ここが素晴らしき世界になるかどうかは貴方次第です!!   作:ふわふわおにぎり

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この素晴らしき世界に巨悪を!!

 

 

 

「お、おい、なんだあれ」

 

 最初に声を出したのは俺だった。

 続いてめぐみんがギュッと杖を握りしめながら言う。

 

「わ、分かりません」

 

「カズマカズマ、やっぱり逃げるべきよ。だってあいつ絶対やばいわよ、絶対やばいわよ……」

 

 瓦礫に隠れ、様子を伺うその先にいたのは、人間とも魔物とも分からぬ、なにかだった。

 ぽっかりと衝撃波によって開けてしまった都市の真ん中に、ぽかんと浮かぶそれ。

 

 宙に浮かぶ、脅威。

 

 真っ黒いスーツを身にまとったそいつからは、闇しか感じられない。

 いや、闇なんて生ぬるいものじゃない。

 

「あ、あ、あいつと戦うとか言わないですよねカズマ……」

 

「ば、馬鹿言うなよ。そんなこと言うわけないだろ……」

 

 三人はガタガタ震えながら、小声でささやきあっている。

 なんなんだアイツは。どんな風に生きてきたらあんなバケモンに遭遇するんだ。

 

「はっ! ダクネス!!」

 

 そいつの足元に何人かの人間が転がっていたが、その中にダクネスがいる。

 仰向けに血を流して倒れていた。

 

「おい、ダクネスが向かってからまだ5分と経ってないよな」

「い、一瞬で瞬殺されたんじゃない?」

 

 辛辣に言い放ったのは、アクアだ。

 そこそこの強さを誇るダクネスが一撃でやられたということなら、それはとんでもない事だ。

 

「ま、まだ死んでませんよ!! 多分、そうですよね?」

「だ、大丈夫よ、死んだとしてもたぶんどうにかなるわ、私がいるし」

「お前それやめろって言われたばっかだろ!」

 

「あっ!!」

 

 3人は同時に声を発した。

 死んでいるかのように思えたダクネスだが、ピクっとその手を動かした。

 

 一同はほっと一息を着いた。

 

 うぅ、と呻くダクネスはついっと顔を上げ、上を見上げる。

 恐らく、元凶である男を見ているのであろう。

 

 ぐっと顔をゆがめ、地面に手を付き、ダクネスは何とか立ち上がった。

 そして、地面にころがった剣を取ろうと屈む。

 

「だ、ダクネス、あいつ大丈夫か?」

 

 俺はハラハラとしながら呟く。

 ダクネス……こんなやつを目の前にして……。

 

 今すぐダクネスの名を呼んで、止めてやりたかったが、恐ろしくて出来ない。

 

 そして、ダクネスの指先が剣に届こうとした瞬間、一本の赤い光線が、その刃を砕いた。

 同時にその光線はダクネスの背中辺りを貫き、ダクネスは完全に倒れた。

 

「……グッ……カハッ……」

「やれやれ、まだ動けたとはね……」

 

 その動きを完全に止めたあとで、そいつがそう言った。

 

 ──その、瞬間。

 

 

「ダクネス──!!」

 

 めぐみんはそう耳元で大声を出すと共に、中心に向かって走って行った。

 

「ばっ、めぐみん!!」

 

 俺は必死に止めようと駆け出すも、瓦礫に躓いてずっ転んでしまった。

 

 何段か瓦礫の段差が、回転にスピードを付け、俺は地面に打ち付けられる。

 額を強かに打って、誰にも何もされて無いのに、動けなくなった。

 

 ……俺って……自爆する天才なのか? 

 

「ぶっっ!! だははははは!!」

 

 後ろで笑ってるアホはアクアだろう。

 よくこの状況で笑えるな。

 

 おれは恐る恐る、血にまみれた顔を上げる。

 

 めぐみんは止まってはくれず、真っ直ぐダクネスの所まで走っていく。

 そして、その傍らでダクネスを揺り起こす。

 

「ダクネス、ダクネス、しっかりしてください!! ダクネスが居なかったら誰が私を守ってくれるんですか!!」

 

 いや、それは自分で守れよ。

 そう思ったが、流石に声には出ず、喉の途中で引っかかった。

 

「……愚かだね、僕は君が子どもだろうと容赦はしない」

 

 それが一言話しただけで、場の雰囲気が変わった。

 こいつ、めぐみんも殺す気だ。

 

 が、めぐみんは逃げる気などないのか、ひたすらにダクネスにしがみついている。

 

「ダクネス、ダクネス!!」

 

 駄目だ、めぐみんはダクネスの事で冷静さを失っている。

 

 ──俺が行かないと!! 

 俺は無駄に血まみれになりつつ、めぐみんの元へ走っていく。

 

 ぐっ!! めぐみんまでの距離が長い!! 

 

「待っって下さい!」

 

 俺はそう言いつつ、めぐみんとダクネスの前に立ち塞がる。

 必死になっていためぐみんが、はっと俺を見上げる。

 

「あの! なんですか!! なんなんですかあなた!? いきなり攻撃してきて非常識すぎませんかぁぁぁ!?」

 

「何を言ってるんだ? 彼女の方から乱入してきたんだぜ」

 

「わっかりました!! じゃあ、謝ります!! ごめんなさぁぁぁい!!」

 

「ふはは、子供のお遊びじゃないんだから。謝って済むものじゃないんだよ」

 

 彼は面白そうに笑った。

 あくまでフレンドリーな話し方だが、その腹にどす黒いものを飼っているのは一目見てわかる。

 

 本人もそれを隠す気は無さそうだ。

 

「それより、彼女はどこの誰だ? 

 突然の乱入者に僕も参っていてね。教えてくれないか?」

 

 と、突然、唐突な吐き気が俺を襲う。

 何だこの感覚は? 恐怖? 不快感? 

 

「困った、まさかの黙んまりか。

 口も使えないとなると、生かしておく意味は無いかな」

 

 いや、分かった。この吐き気の原因は、殺意による嫌悪感だ。

 俺とめぐみんの身体が明確な殺意を感じて、震え出す。

 

 今まで対峙してきた奴らとは違う。

 俺は改めてそう感じた。

 

 こいつは俺を殺すことに躊躇すらしないだろう。

 

 俺はせめて後ろのめぐみんだけでも連れて逃げなければ!! 

 俺は覚悟を決めた。

 

 

 ──と、その時。

 妙に明るい調子で、アクアが俺の名前を呼んだ。

 

「カズマさーん!? 

 自分ですっ転んで血まみれのカズマさーん?」

 

 手をブンブンと振り回しながら恐怖も何もかもをかなぐり捨てて叫ぶアクアに、俺はともかく、めぐみんもぽかんとする。

 

 この状況で気でも触れたか、もしくは本物のバカなのか。

 どちらにしてもやばい。

 

「なんかゼウス様が死んでも大丈夫だってー!! ダクネスの件も任せろって言ってたわ!!」

 

 3人の間に、一拍間の間が空いた。

 

 

「……はぁぁぁぁ!? なんだそりゃ!!」

 

 自分であんな風に贔屓贔屓言っといて、自分が一番贔屓してんじゃねぇーか!? 

 というかアクア!! あいつ全部わかってたな? 

 最初から妙にお気楽すぎると思ってたんだ! 

 

 俺の頭に数々の非難と疑念の言葉が沸きあがる。

 一転二転する状況に、頭を抱えたい気分だ。

 

 ──が、本当に最悪なのはここからだった。

 

 ダクネス&自分の身の保身が確保出来ためぐみんが急にスっと立ち上がった。

 

 そして、俺の肩をポンっと叩いた。

 

「……ん? ん? 何?」

「カズマさん……」

 

「ん? ん? 何? めぐみんさん?」

 

 めぐみんは重々しい雰囲気で、かずまの前へ一歩踏み出し、帽子をぐっと下げた。

 

「……ダクネスの仇は私が取ります!! 絶対に!!」

 

 めぐみんは悲しみに立ち向かってるっぽい表情で、そう叫んだ。

 

「めぐみん!? お前なにいっちゃってんの!?」

 

 嫌な予感は見事的中!! 

 こいつは紅魔族の頭のおかしい娘だ。

 そうだった、この状況で中二病心が擽られないわけ無い。

 

「わ、わざとじゃないんです、こいつ頭がおかしくて」

「カズマは黙っててください!!」

 

 自ら死ににいくなんて正気じゃないぞ、めぐみん……。

 やはり一度殺された人間は、タカが外れるのだろうか? 

 

 そして、めぐみんはバサッとマントを翻し、両手でやたらかっこよく杖を構えた。

 めぐみん、全て無駄になるのに……泣けるぜ……。

 

「先程、名を名乗れと言ったな!! 

 我が名はめぐみん!! 紅魔族において爆裂魔法を操り、いつか爆裂魔法を極めし者!!」

 

「おーい!! あのバカの言うこと本気で信じていいのか!? もっと良く考えろ!!」

 

 が、俺の必死の訴えは完全に無視される。

 なんで無視するんだ……あ、まだセリフの途中だからか。

 

「ふははは! 我が爆裂魔法を受けてそれでもお主が生きていられるというのであれば……」

 

 と、ゴゴゴゴという音が地面から聞こえた。

 な、なんだ? 

 

 ──瞬間、竹槍のような長い針がめぐみんの身体を貫く。

 お腹に、胸に、足に。

 

 それはもう、一瞬だった。

 敵はイキる時間すら与えてくれないようだ。

 

「え、めぐみんはそれでよかったの?」

 

 俺は虚しくなって、串刺しになっているめぐみんに話しかける。

 めぐみんは、ぐはっと口から血を吐き出して最期の言葉を言う。

 

「うぅ、爆裂……した、か……」

 

「しーぬーなー!! この状況で俺を置いて? お前のせいなのに!?」

 

「ご、ごめん……カズ、マ……もう身体が……動かない……みたい」

 

 ひゅっとめぐみんの喉から細い呼吸音が聞こえる。

 小さい手が、俺の手を掴んだ。

 

「我、紅魔族の、誇りを、お前が引き続……」

 

 そう言い終わるか終わらないかで、めぐみんはバタッと力尽きた。

 シ──ンと沈黙が流れる。

 

「おい、ばぁぁぁか!! ふざけんなっ!! 

 なに、感動シーンみたいにいっちゃってんの!? 

 俺、お前のせいで死ぬんだけどぉ!?」

 

「……クズマ」

 

 最期の最期でめぐみんは力を振り絞って言った。

 

「あぁぁぁぁ!!」

 

「さて、子どもは死んだ。今度は君の番だね。哀れで矮小な弱者よ」

 

 おもむろに、宙に浮いた男がこちらに手のひらを向ける。

 その手から禍々しい何かを感じた。

 

「待ってぇぇぇぇ!! 殺さないでぇぇぇ!! 

 俺、被害者なんですぅぅ!! 

 あ、そうだ!! 殺すならあいつを先に殺して下さい!!」

 

 俺はアクアを指さした。

 アクアは完全に蚊帳の外だと思ってたのか、いきなりの指名に腰を抜かす。

 

「え、ちょ!! カ、カズマさん!? 嘘でしょ!?」

 

「元はと言えば、全部こいつのせいです!!」

 

「はぁ!? 今回に至っては私全然関係ないんですけど? ねぇ、カズマさん!」

 

 全くもってその通り。アクア、ごめん。

 ゼウスの件でお前はあんなに、俺を助けてくれたってのに……。

 

 でも、俺もう、あのゼウスって人に会いたくないんだ……。

 

 それに、めぐみんみたいに串刺しになって死ぬのもいやだ!! 

 

 だからアクア、犠牲になってくれ!! 

 いいだろ、どうせすぐ生き返るんだし!! 

 

「大丈夫だアクア! 一瞬で終わる!!」

 

「じゃあカズマが死ぬのも一瞬よ!! クズマ!!」

 

 

「あ、確かに」

 

 俺はあることに気がついた。

 アクアが犠牲になったからと言って俺が死なない訳ではない。

 いや、というか長引く分むしろ辛いのでは? 

 

「さて、茶番ばもう済んだかな? ここまで待ってやっただけでも感謝してくれ」

 

「はい!! もう分かりました!! さっさと殺してくれ、痛くない方法で!!」

 

 俺は地面に突っ伏して、諦めモードに入った。

 だって俺とアクアの順番が変わったところで、大して意味ないんだもん!! 

 痛いのもゼウスに会うのも、すごくすごくすごく嫌だが、受け入れるしかない。

 

 なぜってこの悪魔にとって俺は、所詮弱者で矮小なんだから。

 俺はぎゅっと目をつぶった。

 

 そして多分、悪魔は俺に手のひらを向け、俺の身には余るほどの衝撃波を…………。

 

 与えられる、はずが、いつまでたっても衝撃が来ない。

 

 

 ん? なんだ? 

 そう思って目を開けると、目の前に誰かが立ちはだかっていた。

 青のコスチュームに赤と白のラインが入った、ガチムチの男の人が俺を振り返る。

 

「もう大丈夫だ少年、なぜって!?」

 

 ぐっとその人はパワーを踏み絞り、衝撃波を打ち返す。

 

「……私が来た!!!!」

 

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