平行世界亜種特異点『追蹤の城塞 極東』   作:ゆしゃ

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嫌な予感がした(・・・・・・・)

 

まるであの時の、ロミオが、死んだ時のようで。嫌な予感が拭えない。他の隊員の様子を尋ねた。

 

「私ですか?今日は珍しくオフですよ。バレットの整理をしておこうかと」

 

「あー、神機の調子が悪くてな。チューニングしてからミッションに行こうと思っててな」

 

「ムツミちゃんのところで料理教室なんだー!」

 

「ったく!訓練ばっかでやってらんねー。あ、ゴメン。リヴィ、ちゃんとやるから!」

 

「ロミオ!次の訓練がある。復帰したてなんだ、身体が訛っているだろう」

 

はて、……隊長は?

隊長(・・)は、どこだ。

血の気が引くのが分かった。隊長、リツカ隊長。お前は俺に帰ってこいと言った。そのお前が置いていくのか?

 

『大変です!単騎任務に向かったはずのリツカさんの、リツカさんのビーコン反応が…消えました…!』

 

ちがう。隊長は生きている。生きているはずだ。俺たちを置いていくはずがない。俺たちを置いていかないでくれ…。

シエルは、ギルは、ナナは、ロミオは、リヴィは、俺は、どうすればいい。

 

なあ、リツカ。

俺たちは──家族(仲間)だろう?

 

 

 

 

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「……リツカ隊長、ですよね…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………てへ?」

「……確保!」

 

シエルは持っていた拳銃を投げ捨て、逃げようとした俺の足を払い、地面へ押し倒した。すかさず俺の片腕を足で固定し、引っ張りあげる。

そう、腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)である。

 

「いたたたたた!ギブ!ギブ!シエル!俺、今一般人!」

「君がまた逃げようとするかもしれませんので、ご勘弁を」

「酷い!」

 

俺とシエルが騒いでいるのを聞きつけた残りの2人も近づいてきた。

 

「あー!隊長だ!久しぶりー!」

「……………」

「なーんでナナは分かっちゃうのかなー?後、ギル、ギルバートさん。顔が怖い」

 

にぱーっと人懐こい笑顔で手を振るナナ。それとは対照的に眉間に皺を寄せて俺を睨みつけ神機の先を向けるギルバート。

 

「…隊長の偽物(フェイク)じゃねぇだろうな。アラガミが成り済ますって線もあんだろ」

「うん、本物?んー本物かな?だからそのチャージスピアは下ろしてね???説明するから!」

 

チャージスピア、首にちょっと触れてるんだよね!

 

 

 

 

 

 

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シエルたちは帰投申請をし、俺は宣言通り、事のあらましを説明した。

マスターもろもろカルデアもろもろは濁して説明。この世界が異常をきたしているがために、俺はやってくることとなったと話している。

 

この世界の状況を確認しないことには詳しくはまだ言えない。

 

「…というわけで、ちゃんと詳しくは言えないけど、『生命の再分配』にまた鉢会った上に子供になって人生やり直したんだ。ひとまずこんな所かな」

「なるほど…奇怪なこともあるのですね。……やはり分解し、解析してみますか。解体(バラ)しましょう」

「やめて、ほんとやめて。しゃれになんないから」

「んん?つまり、隊長は1回死んじゃったってこと?」

「あー、それがよく分からないんだよ。『生命の再分配』は起こったけど、死んだ覚えはちっともないんだ」

「確かに、腕輪があの場所に残っていればKIA(作戦行動中死亡)になったかもしれないが、腕輪や神機すらなかった。最初はアラガミに喰われたのかと考えていた。

だが、当時、隊長を迎えに行ったヘリの操縦士は周囲にアラガミの反応はレーダーにはなかったと証言している」

「一応、本部からの通達でMIA(作戦行動中行方不明)とされてはいますが、ブラッドの面々や極東支部の方々は誰一人として納得していませんでした」

「生きている証拠もなければ、死んだっていう証拠もなかったもんね」

「…そういや、俺のこと隊長って呼んでるけど、俺がいなくなった後、どうしてたの?隊長とか」

「あくまで名目上はジュリウスが、隊長代理として振舞っていましたよ」

「1番納得してなかったの、ジュリウスだったし」

「ああ、あれは酷かった」

「……何、やったの?」

「リツカ隊長捜索のため六徹。ボロボロになっていくジュリウスを見て、流石の俺たちもナナ特製対神機使い用ホールドトラップ(電気とりもち)でジュリウスを捕縛して回収。隊長の部屋に突っ込んだ」

「ええ?!何で俺の部屋?!」

「ジュリウスを落ち着かせるには隊長の部屋が1番!暗黙の了解ってやつ!」

「隊長の服を抱きしめて、死んだように眠ってましたね」

「『隊長の匂いがした。花の匂いだった』って静かに泣いてたよ」

「これ大丈夫かな???俺、ジュリウスに会ったら死ぬんじゃないかな???圧死で!!」

「……まあ、大丈夫じゃねぇか?」

「…おしくらまんじゅう状態にはなるかと思われますがね」

 

 

 

 

 

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バラバラバラと帰投用のヘリが待機場所に降り立つ。

 

(うわぁ、懐かしいなぁ。俺もあのヘリに乗ってたんだよなー)

 

「ヘリが来ましたね。行きましょう、隊長」

「へ?」

「え?」

「てっきり、置いていくのかと…」

「隊長、あんたは戻るんだよ。アナグラに」

「え?」

「サカキ博士には帰投申請時に、話は通しておきました。

ですのでご安心ください。極東支部に君を敵視する者は居りませんから」

 

ギルに右腕を、ナナに左腕を固定され、シエルには足を持たれてしまった。やめて、これ拉致じゃん。

 

「てなわけで、連行しまーす!」

「うわああああ!」

 

 

 

 

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「はっはっは!こりゃまたおかしなこともあるもんだな!死人が生きて帰ってきたか!」

「…そんなに笑わなくてもいいだろー。レックス」

 

偏食因子を持たないパイロットだろうが、エリートゴッドイーターだろうが、このご時世、共に戦っていることには変わりはない。

 

レックス・ウォーベック。

彼はゴッドイーターたちの任務の送迎を専門とするヘリのパイロットだ。そして、ゴッドイーターだった頃の俺の友人の1人である。

 

「ウォ、ウォーベック氏が、笑って…!」

「あの人、表情筋が死んでるって言ったの誰だよ…」

「…ロミオじゃない?」

 

レックスは巷では寡黙な男として通っているが、実際は違う。強面だけど話しかければちゃんと返事を返してくれるし、豪快な上、何より笑い上戸だ。きっと箸が転がっても笑う。

 

「はー、いやぁ笑った笑った」

「ちょ、レックス!笑いすぎて操作誤んないでくれよ!俺、今はただの人間だかんな!」

「ん?まあそこはオレの技術で何とかなるわな!仮に落ちてもオレもお陀仏だ」

「慢心厳禁って言わなかったっけー?」

「はは、そうだったか?」

「こいつー!」

「…まあ、なんだ。生きてて良かったぜ、リツカ」

「ごめん。あの時ヘリの帰投申請受けたのレックスだったんだろ」

 

俺があっちの世界(・・・・・・)へ飛ばされる前、帰投申請で指名したのはいつも通りレックスだった。

 

「ああ、現場に行きゃあ誰も居ねぇ。何も落ちていない。全部喰われちまったとしか思えねぇが、アラガミの反応は皆無だ。居ないものに喰われるわけがない」

 

居ないはずのナニか(・・・)が居て、俺はそれに命を狙われたのか、救われたのか。

 

「正真正銘の行方不明。……そこのブラッドの御三方を含め怖かったなぁ。特にヴィスコンティ殿は」

「…申し訳ありません。当時、ジュリウスは気が立っていたもので…」

「ジュリウスは動物か何かか」

 

ふと、ヘリの窓の外を見ると見覚えのない石造りの城壁が広がっていた。壁は三層になっており、中心には同じく石造りの城が建っていた。

 

「……ん?ねえ、レックス。アレは何?あの、古い()みたいなの。あんなの、なかったろ」

「あー、あれか。オレの口からは何も言えない。詳しくは知らされていない。ただ警戒せよ、としかな。そうだろ?ブラッドの御三方」

「…そうだな。隊長、それを含め、今極東で起きている異常については、アナグラに着いてからだ」

「先程の君の話から察するに、君がこちらへ来ることになった原因とも言えるでしょう」

「うんうん。あれがなかったら、隊長がこっちに来る用はないもんね」

 

…なるほど、あれが俺の目的(特異点)か。

 

 

 

 

 

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フェンリル極東支部──通称アナグラ。

地下数百メートルに及ぶ縦穴構造の施設を極東の言葉「穴蔵」から取り、通称が名付けられた。

 

内部居住区施設を中心として外部居住区が広がり、更にその周囲を対アラガミ装甲壁が覆っている。

 

 

アラガミには「偏食」という特色がある。要は好き嫌いだ。あれは食べないけど、これだけは食べる。

その特色を生かして、外部居住区周囲の防壁に、様々な偏食因子を埋め込む。偏食因子を埋め込んだ防壁をアラガミに避けてもらう(・・・・・・)ことで防衛を計っている。

しかし、あくまでも避けてもらう(・・・・・・)だけ、アラガミに突破されることもしばしば。

 

極東支部では防壁とゴッドイーターの二重構えで防衛している。外部居住区の住人からすれば、装甲壁は生命線にも等しい。生きるか死ぬか、その瀬戸際を彼らも生きている。

 

 

だからこそ、守らねばならなかった。同情じゃない。俺はそれよりも過酷な場所で幼少期を過ごした。

彼らには手立てがない。偏食因子に適合し、化け物(・・・)になれるわけもなく、間接的なオペレーターや整備士になれるわけもない。

誰かが守らなきゃ、吹き飛ぶような命。

 

 

俺は1人の少年に心を救われた。

ブラッドに入隊し実地訓練を終えた後あたりだったと思う。アラガミの討伐任務で向かった別拠点の居住区は既に半数以上がアラガミに食い殺されていた。その中で、襲われかけている少年を見つけ、俺は笑いながらアラガミを真っ二つに切り倒した。

ああ、やってしまった。きっと「化け物(・・・)!」と呼ばれるんだろう。そう思っていた俺は、少年に「大丈夫かい?」とまた笑った。誰も彼もが死んでいる。そうだ、いっそ「化け物(・・・)」と呼んでくれれば諦めもつくんだけどなぁ。

 

「…かっこいい」

「へ?」

「おにいさん、すごい!ゴッドイーターだ!」

 

予想に反して好印象な反応に、度肝を抜かれた。

 

「おにいさんは英雄(ヒーロー)だ」

 

人が食い荒らされた現場で、笑うような奴が、英雄(ヒーロー)だって?そうか、そっか。英雄(ヒーロー)、か。悪くないなぁ。

英雄(ヒーロー)を目指そう。滅びゆく世界、救えるなら、救おう。俺は助けたい。思い出せ、だってそのためにゴッドイーターになったんだ。

 

 

「カルネアデスの舟板」という哲学者カルネアデスが出した問題がある。

船が難破し、船から投げ出され海へと落ちた乗組員の1人が、板に掴まって生きながらえていた。その板にもう1人が掴まろうとした。2人が掴まると板が沈むと考えた、先に掴まっていた乗組員は、後から来た乗組員を突き飛ばし、溺れさせてしまった。

助けるのは自分か、相手か、それとも2人とも自滅するか。

 

俺は2人共助けたい、助かりたい。1か100か、選べと言われたのなら、俺は全部を選ぶ。

俺は少数も切り捨てない。

大勢も切り捨てない。

出来ないことだと笑われるかもしれないけど、それでも俺は…助けたい。だって、方法がないわけじゃないんだから。

 

1である俺が生きるため、100である彼らに生きてほしいから、俺は戦う。

ホントは英雄(ヒーロー)なんてガラじゃないけど、いいかもしれない。目標としては充分だ。

 

「ありがとう、少年。怪我は無いかい?」

「…?おにいさんがたすけてくれたから、だいじょうぶだよ」

 

俺には力がある。化け物だとしても、人類のためにと旗をあげた。だったら…化け物のままじゃなくて、英雄(ヒーロー)になりたい。

 

たとえ、それが自己満足だったとしても。

 

 

 

 

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「やあ、よく来たね。リツカくん」

 

降り立ったヘリの格納庫で予想外の人物が俺を待っていた。

 

「サカキ博士、何で格納庫に…」

 

サカキ博士はこのフェンリル極東支部支部長。支部長であるが、アラガミ技術開発統括責任者、いわゆる研究者だ。

 

「シエルくんからは粗方の話は聞いている。重要人物(キーパーソン)が到着するということで、早急に事を進めなければならなくてね」

「……重要人物(キーパーソン)?」

「リツカくん、君のことだ。私が格納庫で君たちを待っていたのは、今後の動きについてすぐに伝えておきたかったから。

ああそれと、極東支部に在籍する他の神機使いやスタッフには、君が生存(・・)していることは内緒にしている。サプライズというやつだね。

くれぐれも見つからないようにしてくれ、折角のサプライズが台無しになってしまうからね」

「……サカキ博士、本題に移ってくれ」

 

ギルがイラついたように言葉を吐く。

 

「まあ落ち着きなさい、ギルバートくん。通信で話せないことを、今、君たちに伝える。

リツカくん、()のようなものは見たかい?」

「はい、ヘリの中で。レックス、操縦士やシエルたちに聞いてもあれがなんなのか、極東支部に着いてから話すと誤魔化されましたけど」

「見たなら話は早い。あの城を含め、現在、極東で起きている異常の発端は、リツカくんが元「螺旋の樹」──聖域の中で消えた(・・・)、半年前のあの事件だった」

「…!事の発端は、あれだったのですね…!」

「リツカくんが消えてしまった後、ソーマ博士が調べてくれたが、あの亡骸から何か(・・)が這い出た形跡があったそうだ」

「また終末捕喰関係かな…?」

「正直、…まだ、わからない。調査中だが、まず…あの城に入り込むことが出来ないんだよ。入り口がない(・・・・・・)からだ。まあ、その辺の調査も時間の問題だろうね。

さて、君たちに伝えなければならないのは、こんなところかな。

ギルバートくん、ナナくんは神機を保管庫に置き次第、自室待機。シエルくんは少しここに残ってくれ」

「あのー」

「ん?」

「俺は…」

「リツカくんは自室に行くといい。君の自室のターミナルは腕輪無しでも君個人のサーバーに繋がるようにしているよ」

 

いつか、狐のようだと称された細い目が楽しそうに歪んだ。サカキ博士は俺だけに聞こえるように、耳元で囁いた。

 

あちら(・・・)へ報告をしなければならないんだろう?」

「っ?!な、んで」

「それはまた後にしよう。ああ、エレベーターは役員専用のものを使ってくれ。それなら見つからないはずだ」

 

なんで、サカキ博士が知っているんだ…?

俺はシエルたちには「俺だけ」としか言っていないのに。

 

その場から逃げるように立ち去り、エレベーターに乗った。

 

 

 

 

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「……どういうおつもりですか、サカキ博士」

「ふむ…君はリツカくんのこととなると見境がなくなるようだ。その殺気を収めてはくれないか」

「…ジュリウスほどではありませんよ」

「それもそうか。では本題に移ろう。君は、()をどう見る」

「彼は…私たちの隊長です。寸分変わりなく、ブラッドのメンバーです」

「彼は今、別の組織にいると私は踏んでいるのだが…彼の反応を見ると当たっているらしい」

「隊長は、そんなこと………異常が起きたからやってきたと」

「彼1人だけの力ではないのだろう。ここへやってきたのは言葉通り1人であったとしても、その技術やサポートをこなす誰かがいるはず。…機密情報だとしたら、彼も尚更言えないことだ」

「……何があっても、私はリツカ隊長を信じます」

「うん、結構。彼には偏食因子がない。彼が調査を進める際には、彼をサポートしてあげてくれ」

「いいのですか…?別組織の件は」

「彼なら何が起きても不思議じゃない。何たって、世界を2度(・・)も救った英雄(ヒーロー)、立役者なんだから」

「そう、ですけど…」

「それで、シエルくん。サプライズでリツカくんの帰還パーティをやりたいんだ。ラウンジでの飾り付けを手伝ってくれないか?私も50を過ぎたら肉体的に厳しくてね」

「隊長のですか?でしたら喜んでお手伝いいたしますよ」

「…私を心配してではないのだね」

 

 

 

 

 

: : :

 

 

 

 

 

あの時と変わらない自室。

掃除はしてくれていたのか、割と綺麗だ。…クローゼットの中の服が何着か無くなってるけど。

 

アナグラは地下にあるため、部屋の窓にあたる箇所には部屋の使用者が好きな景色の映像が組み込める。俺の部屋は夕日が海へ沈む映像を組み込んでいた。

何も変わらない。それが嬉しくも、悲しくもあった。彼らはまだ、俺が居なくなったということを引き摺っている。まだどこかにいるはずだと、部屋を綺麗にし、帰ってくるのをずっと待っていた。

 

(…まあ、実際戻ってきたんだけどね)

 

俺は力をなくした、平凡な人間だ。幼くなった俺を拾い、育ててくれた藤丸夫妻には悪いが、俺は…どこまでも凡人だ。真っ当な善人という訳でもない。でも、相手が誰だろうと、見捨てるのは絶対に嫌だった。

 

今、この世界にはアラガミの脅威の他に、発生した聖杯の特異点の影響もある。サーヴァントが召喚されてないとも限らない。だが、目的がわからない。

あの城のようなものを作り、何がしたいんだ?

 

ベッドに腰掛け、マシュたちとの通信をONにしようとした、が。

 

(マシュたちに、なんて言い訳しよう…)

 

もう、俺がこの世界の人間だったことを隠すことは出来ない。俺を知っている人間は実の所、世界中にいる。

知らぬふりは出来ない。

 

(正直に謝ろう。そして、話そう。ああ、許してくれるかな…)

 

覚悟を決めて、通信をONにした。

 

『………ダヴィンチちゃん、通信回復しました!先輩、大丈夫ですか?…先輩?そこは…』

 

ホログラムのマシュが映る。覚悟は、決めたはずだ。

 

「ごめん!マシュ、ダヴィンチちゃん。俺、出会った時からずっと隠してきたことがあるんだ」

『やっと通信が再開したと思えば急にどうしたんだ。藪から棒に──……ああ、あいつ(・・・)のようなことは言わないでくれよ?流石の天才ダ・ヴィンチちゃんも、悲しくなってしまう』

『…先輩、話してください。通信が再開されてからすぐにお話するようなことです。一刻を争うのでしょう?』

 

はー、今日もマシュが尊い…。

 

「…ありがとう、マシュ。通信を突然切ったのは、命の危険があったからだ。声を出せば、喰われる(・・・・)状況だった。

そして、そもそもだ。そもそも、俺は…こっち(・・・)の人間だったんだ」

『えっ?』

『こっち…?アラガミとやらが大量発生している世界のことかな』

「そう。ダヴィンチちゃん、駆除集団がいるって言ってたでしょ。俺はその駆除集団──ゴッドイーター(神を喰らう者)、または神機使いと呼ばれる…ヒトだった。

まあ、正確には制御されたアラガミみたいなのだったんだけど…俺は日々、人類をアラガミの脅威から少しでも守るべく、戦っていたんだ」

『…だが、君は幼い頃からのデータが残っている。偽造した形跡もないし、レイシフトのように時間と空間の移動をしてきたのなら、年齢が合わないぞ?』

「あー、それかぁ。こう、なんというか…身体が子供に戻った(・・・・・・)というか……その所為でただの凡人になっちゃったんだけど…」

 

幼くなった際、藤丸夫妻に拾われ、そこからの成長過程が、データとして提出したものだ。

 

『…ふむ、そうか…。うん、分かった。君が私たちに隠してきたことは許してあげよう。いいね?マシュ。他のみんなもいいだろー?』

『はい。どんな過去があろうとも、先輩は先輩です。…サーヴァントの方々は混乱するかもしれませんが……』

「2人共、ありがとう…」

『大丈夫。彼らにとって、今の(・・)マスターは今の(・・)立香くんだけだからね。…………清姫はちょーっと怖いかな』

 

…ちょっとじゃなくて大分怖いんだけど。

 

 

 

: : :

 

 

 

『さて…本題に入ろう。君がレイシフトする前にも話したように、今回のレイシフトは君1人だけ。平行的な世界であることが理由でサーヴァントのレイシフトが弾かれる可能性が高かったためだ。そこで、君1人がレイシフトし、現地からカルデアのサーヴァントを喚んでほしい(・・・・・・)ということさ』

「…たしか、俺が縁を持っているから喚ぶことで召喚するための道を作ることが出来るんだよね?」

『そう。ただし、観測するにその世界には魔術師が誰一人居ない。魔力を使うような存在が居ない。おまけに霊脈が入り乱れて魔力が食べ放題。現界するための魔力はカルデアからの他に、現地で調達が可能だ。

実質、召喚ですらない。ただの移動だ。パスを通じてカルデアからそっちにね。要は、「緯度と経度を教えるから来てくれる人はここまで来てね!」というわけ』

「酷だなおい」

『早速だが…誰か喚んであげてくれないか?管制室の入口の前で待機してるサーヴァントもちらほらいてね…マスターの寝床にこっそり侵入しそうなサーヴァント三人衆とか』

「ひぇっ、無理無理無理無理!清姫いるじゃん!」

『それもそうだな…今の君に会わせるわけには……あ、そうだ。マシュ、彼をここに呼んでくれ』

『彼…?ああ!()ですね。今呼んできます』

「彼って…?」

『すぐ来るよ。そういや、さっきは聞かずに流してしまっていたが、君がいる…フェンリル極東支部?は安全(・・)なのかい?』

「うーん、確実に安全とは言えないけど、安心(・・)出来る場所だよ」

『そうか。なら、いいのだけれど。現地の協力者も多いに越したことはない。…お、来たね』

『お待たせしました。呼んできましたよ』

『──全く、長いこと待たされたな』

『管制室の前でそわそわしていた、エミヤ先輩です』

『…そわそわしていた覚えはないが』

『またまたー、「…マスターは無事だろうか」「こういう時の対処法を教えるべきだったな…」とか呟いてたじゃないか!』

『なっ…!』

「エミヤ…うっ、うぇっ、心配してくれて、ありがとう…」

『泣くなマスター!』

『まあ、ともかく。私たちとしても、立香くんの所に1番に行ってほしいのはエミヤくんなんだよね。だって君ら、冬木の時からの仲なんだろう?初召喚がエミヤくんだったとか』

「うん、そうだよ。エミヤにはホント助けてもらいっぱなしだよ。

今回も、来てくれると、凄く助かる、けど………食堂は大丈夫…?以前暴動が起きたろ?」

『そのことでしたら、ブーティカさんとキャットさんが、張り切って食堂をまわしてくれるそうですよ』

『てなわけだ。どうだい?エミヤくん』

『マスターが私を必要としているんだろう?ならば行く以外に選択肢はないと思うな』

『じゃあ決まりだ。通信を切った後、エミヤくんを喚んであげてくれ』

「分かった」

『ではな、マスター。また後で』

『ご武運を、先輩』

 

 

 

 

 

: : :

 

 

 

 

 

「来てくれ、エミヤ…!」

 

赤い外套のサーヴァントを思い浮かべ、祈るように呟いた。

俺の目の前に金色の光が現れ、それは人の形を形成する。

 

「──サーヴァント、アーチャー。君の声を頼りに、来たぞ。マスター」

 

慣れ親しんだ優しさを帯びた声に、俺はふう、と息を吐いて安堵する。

 

「早速だけどエミヤ、お願いがあるんだ」

「…何かね、マスター。唐突に」

「嫌だと思ったら、契約を切って構わない。だから頼む、聞いてくれ。

──俺が戦ってきた、この世界と、俺の話を」

 

 

何も出来なかった、あの燃える冬木の街。

召喚された赤い外套のエミヤを見て、俺は──ああ、彼が英雄(ヒーロー)なんだ、と思ったんだ。

 

 

 

 






オリキャラ

レックス・ウォーベック
アメリカ出身。
リツカが好んで頼んでいたヘリのパイロット。寡黙な男と思われていたが、実際は箸が転んでも笑うぐらいの笑い上戸。

身長189cm 体重88kg 筋肉質




補足

個人的にもやもやしてたので補足。
何故、1.5部のような「亜種並行世界」ではなく、「平行世界亜種特異点」なのか。
並行とは「並んで行く」という意味であり、平行は「交わらない」という意味。
「同時に進める」という意味では同じですが、このクロスオーバー、「決して交わらない」という意味を用いりたかったんです。
FGO界と交わらない「平行世界」で、混じりあってしまった「亜種的な特異点」。
まあ、「並行世界」も「平行世界」もパラレルワールドに変わりはないのですが、気分の問題です。失礼致しました。
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