平行世界亜種特異点『追蹤の城塞 極東』   作:ゆしゃ

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『ロミオは優しいんだね』

 

血の力が開花せず、俺より後に入隊したリツカ、ナナ、ギル、シエルまでもが血の力を開花させ、俺は焦っていた。

 

リツカがブラッドの副隊長となり、共にミッションに向かうヘリの中、リツカが微笑んで放った言葉に苛立ちを感じた。

 

『…なんで、お前が』

 

俺がぼそりと言ったその言葉にリツカは目を見開き、泣きそうな顔をした。

 

『ごめんね、ロミオ。

さあ、もうすぐ戦場だ。気を引き締めよう』

 

(違う、違う!俺だよ、俺が悪いんだ!何でリツカが謝るんだ!

まるで俺を庇うように!こんな醜い感情に支配される俺を!)

 

俺は死んだ。じいちゃんとばあちゃんが心配で「赤い雨」の中、防護服を身に纏い走り出した。マルドゥークに叩きつけられ、俺の何かが弾けた。

最期に視界に入ったのはジュリウスの必死な顔だった。

 

いつの間にか隊長になって、いつの間にか世界を救って、いつの間にかジュリウスを救って、俺も救われた。実感はないけれど、極東や情報管理局のみんなが口を揃えて言う。

 

リツカは「世界を救った」のだと。

 

「なあ、リツカ」

 

俺が生き返ったんだ、お前も生きているはずだ。

俺なんかに起こった奇跡が、お前に起こらない訳がないんだから。

 

 

: : :

 

 

「喉が渇いた!」

「…意気揚々に言うことではないのでは?」

「NORNの情報の洗い出しと他支部へのハッキングにも飽きてきたし…」

「全く…その技術は一体誰仕込みなのかね」

「テルくんっていう神機オタ…マニアかな。仲良かったんだ。主に神機の話で」

「神機?」

「まあ、あれだよ。サーヴァントでいう宝具…武器みたいなものかな。

偏食因子を持つ神機使いにしか扱えない代物で、神機がなくちゃアラガミに傷すらつけられない。

ただし他人の神機に触るのは御法度。喰われちゃうからね。……極東には他人の神機を使ってもピンピンしてた凄い人も居たみたいだけど」

「マスターにもその神機が?」

「うん、現役のときはね。今は何処にあるのか…アラガミの胃の中か、土に埋もれているか…あー、喉渇いた。ごめん限界。自販機で買ってくるよ。待ってて」

「シンクがそこにあるが」

「そこ、使わないからって水止めてもらってるんだよね。シャワールームも水が出るけど、ね?」

「…理解した。気をつけ給え」

「色々漁ってもいいからねー」

「…は?」

 

 

: : :

 

 

「ムツミちゃーん。飲み物ちょーだい!喉渇いてしにそう」

「あれ?自販機にも飲み物あったでしょ?」

「誰の陰謀かは知らないけど、全階、冷やしカレードリンクしかなかったんだよ。…冷やしカレードリンクじゃなあ」

「リッカさんなら喜びそうだけどね。はい、どうぞ。ミックスジュースだよ」

「ありがとう!ぷはぁ、生き返る…」

「エミヤさんは一緒じゃないの?」

「部屋で待たせてるよ。そろそろ行かないと不審がるかなあ。

…ん?なにそれ、昼間は無かったよね」

「この籠の飴?試供品、ってサカキ博士が置いてったんだよね」

「へー、一個食べよ」

「あっ!気をつけて!」

「へ?………………み、水水水水水!!!」

「はい!リツカさん!」

「っ、何これ?!不味い!酸っぱいし甘いし苦いし止めに辛いって!ううううう、口の中が何とも言えない味がする…」

「もう、気をつけてって言ったでしょ」

「遅いよ…ムツミちゃん…」

「サカキ博士とナナさんが作る食品物は危険が付きもの。この飴で既に何人か医務室に駆け込んじゃったんだよ?」

「…そういえばナナも食べた人をヴェノム状態にする錠剤作ったっけ」

 

ぐいっと!一気に!と言われ口に含むとじくじくと体中が痛み出し、冷や汗をかくような状態になった。思わず頭を抱えた覚えがある。

スキル──鋼の体(全状態異常耐性)すら上回る劇物を作り出す部下。そっちの方面での将来が不安でしかない。

 

 

「…お?隊長か」

「あー…ギルかぁ」

「連れは居ねぇんだな。…これ、飴か?」

「あ」

「あ」

 

止める間もなくギルは口の中に飴を放り込んでしまった。

 

「…うぐっ?!…………ふっ、後は頼んだぜ…隊、長…」

 

ばたーんと軽快に音を立ててギルはぶっ倒れた。

 

「ギ、ギルゥー?!傷は浅いぞ!しっかりしろー!」

「…呼びました?」

「わぁ」

「ギャアァァァーーー!ギギギギギ、」

「ギ?」

「ギルくん??!!なんで??!!」

 

いつの間にか背後にギルくん──幼き頃のギルガメッシュが居た。

 

「だって、呼んだでしょう?僕のこと」

「ギル違いだよ!」

「まあいいじゃないですか。僕とマスターの仲ですし。大人の僕が来なかっただけマシかと」

「一番仲がいいのはギルくんだって自覚はあるけどさぁ…」

 

人理修復の初期に召喚に応じてくれたギルくんは最早、莫逆の友と言っても過言ではない。まあ、俺はギルくんの考えてることは皆無だけどね!含みが過ぎるんだよ、ギルくん!でも、もの凄く信頼してるよ!

 

「それで、大声あげてどうしたんですか?…あれ?この倒れてる人は…?」

「あー、俺の仲間だよ。愛称がギルなんだ」

「へぇ」

「…ギルくん拗ねてる?」

 

俺の仲間だと言った辺りからムスッと顔を曇らせたギルくんは見るからに拗ねている。

 

「いいえ、別に。僕を呼んだわけじゃないんですね。…帰りましょうか」

「わああぁぁぁ!ギルくん待って!」

「もうっ、何なんですか!」

「うぅ…一大事なんだよ…こっちのギルが飴を食べて倒れちゃって…」

「飴?」

「ふ、ふふふ、ギルくん。あれは生み出してはいけない…阻止すべき案件だよ…」

 

アリサの料理も劇物だっけなぁ…。あれ?極東支部って食べ物での被害(テロ)の方が医務室の使用多いんじゃ…?

 

「…とりあえずこの飴、全部砕いておきますね」

「ちょっと犯人問い詰めてくる」

「いってらっしゃーい」

 

: : :

 

 

──支部長室。

 

「やあ、リツカくんか。味はどうだったかい?」

「クソまずです。酸っぱくて甘くて苦くて辛いとかどうなってんですかアレ」

「おや、またか」

「……また?」

「あれは『青春キャンディ』と名付けていてね。甘酸っぱくてほんのり苦いというのをコンセプトにしているんだけど…どういったことか、辛さが主張していてね」

「んなもん試供品にして色んな人に食べさせたんですか」

「大丈夫、今回は人体に影響を及ぼすものは材料としていないよ」

「今回は?前回の『失恋ラーメン』は忘れましたか?伝説となった『初恋ジュース』は?

そして、今回!あの飴の所為で何人か医務室送りですけど?!」

「ふふ、犠牲の上で成り立っていることをわすれないでくれたまえ」

「もうやだ!この童顔アラフィフ!」

 

 

: : :

 

 

「…ただいま、エミヤ」

「遅かったな、マスター。なにかトラブルでも?」

「飴の所為でギルが倒れてギルくんが来ちゃって童顔アラフィフは断じて許さない」

「支離滅裂ですよ、マスター」

「…幼い方の英雄王か」

「エミヤさんですか。先に来ていたと聞いてはいましたが……妬けますね。

マスターが一番に呼んだのが僕ではなく、貴方とは」

「付き合いの長さは私の方が上だからな」

「あーはいはい。バトらないで。前にも知らずの内に敵陣殲滅とか結構あったでしょ。ここ、俺の部屋ね?」

 

 

: : :

 

 

「…今まで何度も言葉を重ねた中で、貴方から戦士だった気配は微塵もありませんでしたが」

「ヘヘ、上手く隠せてたなら上々かな!」

「そもそも何で隠す必要があったんですか?」

「…初めて聞いたとすれば、信じられない話ではあるな。『自分は未知の存在と戦っていた。幼くなりこの世界へやってきた』などと、下手をすれば精神異常ともとれる」

「そういう事。中身までは幼いわけじゃなかったから懸念してたんだ。何も知らないただの一般人(・・・・・・)として過ごそうと思っての行動だった。

それがずるずる伸びて…カルデアでも隠し続けていた。人理の修復の過程では、俺の過去は大事じゃなかったからね」

「…マシュさんたちに言えなくとも、せめて僕には教えてほしかったです」

「ごめん、ギルくん。多分あの時はそれどころじゃなかったんだ」

 

 

 

 

: : :

 

 

 

「じゃあ明日の調査にはギルくんも一緒で良いよね?」

「ええ、僕はマスターを助けに来たんです。同行するのは当たり前ですよ。それに…」

「ん?」

「僕は手数の多さとしてはエミヤさんにも並びます。

今回、不明点が多い中、手数は多くあっても損はありません」

「人数を抑えて調査に乗り込むなら、私とそこの英雄王が適任だ。…性格的にもな」

「大人の僕に、マスターは任せられませんもんねー」

「全く持って同感だ」

「信用ないのか、王様(ギルガメッシュ)は」

「慢心の方ですけどね」

 

 

: : :

 

 

「う…、あさ…?」

「起きたかね」

「お寝坊さんですね、マスター。もう七時半ですよ」

「ダヴィンチ女史たちと連絡を取るのではなかったか」

「…そうだった」

「早く着替えてくださいね」

「朝食は机に置いてある。ムツミに頼んでラウンジのキッチンを借りさせてもらった。

…水道だけではなく、コンロも使えないとは思わなかったぞ」

「ごめーん!自炊出来ないわけじゃないけど部屋に居ない時間の方が大きかったから!」

 

急いでベッドから飛び起き、クローゼットに仕舞い込んだ魔術礼装カルデアを取り出し、ふと思う。

 

「…もしかしたら、アラガミとの戦闘もあるかもだよなぁ」

 

普段、神機使いたちが着ているのは対アラガミ用に仕立てられた洋服だ。触り心地や着心地は普通の服と変わらないが、比べ物にならないぐらい強固に出来ている。

 

「……上に羽織るくらいはしておくか」

 

愛用していた「ステイツM1N」を魔術礼装の上に羽織る。神機使い用の服は腕輪の関係により袖が短く出来ている。そのまま着てしまうと片腕の袖が余ってしまう。ちなみに腕輪があるのにどうやって着てたのとか聞いちゃいけません。

 

「それ、全部マスターの服ですか?」

「うん?ああ、そうだよ。服の数は極東随一を誇るかもなぁ」

「何故、そんなに服が」

「…開発部がね、上層部の命令で服を作らなきゃいけないって言うから、そのモデルをしてたらこんなに…」

「全て貰っていたのか」

「だって勿体無くて捨てられないよ。一通りは着まわしたなぁ。

専らブラッド制服か今羽織ってるステイツくらいしか来てなかったけど」

「…マスター、この着ぐるみは何ですか?」

「開発部の悪ふざけ!」

 

 

: : :

 

 

時間も時間なため、会議室へ向かおうと準備をしていると急にエミヤがそわそわしだした。ギルくんはにんまりと微笑み、何も言わない。

 

「マスター……気を付けろ、誰か来るぞ」

「へ?」

 

ドアが開いたかと思えば、見覚えのあるくすんだ金髪が視界に入った。息を切らせた彼は勢いよく伏せていた顔を上げた。

 

「……っ、リツカ、なのか…?本当に…」

「ジュリ、ウス」

 

俺の姿を捉えたグレーの目が見開いた。

俺に伸ばされた手は背に回り、ジュリウスに抱きしめられる形となってしまった。

 

「リツカ…!嗚呼、隊長、リツカだ…!」

「ちょ、まって、ジュリウス…!苦しい!」

 

相手は神機使い。力の差は今の俺とは雲泥の差。ぎちぎちと締まる音がする。

こんな音したらまずいよね?ね?

 

「エ、エミ、ヤ…!ギル、く…助け…!」

「やれやれ、感動の再会というやつだろう?」

 

エミヤの薄情者め!う、息が…。

 

「でも、それどころじゃないみたいですよ」

「仕方ないな。君、マスターから離れたまえ」

「…貴方たちは、」

「そこの彼の仲間だ」

「隊長…リツカの…」

「ジュ、ジュリウス…!ギブ、ギブだから…!」

「ッ!すまない、リツカ!お前の姿を見たら思わず…抑えられなくて、な」

「はぁ、はぁ…話はシエルたちから聞いてたよ。俺のこと、ずっと探してくれてたんだろ?」

「そうだ。…俺は、ずっとお前を探していた。果てまで探す、そう誓った。気が気では無かった。

手を伸ばし、引き上げてくれたお前が…傍に居ないなど、あってほしくなかった…」

 

しゅんと怒られた犬の様に佇むジュリウス。うーん、頭の上に耳が見える。

 

「マスター、また来ましたよ? 」

「え?」

 

またって何?またって!どたどたと大きな音を立てこちらへ誰かが向かってくる。

 

「ジュリウス!またお前は…!っ?!」

「ちょ、おい、リヴィ!急に止まんなって…あ゛ー?!リツカ?!」

「や、やあ、リヴィ、ロミオ」

 

 

: : :

 

 

「…リツカ」

「う、ロミオ…」

「俺、怒ってんだからな。無茶して、俺の二の舞いになるだなんて…」

「ロミオはずっと悔やんでいたんだぞ。自分が生き返ったから、消えてしまったんじゃないかと」

「ばっ、リヴィ!今はいいんだよ!今は!」

「ふ、そうか。だが、私も隊長に救われた立場だ。ロミオ、お前の気持ちも痛いほどわかる。ジュリウスが責任を感じているのもな」

「う、リヴィにそれ言われると、なぁ…」

「…だが、何故、俺はリツカに同行して駄目なんだ」

「ジュリウス、数日跨ぐミッションの後でしょ。休んどかなきゃ」

「そうだぞ、ジュリウス。神機使いは身体が資本。お前が倒れてしまっては後がない」

「ぐ……仕方ない、のか…」

「次はジュリウスにも同行頼むからさ。勿論リヴィにも」

「…そうか」

「ああ、待っている。…生きて帰ってくるんだぞ?」

「ふふ、分かってるよ」

 

 

: : :

 

 

『おはよう、諸君!まさか幼いギルガメッシュ王が早々に呼ばれるとは思わなくてね!昨日から賢王がお怒りだよ!』

「ざまぁみろってやつですね」

「『何故、我が呼ばれんのだ?!雑種め!』とでも口煩く吐いたのかね」

『エミヤさんの言葉に一字一句間違いはありません。ただ…お怒りなのは、ギルガメッシュ王だけではなく、あの……清姫さんも…』

「ウン、マシュ。キカナカッタコトニスル」

『…?そうですか。あと、何故カタコトに?』

「…男には色々あるのさ」

「貴方が言うと信憑性が増しますね」

『ごほん。本題に入ろう。

平行世界の調査記録がないか探してたって言ったけど、あの後マシュと何人かのスタッフと一緒に過去の文献を読み漁った所、一件だけヒットしたよ。しかも、おそらくそこ(・・)のね』

「記録にはなんて?」

『平行世界且つ、未来との交信は可能かどうかという実験の中。奇妙なピストルが召喚されたとのことだ。歪み、使い物にならないものだと判断したが、そのピストルは動いていた(・・・・・)。歪みに沿ってうねっていた、と記載されている』

「初期型の神機か…!ピストルは、その後…」

『召喚元に自動で返還されたらしい。誰も触れていないし、被害はゼロ。何事も無かったそうだ』

「そっか…オラクル細胞が残ってたら、すぐさまこっちみたいになるから、ほんとマジで」

『ううーん、些かまだ信じられないが、そんなに酷いのかい?』

「人間が安心して住める場所はない。排除しなければこっちが死ぬ。世界は常に喰われている。

なんとか希望が薄っすらと見えてきたかな?ってとこかな」

「世紀末か」

「…この目に収めるのが楽しくなってきちゃいました」

「あ、ダヴィンチちゃん。この後の予定なんだけど…」

『少し待っていてほしいな。マシュを呼ぶから…おーい、マシュ。立香くんから連絡があったよ』

『ホントですか?!…おはようございます、先輩。疲れは取れましたか?』

「うん、ばっちり。マシュもあんまり根を詰めないでね」

『先輩のためならエンヤコラです。先輩を全力でサポートしますので!』

「ありがとう、マシュ。こんな立派な後輩を持てて俺も幸せだよ。

…で、予定なんだけど、10:00から会議室でブリーフィングなのは変わらないよ。移動方法とかはブリーフィング内で話されるんじゃないかな」

『周囲のサーヴァントの反応も、聖杯の反応も今の所感知していない。だが、間違いなく異常だ。心して行くんだよ?』

「うん、経験から言って心してかからないと死に至るのは目に見えてるからなぁ」

『っと、そろそろそっちは10:00に近いかな』

「9:45。行くか…、15分後にまた連絡するよ」

『りょうかーい』

『ではまた』

 

 

: : :

 

 

──時刻10:00。会議室

 

 

「…さて、みんな集まったね。おはよう、諸君。昨日の話通り本日11:00(ヒトヒトマルマル)から件の城へ調査を目的に向かってもらう。

…ソーマ博士、聞こえるかい?」

『…ああ。……本当に、いるんだな』

「…お久しぶりです、ソーマさん」

『神機が使えなくともお前はお前だ。立ち回りを忘れたわけではないだろう。だからこそ、この調査をサカキのおっさんに推した。

お前がいるのなら、とな』

「ソーマさんが、調査を?」

「そっか、情報局が完全に撤退してからソーマさん、聖域の調査も始めたんだっけ」

「昨日も言った通りソーマには君たちが潜る穴の周囲を警護するため、現地で合流するコウタくんと共に待機していてもらう。今の所、周囲に変化はあるかな?」

『ちまちまと雑魚(小型)が湧くくらいだ。後は特にない』

「なら続行で構わないね」

「サカキ博士。我々が聖域へ向かうことは決定しましたが、移動手段はどうするのですか?

ヘリでは聖域内部を徒歩で移動することになりますが…」

「それについては問題ない。リツカくんたっての希望でトレーラーで向かうことにするよ。

トレーラーならアラガミ装甲付きのものがあるし、入口までそのまま行ける」

「…いつの間に」

「へへ、昨日サカキ博士のところにカチコミしに行ったときに提案したんだ。

…カルデアのみんなに見てほしいからね」

「昨日言ってたのはこの事だったのかね、マスター」

『…私たちにそれを見せたとして、何になるんだい?』

「何かにはなるかもしれない。俺としては、こういう未来にはしないで欲しいなぁってだけ。

未来を生きた人間からの忠告、ってことで」

『…わかった。なるべく全職員に通信映像を見せるようにするし、録画もして資料として残すよ。

全く、突拍子も無いことを言うんだから、立香くんは』

「ありがとう、ダヴィンチちゃん」

「ダヴィンチ氏、そちらからの要望はあるかな?

我々の調査を優先としての事柄になっているんだが…」

『私たちもほぼ様子見の段階だ。並行して探査を行うつもりだから、まずは立香くんの安全をお願いするよ』

「心得た。まあ、私が言わずとも守ろうとする者は沢山いるみたいだ」

『…愛されてるなぁ』

「っと、遅れました!どこまで話進んでます?」

「テルくん!」

「おや、来たか。彼、テルオミくんにはフライアの外でのオペレーターの担当をお願いすることにしたんだ。

同時に、トレーラーの運転手の片割れも頼んだよ」

「いやぁ、野戦整備士時代に培われた技術がこうしてまた役に立つなんて」

「現地で待機しているフランくんにはフライアの内部の解析、オペレーターを。実際に拠点としていた君たちなら差異が分かるかと思ってね」

『──おい、生憎だが俺は一旦抜ける』

「アラガミの出現が?」

『中型だ。時間はかからねぇ。だが、話は後だ。あんたらは時間になったらこっちに向かってくればいい。それまでにはあいつらも失せる』

「頼んだよ、ソーマ。そろそろコウタくんも応戦に入るはずだ」

『…了解。切るぞ』

「話を戻そうか。

オペレーターはフライア内をフランくん。フライア外をテルオミくん。

エリナくん、エミールくんは、ソーマ博士とコウタくんと共に周囲の警護。

リツカくんたちとシエルくん、ナナくん、ギルバートくんは城壁内の調査だ。何かここまでで質問は?」

「俺からだが、いいか」

「どうぞ、ギルバートくん」

「調査、ってのはわかったっす。後はどこまで(・・・・)調査を行うか」

「いい質問だ。

今回の目標としてはフライア内全てと、フライアから城壁内の何処かへ出られるのなら、周囲50m範囲と言ったところだろう。

正体不明の生物の特定も至急だね」

「それが俺たちの知っているワイバーンやドラゴンだとしたら…」

『聖杯の影響に間違いないね』

「兎にも角にも内部に入らないと何も分からないってことか」

「ご名答。困ったものさ」

「…そろそろ時間になりますね」

「テルオミくんはリツカくんたちとブラッドについていてくれたまえ」

「えーっ!わたし、先輩とじゃなくて、エミールと?!」

「何だエリナ。僕と共に段差に揺られるのは嫌なのか!」

「嫌に決まってんでしょ!」

「すみません。そっちのトレーラーはベースキャンプに持っていくレーダーとかの機材を積み込んでいるので…組分け的にこうなっちゃっいまして」

「うう、我儘は言いたくないけど…無駄に喋らないでよね!エミール!」

「了解した!」

「うるさい!」

「行きましょう、ナナさん。……ナナさん?」

「はっ、おでんパンが…!」

「…寝てたなこいつ」

 

「……こんなぐだぐだで後が怖いんですけど、大丈夫です?これ」

「いや、うん、大丈夫。彼らの実力はお墨付きだから…………………多分」

 

 

: : :

 

 

「これが…外部居住区」

「そ、彼らは紙一重のところを生きている。この居住区がその例の一つ。

あ、装甲壁を抜けるよ」

「付近にアラガミの反応はありません。ナイスタイミングですね。アラガミが彷徨いていない方が珍しいんですけど」

『なんだ、これは…』

『建物の、残骸…でしょうか』

「アラガミたちの食べ残しだね」

「…増え続けるばかりだからな」

『こんなところで、君は…』

「ストップ、それは後。今は目におさめて。俺が守ってきた世界を」

「私たちは今も守ってるよ!」

「そうですね…守らなければいけないんです。大切な、失いたくない人たちが住む世界なので」

「みなさん、ちょっといいですか」

「テル、どうした」

「もう少しで聖域の入り口なんですけど…これ見てください」

「レーダー?この点…」

「小型も小型ですけど横方向に集まっていて避けようがないんです」

「…このまま突破しちゃったら?」

「アラガミ装甲付きなら可能か…」

「…行っちゃいますか。何体かは轢いちゃいますよ!衝撃に気を付けてくださいね!」

「ナイトホロウの大群?!あんなに?!」

「50は居るな…うおっ」

「うわっ?!」

「きゃっ!」

「ふぅ…無事に抜けましたよ。大丈夫ですか?」

「な、なんとか…」

「テルくん、凄く楽しそうだ」

「なんたってリツカさんとまた一緒に行けるので!」

「え?えー?」

「相変わらずお前はうちの隊長大好きだな」

「…負けませんから、リツカ隊長の良さを知り尽くしているのはブラッドです…!」

『賑やかだなぁ…!個性的だなぁ…!』

『私だって、先輩のことが……』

「ダヴィンチさん、それブーメランですよ。マシュおねえさんは一旦落ち着きましょう」

 

 

: : :

 

 

「着きましたよ。ここが聖域…萌芽の神域、鎮魂の座のベースキャンプです」

「…あっ、せんぱーい!遅ーい!」

「道中にナイトホロウがいて…」

「おお!我が親愛なる友リツカよ!闇の眷属らの邪魔立てに対処していたのだな!?神機は使えなくとも僕には分かる。そう!貴君からは上に立つ者の覇気、それが漂っている!戦場故の指示の的確さが命運を左右することはこの僕もよく知っているとも!あれは君と出会い共に鰐型の闇の眷属(ウコンバサラ)を退治しにいったときだったな…」

「はいはい、エミール。そこまでにして、先輩が困るでしょ!

…それで、そのナイトホロウはどうしたの?あ、シエルさんたちが狙撃したとか?」

「轢いてきた」

「ひいてきた」

 

 

: : :

 

 

「お?おぉぉぉ!なあソーマ!マジでいた!あれ、リツカだよ!」

「ちっ、はしゃぐなガキじゃあるまいし」

「おーい!リツカー!」

「コウタ!」

「「イエーイ!」」

「ほんっと、久しぶりだなー。死んだかと思ったんだぞ」

「似たようなもんかな!死にたくないけど。コウタはミッション終わり?クレイドル活動終わり?」

「クレイドルの方。アリサとリンドウさんのとこから離脱してこっちに来たところだ。アリサも心配してたんだぜ?

『会えたら、会えたらですよ?…おかえりなさい、と伝えてもらえません?あ、会えたら、ですからね!』だってよ。相変わらずだよなー、アリサのやつ」

「…っ、」

「おお…アリサっぽい…。…ソーマさんがツボに入ってる。肩震えてるもん」

「ソーマ、笑ってやるなよな。アリサにど突かれるぞ」

「…お前みたいなヘマはしねぇよ」

 

 

: : :

 

 

「よかった…!この状況で嘘は吐かないとは思いましたが、ちゃんと、ここにいるんですね」

「フラン、心配かけたね」

「全く…ホントですよ。…あの日、無理にでもオペレーターとして同行すべきでした」

「マスター、そちらのおねえさんは?」

「ああ、彼女はフラン。俺たちが本部直轄の特殊部隊だったときからのオペレーターなんだ」

「ご紹介に与りました、フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュ、と申します。

彼ら、神機使いの方々がミッションを行う際の戦闘管制やミッションの報酬の支払いなどを受け持っています」

「フランちゃんも隊長が居なくなったとき、仕事も手につかなくなっちゃったんだから!」

「や、止めてくださいよ、ナナさん。あの時は流石に動揺してしまって…」

「へぇー…?」

「…ともかく、フライア内部内のオペレーターは予定通り私が務めます。

皆さんがフライア内部から外部へ移動時にはテルオミさんが皆さんの対応。

私はベースキャンプ周囲、および侵入口周辺の警護を行っている第一部隊、ソーマさんの戦闘管制。情報が出揃い次第解析作業に移ります。

現在の状況は今すぐにでも乗り込めるように整っています。どうします?」

「…行くっきゃねぇだろ」

「…そうですね。ここで狼狽えても仕方ありません」

「…うん、このまま放ってはおけない」

「ふむ、こちらは任せ給え!全力で守り通そう」

「そうだよ、先輩。コウタ隊長もいるし、ソーマさんだっている。アラガミの侵入は絶対に阻止するからね!」

「任せたよ、エミール、エリナ」

 

 

: : :

 

 

『ずっと黙って観測してたけど、凄いねそこ。そこら中殆どに微弱な生命体反応が見られるよ』

「ここは聖域の中でもオラクル細胞不活性化地域から離れた場所だからね。…強靭なアラガミが多い。おこぼれを貰おうと、意思のある細胞たちは集まってくるんだ。

…あれ、マシュは?」

『…拗ねてるねぇ』

「えっなんで」

『可愛い後輩ちゃんや部下の子たちにちやほやされてるからじゃないかい?』

「え、ええ…」

「…一理ありますね。僕も拗ねたい気分ですもん。マスターの一番のサーヴァントは僕ですからね」

「やめてくれ英雄王」

『……あの、先輩、お願いがあるんです』

「うん?」

『後日、先輩のことを、私と同じく先輩と呼ぶ方との対談の場を設けてもらえませんか』

「エリナのこと?別にいいけど…」

『彼女とは白黒ハッキリさせようかと思うので!さあ、先輩!そろそろ突入の時間では?』

「あっ、みんな待ってる…!一旦切るね。安全な場所についたらまた連絡するよ」

 

 

: : :

 

 

「先頭は俺が行く」

「ギルの後ろに私でー」

「私が殿ですね。隊長たちはナナさんの後ろについてください。背後は私が守備します」

「分かった」

「…でもまさか、ここにあるとはな」

「…ちょうどここが、半年前に隊長の反応が消えた場所です」

「この像は?まるで聖女のようだが…」

「聖女…ハッ、んな優しいもんじゃねぇよ。世界を滅ぼそうとした奴が聖女?んな話があるか」

「…うん、この像に良い思い出はないねー」

「…ここで、地面が揺れて、そこから鈍い光が漏れたんだ。そして、俺は消えた。…きっと前兆だったんだ。

…行こう、みんな」

 

 

: : :

 

 

「暗い…というかホントに穴なんだねぇ。こう、何だろ?掘っていったみたいな?」

這い出た(・・・・)、とすればここを通ったに違いありません。

…その時に出来たものでしょう」

『そろそろ城壁の範囲内に入ります。周囲を警戒してくださいね』

「了解。…ん?おいフラン。範囲内ってのは、あの白い壁の辺りか?」

『白い壁…ええ、そうです。昨日、ソーマ博士と共に映像と計器で観測していますが、黒みがかった土の壁と白い土の壁。その境がちょうど範囲内にあたります』

「じゃああそこを超えれば!」

 

 

: : :

 

 

 

 

『 お 返 し し ま し ょ う 。 貴 方 の 【     (■ ■) 】 を 』

 

 

 

 

「………え?」

 

如何にもな境界線に足を踏み入れた瞬間、ずしりと右手に重さがかかった。懐かしい重さだ。

だが、ありえない(・・・・・)。ありえないはずだ。

だって、俺は、俺は──もう、この身に宿していない。持つ権利を失っているはずだ。

 

思わずバランスを崩し、尻もちをつく形で倒れてしまった。

 

「マスター!」

「隊長?大丈夫ですか?!」

「あ…なん、で、なんで…」

「それ、は」

「隊長の、神機。っ!隊長!離せ、今の隊長が持てる代物じゃ…!」

『みなさん落ち着いてください!ギルバートさん!大丈夫です。オラクルの反応はありません。

それは神機の形をした別の物。数値上の危険性は皆無です。

実物はどうですか?』

「…精巧に出来ていますね。寸分変わりなく。隊長が扱っていた神機です」

「…俺の、神機だ」

『まさか!そんなはずは』

「分かる、分かるよ。一緒に切り抜けてきたんだ。どこにどんな傷があるか、よく覚えてる。装填されてる速射バレットも、俺だけのバレットだ。

他の誰かが分かるはずがない」

 

立ち上がるために右手を引いた。すると神機は跡形もなく消えてしまった。重さもない。

 

「へ…?消えた?なんで?」

 

すっすっと手を境で行き来させてみる。城壁内でしかこの神機は保たないのかな…?

 

「持ってる?消える?ん?ん?………ダ、ダヴィンチちゃーん?!何これ?!」

『困ったときのダヴィンチちゃんだよー。さて、私から言えるのはそれに魔力はないってことだけさ。ね、エミヤくん、英雄王』

「…確かに、その武器からは何も感じません。空っぽ、に近いのでは?」

「概念が薄い、とも言える。その剣は本来存在し得ぬ物、なのではないのかね、マスター。胃の中か、と言っていただろう」

「……存在しないとは考えられない。この世界で半年前までこの神機は在った。俺が振るっていた」

「その後、ですね。昨日、ギルが話したようにビーコン反応が消えてすぐにあそこへ立ち入っています。隊長と共に既になく、あそこには何もありませんでした」

「…ねぇ、ダヴィンチちゃん。この神機を持っていて俺の身体に変化はある?」

『無いよ。断言する、こちらから観測できる危険性はない』

「フラン」

『今の所は大丈夫かと。オラクルの反応もありませんし…』

「それ…もしかして私たちと同じじゃない?」

「どういうことだ、ナナ」

「私たち、『生命の再分配』だっけ?それで身体の中のオラクル細胞がなくなっちゃったでしょ?」

「…ありえますね。隊長は2度目(・・・)の『生命の再分配』が行われています。

そのときにでも、隊長同様に神機からオラクル細胞が抜けたのでは」

「……うん。なら、神機は持っていくよ。盾くらいにはなるだろうし」

「それがいい。私たちも何があるかは分からんからな」

 

 

: : :

 

 

『その先がフライアのトレーラー格納庫です。周囲にアラガミの反応はありません。そのまま前進してください』

「視界クリア。抜けるぞ」

「うわぁ、中まであの頃のフライアだねー!」

『フライア内部到着を確認。スキャン開始します。

みなさんは、安全の確認が取れるまでは共に行動してください』

「フライアの中、色々見ていいの?!」

『はい。あくまでもみなさん一緒に、ですからね』

「じゃあまずはロビーに行くか」

「そうだね。腐るほど見た場所って言うと、ロビーか各自の自室くらいだもんなぁ」

 

 

: : :

 

 

「…当たり前だが、誰もいねぇな」

「アラガミもいません」

「大きなステンドグラスですね」

『あー、立香くん?ちょっといい?』

「ダヴィンチちゃん、どうしたの?」

『こちらも同じくスキャンしてるんだけど…奇妙なことになってね』

「奇妙なこと?」

『どうやらそのフライアという建物は微量の魔力を纏っているらしい。君たちがいる内部にはサーヴァントやモンスターはいない。魔力を纏っている影響で内部しか判断がつかないんだ』

「…妨害されてる?」

『かもしれない。こちらから外部が判断できない代わりに、おそらく外部から内部を認識することもないだろう』

「……外に出ないことには分からないってわけか」

「隊長ー?フランちゃんがフライアの中なら別々に行動しても大丈夫だって!」

「ほんと?!」

『行っておいで。思い出の場所なんだろう?』

「エミヤ、ギルくん。行こう!」

 

 

: : :

 

 

「この部屋も…気持ち悪いくらい何も変わってない」

「ここは?」

「俺の自室に当たる場所、かなぁ」

「…必要最低限のものばかりで、娯楽も何もないですね」

「当時はいつ死ぬか分からないからって、物を置きたくなかったんだ。…極東支部に移ってからはあんな状態だけどね。決心してから物を残そうと思った。いつ死ぬか分からない。だからこそ、覚えてて欲しいなぁって。次!」

 

 

: : :

 

 

「あ、先客がいたか」

「隊長………と、貴方方でしたか」

「…悪かったな、我々で」

「いえ、構いません。それよりも隊長、こちらへ」

「あの人の、研究室」

「何か、違和感を感じませんか。この機器など」

「アンティーク調だが精巧な機器だ」

「エミヤさん…ですが、全てハリボテに過ぎません」

「…何だと?」

「中身が、無いんですよ。側だけとでも言いましょうか。このモニターも、流れているデータも全て過去のもの。ボタンを押して起動するわけではありません。ただ、延々と映像を流しているだけに過ぎないんです」

「…俺もさっき自室を見てきたよ。何もかもが同じだった。…誰かの記憶(・・)を再現したかのように」

「何故かは分かりませんが、このフライアは安全であるのでしょう。原因と見られるものはありませんでした。

そうなると、外、もしくはフライアの隣にそびえ立つ主塔の中なのではありませんか?」

「ロビーに戻ろう」

 

 

: : :

 

 

「たいちょーう!シエルちゃん!こっちこっち!」

「戻ったか、隊長。フランが追加の情報を寄越したぞ」

「ナナ、ギル。追加って?」

「このフライアにはオラクル細胞の一切がない。神機兵も神機もあったが床や壁に固定されて動く気配がなかった」

『──スキャン、終了しました。

過去のフライアの情報と比較。年代2074年時と、構造99.353%一致。材質84.672%一致。アラガミの反応0%。オラクル細胞の反応、ブラッドを除き0%。

ひとまずはこんなところでしょう。結果から見るに、フライアとほぼ一致と見なします。

アラガミの反応、オラクル細胞の反応がないことから不活性化はありませんが、聖域の不活性化地域と同等と判断。

すでにサカキ博士には情報の展開を行っています』

「外への出口は分かる?」

『そうですね……出撃ゲートの先から出られるようです。

気を付けてくださいよ?そこから先は情報がありません。私は一旦下がらせてもらいますが、みなさんの無事を祈っています』

「ありがとう、フラン」

『…いえ、何かあればすぐに撤退を。

必ず、帰ってきてください』

 

 

: : :

 

 

『ここからは私、テルオミがフランさんの代わりにオペレーターを務めます。

今分かっている限りでは、上空を未知の生命体が飛空していますので、細心の注意を払ってください』

「…大丈夫だ。地上には何も居ない」

『それでは外部のスキャン開始しますね。自動で行いますので続けてサポートにあたります』

「……ワイバーンは降りてこないな」

「地上では彼らは認識しないのでしょうか」

『その位置を中心に50m範囲で調査を続けてください…って言ってもワイバーン以外には何も無さそうですよねー。肝心の主塔はさらに先ですので、今回はこの周囲の調査を行い引き上げますよ。そちらは何か見えますか?』

「上空はワイバーンが飛んでいる他に、やはり濃い霧に包まれているようです」

『ジャミング効果を齎しているのはその濃い霧と、城壁そのものから発している妨害電波のようですね。

どういった原理で電波を発しているかは分かりませんが、内部から確認出来るということは霧や城壁は()というやつでしょう。割ってみなければ中身は分からない』

「俺たちは中身にいるのか…」

『卵で例えるならまだ薄皮の辺りですよ。白身、黄身までには到達できていませんので』

「…フライアのことと、ワイバーンが地上に降りてこないことが分かっただけでも大きな収穫だ。ベースキャンプに戻ろう」

 

 

『っ?!偏食場パルス、数値急上昇!アラガミが出現します!』

「何だと?!」

「隊長!下がって!」

『感応種……いえ、これは……!』

「テル!どうした!」

『混ざっています!感応種アラガミと何か(・・)が混ざりあっています!』

「テルくん、感応種自体の種類は分かる?」

『少し待ってください!この反応からの私の見立てだと、あれは──「ニュクス・アルヴァ」!姿形は少々異なりますが、間違いありません!』

「あれは…持っているのは旗か…?」

『ちょーっと失礼!こちらからも解析情報の開示だ。あのアラガミからは「サーヴァント」の反応が見られる。

おそらく、混ざりあった何か(・・)はサーヴァントだ。聖杯所持者が意図的にやったんだろう』

「アラガミ、かつ、サーヴァント…!」

『敵!攻撃態勢に入ります!みなさん、気を付けてください!』

 

 

 

 

「ureOmmMMmmiutaiutAiutaIutaiutaUreomiutaiuTaiutAiuTaiutaiutaiutaurEomiutaayiahIHiutaiutaiUtaIutaiutaiUtaiutaiuT aiutaAaaaaaaAA!!!」

 

 

 

 

「何を喋っているんだ…?」

『レーザー!来ますよ!』

「避けろ!隊長!」

「っく!はぁっ!」

「マスター!」

「だいっ、じょうぶだ。盾が、展開できた…!」

「神機が、使えるだと?!」

「後にしましょう!まずは、あのアラガミです!」

 

 

「aaAaaaaaAAaaaaaaaayywiiIaaAaaaaaaaAa!!!!」

 

 

 

 

 

 

「あの顔は……ジャンヌ?!」

 

 

 

 

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