「作戦開始日時は8月8日。二正面作戦になるため、被害の規模、消費資源の予想がつかない。遠征部隊は残りの期間を全て用い、資源確保に努めること。以上だ」
「了解しました!」
「綾波も頑張ります!」
駆逐艦娘最先任の五月雨と最高錬度の綾波が張りきって応じる。特に綾波は新たに得た力を揮える事に期待してか戦意が高揚しているように見える。
「大規模作戦って事は夜戦もあるんだよねっ! 提督!」
「ああ。おそらくな…だが無理は禁物だぞ」
軽巡最先任の川内…台詞からも見て取れる様に無類の夜戦好きだ。
「ね、姉さんっ…すみません提督」
最高錬度の神通はその妹に当たるのだが性格はあまり似ていない。だが、夜戦における戦闘力は実際川内よりも高い。華の二水戦旗艦の経歴は伊達ではないようだ。
「二正面作戦か…北方方面は任しとき!」
「今度こそ…後れは取りません!」
小柄な体で戦意を燃やすのは軽空母最高錬度の龍驤と最先任の祥鳳。二人ともこの作戦にかける意気込みは並大抵の物ではないだろう。
「大規模作戦ですか…。はぁ…また損害が出るのでしょうね…」
物憂げな呟きを漏らすのは戦艦艦娘最先任の扶桑だ。
「それは避けられんだろう。だが、この戦い退くわけにはいかぬ」
対象的に戦意を燃やすのはかつての大日本帝国海軍の象徴とも言うべき長門。今の鎮守府でも戦艦最高錬度の艦娘としてその存在感を存分に示している。
「姉さん…」
「うむ。今度はカタパルトも好調じゃ。前のようにはいかぬ」
扶桑と長門同様に不安げな表情を浮かべる筑摩と勝気そうな表情を浮かべる利根。
「ゴーヤ達はまたオリョクルでち?」
「うっ…すまんな」
イムヤとゴーヤのジトッとした目で見られてさすがにたじろぐ。普段から資源回収作戦《オリョールクルージング》でかなりの出撃回数を課しているから少しは休ませたいのだが、それは無理な相談だ。
「以上、何か質疑はあるか? それじゃ各自寮へ戻って説明を頼む。作戦開始前に全体を集めるからそれも忘れずに伝えてくれ」
各々が両省の返事をして自分達が寮長を務める寮へと戻っていく。
「ああ、加賀、赤城…二人は残ってくれるか」
最前列で黙然と今回の説明を聞いていた我が鎮守府最強の空母艦娘二人の肩が震える。
他の艦娘達は一瞬こちらの様子を窺うも、すぐに執務室から退出していった。
「すまない…なんと言葉をかければいいか…」
二人を呼びとめたはいいが、かけるべき言葉が思いつかない。
「…っ」
「赤城さん…」
無言で拳を固める赤城に加賀はそっとその手を重ねる。
赤城が動揺するのも無理もない。大本営より告げられた次期大規模作戦の名称はMI及びAL作戦…。かつての大戦で空母赤城、加賀、蒼龍、飛龍が戦没した海戦と同じ略号だ。
艦娘はその名を持つ艦の記憶を引き継いでいる。加賀も表面上こそ冷静を装っているが、普段よりも表情が硬い。
「……前の事を気にするなとは言わん…。だが、この戦いでは俺は決してお前たちを沈めるような真似だけはしない」
言えるのはそのような言葉だけだ。それに…
「お前達は最強の一航戦だ。二航戦の蒼龍に飛龍も新たな改装を受けて力を増している。慢心さえなければお前達が簡単に負けるはずがない。そう俺は信じている」
「提督…」
「よくそんな恥ずかしい台詞を言えますね…」
強張っていた赤城の顔がクスリと微笑む。加賀もその言葉に呆れたような表情を見せるがその表情は先程よりも柔らかい物だった。
「分かっていますよ提督。私達は艦娘、かつての軍艦ではありません。この戦、想うところがないと言えば嘘になりますが…一航戦赤城、今度こそ最後まで戦い抜きます!」
そういう赤城の言葉に迷いはない。そこにあるのは純粋な闘志。
「赤城…」
「私もですよ提督。それに…」
赤城同様、凛とした雰囲気を纏い、加賀は微笑む。
「私も…信じてますから…」