グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

11 / 23
ジュウガ(ニューオーダー)……ダイナゼノンとの戦いで消滅した筈のジュウガが再び現代に蘇った姿。服装は全盛期の軍服ではなく、新世紀中学生を意識したかのような白いスーツ。黒いスーツだったらただのサラリーマン(イメージ)。

オニジャ(ニューオーダー)……同上。スーツを荒く着こなし、全盛期のモヒカンのようだった長い前髪は後ろに刈り上げられ指に付けられた派手な装飾は今も健在。サングラスを掛けたら完全にヤ○ザ(イメージ)。

ムジナ(ニューオーダー)……同上。全盛期より髪が格段に伸び、前髪で片目も隠れている。ポニーテールに束ねられ、スーツのスカートはやや短め。

シズム(ニューオーダー)……同上。三つ編みお下げだった後ろ髪は長めの襟足となり、帽子は被らずにいる。褐色肌は健在で、外国人に間違われる傾向がある。



第11回「誘・惑:ダーガの策略」

「…おはよー」

「おはよー六花ぁ、朝ごはん出来てるからねー」

「うーん……」

宝多六花の朝は少しだけ早い。

 

朝一番にお風呂に入りボサボサになった髪を解かす。ドライヤーでくまなく髪を乾かしていよいよ朝ごはんにありつける。

その為少しだけご飯が冷めていることが大半だったが、今日は暖かい白米が盛られていた。

 

「…あ、おはよー六花ちゃん」

「シズム君…!」

台所でエプロン姿で皿を洗っているシズム。自分が食べたであろう朝食の食器を洗っていた。

どうやら六花のシャワーが上がるタイミングでご飯を盛ってくれていたようだ。

 

「今日、俺少しだけ早く出るから、みんなによろしくね」

「えっ…?」

怪獣と戦う事以外にやる事なんて無い筈なのに、シズムは何か予定があるようでそそくさと宝多家を後にした。

 

自分も学校の支度をしてセーターを着て服の中に入ってしまった髪を流す。右手首にはシュシュ、そして…

 

「……裕太…いつも付けてたよね、これ…」

少々悩んだが、派手目のブレスレットと言えばなんとか誤魔化せるだろう。アクセプターを装着して通学路を歩き始めた。

今考えれば、内海も同じものを身に付けてくる可能性があるのだから、クラスメイトの皆にペアルックと勘違いされるのでは…?と考えを過ぎることも出来たが、なにぶん状況も状況だ。すぐにその発想には至らなかった。

 

結果的にその心配は無用と分かる。

 

「おっすー」

「おはよ内海君」

「…え、それ着けてきたの?」

「……まぁ…なんか持っといた方が良いかなって…」

「…まぁ俺も持ってきてはいるけどさぁ」

内海の右腕には何も装着されておらず、一方の六花はアクセプターにシュシュという派手な装備を身にまとっていた為、朝はなみこやはっす等の茶々を入れられる羽目となった。

 

だが、そんな嵐もすぐに過ぎ去る。

それ以上の衝撃が六花達の教室に轟く事になるからである。

 

「はい、みんな座ってー」

すると、去年も六花達の担任を務めた教師が教室に入って来て生徒に席に座るように促す。

 

「今日は、転校生を紹介しまーす」

先生のその言葉にクラスのほぼ全員が驚く。

 

「入ってー」

「……」

だが、その転校生を見て六花や内海はクラスメイトの誰よりも驚きを隠せなくなっていた。

 

「初めまして、シズムと言います。どうぞよろしくっ」

「……うっそー…」

「……」

朝早かった理由はこれだったのか…と、六花は自問自答した。兎にも角にも、シズムと六花達は同じクラスのクラスメイトになった。

 

 

「……っ!」

目覚めたのは、響裕太。

グリッドマンダークに取り込まれ、その魂は消え去ったと思われたが、どこかの空間でその魂は覚醒した。

 

「…え、どこ!?ここどこ!?」

「裕太、落ち着け」

「…グリッドマン…?」

すると、裕太は目の前にPrimal Fighterとなったグリッドマンが立っている事に気が付いた。当たりを見渡すと新世紀中学生の4人やレックス、蓬や夢芽達が意識を失ったかのように倒れているのが見えた。

 

「みんな…!」

「…みな、意識を失っている。先程の君のように、まるで魂が抜けているようだ」

「……ここは…?」

裕太はそれよりもさらに周りを見渡した。自分達以外には何も見えない、まるで自分達の為だけに用意されたような空間だ。

 

「おそらく、ダーガの中だろう。奴は我々を取り込み、あの世界で侵略を開始しているに違いない…!」

「……侵略…?なんの為に…?」

「…もし、奴が魔王カーンデジファーの遺志を継いでいるのだとしたら……」

「…カーンデジファー…?一体何なの…!?」

裕太の質問に答えること無く悶々とするグリッドマン。

すると、裕太の背後に倒れていたレックスが勢い良く目を覚ました。

 

「…ハァっ!蓬ィ!夢芽ェ!暦ィ!ちせぇ!」

目覚めたと同時に裕太やグリッドマンを認め、自分の周りに倒れている仲間達の安否を確認した。

 

「…ん〜…ガウマさん声大きいっすよ〜……」

「……ってか、ここどこ?」

「あれ、今朝ですか?夜ですか?」

「……ゴルドバーン…?どこ!?ゴルドバーン!!」

「…GAOO……」

「……はぁ…良かったぁ…」

次々と目覚める仲間達。新世紀中学生の4人も順々に目を覚まし、やがてグリッドマンの周りに集合する。

 

「…俺達、生きてるんですかね」

「……い、生きていなければ、こうして意識が戻ることは無い」

「そうだ。きっと私達は生きている。私達はまだ奴に対抗出来る筈だ!」

「でも、ここから出るにはどうしたら良いんですかね?」

「ゴルドバーンの力とか、使えるんスかねぇ…?」

「確かゴルドバーンの能力は、物体の拡大と収縮だったな」

「それじゃあここからの脱出は難しいんじゃない?ゴルドバーンには悪いけどさっ」

「……GAOO」

「裕太君、ここでグリッドマンと合体とか出来るの?」

「アホ言え!グリッドマンと裕太はジャンクがないと合体出来ねーんだよ!」

「…なんとなくだが、ダイナレックスになれる気もしねぇ……ここではあらゆる力の制御が制限されてるのか…?」

各々の問いが飛び交う中、裕太も脱出の糸口を探っていた。

その時だった。

 

「……ん?」

彼の背後に、一人の少年が立っていた。

まだ幼い、小三・四年生程のメガネを掛けた……

 

「……」

俺、この子知ってる気がする。

 

裕太の中で、何故かそういう思想が芽生えた。

こんな子供は会った事なんて無いし見たことも無い。でも何故だろう、彼の事ははるか昔から知っている気がする。

 

「ここから出るなんて考えない方がいいよ…お兄さん達」

 

 

時の流れというのは、以外にもあっという間に過ぎていくもので、シズムが転入して来て1週間が経とうとしていた。

 

「……」

内海は廊下側の自分の席から窓側の席で友達と楽しそうに話す六花を頬杖をつきながら見ていた。首筋をかく仕草は母親譲りである。

 

「人気だよね」

「…え?」

すると、内海の側まで来たシズムが話しかけて来た。

シズムはスーツでは無いものの、ワイシャツに白い学ランのズボンと、やはり最初の格好を意識している節がある。

それを学校やクラスメイトは咎めなかった。元々そういう校則だからである。

 

「六花ちゃん、友達多いよね」

「おいおい、まるで俺が友達少ないみたいじゃないか」

「俺も変わらないよ。前の世界では、結構チヤホヤされてたんだけどなー」

「……」

内海はシズムの顔を伺った。六花を見ていたシズムだが、不意に内海に視線を戻した。

 

「改めて、シズム。よろしくね、将君」

「…あんまり下の名前で呼ばれないから新鮮だな……よろしくなっ」

クラスの端っこで密かに握手をするふたり。

すると、シズムは思い出したかのように内海に耳打ちをしだした。

 

「…そういえば……」

 

 

 

「えー?何言ってんの……」

「な、ななな!何言ってんだよォ!?」

「……?」

クラス内に響く内海の怒号に気が行ってしまう六花。

どうやら内海がシズムと揉めているようだ。ただ、内海が一方的に怒鳴っていふだけだった。しかも顔を真っ赤にして。

 

「ターボ先輩〜教科書貸してー……ん、何やってんの」

「……な、なんでもねぇ!!」

すると、裕太と同じクラスのはっすが教室の後ろのドアから顔を覗かせる。内海の真っ赤な顔を見た瞬間に疑問そうな顔をする。

一方の内海ははっすの登場と同時にますます赤面し、彼女から逃げるように去って行った。

 

「……なにあれ……六花〜教科書貸してー」

「あ、俺のでよかったら貸すよ?」

「あマジっすか、あざまーっす…」

「……フフッ」

「……???」

そして、何故かはっすの顔をニヤニヤしながら眺めるシズムであった。

 

 

「シズム君が来てから、クラス賑やかになったよね」

「俺はあんまり仲良くなれそうにないけどなー」

「えなんで?さっき握手してたじゃん」

「いやそれは……」

放課後、六花と内海はリサイクルショップに向かいながらふたりで下校していた。

シズムは学校でまだ手続きがあるようで、放課後に先生の元に向かっていた。

 

だべりながら道を歩んでいたが、内海は神妙な面立ちで立ち止まった。

 

「……内海君?」

「…六花はさ、不安にならないの?」

「…何が?」

「……裕太達が居なくなって、もう2週間経ってる。それなのに進展も無い。本当にこのまま裕太達が戻ってこなかったらって思うと……俺、正直怖ぇーよ…」

「……」

内海は俯き自分の不安を六花に打ち明けた。

彼の言う通り裕太やグリッドマンがダーガに取り込まれて2週間が経っていた。その間、怪獣優生思想との繋がりが出来たこと以外、裕太達を救う術をひとつも見つけられていなかった。

その為一切不安そうにない六花を内海は疑問に…いや、不審に思い、こうやって赤裸々に語ってくれたのだ。

 

「……私も不安だよ。当たり前じゃん」

「……」

「…でも…今の私達には、やるべき事があるでしょ?」

「…やるべき事……」

内海は六花の言葉を反芻する。

自分達のやるべき事、それは裕太達を救う事なのか、ダーガからこの街を守る事なのか。

 

「……私は、守りたい」

「……」

やっぱり…この街を……

 

「裕太がただいまって胸張って言える。裕太の居場所を」

「……えっ?」

「裕太だけじゃない。グリッドマン達も、蓬君や夢芽ちゃん達も、皆にも帰るべき居場所があるんだから、私はそれを守りたい。世界がどうとか、怪獣がどうとか私には正直よく分からないけど……今私に出来る事は、今やっておきたいって思うよ」

「……六花…」

内海は六花のその言葉を聞いて何故だか誇らしく思えて来た。それは故に、六花が1年前とほとんど変わっていないからである。裕太が初めて負けた時、内海はグリッドマン同盟を解散させようとしていた。だが、六花がそれを拒んだ。グリッドマン同盟が無くなれば、裕太の帰る場所が無くなる。彼女が本当に守りたかったのは、街でも人でもなく、それに拠り所を感じられる、心そのものだったのかもしれない。

仲間の心を救う。その為に内海と六花は裕太の傍にい続けた。それが本当の意味での、“同盟”だと思うから。

 

「ただいま」

「……えっ…?」

「…っ!?」

すると、2人の耳に聞き慣れた声が届いた。

声の先にいたのは、紛れもない響裕太だった。

赤い髪に蒼い瞳。その姿を見るなり、ふたりは仰天し真っ先に彼の元に向かった。

 

「裕太っ!」

「裕太…!……っ」

だが、あるところでふたりは立ち止まる。それを裕太は表情を何一つ変えずに見守る。

すると六花が恐る恐る口を開いた。

 

「……違う…裕太じゃない…」

「……?」

六花のその言葉に、裕太(?)は首だけ傾げる仕草をした。

不気味な視線に作り笑い。どう見ても彼の素の状態とは程遠かった。その違いに気付き、ふたりは立ち止まったのだ。

 

「……お前…さてはダーガだな!?」

「…何言ってるのさ内海、俺は裕太だよ」

「黙れェ!皆を取り込んでおいて…!何しに来たんだよ!?」

勢いのままに裕太(?)の胸ぐらを掴む内海。

右拳を握り構えた時、その動きが止まった。敵は目の前にいるのに、それでも手が出ない。

 

「……殴れないだろ?本当に裕太君の身体かもしれないのに」

「…っ!お前やっぱり…!」

「……っ!」

すると、今度は六花が内海を跳ね除けダーガに平手打ちをした。衝動的になった六花は俯き、ダーガに問掛ける。

 

「……皆を…どこにやったの…?」

「……」

「……裕太を…返してっ!」

「……」

打たれた首の向きをそのままに、ダーガは六花の問いに答えた。

 

「……響裕太は、誰のものでもない」

「…っ!」

「…っ!」

「……それを、君達が一番理解してるんじゃないの?」

『マッドオリジン』との戦いの最中、奴のグリッドマンを所有物のように扱う言動に対し、裕太やグリッドマンは彼等は誰かのものじゃない、誰のものでもないと訴えた。

六花達の言動は、奴とそう変らなかった。それに気付いてしまってからは、もう遅かった。

目を開けたダーガの目は黄金に輝き、髪はどこまでもどす黒くなっていった。

 

「今日は君達と交渉しに来たんだ。ボクの交渉に応じれば、この街にはもう危害を加えないと約束しよう」

「……一体、何が目的なんだ?」

「……シグマの力を、ボクに頂戴」

ダーガの言葉に、ふたりはうろたえた。

容易に想像出来たことである。グリッドマンやレックス達を吸収した奴が、シグマの力を欲しないわけが無い。

 

「シグマの力があれば、ボクはもっと完全な存在になれる。悔しいけど、今のボクはまだ完全ではない。だが君達と合体すれば、ボクはこの宇宙…いや、全宇宙の覇者になれる」

「……そんな事、させるわけ…!」

「白状しよう!…響裕太は生きている。ボクの中でね」

「…えっ…!?」

「彼だけじゃない。グリッドマンも、その他の仲間もボクの中で安らかに過ごしている筈だ。ボクの中に入れば、再び仲間と再会出来る。こんなに幸福な事はないだろう!?」

「……」

ダーガは自信満々に語る。まるで勝ちを確信したかのように……

 

「…ボクと来なよ、その方がきっと楽しいよ?」

「……クッ…こ、断っ……!」

「もちろん断れば、タダでは済ませない!」

ダーガは自身のアクセプターをふたりに見せつけた。

 

「ボクはグリッドマンと違っていつでもどこでも変身出来る。君達はジャンクが無ければ変身出来ない……更に言えば…!」

ダーガが天へ向くと、夕暮れの空から怪獣が飛来して来た。

地面に着地し、その時を刻一刻と待っているかのようだった。

 

「クッ…!」

「これはあくまで交渉…断るという選択肢もある。でもそれは……早計だねぇ、現実的じゃない」

「……」

ダーガは今すぐにでも変身出来る。それはつまり、今すぐにでもあの巨体になれるという事だ。こんな至近距離で変身されれば、一溜りもない。街はおろか、ふたりの命だって保証出来ない。

 

「…さぁどうする?仲間を見捨てるか、この街を見捨てるか!選ぶのは君達自身だ…!」

六花のアクセプターが鳴る、光る。

内海はバックの中からその音と光が漏れていた。

 

「……」

「……」

だが、もう考える余地もない。ふたりの考えは最初から決まっていた。

 

「……そんなの、決まってんだろ」

「…うん。私達が、仲間を見捨てるわけないでしょ」

「…そう、それなら……」

「この街を救って!お前を倒して!絶対に裕太を救ってやる!」

「私達は私達に出来る事を…やるべきことをするだけ…!行こう!内海君!」

「あぁ!」

ふたりはダーガの言葉を遮るように自分達の覚悟を示し、アクセプターの音に誘われるようにダーガの元を後にした。

 

「……まったく…本当に()()人間は早計……いや、愚かな考え方をする…」

ふたりの走り去っていく背中を見ながら、ダーガは深い溜息を付いた。

そしてその視線を変え、ダーガは夕暮れに佇む怪獣を見て、怪獣に向かって手を添えた。

 

「……どの道、こうなる運命だったんだよ……インスタンス・ドミネーション!」




次回

「オレもオレの成すべきことを為す。そして使命を果たす」

第12回「覚・悟:シグマの告白」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。