平行世界亜種特異点『追蹤の城塞 極東』   作:ゆしゃ

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「なあ、ギル。お前、隊長さんのことどう思ってたんだ?」

「突然なんですか、ハルさん」

「いやなぁ、お前とこうして酒を呑み明かすのはあの一件以来初めてなんでな」

「…そんなに経つんすか。隊長が、消えてしまってから」

「まあな。お前は隊長さんの捜索で時間の感覚もあやふやになっちまってんのかもしれねえが三ヶ月は経ったぞ」

「三ヶ月、か……隊長は、最高ですよ。戦闘面も精神面も隊長がいたからこそ、俺はここまでこれた」

「俺も隊長さんには恩がある。それに、俺の同志だからな」

「あいつ、俺より5つも下なんですよ?それなのに、たった数週間で経験者である俺よりも強くなっちまって…俺たちを頼れっつっても頼りにしてるよ、なんて笑って言うんすよ。

俺は、もっと、頼ってほしかったんです」

「あー、まあ、ケイトの神機を蹴りで奴に押し込んだのは驚いたなぁ」

「リツカは、隊長は、隊長なんです。代わりなんていない」

「仇討ちなんかはもうやめとけよ?お前、二度もやってんだろ」

「…そうっすね。仇討ちは虚しいだけなのは分かりきってますよ。隊長の仇討ちしようにも、相手がいないんで」

「そーかよ」

「ああ、でも…」

「ん?」

「隊長のこと、絶対に諦めないっす。諦めたくないんです」

 

「生きているって、信じ続けてるんで」

 

 

「……ったく、俺にゃ、敵わねぇなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『iUtaaaAiutaIiiiiutaiuUuUuta!!!!』

 

 

 

 

「い、一体何が…?!マシュ!そっちの計器はどうなってる?!」

「お待ちください!…サーヴァントとしてのクラスは……アーチャー(・・・・・)!?」

「霊基はジャンヌ・ダルクだ。オルタではない…クソッ、どうなってるんだ…?!聖杯の力と言っても度が過ぎる!」

「!ダヴィンチちゃん!先輩のステータスが…!」

「…!向上している?!」

「…『神機』、と言う物の影響ではないでしょうか」

「危険性はない…危険性はないんだ。…向上しているだけなら様子を見よう。──立香くん、頼むから生きて帰ってきてくれよ…!」

「(先輩……)」

 

 

 

 

: : :

 

 

 

 

「eteKusat…!」

 

 

 

「…ああ、分かったよ。ジャンヌ・ダルク」

 

 

 

: : :

 

 

「ニュクス・アルヴァは刀身での攻撃が当たらない。

ナナ、ショットガンで応戦して。ただし、あまり近付き過ぎないでね」

「はーい!これでも成長したんだから!」

「シエル、離れて狙撃を。後衛を頼む」

「分かりました。後ろはおまかせ下さい」

「ギル、バレットに追尾弾はある?」

「ああ…一通りは持ってきた」

「サリエル神属は割と俊敏だ。銃撃をひらりとかわされるなんてことも多々ある」

「そのための追尾弾か…!」

「そ、バンバン撃ってよ?──助けるんだから」

「事情は分からないが、俺たちは普通に対処していいんだな?」

「頼んだ」

「了解!」

 

 

 

「さぁてと…エミヤ、ギルくん。俺たちも行くよ」

「あ、ああ…」

「この神機、盾が使えたってことは銃身も使えるのかなぁ?あーでもオラクル無いし…」

「マスター、ご機嫌ですね。あれがジャンヌさんなら、マスターあたりもっと深刻に対応するかと」

「…アラガミの末路は悲惨なものだ。形を残さず地面に溶けていき、ただの細胞となる。せめて、ジャンヌの意識がある内に、引き剥がす(・・・・・)

…出来るかどうかは怪しいけど。そのために体力を削らなきゃだからね。悲観的になっている場合じゃない」

「こちらも対サーヴァントとして対峙すればいいのかね?」

「それでお願い。指示は俺が出すよ。もしかしたら攻撃が通らないかもしれないから…っと」

パァン!

「…よし、撃てるね。なんでオラクルもないのに撃てるか分かんないけど」

「前へ出る気か、マスター」

「出ないよ。俺はこの距離が一番。戦線が見渡せるし指示も出しやすい。何より、俺の銃身、弾は中距離型でさ。むしろ、距離を詰めすぎると威力が出ないんだ。…使えると思ってなかったからこの状況は予想外だったけど」

「…行きましょう。時間をかけるのはマスターにとってもジャンヌさんにとっても苦痛でしかないんですから」

 

 

 

 

: : :

 

 

「凄い…一瞬でそれぞれの配置についた…」

 

リツカさんが指示を出すとブラッドの面々はアラガミに対する配置につく。リツカさんが居なかった時には見られなかった姿だ。

 

リツカさんの神機も凄いが、本人の神機遣いとしてのカリスマ性に僕も惚れ込んでしまった。

単騎で第一種接触禁忌種を討伐出来るほどの腕を持っており、隊を組めばメンバーの生還率No.1。新人は尽くリツカさんの虜になりめきめきと戦闘技術を上げていった。

 

人当たりも良く、ミッション終わりに声をかける「この後、一緒にメシでもどう?」は当初新手のナンパかとまで噂されたほど。

実際はミッションの反省会も兼ねていたそうだ。なんなら僕が一緒に神機の話をしながら食事したい。

 

何が言いたいかというと、ここまでされて憧れないわけがないという話だ。

 

『…テルくん?あのニュクス・アルヴァの行動に違和感ない?』

 

通信が入り、リツカさんが僕に声をかけてきた。すぐに映像を確認すると、サリエル神属の行動では見られない行動をしていた。

 

サリエル神属はレーザーを中心に攻撃をする。しかし、このニュクス・アルヴァはレーザーをあまり使わずひらりひらりとナナさんたちの攻撃を躱しているだけだ。

ニュクス・アルヴァに見られる他アラガミの回復行動は他アラガミがいないため回復行動を起こしていない。

 

「たしかに…既存のニュクス・アルヴァであれば他アラガミの回復行動に出ますが、幸いにもニュクス・アルヴァ一体のみ、感応種としての力は使わないかと思われます。

加えて、偏食場パルスのパターンにノイズが見られますね」

 

そう、ノイズだ。アラガミによっておおよそのパターンは決まっており、そこから逸脱しない程度に乱れるのは個体差としてカウントしている。

しかし、このニュクス・アルヴァは違う。既存のパターンの他に、そこからまた別のブレが発生している。

 

『…ノイズ?』

「パターンの多少の乱れならば個体差としてカウント出来ますが、今回に限っては当てはまりません。

決まったタイミングで、一定の波の中に一部大きくブレが生じているんですよ」

『一定の…ブレ……もしかして、マグナガウェインのアレか…?』

 

…マグナガヴェインと言えば、彼らブラッドが対峙したクロムガヴェインの神融種だ。

神機で言うところのシールドを持っており、一定のタイミングでオラクルの衝撃波を身体から放つアラガミだ。

そのマグナガヴェインのシールドが何故ニュクス・アルヴァに…?

 

『隊長!攻撃行動を起こしていないのにナナが吹っ飛んだぞ!』

『やっぱりシールドか…!テルくん、引き続きお願い。俺はこっちに集中する。何か分かったら声をかけてくれ』

「了解しました。ご武運を」

 

負ける気がしないのはリツカさんがいるからだろうか。兎も角、彼らのサポートをしなければ。

 

「よし、まずは融合している部分の弱い部分を見つけないと」

 

 

: : :

 

 

ガガガガガガガガ!

 

「ガトリング…?っ隊長?!あんた、一体何やって…!」

「前向け、ギル。目の前のことに集中して」

「チッ…!後でワケは聞くからな!」

「はいはい、理由は考えておくよ」

『──リツカ隊長、こちらシエルです。現在、フライアの甲板から狙撃しているのですが…』

「…何かあった?」

『ニュクス・アルヴァの天球の肥大化が凄いのですが…隊長たちの方では何も見られませんか?轟々と燃えてとても熱そうですよ』

「確かに熱いとは思ってたけど…」

「天球?というのは見られませんね」

「……不可視の状態なのか?」

「…額当てだけだ。天球はないよ」

『…そうですか、ですが用心してください』

「ありがとう、シエル。充分注意するよ」

 

 

: : :

 

 

「urEOooomureoMuuuuureOmuRrrreomureeeeoMUrrrrrrEom!!!!」

「かったいなぁ!もう!」

「ダメージは与えられているはずだ…!」

「ナナ!下がれ!ギル!スタングレネードを!」

「分かった!」

「了解!」

「シエル、天球の肥大化はまだ続いてる?」

『はい、更に大きくなっています』

「……もしかしたら、ダメージは全て天球に流しているんじゃ?」

「………それあるかも。

エミヤ!天球の額当て目掛けて射れる?」

「フ、任せ給え」

 

バシュッ!

 

「…予想が当たってくれよ…!」

 

 

: : :

 

 

「AAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa──!!!!」

 

 

「…!壊れた!シエル、天球は?」

『破裂したかのように消えました』

「そっか、ありがとう。このまま狙撃を続けて」

『分かりました。お気をつけて』

「さて、テルくん、ノイズ変動はどう?」

『偏食場パルスにノイズ変動は…ありませんね!パターン正常化確認。

シールドは消えたようですよ!』

「各員Oアンプルでオラクルポイントを回復し、集中砲火出来るように!

エミヤ、ギルくんはそれぞれスキルで攻撃力をアップさせておいて!」

「UUUU…AAAaaa…iutaiutaiutaiutaiutaiutaiutaiutaiutaiutaiutaAAA!!!」

「待ってて、ジャンヌ。助けてあげるから…!」

 

 

: : :

 

 

「これで、どうだ?!」

『スカート部位、結合崩壊しました…!活性化します!肉質の変化を確認。スカート部位の肉質が硬化、その代わり脚部の肉質が僅かですが柔軟になっているようです。

活発化した攻撃に注意を払ってください!』

「よし、壊した!シエル、脚部を中心に狙撃」

『了解しました』

「マスター、宝具の使用許可を」

「いいよ、殺さない程度に開放を許す」

「難しい注文ですねー、まあちゃんとマスターの言うことは守りますよ。なんせ僕は良い子なので」

「…自分で言うことかね」

「いいじゃないですか。みなさーん、一旦離れて下さーい!じゃあ、いきますよー。『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』!!!」

『…──!今の攻撃でニュクス・アルヴァ、一時ダウン!畳み掛けてください!』

「…リロード。総員、構え!」

「マスター、本気か?」

「ジャンヌの姿が表に出ていない。だけどきっともう少しだ」

「…マスターがそう言うのなら私は従おう。なにか考えがあっての行動なのだろう」

「ありがとう、エミヤ」

 

 

 

 

「…──撃て!」

 

 

 

 

: : :

 

 

「───────────────!!」

 

 

もはや何の言葉か分からない断末魔が辺りに響いた。ローブの内側に広がる星々がニュクス・アルヴァの体力に応じてなのか激しく点滅する。

 

『偏食場パルスの範囲、大きく減少および微弱になっています!』

 

戦闘中、一切表情が崩れなかったジャンヌ・ダルクの表情が苦痛に歪み、ジャンヌ・ダルクの人格が表面(・・)出てきているようだ。

 

「(見えた…!)」

 

異形と化した腕が、人間の腕へ変化する。

彼女のうめき声と共に衝撃波が俺たちを襲った。幸い微弱ではあり、怪我をするほどでは無かったが近づくな、とでも警戒しているようにも取れる。

 

「っマスター、いけるのか」

「いくしかないよ。

ジャンヌ…!手を…!」

 

手を伸ばすと、ジャンヌもまたこちらへ手を伸ばしてきた。

助かりたい、その気持ちがジャンヌにはあった。『助けて』と叫んだ彼女はずっと助けてほしかったに違いない。

 

伸ばされた手を取り、引っ張り上げた。ずるりと深い泥から抜けるように、ニュクス・アルヴァ(アラガミ)ジャンヌ・ダルク(サーヴァント)は分離し、アラガミだけが地面に吸い込まれる形で霧散した。

 

 

: : :

 

 

「ジャンヌ!しっかりして!ジャンヌ!」

「………ぁ、わ…たし……」

「…目立った外傷はない。だが…」

「ジャンヌさん、教えてください。あなたをこんな目に合わせたのは誰ですか?」

「ギルくん、それはまだ」

「今聞かないと手遅れになりますよ、マスター。

薄々、感じているのでしょう?ジャンヌさんの霊基の乱れを」

「っ」

「身体に外傷はない。だが、霊基に損傷がある。…持って数分だろう」

「だから、教えてください。一体、何があったのですか」

「………わかり、ません。この身に、何が起きたのか…すら…。ただ…熱くて、空腹で……」

「空腹だったのは、アラガミと融合したからか…!」

「召喚者、または聖杯があったはずです。それはどこに?」

「パスは、ありません。…聖杯からの、魔力で現界…しました。どこで……いえ、その後は…よく、覚えていないん、です。何か、液体に包まれて…それで…」

「ニュクス・アルヴァ、夜の女神に…なった」

「──夜の女神、ふふ、その…名称が、しっくりきます。

…大した情報は、与えられませんが…、召喚された…サーヴァントは、私のように…混ざっていることでしょう。

誰かの、意図で」

「!」

「ああ…もう、駄目ですね…。どこかの、世界のマスター、さん……。貴方に、託します…。

 

…主よ、どうか…彼らに、光ある道を……──」

「ジャンヌ!!」

 

 

: : :

 

 

「で、だ」

「…おおっとぉ?顔が怖いよ、ギル」

「…元からだ。んなこと今はどうでもいい。問題は神機(それ)だ。

隊長、今のあんたはその身体に偏食因子を宿していないはず。

なんで、あんな無茶を」

「隊長のことだから…無茶だって思ってないんじゃないの?当たり前のことだって思ってるでしょー?

神機が動くなら、自分の身がどうなってでもあの女の人を助けたかった。違う?」

「うーん、おおよそナナの言ってることで合ってるよ」

「…それでも、肝が冷えます。私たちはもう二度と、君を失いたくありません」

「……帰ろうか。ソーマさんたちや、エリナが穴の付近で待ってるはずだから」

「俺たちにも、教えられねぇってか…クソッ」

「ギルー?駄目だよー、そんな言葉。隊長は隊長なりに私たちとの再開を喜んでくれたんだから。そこにしゅ、しゅし?守秘義務?があるのはしょうがないよ!隊長を助けてくれたんだからきっと良い所なんだよ。ね、隊長!」

「ああ…凄く、優しい所だよ」

 

 

: : :

 

 

『先輩、お疲れ様です。お怪我がなくて、本当に良かったです…。

あ、あと、調査の記録については、後にこちらへ簡単なレポートを頂ければと、ダヴィンチちゃんが』

「ありがと、マシュ。分かった。まとめとくよ」

『それと、こちらから確認した先輩のステータスのことなのですが…先輩の持つ『神機』の影響か定かではありませんが、能力の向上が見られました』

「んーと、具体的には?」

『ええと、筋力、体力、視覚、聴覚…と言うよりは魔力を除く、身体能力のほとんどが向上していました』

「…………」

『先輩…?何か気になることでも?』

「へ?あ、ああ…いや、何でもないよ。確かに…全盛期には及ばないけれど、身体が軽くて、周囲の音もよく聞こえた。一応、こっちでも確認してみるよ。ここを出ると神機は消えてしまうみたいだし」

『では、そのタイミングで、先輩のステータスを測らせてもらいますね』

「うん、よろしくね」

 

 

: : :

 

 

『サカキ殿、ちょっといいかな?』

『構わないよ。…しかし、状況は思ったよりも深刻かもしれないね』

『ああ、片方どちらかが出てくるもんだと思ったんだけど…まさか、「融合(・・)」して出てくるとは…』

『…リツカくんは、切り捨てることを良しとはしないんだ。

それは彼の美点であり、言い方が悪いかもしれないが、欠点(・・)でもある』

『欠点?』

『リツカくんは根っからの善人だ。彼に関わりを持つ全員がそう答えるだろう。

だが、この世界は生きるか死ぬか、そんな選択肢が至るところに転がっている。リツカくんは手が伸ばせるところまで手を伸ばし、引き上げる。…そんな子だ。

自身が死ぬかもしれないのに、誰かを生かそうとする。常人には出来ないね』

『…つまり、自滅する可能性があると?』

『しない、とは断言出来ない。彼は生きていたい(・・・・・・)。だが、それよりも生かしたい(・・・・・)んだ、誰かの思いを、心を優先する。

彼と少なからず接してきたのなら、そんな節はあったはずだ。

ダヴィンチ氏、リツカくんがそちらへ行ってしまい、彼は一般人となったのだろう。オラクル細胞が抜け、身体能力も落ちれば、リツカくんは一般人だ。

一般人になったとはいえ、リツカくんはこちらの世界で死線を潜り抜け、その前線で戦い続けてきたんだ。

人格は変わらず、性格もそのまま、誰かを守り、生きることが主となっていると私は思う。

…どうか、リツカくんがどんな選択をしても、彼を見守ってあげてくれ。私たちの英雄(ヒーロー)を、よろしく頼んだよ』

 

 

: : :

 

 

──会議室

 

「さて、おかえり、皆。

早速だけど、私とダヴィンチ氏とで、あの城の内部について色々と意見が飛び交ってね。我々の言う『オラクル』も、ダヴィンチ氏たちの言う『魔術』も、存在している。

我々の世界にあるのだから、『オラクル』のみでいいはずなのにね」

『さっきも言っただろー?起源は同じで、消費する者が消え去ったか居なかったから『魔力』があるって………ああ、なるほど。

有り得ない(・・・・・)現象がやはり、起きていたと言うことか』

「そうだ、『魔力』はあっても、『魔術』は無いはずだろう?

リツカくん、帰還中に連絡してくれたニュクス・アルヴァと融合していた女性はなんと言っていたかな」

「……誰かの意図で、混ぜられた、と」

『…当初懸念していた聖杯の所持者かどうかは分からないけれど、サーヴァントとアラガミを融合させることの出来る魔術師(・・・)か、それに近い者があそこのどこかに潜伏している、間違いない。

ああそれで、サカキ殿と話し合ったんだけど、あのアラガミとサーヴァントが混ざりあった個体は、英霊融合種(・・・・・)、通称『英融種(・・・)』と呼ぶことに決めたよ。その方がわかりやすいだろう?』

「そして、あの城を現時刻付けで、『追蹤の城塞(・・・・・)』と名付けることにする」

「『英融種』…か。ん…?『追蹤の城塞』?なんでまた」

「フライアの様子を見るに、誰かの記憶のままだ。それも、極東へやってくる直前のもの。

そこから追蹤とし、元から城塞と呼んでいたからね。それで『追蹤の城塞』としたわけだ。中々のセンスだろう?」

『まあサカキ殿のセンスはさておき、英融種は彼女ジャンヌ・ダルクだけではない。

正直、他に居るってことくらいしかわからない。詳細はさっぱりだ』

「内部からのスキャンでもやはりジャミングで妨害されている箇所が多くてね。手っ取り早いのは、皆にまた直接確認してきてもらうのが最短の手段だろう」

『出向かずに事を進めることができるんだったらそっちの方がいいんだけど…』

「私たちには遠方から確認する術が無いんだ。両方の性質を持ち合わせていると仮定する追蹤の城塞では、我々やカルデアの諸君双方の力が必要になる。…今は兎に角情報が欲しい」

『具体的な対策を練るには、今日向かって貰って得た情報では不鮮明、足りなさ過ぎる。

また、向かってもらうことになるね。それも、もっと奥に』

「…明日にでも、また向かうことになりそうだなぁ」

「今日のところは休んでくれ。追蹤の城塞へ行ったメンバーは一応検査するから残ってくれたまえ。

リツカくんはメディカルチェックを受けるように。必ず、医務室のヤエくんを訪ねてくれ」

「え」

 

 

: : :

 

 

──医務室

 

「…ヤエちゃんの採血の腕はとっっっても優秀だけどさぁ。やっぱ怖いもんは怖いよね。…だって自分の身体に針が刺さってるんだよ?え、怖くない?」

「ふむふむ、マスターは注射が怖い、と。…むしろ今までのレイシフトでの怪我の方が痛そうでしたけど。壊死寸前ってなんですかあれ」

「怖いと言う割にはじっくりと眺めていたな」

「いやぁ、なんか目を逸らしたら負けのような気がして」

「一体何に負けると言うんだ」

「自分自身じゃないですか」

「エミヤ助けてギルくんが冷たい」

「自業自得という言葉を知っているかね」

 

 

: : :

 

 

『…うん。レポートの内容は分かった。起こりえないことが起こったんだね。…君の身にも』

「正直、今でも信じられないというか…でも、嬉しかったんだ。俺の神機に触れることが出来るなんて」

『…そうか、本来なら触れることすら出来ないんだったね。

さて、神機による身体能力の向上の結果も、マシュから聞いたよ。副作用のようなものも見られていないことから、このあとも経過観察ってことで。

何か症状が見られたらすぐに連絡をすること、いいね?』

「分かってるよ、ダヴィンチちゃん。あ、それと、お願いがあるんだけど…」

『ん?なんだい?必要なものがあるなら言ってくれ、大きいものは無理だけど小さいものならなんとか送れるよ』

「これが欲しいんだけど…」

『まあ、そうだろうね。分かった、後で送るよ。次にそちらへ向かうサーヴァントに持たせるから、誰を喚ぶか決めといてくれよ』

「あー、誰にしよう」

『ちなみに賢王様は管制室の入り口でイライラしてるよ。清姫たちは引き上げたみたいだけど』

「うーーん」

 

 

: : :

 

 

──会議室

 

「あっ!せんぱー…」

『先輩、調査だとしても無理は禁物です。早期の撤退を目処に取り組んでください』

「じゃ、オペレーターはよろしくね。引き際を見謝るかもしれないからさ…っと、あれ?エリナ?」

「………なんなのよ……先輩、先輩、先輩って…!」

『…貴女は、エリナさんでしたね。

…私の何が気に食わないのでしょうか』

「っ!全部よ、全部!ああもう!冗談言わないで!

わたしの方が、わたしの方が、先輩と出会ったのが早いんだからぁあ!」

『あ、あの…』

「そりゃあ、先輩は自分に向けられた感情に鈍いし疎いけど。たとえ地獄だとしたってついて行こう、って思えるような先輩なの!命を救われた、心を救われた。全部、全部!先輩がいたから、今のわたしがいるの!

ぽっと出の貴女なんかに、貴女なんかに、先輩はあげないんだから!」

「あの…?エリナ…?」

『…私にだって、譲れない思いがあります。貴女と同じように、命も、心も、未来も救われたんです。先輩は、私の手本となる方です。

生き方も、心のあり方も、ずっと私が憧れていた人生の先輩だったから、先輩とお呼びしているんです。確かに、貴女の方が先に先輩に出会ったのでしょうが、先輩の…後輩と呼べる存在は何人居たって構わないのではないでしょうか!

い、いえ、たった一人の後輩というのにも猛烈に興味が湧いていますが、それはそれとして。

今の、後輩はこの私です…!』

「…望むところよ。わたしと貴女、どっちが先輩の真の後輩に相応しいか、試そうじゃない!」

『…ダヴィンチちゃん!あちらに通信出来る端末はありますか?!』

『んん?!ま、まあ、あるけど…はいこれ』

『失礼、お借りします!』

『マ、マシュー?!』

『フォーウ?!』

「…先輩!自室のターミナルから通信って、出来るよね?!」

「あ、ああ…サカキ博士が言うには出来るけど…」

「わたしの自室にあっちとの通信、繋いでもらえます?!あのマシュって子に、少し、分からせてくるから。ふふ、……待っててね、せーんぱい?」

「アッ、ハイ」

「おお、面白くなってきたねぇ。では私も開発の続きを…次はスナックなんてどうだろうか」

「貴方は自重してください、サカキ博士」

 

 

: : :

 

 

「お前も大変だな」

「ソーマさん」

「やっと帰ってきたと思えば……偏食因子はまた身体から無くなっているしな」

「…あー、まともな戦力になれなくて申し訳ないです…」

「責めているわけじゃない。それに…お前がいるだけで士気が膨れ上がっている」

「士気?なんで?俺?」

「…分からないならそれでいい。それよりも、一つ朗報だ」

「朗報?」

「…お前が集めてくれたレトロオラクル細胞を用いた装甲が試験段階ではあるが、一つだけ使えそうにまで研究が進み、最終試験は実際に防衛ラインに設置することが先程決まった」

「ホントですか!」

「ああ。完成すれば外部居住区画へのアラガミの侵入が激減される」

「そっか、そっか!ありがとう、ソーマさん!」

「礼を言いたいのはこっちだ。キュウビの所在発覚から数日で奴を仕留めるとはな」

「クレイドルの人たちの助けがあったからですよ!いやぁ、本当に嬉しいなぁ。最終試験、通るといいですね」

「試験が通るよう、技術班とも連帯を取り、全力で取り組んでいる。ふ、楽しみにしていろ。お前が帰る前には結果を出す」

「俺、楽しみにしてますから!」

 

 

: : :

 

 

「おやおやおや?ソーマってば、リツカにデレデレじゃんか、もー」

「驚きです。ソーマもあんな顔が出来るんですね!」

「…お前ら、いつから見ていた」

「最初からですよ!サテライト拠点から帰ってきたばかりですけどね」

「ソーマがあいつに話しかけたくて、そわそわしてた辺りからだな!」

「………」

「ソーマ、怒ったんですか?ああ、コウタの所為ですね。コウタ、謝ってください」

「なんで俺?!アリサが言い始めたんだろ!『ソーマが、ソーマがそわそわしてます!見守りましょう!』って!」

「見守るとは言ってません!あくまで成り行きです!」

「ハァ……おい、アリサ、コウタ」

「はい?」

「んー?」

「一時間前に本部から連絡が来た。『本部の連中に極東支部へは断じて行かせないと引き止められてるから当分は極東支部に帰れなさそうだ』──ユウからの連絡だったんだが」

「ええ?!ユウ、また帰ってこれないんですか?!」

「極東支部大好きなユウの事だから流石に今回は戻って来ると思ったんだけどなぁ」

 

 

: : :

 

 

「ああ、そうだ。リツカくん」

「はい?何ですか」

「おそらく、後30分もしない内に君にお客さんが来るはずだ。

2人っきり(・・・・・)で話がしたいと言っていたから、粗相のないようにしてくれたまえ」

「はぁ…?誰、なんですか…?」

「何、君もよく知っている人物さ。大変、お世話になった。

今回も君のため(・・・・)にわざわざこの極東支部へ、渡航履歴を誤魔化してまで来てくれるそうだからね」

 

 

: : :

 

 

「…久しいな、ブラッド隊長」

「お久しぶりです。──フェルドマン局長」

「早速だが…状況は確認した。我々情報局としても、今回の件は見過ごすことは出来かねる」

「っ、そうですか…」

「…だが、この件と本部への通達はまた別の話だ。情報局が極東へ一任した聖域が関わっているとなると、我々も内々に事を済まさなければならない。

…組織としては最低の行いだが、優先すべきは人の命だ。被害が広がる前に方を付けたい。

…そうでなければ、シンガポール支部への視察のための燃料補充という名目で極東支部に立ち寄りはしない」

「本当にわざわざ来てくださったんですね。この件の処理のために」

「ブラッド隊長…いや、リツカ。

君は今まで通り、書面上ではMIA(作戦行動中行方不明)として扱わせてもらう。場合によってはKIA(作戦行動中死亡)ともなることだろう。

情報管理については極東支部に在中させる当局員に聞くといい。

…くれぐれも、本部上層部に君が生きていることを知られることのないよう慎重に動いてくれ」

「フェルドマン局長…何故、俺にこんな」

「…リヴィを救い、世界をも救った。私はその瞬間をこの目で見ている。

…あの光の柱が君たちの『願い』であり、あの聖域が君たちの『試練』の結果だ。誇るといい。

君たちは、君は、誰よりも救世主(・・・)であった」

 

 

 

 

 

 

 

「お前たち、後は頼んだぞ」

「お任せ下さい!局長!

私たち情報局員がリツカさんの情報やあの奇妙な城の情報が漏れないよう徹底的に目を光らせておきますので!」

「此度、フェルドマン局長から直々に極東支部へ在中させることになった局員は、いずれも口だけは固いのでご安心を」

「なんせ私たちはあの『奇跡』の目撃者ですからね!無粋な真似は致しませんし、許しません!即、粛清ですよ!」

「体術には自信があります。密告でもしようものならば記憶の一つや二つ、即座に消し去ることが出来ましょう」

「…これでも私の部下の中でも優秀な職員だ。……優秀なんだがな」

「…お察しします」

 

 

: : :

 

 

「──サカキ博士!追蹤の城塞から強力な偏食場パルスが発生しています!」

「やはり、一筋縄ではいかないか…状況は?」

「少々お待ちください。……感応種マルドゥークとほぼ同等の性質を持つ偏食場パルスですね。周囲のアラガミが集結しつつあります」

「あの周辺に在中してるゴッドイーターは……ああ、ブレンダンくんの隊が付近のサテライト拠点にいるね。

ヒバリくん、厳重注意と連絡を。場合によっては避難を優先に。判断は現場の状況に任せるよ」

「分かりました」

「…被害が出る前に、などと私は甘いことを言っていたようだ。しかし、これはもう…乗り込むしかないな(・・・・・・・・・)

 

 

 

 

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