ここが素晴らしき世界になるかどうかは貴方次第です!! 作:ふわふわおにぎり
今回は一話が長いので、読むのに時間がかかるかもしれないです
一応注意喚起
最初の印象は、何、デカ怖っ!! だった。
俺の視線からは、ムキムキの足とブーツくらいしか見えない。
そんな人間が超スピードで目の前に飛び込んできて、ビビらないやついるのか?
いや、いないに違いない!! 異論は認める!!
故に、俺は、誰ぇ……? という気分だった。
しかも、そのムキムキは俺のことなど気にも留めず、目の前のヤバいやつと話し始めた。
そのヤバいやつもムキムキしか見えていないような態度だ。
「久しぶりじゃない、オールフォーワン」
耳に響くような低音で、彼がそう唸った。
見上げるだけでも充分にわかる鋭い目付きが、彼を射抜いている。
どうやら、あの空に浮かんでるやつはオールフォーワンという名前らしい。
なんか、無駄にかっこいい名前だな。草。
「オールマイト、やはり速いな……が、少し衰えたか?」
ねっとりともあっさりとも取れない気味の悪さで続けたのはオールフォーワンだ。
2人は特別な視線をぶつけ合っていて、まさにライバルという感じだろうか?
それはそれは、久しぶりの再会なのだろう。
いや、でも、俺はどうすれば……?
「こんな子どもを痛ぶっ……」
オールマイトと言う男が、毅然と言葉を続けている最中。
彼の目にめぐみんの遺体(仮)が、映った。
はっと、オールマイトが息を飲んで唖然とする。
そして、信じられないというように、わたわたと駆け寄った。
その狼狽ようと言ったら見てるこっちが気の毒になってくる。
「し、少女……!?」
「僕との再会より子供を優先するか、もう死んでいるというのに。嫉妬するね」
言葉とは裏腹に、楽しそうに笑う。
それを認識するや否や、オールマイトは拳をオールフォーワンに向けて放った。
「……彼女を殺す必要がどこにあった!!」
激怒するオールマイトの攻撃を、彼はヒョイッと軽くよけて受け流す。
が、オールマイトも負けず、怒りに顔を歪めながらキックをお見舞する。
その攻撃は今度こそ、オールフォーワンの腕に直撃した。
ぐっとオールフォーワンが倒れまいと力を食いしばっている様子が見て取れる。
そんな激情をぶつけ合うふたりを見て、俺は決心した。
──よぉし、スキを見て逃げようではないか!!
「おい、おいめぐみん、そろそろ起きろって」
俺はめぐみんに囁いた所で、ふと思い当たる。
串刺しになったまま回復したとしても、また串刺しになるだけじゃね?
めぐみんはこの肉体に帰ってくるはずだ。
それに気がついた俺は、時間をかけてめぐみんを槍から外していく。
めぐみんの身体から、ぐちょっというグロい音がして槍が抜けていく。
「う、うお、わぁぁぁ……」
何とも言えない声を口から漏らしながら、俺はめぐみんを地面に横たわらせた。
その瞬間、待ってましたと言わんばかりにめぐみんの遺体がすぅっと消えていった。
き、消えた……!?
俺は身体が回復する過程を見るのは初めてだったので、正直驚いた。
ああ、そうか。
この消えた遺体がエリスの部屋に行き、椅子に座り、回復して貰うのだろう。
そう思うと感慨深いものがあるな……。
──ゴォォォォウ!!
と、物凄い突風が俺に向かって飛んでくる。
原因は目の前で戦闘を繰り広げている2人によるものだ。
俺はその風で数歩、吹き飛ばされてしまった。
「す、すごぉ」
目にも止まらぬスピードで振り下ろされる、物凄いパワーが、この突風を巻き起こしている。
いなして攻撃して防いで交わして、そんな目にも止まらぬ攻守攻防を、俺はただ感心しつつ眺めていた。
「カズマ」
突然、耳元でめぐみんの声がする。
パッと振り返るとめぐみんが俺のすぐ背後に立っていた。
「うわぁぁぁぁ!!」
「何驚いてるんですが? 生き返ることなんて分かってたことじゃないですか」
それでも誰も居なかったはずの場所にいきなり現れられると怖いんだよ!!
俺は慌ててふためきながら反論する。
「と、突然現れるな!」
「……? カズマもこうでしたよ?」
「まじか」
これまでの俺の行いをちょっと反省した。
言われてみれば俺も生き返った時に、めぐみんやアクアがビビる姿を見たことがある。
その時の表情はこういう事だったのか。
そんなふうに俺が熟考していたが、めぐみんが恨めしそうな目をしていることに気がついた。
そして、オールフォーワンをぐっと見据え、一言。
「爆裂魔法、今度は見せつけてあげます……!!」
「や、やめろ!! 近隣住民のみなさんもいるんだぞ!!」
「大丈夫です、ダクネスさん!!」
ダクネスが煙からゆっくりとこちらに来るのが見えた。
その表情は……ニヤけるのを何とか我慢している子供のようだった。
そして、ダクネスも一言。
「ここが……私の戦うべき戦場か」
は? おまえも厨二病患ったの?
それともさっきの攻撃が思いのほか良くて刺さったの?
ダメだコイツら、早く何とかして戦意喪失させないと……。
「お前ら!! あいつはお前らが死んだと思ってんだ、逃げるにはもってこいだろ!!」
「えぇ、そうですね、不意打ちでエクスプロージョンを仕掛けるにはもってこいです!!」
「ンンンっな話はしてねぇーよ!!」
ダクネスもワクワクしながら剣を構えやがって。
相手が誰だか分かってんのか?
「あの一撃、血も涙もないやり方だった……この、私を……ふふふ」
「ダクネスさん、ここにいる民間人や周りの人をすぐさま避難させてください!!」
「了解したぞ!!」
ダクネスはすぐさま、倒れてる人を瓦礫よりさらに遠い所まで引っ掴んで行った。
これにより、負傷者が戦いに巻き込まれることは無くなるだろう。
その行い自体は、いいことなのかもしれない。
でも、今は話が違う!!
「お前ら正気か!? 逃げれば全部が丸く収まるんだぞ!?」
「しかし、ここで放たなければ、いつ放つというのです!!」
「めぐみ……」
めぐみんはオールフォーワンを一瞥し、赤い魔石が埋め込まれた杖を、今度こそと地面に突き立てる。
ぶわっと地面から蒸気が上がるように、めぐみんのマントが揺れた。
キラキラした星のようなものがめぐみんの周りに駆け巡り、赤い魔法陣が生成させる。
そこでようやく、オールマイトやオールフォーワンも異常に気がついたようだ。
「き、君は、先程の少女……!?」
オールマイトはめぐみんに気がついて、心底驚いた顔をした。
そりゃそうだ、死人が生き返ってるんだから。
「ほぉ? 超回復の類か?」
オールフォーワンがそう言いながら、放とうとした攻撃は勿論、オールマイトがいなす。
と、同時に超スピード&超パワーで、オールフォーワンをぶっぱなした。
──ブォォォォン!!
オールフォーワンはぶわっと宙を飛び、あっという間に姿が見えなくなった。
「す、すげぇ威力……」
あれは死んだな……。
だが、オールマイトはギリっと歯を食いしばって、オールフォーワンの方向を見つめていた。
そして、そのまま踵を返して、めぐみんの元に駆け寄った。
「少女、やつはこのくらいでは死なない。すぐにここを離れ……」
「私、遠距離攻撃できます! あいつはダクネスの仇なんです!」
そのダクネスは今、普通にピンピンしてるんだけどね。
俺は心の中でツッコミを入れる。
「あの巨悪に目をつけられること自体が危険なんだ、分かってくれ」
オールマイトは説得し続けている。
やろうと思えば強制的に場外に吹き飛ばせるだろうに。
それをやらないのはこの人の人柄だろうか?
「絶対い、や、です!! 我が紅魔族の名において絶対イヤです!!」
「おいめぐみん、無理すんな、やめとけ!!」
見ていられず、俺もめぐみんのマントを引っ張るようにして止める。
が、それも弾かれてしまった。
「じゃあダクネスの仇は? 誰が取るんですか!?」
そんなめぐみんの行動をオールマイトは静かに見ていた。
めぐみんは情熱と勇気を目に宿し、爆裂魔法を放つためなら死ぬ覚悟だという目で見つめ返す。
「お願いします、私に一撃食らわすチャンスを下さい!!」
おいおい、勘弁してくれ!!
めぐみんは爆裂魔法に関してなら死ぬほど熱くなれる。
それは素晴らしいことかもしれない……。
でも、ただそれだけの話なんだ……。
こいつの全ては爆裂魔法から始まり、爆裂魔法で終わるんだよ……。
だが、その信念がオールマイトに通じてしまったのか、彼はふぅっとため息をついた。
「仇を取りたいっていうなら私がやる」
「……え」
「だから、絶対私の前に出ないこと。一撃与えたら直ぐに逃げること」
キーン!! という音と共に、オールフォーワンが飛ばされたであろう場所から、超音波のような衝撃波が放たれる。
それを己を盾にめぐみんを守りながら、オールマイトが振り返った。
「それが条件だ、少女!! 守れる?」
「……もちろんです!!」
オールマイトはぐっと頷いて、天を仰いだ。
それと同時にオールフォーワンが、上からふわぁっと不気味に降り立ってくる。
「無駄なことだ、オールマイト。君の行動はただの同情にすぎないんだよ」
「彼女の大切なものを奪ったのはお前だろう? よくつらつらと言葉を並べられるな!!」
「なるほど、昔の自分に重ねてるつもりか?」
ぐっとオールマイトが姿勢を低くする。
怒っているのかさっきよりも表情が険しい。
「とにかく、彼女には指一本触れさせない」
「そうかそうか、君はそう言うやつだったな」
その言葉を合図に、またもや攻撃が始まった。
俺は姿勢を低く取りつつ、2人の強さを痛感していた。
どっからどう見ても重すぎる一手を、お互いにいなしあっているんだからまともじゃない。
そんな中、めぐみんはすっと目を瞑った。
「紅き黒炎、万界の王……」
──始まった。
めぐみんが詠唱(日によって変わる)を唱えてしまっている以上、もう何をやっても無駄だ。
「天地の法を敷衍すれど、我は万象昇温の理……崩壊破壊の別名なり。紅魔の名のもとに原初の崩壊を顕現す……永劫の鉄槌は我がもとに下れ!!」
「な、長っ……」
オールマイトが戦いつつ、ぼそっと呟く。
呟くのも無理は無い。今回はいつもより確実に長い。
「エクスプロージョン!!!」
ぐぅん、という魔法音に続き、一瞬の静寂。
キラキラきらめく光が一瞬スローモーションになり……。
チカッ──ドォォォォォン!!!
めぐみんの魔力を注いだ爆裂魔法は、とてつもない威力で広がっていく。
そして、その爆撃はオールフォーワンと……。
当然ながら、オールマイトの元にも落ちた。
「お、オールマイトさーん!!」
俺は声の限り叫んだ。
──と、思われたが、ダクネスが間一髪で救い出していたらしく、オールマイトは隣にいた。
オールマイトは俺の隣で、一瞬状況を把握しかねているように見えた。
「あ、オールマイトさん。すみませんうちのバカ娘が……」
「い、いや……。許可したの私だしね。
ていうか、すごっ、こういう感じ……?」
ダクネスにありがとうと、お礼を言いつつ、オールマイトは爆裂魔法を見上げた。
爆心地は直径2、3mぐらいはあったし、爆風もかなり強かった。
完成度にムラがある魔法だが、これは間違いなく大成功だ。
「ところで君たちは一体なんなの……かな!?」
オールマイトが俺たちの方を、指さし振り返った。
君たちというのは言うまでもなく、爆裂魔法を放っためぐみんと、オールマイトを運んだダクネスに対してだろう。
「私は紅魔族随一の爆裂魔法を放つ、爆裂魔法魔法に選ばれし……」
「私はパーティーの騎士をしていて、まぁ、このぐらいのことは当然の役目なのだが……」
「おいおいおい、同時に喋んな!!」
コントのような光景を、たじっと眺めているオールマイトだったが、ふと爆発の方を見遣る。
「……にしてもすごい個性だ、少女。通じてなかったとしても、良い一撃にはなったんじゃないかな」
ん? こいつ今通じてなかったとしてもって言った?
結構、辛辣だな……。
めぐみんを見ると案の定、ちょっとショックを受けているようで目が少し死んでいる。
どんまい、めぐみん。
そのうちに、爆発の煙が徐々にはけていく。
そして、その中心には。
……誰もいなかった。
「ん」
「んえ?」
「ふぁ?」
「わ?」
オールマイトとダクネスとめぐみんと俺は戸惑った声を上げた。
いや、絶対にそこに居たはずなのに。
オールマイトも信じられないのか、周りをキョロキョロ見渡している。
「あいつの事だから、また妙な策を……」
「なるほど、私の爆裂魔法をガードしつつ、奇襲を仕掛けるつもりですね!!」
さっと杖を構えるめぐみんを、オールマイトが制す。
「いや、ダメだ」
その表情から、まだやつ死んでないと確信しているのが分かった。
恐らく、相当長く戦ってきた仲なのだろう。
「君は下がってて、約束したでしょ」
──が、5分たっても、10分たってもそれは現れない。
シーンとした瓦礫地帯に風が吹き荒れるだけだ。
「あいつ死んだんじゃね?」
開口一番、口を開いたのは俺だ。
「い、いやそんなはずは……」
オールマイトは今度こそ、本格的に瓦礫のしたやら、マンホールやらを探し始めた。
その執念と言ったらちょっと怖いくらいだ。
……が。
「んん、どうした、塚内くん!?」
耳元のインカムが反応したようだ。
オールマイトは俺の近くで耳元に手を当て、返答する。
俺たちはただならぬ雰囲気を感じて、手を止めてオールマイトを見た。
「えぇ!? やつの生体反応が……消えた……!?」
オールマイトはすっと手を下ろすと、俺たちを呆然と見返す。
俺達も何事なのかと、オールマイトを見つめ返す。
「な、なんか、少女が爆発を行ったと同時に、やつの生体反応も消えたらしい。
どちらにせよ、ここ辺にはもう居ないって……」
俺は恐る恐るめぐみんを見た。
めぐみんも聞いていたようで、その表情は真っ青だ。
「お、お前とうとう人消しちまったか!?」
めぐみんは人を殺してしまった直後のように、手のひらを見つめた。
そして、ガタガタと震え出した。
「め、めぐみん!!」
「はぁぁぁぁ、はぁぁぁ!?」
奇声を上げ始めためぐみんをオールマイトが落ち着かせる。
「大丈夫、少女!! 君は何も悪くない!!」
「はぁぁぁ!! はぁぁぁ!!」
めぐみんは変わらず奇声をあげている。
もはや過呼吸だ。口から魂が抜け出してる。
「し、少女……!! おち、落ち着いて──!!」
「お、俺は知らないぞぉぉ……知らないからなぁぁ!?」
そんな混乱の中、全ての謎を知っているアクアが遠くから4人を見ていた。
そして、とんでもなく大事になってしまった、と慌てていた。
「な、なんかとんでもないことになってない? どうしよう……どうしよう」
次回、アクアによって、真実が明かされるのであった。
そして、それまでめぐみんは人を消した子として扱われるのであった。
めぐみんの回生のシーンなんですが、ちょっと原作を改変しました
串刺しになった状態で上手く生き返る方法が思いつかなかったので、こうなりました、てへ