祝福を君に   作:是非もないよね

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どうも、クソ投稿者です

幼少期が幼少期なので誰かに優しくされたら誰だってあーなると思うんです。私だってあーなる。

純愛ですね




第4話

 

「初めまして、星野アイです。よろしくお願いします」

 

麻倉くんの事を初めて知ったのは、転校初日の席決めの時だった。

当時の私の彼に対する評価は、ごく普通の小学生。他人より秀でた才はない。かと言って目立って劣っているところもない。文字通りの普通、そんな男の子だった。

 

「初めまして。よろしくね」

「ん、初めまして。これからよろしくね」

 

そして、私は気づいた。

ああ、この人は『愛されている』んだなと。

だってとても綺麗な瞳をしているから。

私のように『愛されてこなかった』人間が持ち得ない、透明で澄んだ瞳だった。

 

それにしてもーーーーその顔で男の子は各方面に失礼だと思う。

 

 

私が転校して来てから数週間。

隣の席というのもあって、自然と麻倉くんとはよく話すようになった。

私は人の名前を覚えるのが苦手だ。それでも、麻倉くんの名前だけは、一度で覚える事が出来た。

 

「麻倉くん・・・・・麻倉くん・・・・・」

 

まるで呪文を唱えるように呟く。

不思議だった。

今まで満足に他人の名前を覚えれなかった私が、どうして彼だけの名前を?

 

「ーー野さん。ーーー星ーーーさん」

 

不思議だなぁ・・・・・・気になっているのかな。

 

「星野さん!」

「は、はい!?」

「大丈夫?なんかぶつぶつ言ってたけど」

「えっ!?あ、う、うん。大丈夫だよ」

「具合悪いなら保健室行きなよ」

「・・・・ふ〜ん?麻倉くん、心配してくれるんだ?」

「な、なにさ」

 

お〜、その顔は初めて見た。

 

それからは、麻倉くんに関する話を求める副産物で友達も出来た。

その時はまだこの気持ちが『好き』なのか、ただの好奇心なのかは分からない。

ただ麻倉くんの隣は心地がよかった。必要以上に干渉してこない。でも、困ったら助けてくれるし、必要なら手伝ってくれる。

 

『アンタなんか産まなきゃよかった』

 

母親から言われたソレは、今も『呪詛』の様に私の心を蝕み、耳にこびり付いている。

見ないフリ、聞こえないフリをしていも何処までも、いつまでも着いてくる。

それでも、彼の隣にいる時は不思議と聞こえなかった。

 

「分からなかったらなんでも聞いて」

「はい、これ。よかったらどうぞ」

「お返し?いらないよ。そんなつもりであげたんじゃないから。気にしないで」

「ご飯嫌いなの?・・・・・そうなんだ。あ、じゃあこれは?おにぎり。ーーーー大丈夫そう?半分こして食べよう。母さんの手作り、おいしいよ。はい」

 

彼からしたらなんの気もない普通の言葉だったのだろう。

私は産まれた時から優しさとは一生無縁の人生なのだと半ば諦めていた。

しかし、彼のその“当たり前”の優しさは曇天に覆われた私の心に差した一筋の光、真っ暗闇の空に浮かぶ『一番星』の様だった。

彼の隣にいる時だけは、心が暖かくなる。

『祝福』されなかった私という存在が、赦されたように思えた。

 

ふむふむ。色々聞き回って分かった事がある。

特に悪い噂はない。

誰に対しても優しい。

可愛いと言われると怒る。

顔は可愛いけど、体育の時とかはかっこいい。

同学年の女の子の中でも隠れた人気があること。

などなど。

 

総じて普通に優しい男の子。

両親から受けた愛情を他人に返す事を躊躇わない“当たり前”と言われる希少な善性。

その光を浴びる度に、自分の醜さという影が濃くなっていく。

嫉妬、羨望、憧憬ーーーーそんな醜悪でドス黒い何かが腹の底に溜まっていく。

 

『持っているようで空っぽな私と、持っていないようで満たされている彼』

 

一体何が違う?同じ人間なのに。

だから、こんな酷い事も思ってしまっても仕方がないと自分で納得させる。

 

『こんな私に彼は相応しくない。仲良くなりたい、仲良くなれたなんて烏滸がましい』

 

いもしない幻想(わたし)を作りあげ自分に何度も言い聞かせた。

じゃないと自分が惨めに思えてきたから。

じゃないと、彼を余計にーーーーー

 

でもそんな私を知ってか知らずか、何度も笑いかけてくれる。

だから思い切って聞いてみた。

 

「麻倉くんはさ、私と話してて楽しいの?」

「楽しいよ。皆と話すのも楽しいし、星野さんと話すのも楽しい。イタズラは・・・・・程々にして欲しいけど。そう言う星野さんは?」

「私は・・・・・・・・わかんない」

「そっか」

 

そこから先は麻倉くんは何も聞いてこなかった。自分から振っておいて失礼だとは分かっている。でも、その時はその沈黙がありがたかった。

 

「いつか星野さんが楽しいって思えるように、俺も頑張るよ」

「・・・・・・なにそれ、変なの」

「ん、そうだね」

「・・・・・・意味分かんない」

「ん、そっか」

「・・・・・・・ホントに意味分かんない・・・・・でも、ありがとぉ・・・・・」

「・・・・・ん、気にしないで」

 

自然と溢れる涙を彼に見つからないように拭う。声がくぐもったからもしかしたら、彼は気づいたかも知れない。

でも、何も言わないのも彼の優しさなのだろう。

 

『アンタは幸せになれない』

 

そんな事ない。今がとても楽しいから。

 

『アンタは誰からも愛されない』

 

そんな事ない。こんな私でもいつかきっと。

 

『アンタは誰も愛せない』

 

そんな事ない。だってこんなにも満たされているんだから。

 

 

だから、麻倉くんの優しさを独り占めしたいと思うのは何も間違いじゃない。

麻倉くんの瞳に映るのは私だけでいいと思うのは何も間違ってなんかない。

 

ーーーー麻倉くんの全部が欲しいと思うこのキモチだけは間違ってるなんて言わせない。

 

だって麻倉くんは私に『祝福(あい)』をくれた人だから。

誰かを好きになるってこんなにも、素敵な事なんだね。

 

「麻倉くん、これからもずっと仲良くしてね」

「・・・・?う、うん?」

 

幼すぎる私が『アイ』を知った日は、まるで私を『祝福』してくれているかのように晴れ渡った空の日のことだった。

 




麻倉透

大体この子せい。
やっぱり君じゃないか!(憤怒)
※本人はそんな気は全くなかった。
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