私の頭と進行速度が『貧弱!貧弱ゥ!』なので、養豚場の豚を見る目で見守ってください。
デスペアー・エクスタシー(普)
破壊力:B スピード:D 射程距離:C
持続性:D 精密操作性:D 成長性:?
能力:人が絶望した時に生まれる『負の感情』をエネルギーに変換し、自分の身体能力として取り込む。
人数、絶望の度合いにより、各パラメーターの上昇値が変わる。
地面に転がる艦娘たちの屍。
体とお別れした頭や腕、心臓の位置にある無数の刺し傷、180度回転した首。
どれも残酷な姿だ。
確実に殺すように命令されていたのだろう。
地面に飛び散った血が、黒い道を作り上げていた。
そこを辿っていくと、鎮守府の端にある工場のような建物に着いた。
浄花はその建物の半開きの扉を開ける。
ギィィッ!という重たい音を響かせて開く扉の先には、あまりにも物足りないと感じる空間が広がっていた。
あるのは、この空間の端に置かれている大きな溶鉱炉のような設備、艦娘を建造するための『建造ドッグ』と、奥にある血まみれの机が1つ。
その机の近くの壁には、いくつもの傷を受けても壊れていない頑丈な大きな扉と、その周辺に散らばった機材や書類のような物。
そして、その扉に背を預けて血を流していた跡が残る艦娘の姿。
ピンク色の髪、奇抜な服、手に持った工具から、彼女が明石だと分かった。
吹雪に希望を託した艦娘。
その顔は、役目を果たしたと言わんばかりの、満足げな顔だった。
明石に対し、浄花は両膝をつき、両手を合わせる。
「ありがとう。貴方が残した希望は、生き残った子たちの希望になったわ。後は、私達に任せてちょうだい。」
そう言いながら明石に触れた後、浄花は工廠を出て、本来の目的地である別館へと歩を進めた。
浄花が去ると共に、明石の遺体は、ピンクのカーネーションに包まれた。
別館に着いた浄花は、片っ端から部屋を見ていった。
いくつもある別館を、片っ端からだ。
ビスマルクの残した言葉を何も考えていない。
どうせ全ての部屋を捜査するなら、あらかじめ確認した方が早いと言う考え方だ。
廊下の窓や床にも血が散っているところを見ると、ここでも襲われたのだろう。
念のため、波紋探知を行って確認しながら、1部屋ずつ確認する。
どの部屋も埃っぽく、しばらく使われていないことが分かった。
いくつかの部屋は、使われていた形跡があり、他の部屋よりは綺麗だった。
恐らくチョーカーを着けられた艦娘の部屋だろうと推測した。
それを他の別館でも確かめる。
いくつもの別館を確認し、4つ目の別館を調べていると、違和感のある扉に気づいた。
それは汚れていない部屋。
そこだけ守られているかのように、血が途切れていて汚れもない。
扉を開けると、綺麗な部屋が目に入った。
手入れされている家具、つい最近まで使った形跡の有るベッド、その横の黒いシミがあるベッド。
そのベッドには金色の髪の毛が落ちていた。
「これは、ビスマルクの?いや、彼女よりも濃い黄色ね。皐月のような明るい黄色でもない。」
髪の毛を見ながら情報を整理する浄花。
彼女自身、艦娘の情報が全て入っているわけではない。
日本艦はある程度覚えているが、海外鑑はほとんど知らない。
知っているのは、響と雪風が改造すると海外鑑になるという事ぐらいだ。
艦娘だけでも300人近くおり、改装などで姿や名前が変わる艦娘も何人かいるため、全員の事を覚えているわけではないのだ。
しかし、容姿は記憶の片隅に残っている。
大本営にいた時に、多くの艦娘を目にしているため、その中から推測する。
その中で1人だけ該当する艦娘がいた。
ビスマルクにベッタリくっついていた艦娘。
その子の髪と目の前にある髪の色が、同じであることを思い出す。
そこから考えられるのは…。
「ここに、何かがあるのね。」
ビスマルクの言っていた暗号、『別館、D、2、B、右、下、裏』の意味。
それを1つずつ考えていく。
「『別館』は此処のこと、『D』は恐らく建物の名称ね。『2』はここが2階だから階数で良くて、『B』はこの部屋の事になるのかしら?そうなると、その『右』にあるのは、チェストか。」
そこにあったのは横に大きいタイプの収納チェスト。
その下の裏に何かあるのだろう。
タンスを持ち上げようと思ったが、先にタンスの中を確認する。
こういう何かを隠す時の『裏』という言葉には2通りある。
1つはこういう物の裏面にあるタイプ。パスワードやメモを隠す時によく置かれ、昔の家だと庭の植木鉢の下などに鍵を隠したりする。
2つ目は二重底のタイプ。人に知られたくない情報を隠すのに使われる方法だ。
普通の人間なら考えたりはしないが、浄花は、この方法を使用した人物を知っていて、印象に残っていた。
だから1番下の引き出しを開けたのだが…。
「何よ、これ…。今どきの子は、こんな派手なのを履くの⁈」
浄花が見たのは、透けていたり布面積が少なかったり、俗に言う『夜の営み』用の下着だ。しかも、その引き出しにギッシリと詰められていた。
その派手さに赤面した浄花だが、すぐに切り替えて奥まで掘りだす。
「普通は、ショーツとかパニエとかじゃないの?」
ブツブツと言いながら、チェストを漁る。
引き出しの底がすぐに顔を出したが、それが引き出しの1/3を残していることに気づき、色々と弄っていると、ガコンッという音と共に底が外れた。
底の板をどけると、茶色い手帳のようなものが出てきた。
それを手に取り、開いて中を見る。
「ドイツ語で書かれているわね。これは……ビスマルクの日記のようね。ネーミングセンスは子供っぽいけど……。」
書かれていたのは、ビスマルクの日記。
題名は『ビスマルクの偉大なる記録』
1枚目には、此処に着任した当時の事が記されていた。
浄花は、その日記を読み始めた。
~着任~
これは私、ビスマルクの偉大なる記録。
私は今日、日本という小さな島にある「横須賀鎮守府」に着任した。あの男は頼りなさそうだし、秘書艦の駆逐艦も細くて弱そうだった。
これが最強の艦隊だなんて、たいしたことはなさそうね。
この鎮守府を私が支配するのも時間の問題、と言ったところかしら。
ああ、早くプリンツに会って、この記録を見せるのが楽しみね。
おかしい。いや、きっとこれは悪い夢よ。
そうよ、たまたま運が悪かっただけ。
私が何もできないで、駆逐艦ごときに負けることも、海に顔をつけることもありえない。
明日には、私の恐ろしさを知ることになるのよ。
絶好調の時には、逆の立場になるのだから!
なによ。何なのよ、ここは⁉
あれが艦娘?怪物しかいないじゃない‼
艦載機1つで大破させてくる冷酷な目をした青い奴、私の砲弾を切る眼帯2人、私の反応を見て「可愛いね」とかいう駆逐、不幸不幸と五月蠅い脚癖の悪い戦艦に脳金眼鏡戦艦。
そして、何よりおかしいのは、あの男の指揮と地味秘書艦の動き。
私の行動は全て読まれるし、砲撃をほとんど動かずに躱すし、指揮が無くても強いし。
私は、此処の恐ろしさを、知ってしまったのかもしれない。
ああ、プリンツ。貴方に会うまで、私は生きていられるのかしら?
横須賀の異常なまでの強さが伝わった。
着任当時の日付が2年前、つまり、提督1年目。
この時点で、横須賀が群を抜いて強いことが分かる。
そんな横須賀の実態を最初の3日で見せられたからだろう。
ビスマルクは、この日を境に、人が変わったように鍛錬を積み始めた。
私は、彼女たちを甘く見ていたようね。
全員が強い意志を持っている。
今の私では、たどり着けない高みにいる。
でも、諦めることはしないわ。
私はビスマルクよ。必ず、あの高みに…。
今日は珍しく、吹雪が声をかけてきたの。
誰も近づこうとしなかったのにね。
なんでも、私の動きに無駄があったらしいわ。
今までの自分なら、この言葉に反発していたでしょうね。
でも、私は成長したの。
だから、言われたとおりに修正したわ。そうしたら、嘘のように早く、的確に当たる。
私はこの瞬間、自分の強くなる何かが見えた気がする。
吹雪には感謝しないといけないわね。
あの脳筋、霧島の姉である金剛からお茶会?に誘われた。
初めて紅茶を飲んだけど、美味しかったわ。
気に入ったから、いくつかもらったの。
いつかプリンツたちと一緒に飲みたいわね。
それまでは、金剛に教わろうかしら?
初めて秘書艦というものをしたわ。
でも、なかなか上手くいかなかった。
吹雪が教えてくれたけど、私には難しすぎたのよ。
これができるなんて、吹雪って本当はすごいのね。
それにAdmiralがいなかったら私は何もできなかったわ。
感謝しないとね。
かなり様子が変わっているようだ。
艦娘たちを名前で呼び始め、提督の事も『男』から『Admiral』に変わっている。
それだけ慕っていたのだろう。
書かれている内容が、自分の事からこの鎮守府の艦娘たちに対する感心と敬意へと変わっていく。
艦娘の『人』らしい姿が、文字から伝わってくる。
子供の成長記録を見ているようで微笑ましかった。
そう思いながら読み進めると、6か月前からの記録が見つかった。
~6か月前:ビスマルク視点~
それは信じられない光景だった。
鎮守府の中でも10本の指に入るぐらい、私を強くしてくれたadmiral。
その指揮、発想、行動力は、誰よりも信頼していた。
そんな彼が、鎮守府の精鋭たちと戦って敗北した。
たった1人の、戦艦に。
戦艦相手に善戦できる吹雪も、一番の火力を出せる山城も、圧倒的戦力差でも制空権を譲らない加賀も……。
全員が倒された。
しかも相手は、艤装を1度も使っていない。
全員が拳と謎の力に圧倒された。
私はその光景を、ただ見ることしかできなかった。
そして確信した。私では足手まといになると。
見ているだけで悔しく思ったのは、これが初めてだった。
あの艦娘の力が気になった。あの圧倒的な強さの源に興味が沸いた。
でも、それ以上に気になることがあったの。
それは彼の顔。
彼は私の横で、地面に手をついて嘆いていた。
とても悔しい筈なのに、何故か彼は笑っていた。
鎮守府に帰るまで、私は彼の笑みが頭から消えなかった。
これ以降のページは、紙が千切れていた。
数か月分がごっそりと。
切れ端には
まるで証拠となる部分だけ、全て抹消されているかのように。
だが、そんなものを暗号化してまで伝えようとするだろうか。
疑問に思いながら続きを確認すると、文字が書かれている残り3枚の綺麗なページを見つけた。
~2日前~
血なまぐさい匂いに嫌気がさす。
鎮守府全体、どこに行っても血と腐敗した匂いで鼻がおかしくなる。
だから私は、毎日夜になると部屋で紅茶を飲む。
金剛の部屋から持ってきたポットとカップを使って、横で眠るプリンツの分も淹れる。
私がユーを殺さないように、止めてくれたこの子のために。
いつもより辛く感じるけど、きっと気のせい。
今は、どうにかして証拠を掴まなければならない。
Admiral。いえ、あの悪魔の正体と、後ろにいる誰かとの繋がりを。
時間はあまり残されていない。
既に此処に居る艦娘は、私と天龍と皐月だけ。
でも、希望は残っている。
私はあの子の姿を見たもの。
きっとあの子は、私達の光になる。
だから、その時はあの子に……。
~1日前~
最近の違和感の正体に、私はようやくたどり着いた。
寝付けないからと、外へ散歩に出かけたことが功を奏した。
私はとんでもないことを耳にした。
あの悪魔が誰かと話していた。
声は濁っているけど、女の声だった。
ちょっとしか聞こえなかったけど、あの悪魔、仲間たちの死体を女に渡しているようだった。
最近、遺体が少なくなったと感じたのは、それが原因だった。
相手の顔を見ようと思ったけど、暗くて見えなかった。
月の光のせいで長身である事しか分からなかった。
だが、これだけでも大きな収穫だ。
絶対にあいつの正体を暴いてやる。
~今日~
私は今からあの悪魔を始末する。
あの男、私が寝ている間にあの子を連れて行きやがった!
絶対に許さない!
私の大切なプリンツを!
私の邪魔をする者は誰であろうと排除する!
私からあの子たちを、全てを奪ったあの男を必ず殺す!
恨みのこもったビスマルクの日記、手記というべきだろう。
提督の後ろにいる謎の女性、連れていかれた艦娘プリンツ。
遺体を連れていく理由が分かれば、提督の後ろにいた人物が分かる。
そして、その人物が、自分にとっても重要になると、浄花は考えた。
しかし、この女性にたどり着く手がかりが、今のところは無い。
スタンド能力を使っても、今の自分では見つけることはできない。
それに、これは個人の問題である。
少佐、提督としての浄花ではなく、空条浄花という個人の問題。
幸いにも、1か月や50日などのタイムリミットがあるわけではない。
今までのように焦る必要がないと、浄花は自分に言い聞かせた。
すると、男性の声が聞こえた。
建物の中でも微かに聞こえる声だが、それが次第にざわざわと増えていく。
恐らく、憲兵が到着したのだろう。
確認をするために、ビスマルクの部屋を後にした。
廊下を歩きながら、スタンドを発現させる。
「
『NYAaaa…』
MS・キャットは、承諾するように鳴くと、壁を抜けていった。
浄花も騒がしくなっている正門へと向かった。
【⇦ To Be Continued】
明石を囲んだピンクのカーネーション
本来なら母親に送る花。
花言葉は色々ありますが、ここでは『感謝』の意。
本文の文字数はどれぐらいがいいか。
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約1万字(プロローグ~2話)
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約5000字(第3話)
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約3000字
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お前が決めるんだ……