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サーモンラン注意報発令
今回のサーモンランは、○○月○○日(○)午後2時~○○日(○)午前6時、○○○の○○にて発生する見込みですので、近隣の皆様はご注意ください。
シャケからみなさまのくらしを守るため、クマサン商会より従業員4匹を派遣しますので、以下ご理解をお願いいたします。
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「改めて……。本当に、ありがとう。キミがいたから、この計画が成立した。一人が欠けていては、こうはならなかっただろう。」
「これで本当に、うまくいくんだろうな……?」
「……(未来に希望が持てないというのなら……。俺は、未来に期待しない)」
暗がりに群青が光る。
それは、哺乳類には決して手に入れられない、深海の色。
光もなく、温もりもなく。それでも憧れに身を焦がし、イカなことが有ろうとも、タコウ感を抱きながら地上で繁栄するという意志を持ったカガヤキ。
世界を塗り替えなイカ?
硝煙の黒い煙の中、紅に染まる世界に、一雫のインクが滴り落ちた。
Rebirth of the Mammalians
それは、何回目になったかすらわからない戦争が起こってからの出来事だった。
海面上昇が進んで、富士山が爆発的な噴火をして……災厄の末に、日本の首都は海へと沈んだ。富士山の噴火で、巨大な穴が出来たとも聞いている。火山灰の撤去に整備を行ってはいるが……、現状、とてもじゃないが人が住めるような状態ではないだろう。
今、日本という国に残されている、人が住めるような場所はほとんどない。首都を群馬へと移し、細々と生きてきたが、いつかはこの日本も、海底へ沈みゆく。
住んでいた場所が戦果に巻き込まれて無くなり、他国からの輸入にも頼れず、残った場所に必死にしがみついて、出身も、出自も、身分も分け隔てなく協力し、飢えに苦しみながらも日々を過ごしている。それが、私たち。
どんどん地上が沈んでいく中、海外では人が住める場所や、食料を求めて争い続けているらしい。尤も、後もう少ししたら海底に沈むような終わりかけの国には、関係の無い話だ。
沈んでしまう事を前提に設計されたちゃちなプレハブ小屋から、夜勤明けでしょぼくれた目で海を見る。こんな辺境の港町で異常なぞ出ないだろう、等と思いながら、適当に打ち上がってる海藻を煮込んだ後の汁に塩味を添えただけの、昆布茶ですら無い何かの煮汁を飲み込んだ。
しかし、半年以上ずっと……海に面した地域だけ、海の色が緑色に濁って、天気も赤ちゃけた雲で覆われて、暖かな陽の光が届きやしない。どこぞやの国がお得意の技術で、新兵器とやらを繰り出したのだろうか。調査の結果としては、奇妙にも、海に生息されている生物は皆、何も汚染されてはいないらしい。むしろ、例年に比べて大漁だとは聞いているが……見ていると気分が悪くなるし、本当に安全とは限らない。食べていて、今後何かが起こる可能性すらある。まったくもって傍迷惑である。
————それは、静寂の中、鳴り響いた。
上陸を知らせる、法螺貝の音。
その時の自分は知らない情報だが、その法螺貝の音は、「彼ら」の行群の証だそうな。
「、はァ———?」
そいつらは、奇妙にも鬣を持っていた。
普通の哺乳類なら、毛があるのはまだわかるだろう?奴らが哺乳類だ、と言えるならそうなのだろう。だが、自分の目には、彼らが哺乳類である、とはとても認識できない。
表面はよく見ると、鱗が生えているのだろうか、ザラついていて、見ているだけで心をざわめかせる。
ぐしょ濡れのぼろ布を身に纏い、フライパンやらなんやらを持った大きさが不揃いの生き物どもは、緑の蛍光色の海水を……、いいや、インクを滴らせながら海から這い上がる。
脚で踏み潰せるような小さい奴らに、人に近いような大きさの奴。その後ろから、どんどん、何匹も、汚れた海から這い上がってくる。
「おいおい、なんだよ、ありゃ……!!」
支給されている端末を引っ掴み、内陸にある本部へ要請をする。
「此方、警備!海から正体不明の生命体の上陸を確認!何故か、調理器具で武装しているが……、他国の生物兵器と思われる!」
『なんだと?!海上保安部の連中は、何を見逃しているんだ!!掃討部隊を其方へ派遣する!避難指示は此方で行う。それまで、住民の避難をが行えるまでそいつらを食い止めろ!武装の使用は第二段階まで許可する、必要に応じて要請を送れ!』
音を立てて切られた端末を確認するまでもなく放り捨てる。
ふざけるな、と舌打ちをしたい気分だった。調査してる連中が出した、「人体への影響無し」という結論のもと、浜辺の立哨を緩めたばかりだと言うのに。
適当に羽織っていただけの制服のジャケットを脱ぎ捨てれば、下に着ていた強化スーツが露出する。茶を飲むために転がしておいたヘルメットを引っ掴んで被ると、自動的に電源が入った強化スーツからピリリ、と痛みが走る。
勤務中、あまりにも暇で手持ち無沙汰に手入れを行なった後の電磁銃を掴む。
このエリアに常駐しているのは、自分と、ちょっと遠くのプレハブ小屋に居る同僚くらいだ。今頃は、慌てて磯を勝手にほっつき歩いて拾い集めたスガイやらなんやらの殻を投げ捨てて、外に出る準備をしているだろう。お互いに、最後の晩餐がこんな惨めなものにならない事を信じよう。
小屋を出ると、奴らは鳴き声を上げながら、器用にも脚ですら無い尾を使って地面を這い上がっている。
目が合った。
まるで死んだ魚のような目をした連中は、金切り声を上げながら、此方へ向かってくる。どこに脳があるかもわからないし、心臓もどこにあるか、一個だけなのかすら分かりやしない。
一目でわかる弱点は、眼球か————。
一番大きい個体の濁った瞳に向けて、出会い頭に弾を叩き込んでやる。強化された状態の肉体では、造作もない事である。
ぱちゅん、と音を立てて破裂した眼球は……
「……チッ」
水音を立てて、元通りに戻る。
飛び散ったのは、わずかな体液のみだった。
奴らの脚……というより尾は、人間よりも遅い。その場から逃げると、奴らとの距離は離れていく。
電磁銃のセーフティーを一番下まで下げる。数秒後、『承認:二段階』という言葉と共に、セーフティーが上がった。
拳銃の形をしていたそれは、瞬く間に散弾銃の形へと変形していった。変形に数秒。追いついた連中は、唸り声をあげている。
右手に銃を構えた状態で、左腕、手首の裏側のピンをヘルメットの装甲に引っ掛けて引き抜く。
そして、左腕を正体不明の連中へと向けて、人差し指を指すことで、方向を指定する。そして、手を開いてやれば、赤い煙幕が噴出する。
正常な生物なら激痛で悶える、OC剤……、唐辛子配合の催涙剤である。ヘルメットを被っている此方なら問題なく動けるが、連中は動くことができないだろう。
もう片手の銃で、でかい的に向けて2発、3発。
そこで、弾が着弾する前に、目の前の怪物どもは「ギャァ!」と悲鳴をあげると共に、その身体が弾け飛んだ。
「ハァ?!」
我関せずとこちらへと進む後続の連中に着弾するも、ダメージはほぼ無い、と言っていいだろう。目標、依然として健在である。
「オイ!聞こえるか
「なんすか
歯音を鳴らして3回。起動した通信先の同僚に、それを呼びかける。
目の前では、霧のように漂うOC剤の残滓に体を突っ込み、パシャン、と音を立てて破裂する小柄な怪物共。
「OC剤を連中に撒いてやれ!あまり使いすぎるなよ!」
「、了解!」
OC剤はあと残り2回分。
そりゃそうだ、
舌打ち、後に深呼吸。
ここで感情を昂らせてはならない。
「数も残りわずかだ、お前も気をつけて————」
中に液体の含まれた弾。
空中に滞空。
散弾銃を撃ち抜いた。とぷん、と液体の中に弾丸が入り込んでいく音。火力が足りない?いいや、そもそもあれは膜ですら覆われていないのか?
中身を少し、こぼしながらもぐらぐらと不安定に動いていたそれは空中へと身を翻す。
「ッ……」
そこで、気体が生成されるとともに緑色の液体が降り注いできた。
液体は、武装に触れるたびに武装を溶かしていく。
溶かして灼く、というよりは、分解してバラす、に近い。不思議と、熱は感じられない。されど、酸、と呼ぶには違和感があるが、その在り方は酸に近い。
皮膚がグズグズに溶けていく音。外皮が剥がれ、外の空気に晒される。
ほんの少し離れた場所に、鋼鉄の傘を被った何かが、時の流れが遅れているかのような柔らかな動作で飛び立つ。
「なんなんスかあの武装したデカブツ !UFOみたいなのには効いたのに、
「そっちに一体、傘持った奴が向かった!クソッ……」
3……いや、4。
人の背丈よりは下の大きさの連中に、電磁銃の設定を非殺傷に切り替える。
本来なら、高電圧を相手に流して動けなくする設定のそれに変えたのは、「相手が液体に近い肉体」であるということが理由である。標的を認識したという通知と共に、鳴り響く高音。
肉眼で追うことすら難しい速さで飛び交う稲光が当たれば、焦げた臭いと共に怪物どもは動かなくなった。
表面がぶよぶよに膨らみ、それでも皮膚が硬化して中身は漏れ出ず……気を取り戻しても、この状態では無力化したに等しいだろう。
雨から逃げるように幕尾の元へと向かう。
息も切れて、武装も半分溶けかけ。激痛を訴える身体の要求に従うことなく、駆け抜ける。
「、翌檜サ——」
先ほど見たのとは異なり、さらに巨大な液体弾。と、いうより、あれはもう爆弾だ。
幕尾の腕をとっさに掴み、後ろへと放り投げる。
光と音を発しながら、破裂する寸前の爆弾の近くにいる自分は、ただじゃ済まないというのは理解している。
それでも脚は動かない。
クソッタレ。
スローモーションのように感じる世界で、目の前の爆弾が膨らんで————待て。
なぜあんなところに、ヘリがある。
ヘリの扉が開かれた。
「————」
小柄な何かが胸へと突進する。
そのまま、身体は背後へと吹き飛ばされた。
コレは、……オレンジ色の、インク?
とぷん、という音と共に地面へと何かが着陸した。
着陸したそれは、二足歩行をしていて、まるで人間のようだが……しかし、子どものように背丈が低い。
こちらを見る何かと目が合った。インクと同じ、オレンジ色の瞳。奇妙にも、黒いヘルメットから覗いて見える髪の毛があるはずの場所には、イカやタコの職種のようなものが生えている。
何かが圧縮され、そして発射される。
あれは……、オレンジ色のインクを水圧で発射したのか?
奇妙なことに、そのインクは先ほどの傘を持った個体が撃ち出した弾を撃ち返す。傘を持った個体にそれが触れると、たちまち、OC剤を散布された連中と同じように破裂した。
「…………。ミンミ?」
ふにゃふにゃとした発声のソレは、「大丈夫か」、と自分に問うているように感じられた。
目の前の彼、あるいは彼女はゆっくりと立ち上がる。
にこり、と笑いかけた彼女はその手に持っていた弓を片手に、連中の元へと向き直る。
バシャバシャという音と共にオレンジ色のインクが地面を彩る。
「マンメンミ!」
地響きと共に、地面から突き出すは納品用の籠。
再び法螺貝は鳴り響く……。
今からここは、人類種の統べる大地にあらず。
ここは、次世代の霊長たる、海より出る者……
うみの クマ
シオカラ しゃてい
しれいにあこがれる タコ
ガチ じんるい
イクラコンテナをセットしておくからね……
キミたちのがんばりに期待しているよ