山田太郎は居候 作:芋太郎
本日の主人公。
悩める乙女。
最近、日本語での挨拶を覚えたらしい。
最近のマイブームは厨房を覗くこと。
・山田太郎
またしても何も知らない人。
アデレート嬢に日本語を教えているが吸収力に驚いている。
最近のマイブームは窓辺で憂いをおびた表情をし、意味ありげに月を眺める事。
・メイド少女
本日はお休み。
某ジブリ作品の曲を教えてもらってから、ずっと歌いながら歩いてる。
最近のマイブームは言葉を覚えるのが遅い太郎に「ざーこっ」と言うこと。意味は分かってないけど太郎の反応が楽しい。
私は朝食の後、使用人達がとある噂話をしているのを耳にしました。
それは、「ボーゼス伯爵領に、人とはぐれたタロヴさんの国の人がいる」というものでした。
あぁ、遂に日が来てしまったんですね。
わかってました。タロヴさんが倒れていた時、獣から逃げていた様でした。
ですが、とても一人で行動できるような格好ではなく、装備も無ければ路銀もなく、食料すら持っておらず。
であれば、それらを持っていた仲間が居たと考えるのが自然です。
元々、タロヴさんの国へ帰る宛てが見つかるまで保護する。というのが、保護の目的です。
という事はつまり、その人と合流して国へ帰るのが当然の流れ。タロヴさんとはここでお別れという事です。
1日中その事が私の頭を駆け巡り、喜ばしい事のはずなのにどこか寂しい。帰って欲しくない、ずっとココにいて欲しい。
そんな気持ちに支配され、隠し切ることも出来ず。かと言って自分からその事を聞くことも出来ずに私の如何に自分勝手で浅ましい女であることか。自分に嫌気がさします。
でも、だけど、タロヴさんの事を思うからこそ、私がするべき事はその噂について探る事。
...考えていたら少し、疲れてしまいました。この事をお父様と話したら、今日は早めに寝ましょう。
「お父様、少しよろしいでしょうか?」
「アデレートか、どうした?」
「タロヴさんの国の者が見つかったという噂をご存知でしょうか?」
「なんと!それでは、タロヴさんも漸く帰国する目処が立つという事だな。アデレートのデビュタントまでに見つかって良かった。その者は何処に居るか、分かっているのか?」
「...えぇ、はい。ボーゼス伯爵領にいるとの事です」
「ボーゼス伯爵の所か...。仲が悪い訳では無いが、借りを作るには相手が大きすぎる。伯爵に直接頼る訳にはいかないか」
お父様は私から話を聞くと、少し考え込んでしまいました。
自分より上の貴族に借りを作るという事は、派閥に巻き込まれる可能性があるのです。
しばらく悩んだ末にお父様は、決断しました。
「うちの情報収集をメインとする者を何人か伯爵領に向かわせよう。
情報の真偽も定かでは無いのであろう?なら、伯爵に頼るのはまだ早い。
なに、うちの者達は優秀だからスグに見つかる。心配することは無い」
「本当ですか!ありがとうございます、お父様!」
お父様はライナー子爵家に仕える諜報の専門的スキルを持つ使用人に情報を探らせると約束してくださいました。
これでタロヴさんの国の者が見つかるのは時間の問題でしょう。
ふぅ。と息をつくと、胸が少し軽くなった様な感覚がしました。
きっとこの少し重たい空気を吐き出したから。
胸にぽっかりと空洞が出来たから。なんて事は無いのです。そうに決まってます。
「では、おやすみなさい、お父様」
「おやすみ、アデレート。また何か分かったら伝えるよ」
今はまだ、情報なんて欲しくありません。どうか、見つからないでいてください。