グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

13 / 23
お久しぶりです。
軽くスランプだったのでしばらく休んでいました。



第13回「約・束:帰って来た響裕太」

その日、ツツジ台高校の2年B組の教室が朝からざわつかせていた。

 

「……ハァ…ハァ」

「……っ…!」

まるで転校生でも来たかのように、ふたりの男女の生徒が廊下を颯爽と走りB組の教室へと向かって行く。

担任の教師に注意されるも彼等の耳にその声は届かない。

 

「……っ!」

「……ハァ…!」

教室に着くなり、ふたりは教室の後ろの扉から身を乗り出して噂の人物の姿を拝もうとする。

 

その人物は野次馬に囲まれており、人と人の隙間から苦笑いでそれに対応する表情が伺えた。

 

「……ん」

ふたりの存在に気が付いたその人物は席を立ち、野次馬の間をすり抜けてふたりの前に止まる。

 

「……ハァ…ハァ…」

「…ハァ…ハァ……」

その人物を見て、ふたりは息を切らしながら絶句する。

かつては仲が良かった3人が、とても険悪に見えたと、後のB組のクラスメイトは語る。

 

「……おはよ。内海、六花」

「……」

「……裕太…」

しばらく休校していた響裕太が、その日復学したのだ。

 

 

「……あれ、絶対ダーガだよね」

六花達も馬鹿ではない。復学した響裕太の正体を、彼らは既に掴んでいた。

 

「当たり前だろ…あいつ、裕太の姿で……今更何するつもりだよ…!」

「……」

屋上入口の階段の踊り場で内海と六花、そしてシズムが集まり状況を整理していた。

 

「ダーガはシグマの力を欲している…常識的に考えて、君達と接触する機会を増やしたかった、というのが有力な説だろうね」

「どちらにせよ、それは俺達も同じだ。あいつをとっ捕まえて裕太達を助ける方法を聞き出す!ダーガ捕獲作戦の開始だ!」

「……そんな上手く行くかな…?」

「……ん?」

内海の自信満々な作戦会議に、六花は不安そうに問い掛ける。

 

「六花ちゃんが不安がるのも無理ないよ。ダーガは君達と違っていつでも変身出来る……下手すればこの学校が瓦礫の山になる事だって有り得る」

「……じゃ…じゃあどうすれば…!」

「答えは簡単。無闇に刺激しない」

3人にとって今一番効果的な手段は、ダーガを刺激せずに裕太達を助ける方法を探る事。

ダーガが変身すればこの学校がどうなるかなんて事は容易に想像出来る。だからこそ、彼等の選択した道は攻めることではなく守る事であった。

 

「……だね」

「そんなところで何してるの?皆」

「うわっ…!」

「…ダーガ…!」

すると、踊り場に突然裕太に化けたダーガが現れた。どこまで会話が聞かれていたかは定かではないが、存外気にする事でもないのかもしれない。

 

「お、お前…今更なんのつもりだよ…!」

「ん?別にぃ?単純に学校っていう所がどんな場所か気になっただけさ」

「だったら裕太に化けなくても…!」

「だって、その方が面白いでしょ?」

「……クッ…このっ…!」

「内海君!」

「…っ」

ダーガの煽りに一瞬乗ってしまった内海は拳を振り上げていたが、六花の声で我に返り腕を下げる。

 

おっと危ない危ない…刺激しない刺激しない……

 

「……ん?」

「……」ジーー

すると、内海はダーガを無言で且つ物凄い形相で睨むシズムを目を向けた。

流石のダーガもそれには気付き、シズムの視線に気が付き両手を前に向けた。

 

「おっと怖い怖い……そういえば、怪獣に一番心酔してたのは君だったね、シズム君」

「……」

「…とにかく、これからも仲良くしてくれると嬉しいな。それに……」

「……それに…?」

もったいぶるダーガに、六花は問う。

 

「……もう時期、もっと面白い事があるかもしれないからねぇ……フフッ…それじゃあね〜」

校内に響き渡る予鈴のチャイムを聞くなり、ダーガはその場を後にした。

複雑な空気がその場に漂い、ダーガの意味深な言葉が彼らの中で反芻する。

 

だが、その理由は意外と早くに知る事となる。

 

「「修学旅行ぉ!!??」」

「なんだお前達、知らなかったのか?」

「いやいや聞いてないっすよ!なんで急に…!?」

「急じゃないだろ?もう何ヶ月も前から進めてた話だ。それじゃあ今回は班決めをしていくぞー」

突如決まった修学旅行。だがクラスはおろか2年生のほぼ全員がその行事を楽しみにしていた。

この時期になれば2年生は修学旅行があるのは知っていた。実際、去年の先輩達は北海道に行っていたしお土産も貰った。だが結局のところ、それはこの世界の神様である新条アカネが作り出した記憶の一端であり、実際にこの街の外側には何も無い事が証明されている。

 

今考えればおかしな話である。修学旅行まで残り1週間を切っているらしいが、今班を決めるなんてどう考えても遅すぎる。それがこの世界のひとつのカオスなのか、はたまたこの学校がおかしいのか定かでは無いが、内海と六花は状況を飲み込めないまま班を決めることとなった。

 

「班は男女合わせて6人。他のクラスの奴と組んでもいいぞー」

 

 

「先生も気前良いよね〜他のクラスとも組んでいいってさ〜」

「ほんとそれ、おかげでうちだけ仲間外れにされなくて済むわー」

放課後、同じ班となったなみことはっすが机を囲んで京都の地図を並べ始めた。

 

「いやーそれにしてもなつめんだなー…ターボ先輩も楽しみでしょ?」

「ターボ先輩言うなっ…まぁ、それなりにね……」

「…んー?」

笑顔を内海に振りまくはっす、彼女のからかいを軽く流すと、内海の視線は六花へと向かった。

 

「……」

「…六花?」

「……ぇあ…なに?」

「何暗い顔してんだよーそんなんじゃいつまでたっても復縁出来ねーぞー」

「復縁って…そういうもんじゃ…」

心ここに在らずだった六花に声を掛けるなみことはっす。

はっすはコソコソと六花に茶々を入れるが、これも反応が薄い。

 

「……」

その原因が分かっていたのは、この場では内海と六花、そして不機嫌に腕を組んで座るシズム、そして……

 

「皆空気が重いよー!せっかくの修学旅行なんだから、楽しくやろうよ!」

「……」

「……」

「……」

意気揚々と手をパンパン叩き5人の注目を集める男子生徒。この班の最後の1人、響裕太(ダーガ)であった。

 

六花、なみこ、はっす、内海、シズム、響裕太(ダーガ)、以上6名で班を組む事になり、変に怪しまれることも避け、ふたりはこの状況を甘んじて受け入れた。ちなみに響裕太(ダーガ)は、この班に入りたいと自ら直談判しに来たのだ。

 

もっと面白い事、とはこの事だったのだろうか。

重たい空気のまま班行動のスケジュールを立て、修学旅行までの日々は一瞬で通り過ぎた。

 

そして修学旅行当日。

 

新幹線に乗り最初の目的地である奈良へと向かう。

以前川下りをしに行った時は、電車を使用する際強烈な眠気に襲われ危うく乗り過ごすところであった。

結局のところ、それは街の外に作られた空間に入る際の副作用的なもので、グリッドマンだった時の裕太も、新世紀中学生のみんなも自然と眠りに落ちたという。

 

果たしてこの街の外にはまだ世界が広がっているのか、それを確認する為ふたりは眠気覚ましのドリンクを持参し新幹線に乗り込んだ。

が、後にその行動は無駄になることを知る。

 

新幹線に乗って1時間、全く眠くならなかったのだ。そして新幹線は順調に線路を進みいよいよ奈良の都市へと突入した。

 

「……ほ、本当に街の外に…」

「…マジで…どうなってんの…?」

「…もしかして、これはダーガが造り上げた空間かもね」

窓の外を眺める3人。そして呑気に眠るダーガ。

 

スマホをいじりながら到着を待つ一部の生徒、そして単純な睡魔に襲われ息を着く生徒。

 

そして同じ車内にいる白スーツの男女。

ダーガを横目で確認し、反吐が出るとでも言いたげな顔をしていた。

 

「あれがダーガ、ですか。ですが人間の姿に化けているとは、なかなかに厄介ですね」

「あいつはただ単に化けてるだけだろ?それじゃあぶん殴っても問題はねぇよなぁ…?」

「問題大ありだよ。それで問題起こして通報されたらどうすんのさ」

「……チッ」

ムジナの謎に説得力のある言葉に、返す言葉も無い様子のオニジャ。

3人は六花達とは一番遠い通路を挟んだ6席分のシートで、ムジナは壁側の通路側。オニジャはムジナと向き合うように座り、ジュウガはムジナの横に位置していた。

 

すると、ジュウガが自身の横に置いてある、シートを2席分も使う程大量に置かれた荷物…というよりジャンクに視線を移す。

 

「それにしても、持って来て良かったんでしょうか…これ」

「仕方ないよ。六花ちゃんのアドバイスだし、ちゃんとお金は払ったし」

昨夜、六花に呼び出された3人は彼女からアドバイスを受けた。

シグマになるにはジャンクが必要。修学旅行先でもし怪獣が現れた場合に備え、彼等を尾行してジャンクも持ってきてもらうように伝えていたのだ。

 

「まさか、こいつが持ち運び出来るなんてなぁ…んで、シグマは今どうしてるんだ?」

「今はコンセントも刺さってませんし、電源も入ってませんから、彼の意識もないと思いますよ。眠ってる感じに近いと思います」

「……なんじゃそりゃ」

ジュウガの説明を受けてシグマのシステムが理解しきれない彼は話を棒に振った。

 

『まもなく、奈良、奈良です』

「それじゃあみんな、荷物持ってー」

車内に流れるアナウンスを聞き、担任の教師が立ち上がり生徒達に声を掛けた。

眠りこけていた生徒はゆっくりと目を覚まし、窓から景色を眺めていた生徒達は早速荷物を持ち始めた。

 

「それじゃあ、俺達も降りますか」

「おぅ」

「うん……ん」

ジュウガとオニジャが荷物を持ち出した時、ムジナは誰かに見られている気がして振り向いた。だが自分を見ている人物は見当たらないし、ダーガもまだ夢の中のようだ。

 

妙な感覚に苛まれたムジナであったが、新幹線は無事にホームに停車。次々とツツジ台高校の2年生が降りてくる。

 

 

この日はクラス別の行動であり、六花達がこの1日ダーガと共にいることは無かった。それはそれで心配事があるが、奴の目的はあくまでシグマであろう事から、懸念しながらも六花達は奈良観光を楽しんだ。

 

そして要所要所で思う。本来であれば、本物の裕太がこの修学旅行を楽しむべきなのだ。生きているとはいえ意識があるのかどうか…ただ、奴の中にいて純粋に修学旅行を楽しめてるとも思えない。もし楽しんでいるのだとしたらそれはそれで彼らしいが、ふたりはそんな考えには至らなかった。

 

「……」

奈良の大きな大仏を見上げ、13歳の時に来た時の事を思い出す。と言っても、その全ても作られた記憶である可能性が高く、今だって、その作られた記憶の一端をただ見ているだけなのかもしれないと、内海はふつふつと考えていた。

 

「……っ」

「…大きいね」

内海の横に来たシズムも、大仏を見上げる。何故だか、シズムの大仏を見る目と怪獣を見る目が似ている気がした。

大きいものが好きなのか…?

 

「…どう思う?」

「……えっ?」

やべっ、話聞いてなかったな…

 

「…シグマが言った、ダーガに囚われた少年。彼の事をどう思う?」

「…確か、藤堂武史…とか言ったよな。ダーガに囚われたって…そいつがダーガと合体してるんだろ?」

「きっと、合体()()()()()()んだよ。シグマも言ってた、その少年は心を利用されたって…」

「……新条アカネ、みたいに…」

しばらく俯いていた内海だったが、自分のアクセプターを見つめ、顔を上げた。

 

「……そいつの心を救えるのは、きっとグリッドマンの力を持った奴だけだ。それに…シグマのやるべき事なら、俺は全力で応援する。それだけだ!」

「……フフッ…君らしいね。俺も出来る事はやるよ。あくまで怪獣の為、だけどね」

「……って言うか、最後の最後に俺達のこと裏切ったら容赦しねぇからなぁ?」

「ハハッ…そんな野暮な事しないよ。怪獣をみんな助けたら、俺達は怪獣だけの世界に行って静かに暮らすよ。約束する」

「……約束、ね」

拳を突き出すシズム。内海はそれに応えるようにグータッチをして見せた。

 

「…怪獣だけの世界。あるといいな」

「……うんっ」

 

その後、奈良公園を後にした生徒達。

 

ところでだが、彼はいつも貧乏くじを引かされる。その為彼に休息出来る時間は限られる。

それを運命と捉えるか、不運と捉えるかは、人それぞれだが、その夜、内海達はとんでもない事実を知る事となる。

 

「…んで、なんでコイツと同じ部屋なんだよォ!!」

ホテルの部屋は3人で一組。そして内海と同じ部屋になったのは、シズムとダーガであった。

 

嘆く内海とダーガを睨み付けるシズム。そして能天気に作り笑いするダーガ。部屋の空気は最悪だった。

ちなみにだが、六花はなみことはっすのいつもの3人で同じ部屋だという。

 

「お前ェ!マジで…寝込みとか襲ったら承知しねぇからなぁ?」

「ははっ、勿論そんな無粋な真似しないよ〜…約束する。だから安心しておやすみ。内海」

「……チッ…約束だからなっ…!」

凄い形相でダーガを睨み付け念押しする内海であったが、ダーガはそれをあっけらかんと返答した。正直信用ならない。

 

「……」

だが、久しぶりの旅行の疲れもあってか、内海は意外と早々に就寝した。念の為と言ってアクセプターを付けているが、そんな彼の隣のベッドがモゾモゾと動き出した。

 

「……フフッ」

約束、とは何だったのか。ダーガは内海との事を無視し口角を不気味に上げながら彼のアクセプターへと手を伸ばした。

 

だが、そんな彼の寝込み奇襲は失敗に終わった。彼の伸ばした腕を、誰かに掴まれたからだ。

 

「……っ!」

「……」

真っ暗な部屋の中、シズムの赤い瞳だけが薄い光に反射してダーガを睨む。掴んだ腕には想像以上に力が入り、話す気配を感じられなかった。

 

「……約束、でしょ?」

「…っ……フフッ…あぁそうか…」

最初は驚いていたダーガであったが、その表情はすぐに「楽」へと変わった。

 

「……「本当の怪獣使いは寝たりしない」、だっけ?」

「……」

その言葉で、シズムの表情がますます嫌悪になる。

 

「……」

「……」

「……ま、君に監視されてるんじゃボクも手出しのしようがない。ここは大人しく朝までまたせてもらうよ……せいぜい夜の長い時の流れでも感じてな。じゃ、おやすみ」

「……」

謎に部屋を出て行ったダーガ。危機を察したのか、それとも空気に耐えかねたのか。

どちらにせよ、奴の言葉はシズムの拳に更に力を込める原因となった。

 

「……怪獣使いは…もうこの世には存在しない」

そして、暗闇の空間の中で、独りブツブツと独り言を述べた。

 

「……存在しちゃいけないんだ…」




次回

「誰も何も間違わない、理想の世界を作る」

第14回「真・意:闇はどこまでも純粋で」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。