俺は黙り込んで地面に突っ伏した。

 余計な一言だったかもしれない。いや確実に余計だった。

 

「カズマ……空気読んで……下さいよ……」

 

 声を殺してめぐみんが呟いた。

 汗が額からダラダラ流れた。

 

 まずい、俺の狡猾さが真逆に作用してる……。

 

「アクア、お前の気持ちは分かった」

「ゼウス様ァ!!」

 

 アクアがいつものぐでんぐでん度合いで、ゼウスの足元に縋りついた。

 俺はそれを見てあんぐりする。

 

 

 いや、あいつも俺ぐらい浅はかで狡猾じゃねーか!? 

 神だから許されるのか!? 

 

「よって、今回は下界行きだけに留めてやる」

「ゼウス様ァ!! ありがとうございます!!」

 

 ゼウスはふっと笑った後、言葉には表せないほど怖い表情でアクアを見据える。

 喜んでいる場合か? とでも言いたげだ。

 

 アクアからぴっという謎の奇声だけが口から漏れ出た。

 

「だが、信仰心に頼れる世界に堕ちれると思うなよ? お前がこれから行く世界に信仰なんてものは存在しないと思え」

 

「へ……へ……?」

 

 これは流石の俺もアクアに同情した。

 なんだかよく分かんが、ゼウスの怖さと言ったらこれ以上上はいないだろう。

 

「だが、お前に付いた信者の存在は大切だ。よって、そのモノ達の同行は許そう」

 

「あ、ありがとうございますぅぅぅ!!」

 

 めぐみんと俺はひたすら土下座し続けている。

 一方、ダクネスは俺たちより妙に冷静で、ひたすら目を伏せて静かにしていた。

 

「ゼウス様ァ? あのそれって……あの……」

 

 アクアの悲痛な声を無視して、ゼウスは説明し始める。

 

「これからお前らをとある世界に転生する。

 そこで人々からアクアの信仰心を深めることが出来たならクリアだ」

 

 クリアってこいつ、急にフラットな言葉使いやがって。

 と、めぐみんが後ろからコソッと囁いた。

 

「あの……転生って……?」

「えっと、諸説あるけど、ここじゃない別の世界に落とされるってことだと思われ」

 

 めぐみんは、は? 衝撃的な顔のまま、俺を見た。

 もちろん周りに転生したやつはいなかっただろうし、聞いたこともないに違いない。

 

 でも、そんな打ちひしがれたような顔で見られても困る。

 俺だって理解が追いついてないんだから。

 

 だが、もっとも打ちひしがれているのは、確実にアクアだった。

 アクアはゼウスの足元で無理無理と連発している。

 

「駄目だ、アクア。行ってこい」

「ゼウス様ァァァァ!!」

 

 そして、ゼウス様が指をならそうとする光景で、俺の記憶は途切れた。

 

 




初投稿だし、キャラの掘り下げもあまり出来てないかも
誤字脱字があったら報告してくれると嬉しいです
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