グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

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怪獣優生思想のメンバーの掘り下げとかしてみたいなー、とか
尺的に厳しいけど



第10回「信・頼:怪獣日常デイズ」

「……で、やっぱりこうなりますよね」

「まぁまぁいつも通り賑やかでいいじゃな〜い」

自分の前で母の手料理をむしゃむしゃと食う男女4人組。

宝多家の食卓は今日も賑やかで、怪獣優生思想のメンバーが総員で食卓を囲んでいた。

ジュウガは礼儀正しく座り箸をきちんと持ち、しっかりと口を閉じてものを噛んでいる。対してオニジャはとにかく口の中にものを詰め込んではくちゃくちゃと音を立てながら頬張る。ムジナは礼儀正しさはあるものの、自分の好きなおかずをばかりを選んで食べている。シズムは……

 

「…あれ、シズムさん食べないんですか…?」

「あぁ…僕はお腹空いてないから、六花ちゃん食べていいよ」

「えっ…?」

久々にちゃん付けで呼ばれた事に戸惑いながらも、シズムの顔を伺いながら自分も晩飯を頬張る。

 

「……フフッ」

「……?」

何故かこっちを見てニヤけるシズムを不審がりながらも、全員が完食し食器を片す。

こうしていると、蓬や夢芽がこの世界に迷い込んだ数日間を思い出す。元より人の世話をするのは得意分野らしく、裕太を介抱した際にも同じ感覚に陥った。戦えなかった自分に出来るのはせいぜいみんなの宿を確保する事くらい。実際迷惑と思った事はなく、みんなとの合宿のような日々は意外と楽しいものであった。

 

「…………ふ〜ん…ふ〜んー…」

六花は機嫌が良くなると鼻歌を歌う癖があった。食器を洗っている時は特に水の音で鼻歌が掻き消される為、こういう場で歌っていた。

全員が食べ終わった食器を片付けてい最中、背後に気配を感じた為振り返るとそこには袖を捲ったシズムがいた。

 

「手伝うよ」

「あ、ありがとうございます……」

「タメ口でいいよ、あの中だと1番歳近いから。こう見えても蓬君達とはクラスメイトだったんだよ?」

「あ、そ…そう…?」

軽く冗談を挟んで来たシズムは六花の横に並んで皿洗いを手伝い始めた。六花が洗った皿をシズムが濯いで食器棚に並べる。効率の良い作業の静寂の中で、シズムが切り出した。

 

「…君、好きな人…とかいるでしょ」

「えっ!?」

「おっと…ほら、お皿落としたよ」

「ご、ごめん……でも…急になんで…?」

「別に?ただ気になっただけだよ」

六花の事なんて気にせずに皿を濯ぎ続けるシズム。

彼はかつて自身の体内に怪獣を飼い、蓬や夢芽から生まれた情動を糧にその怪獣を育てていった。彼は人の情動を好み、その中でも恋心という物に興味があった。

怪獣の力があれば時間や空間、生きる事や死ぬ事からも開放される。そうして無上の自由に辿り着けると信じていた彼は、最期に蓬に言われた言葉を理解出来ずにいた。

そして恋心、これは人を縛るのにはうってつけの感情だ。人が何によって縛られるのか、縛られることにより何を得るのか…かけがえのない不自由とは、一体何なのか。

その答えを探す為に、彼は再び蘇ったのかもしれない。

 

「……フフッ」

「……???」

そんな事など露知らず、六花は不思議そうな顔でシズムの作り笑いを見てまたしても疑問を過ぎらせていた。

 

 

アクセプターが防水かどうか、またしても聞きそびれてしまった。

裕太はお風呂に入る際はアクセプターを外していたと言っていたが、雨の中走り去る彼のアクセプターは光り、鳴り続けていた。

水に強いだけなのか、はたまた完全防水なのか。

なんにせよ異世界からの異物がこの世の理にかなう仕様となっているのか……

 

「……ま、いっか」

そんな答えのなさそうな問いを思い浮かべながら、六花はアクセプターを右腕から外し、リボンを解いてセーターを脱いだ。

 

浴槽に手を突っ込んで改めて湯はりを確認する。水温は39度程度と少し低めで設定してあり、これは六花ママの好みでもあった。

湯はりを確認した六花は改めて制服、下着類を洗濯カゴに入れ、一応脱衣所の戸の鍵を閉めて風呂場に入り戸を占める。

 

 

 

「……んでぇ?俺達にどうしろってんだ?」

『言った筈だ、兄を救う為に協力してもらいたい…と』

「だぁかぁらぁ〜…!」

六花の入浴中、ジャンクの前に集まった怪獣優生思想のメンバーはシグマを尋問していた。

 

「その具体的な話が聞きたいんです。大体貴方、全然詳しく教えてくれないじゃないですか」

『……』

呆れたジュウガがシグマを睨むように視線を送った。

 

「…言っておきますが、俺達はまだ貴方を信頼しているわけではありません。あくまで“協力関係”である事を忘れないよう、お願いします」

『……わかっている』

「……っ」

ジュウガの言葉にシグマは渋々頷く、そんな様子を見ていたシズムはとある事に気が付く。

 

「…あれ、ムジナは…?」

「……さぁ…?」

 

 

 

「……っ!?」

「……」

湯船に浸かっていると、まさかの全裸のムジナが浴室に入って来た。長い髪で上手く隠れているがとても直視できるものでは無い。

脱衣所の鍵は閉めた筈なのに、どうして…!?

と、困惑を隠しきれない六花を他所に、ムジナは無防備な身体のままシャワーを浴び始めた。

 

「…な、なんで…?」

「……あ」

するとムジナは忘れていたかの如くの表情を見せ、シャワーを止めて六花に問い掛けた。

 

「…一緒にお風呂、入っていい?」

「…………えぇー…」

 

 

「……俺が…グリッドマンに…」

家に帰って改めてこの状況を整理し始めた内海。

ベッドに寝っ転がり部屋の証明に逆光になるように右腕に付いたアクセプターを見つめた。

正しくはグリッドマンではなく、グリッドマンの弟と合体する事となった彼。それは自身の密かな夢であり、戦う力、守れる力を持つ事の誇りを彼は誰よりも理解していた。

 

幼き頃から鑑賞し続ける通称「ウルトラシリーズ」。その主人公が変身するヒーローのように誰かを怪獣から救いたいと思ってしまうのは、仕方の無いことなのかもしれない。

だが、実際そんなヒーローになって分かった。ヒーローになんてなるものじゃない。誰かを…いや、みんなを守らなければならないという重圧が、自分自身をこんなにも苦しめているのかと、彼は改めて知る事となった。

 

「……はぁ〜…」

そんな嬉しさ半分、憂鬱さを半分持ち合わせた苦い感情がまたしても彼の心に重く伸し掛る。

 

覚悟は出来てるししている筈だ。だが何故こんなにも気分が乗らないのか、あんなになりたかったヒーローにやっとなれたのに、なぜ……

 

《次は裕太じゃなくて、俺に宿れよ……》

 

《…また、裕太なのか……》

 

裕太は、グリッドマンに“なってしまった”。だが、彼はもう自分の意思でグリッドマンになった。それが彼の成長なのか、はたまた隠れた才能が開花したのか、そんな事は計り知れないであろう。だが、少なくともグリッドマンとなった彼は内海から見るととても輝いて見えていた。

誰かの為に頑張れる、そんな自慢の親友を眺める事は、悪いことでは無かった。

 

でも、所詮は彼も“そういう奴ら”の端くれ。そんな裕太を見て、彼は裕太に嫉妬してしまったのかもしれない。

 

本当は裕太を労う気持ちの方が大きかった。だがそういう感情があったのも確かだ。

……なんだか、自分が虚しく見えて仕方がない。

 

「……」

だから俺、気乗りしてないのか……

裕太に対する勝手な罪悪感と、俺自身の問題……

 

《君達の行動が響裕太を弱くした、その自覚は無いのかい…?》

 

「……ごめんな…裕太」

今更謝っても遅いかもしれないし、裕太は気にしてないって思ってるかもしれない。だけど、それじゃあ俺の気が収まらない。

今度会ったらなんの事かわかってなくても謝ってみる。それが俺に出来る誠意の示し方だ。

そして罪滅ぼしは

裕太、お前を…お前達を助けてみせる。

 

俺はヒーローにはなれないかもしれない。

でも、長年ヒーローを見てきた俺には分かる。

ヒーローはこんなところで折れたりしない。ヒーローはどんなに土壇場な状況でも、誇りと魂を胸に戦い続ける。勝てなくてもいい、恐れてもいい。それでも諦めないのが、本物のヒーローだ。

 

 

「……あの、狭くないですか…?」

「……狭い」

「……」

「……」

何故か自分が入っている浴槽にまで入って来たムジナ。

浴槽に浸かる時は髪をお団子に纏めているようだ。

戸惑いながらも体育座りで肩まで浸かれず狭さを訴えても無駄だと判断した六花は内心諦めながらもその意図を汲み取ろうとした。

 

「……っ」

ふと横目で水面に浮かぶムジナの乳袋に目がいってしまった。大人の女性と言うべきなのだろう、何故だかその胸を見ると何も言い返せなくなる自分を想像しながら六花は時を過ぎるのを待った。

 

いや、自分もそこそこはあると自負している。

意識している訳じゃないが男子の目線が時折胸元に来ている事は自覚していた……まぁ胸元より足元を見られることがほとんどなんだけど……なんでだろ…

 

「……ねぇ」

「はいっ!?」

「…っ」

突然声を掛けてきたムジナにびっくりする六花にびっくりするムジナ。

ひと呼吸置いてムジナは再び切り出した。

 

「…突然こんな事になってごめん。でも、正直私も何が起こってるのか、まだよく理解出来てない」

「……」

虚しそうな表情する彼女の言葉を、六花は静かに聞いた。

 

「…でもこれだけは分かる。怪獣を救う為にやれるだけの事はやる。ダーガって奴が悪いのなら、全力で倒す…!」

「……」

拳に力を入れる彼女を見て、六花はひとつ気になる事があった。本当は4人全員に聞きたかったことだが、今ここで聞くべきだと悟った。

 

「…あの…なんで怪獣優生思想の人達は、そんなに怪獣が好きなんですか?」

「……」

怪獣は六花にとっては生きる災害。自分達の日常を壊し、大切な人達の命を危険に晒す、凶悪な存在。

それのどこが良いのか…愚問かもしれないが、聞かずにはいられなかった。これは少なからず怪獣に対する憎しみなどが混じって居る気がするが、六花はムジナを睨むように見つめた。

 

「……私の物心ついた時から、怪獣は私のそばに居た。まるでそこに居るのが自然のようで…怪獣がいる世界は、私にとってはただの“風景”だった…」

「……っ」

風景、という言葉に六花は反応した。

かつてこのツツジ台の外にいた風景のような怪獣。裕太がグリッドマンに変身し、この世界の謎が露わになるまで気が付かなかった、アカネが作り出した世界をリセットする怪獣。

こんな恐ろしいものに囲まれて自分達は日々を過ごしていたのかと身震いしたが、なれると案外その怪獣は本当に風景のように思えて来た。そこに居ないようで常に居る感じ。ムジナはそれを常に感じていたのだ。

 

「だから怪獣を好きになるのは必然だった。まるで親友のように、家族のように…私は怪獣使いの家系に生まれてね、小さい時から私は怪獣と共に居た」

「……」

「…私、最初は怪獣使いなんて興味なかったんだ。でもある人に言われてね……私にしか出来ないことは、私がやるべきなんだって…」

「……えっ」

その言葉に、六花は反応した。その言葉が裕太の口癖にかなり近いものであったからだ。

 

「仕方なく怪獣使いになった…でも意外と楽しくて、仲間との日々も悪くはなかった。でも、そんな日々は一瞬で終わった」

「……」

「……ごめん、話逸れちゃったね…」

「…あ、いえ……」

大体のことはわかった。

彼女達にとって怪獣は人生そのもの。怪獣に心酔してしまっているという点では、アカネと大差ないのかもしれないが、その目は輝いていた。

 

微妙な空気のまま風呂から上がったふたり。

 

「……別に怪獣を操るのが好きなんじゃないよ」

身体を拭き下着を来たタイミングでムジナがその空気を察したのか六花に再び声をかけた。

 

「…え?」

「怪獣は悪くない。悪いのはいつだって怪獣を操る方……まぁ、私も人の事言えないけど」

「……ムジナさんは…自分の事、嫌いですか…?」

「…うん、嫌いだよ…こんな自分」

「……」

「…でも、好きになりたい」

「……え」

「せっかく蘇ったんだし、怪獣以外にも好きな物沢山見つけて、そんな自分を好きになりたい」

自慢げな表情のムジナを見て、六花の表情も緩やかになる。

 

「……いいですね、それ」

「……でしょ」

 

不埒な格好で向き合うふたりは互いの思いを尊重し、ほほ笑みを浮かべ合った。裸の付き合いとはこういう事を言うのかもしれない。

思うものは違えど、それでも彼女は人間らしい一面を持っている事に気が付けた六花は彼女の事を好きになれそうな気がする、という思いを浮かべ視界に入る豊満な胸に気が散りそうになるのを必死に我慢した。

 

「おぉーいムジナぁ!そろそろ風呂上がっ……」

すると、脱衣所の戸を勢い良く開けたオニジャが現れた。

 

「……っ!」

「……」

「……あ」

咄嗟に胸を隠す六花、ムジナと目が会った瞬間顔面蒼白になるオニジャ。

 

「……ふんっ…!はっ!」

「ぶっ…!ごはっ!」

そして立ち尽くすオニジャの腹部にキックを繰り出したムジナは追撃に顔面に思いっきりパンチを決め込んだ。

壁にへたり込むオニジャ、そして脱衣所の扉がバンッ!と勢い良く閉められる。

 

「…………し……」

ムジナからの2撃を喰らったオニジャは唖然としたまま声にならない音をあげた。

 

「…………死ぬかと思ったぜ…」




次回

「ボクと来なよ、その方がきっと楽しいよ」

第11回「誘・惑:ダーガの策略」
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