グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

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ちょっと小話
当初はグリッドマンシグマを、グリッドマン(Sigma Fighter)、グリッドマンダークはグリッドマン(Darkness Fighter)と命名しようかと思いましたが、彼らはグリッドマンであってグリッドマンじゃないので、そのままの名前にしました。



第14回「真・意:闇はどこまでも純粋で」

「……ん、ん〜」

「…おはよう。起きる時間だよ、将君」

「…あ、あぁ……」

深い眠りだった。

内海が起きて最初に自覚したのはその感覚だった。

 

「……あれ、裕太…じゃなくてダーガは?」

「…さぁ…俺が起きた時には居なかったよ。もしかしてもうロビーに行ってるんじゃないかな…?」

以外にもダーガの話に乗るシズム。まるでうわ言のように話すところを見るに、あまり触れて欲しくはないのだろうが、それでも答えてくれるのが彼の優しいところなのだろうと、内海は思うのであった。

 

「……こういう事言うのあんま良くないと思うけどさ……昨日の夜、大丈夫だった?」

だからこそ遠慮もしなかった。

気になるものは気になる。朝一番から奴が居ないのにも、何か理由があるのだろうと思った。

 

「……うん。何も問題なかったよ。君の寝顔も撮れたし、俺は満足だよ」

「えっ!いつの間に…!おぃ消せよォ!」

「はははっ、じゃあ修学旅行が終わったらね〜」

「……っ」

たまに…いや、ほぼ毎回思う。

シズムの笑顔は作られているものだと言う事を。まるで、かつてこの世界を思うがままにしようとした少女と、同じ笑顔。内海はその笑顔に少々トラウマと嫌悪感を抱いていた。

 

朝の支度を済ませロビーに行くと、案の定ダーガはロビーのソファに座り他の生徒と話しをしていた。

 

気にしすぎだったか、と安堵する内海であったが、横を見るとやはり腑に落ちない表情をするシズム。

 

気まずい空気の中、内海達は奈良の街を後にした。

 

 

時は少し遡り…

 

「六花〜ほんとに良かったのー?」

「え?何が?」

なみことはっすに呼ばれた六花は自動販売機から出てきた水のペットボトルを取り出しながらキョトン顔で振り向く。

 

ここはホテルの飲食スペース。

同部屋だった3人は喉が渇いたと言って自動販売機でジュースを買っていた。炭酸が飲めない六花は少々悩みながらもようやくただの水を買った。

周りは薄暗く自動販売機の照明だけが彼女達を照らしていた。

 

「せっかくの修学旅行なのに、もっと一緒に居なくていいの?」

「…誰と?」

「響だよ響、別れたって言ってもそれって……」

「これは私の問題だから…ふたりには関係ないよ……」

「……六花ぁ…」

何かを言おうとしたはっすの言葉を遮る六花。

その言葉に何かしらの覚悟と隠し事を悟ったなみことはっすは言葉を失ってしまう。

 

「あ、六花いたいたー」

「ダっ…裕太……」

すると、暗い通路から来たダーガがはにかみながら六花に手を振った。咄嗟の事で声が漏れた六花だが、冷静になり平然を装う。

 

「お、噂をすればご本人登場じゃん」

「ごめん、ちょっとふたりで話させてもらってもいい?」

「あ、どぞどぞー…」

ダーガの提案に快く乗るふたりはその場を去り自室へと戻って行った。

 

「……っ」

「…そんな怖い顔しないでよぉ…別に取って食おうって訳じゃないんだからさっ」

警戒する六花をよそにダーガも自動販売機と向き合う。どれにしようかと独り言を言いながら商品ラベルをなぞる。

結果的にラムネの缶ジュースを買い、落ちてきた缶を取り出してカシュッと音を立てながら蓋を開けた。

 

「何が目的なの…?」

「……ん?」

ここで重要なのは下手に刺激しない事。

シズムの忠告を守り、六花は荒ぶる感情を抑えながらもダーガに質問する。

 

「今回の修学旅行も…どうせあんたの仕業なんでしょ…?どうして裕太達を襲ったの…?なんで怪獣を操れるの…!?」

絞ればどんどんと問いが飛び出して来た。まるでダムが決壊したかのようにどんどん、どんどんとダーガに対する疑問や問いただしたい事が出てくる。

目を閉じて自分を制止させようとしたが、それでも止まらなかった。

 

「……っ!」

「…フフッ」

気が付けば、ダーガは自分にかなり接近しており、顔を興味深そうに伺っていた。

それに対しての気持ち悪さと、不気味さと、恐怖を感じた六花は仰け反っていまう。

 

「……六花はもしかして、怪獣と戦いたいの?」

「なっ…そういう訳じゃ…!」

「分かってる。君達がどれだけ響裕太を想っているのか……ボクはこんな経験無かったから知らなかったよ。きっと彼は幸せ者だったんだね」

「……」

「……でもね、世界ってのは常に不条理で不親切、不平等なんだ」

「…えっ…?」

ダーガは表情を崩すこと無く淡々と述べた。

自動販売機の明かりが彼の片頬を照らし、その表情からは彼の本気を感じられた。

 

「今日は気分が良いから、君の問いに答えるよ。ボクの目的は、全世界の統一……人も、記憶も、価値観も、全てを統一し何一つ不自由のない世界を作る。ボクがハイパーワールドで大罪を犯した事は知ってるよね?それも全ては人の価値観の差によって生まれた誤り。世界の真理さ」

「……」

六花はここで引けなくなった。

このままダーガの話を聞けば、何かが分かる気がした。

 

「人の心を乱すのはいつだって人だ。だから新条アカネはこの世界を作り、不条理の無い理想の世界を作ろうとした。彼女は自分の世界から逃げた訳じゃない……()()()()()()()()…!」

「……っ」

神様には神様の世界がある。そう述べたのは六花である。

その世界の事を計り知れないのは分かりきっていた事だったが、実際その話をされると想像せざる負えなくなる。

 

「言ったよね、ボクにも使命があるって……その使命こそ、この世界の全てをひとつにする事。誰も何も間違わない、理想の世界を作る事……」

ダーガは目を閉じながら自分の理想を語った。

そこには大いなる野望を感じた。

 

「……っ?」

すると、ダーガは六花に手を差し出した。

何事かと思ったが、そんな事は容易に想像出来た。

 

「……六花…君にもう一度チャンスを与えるよ。ボクと一緒に来てくれ…シグマの力があれば、この世界を…正しく導く事だって出来る。君の理想はなんだい…?ボクなら、それも叶えられる」

まるで哀れむような視線を送り続けるダーガ。

今の六花はアクセプターを装着していない。この会話はシグマにも聞こえてないし、ましてや内海にも聞かれていない。

 

「……ごめん」

「……」

それでも、彼女の答えは決まっていた。

 

「……私、今まで一人で抱えて来たの。勉強とか、人間関係とか、それこそグリッドマンの事とか」

中学時代や高校一年生の時は、六花は悩みがあっても誰にもうち明かさないでいた。信頼出来る家族にさえも、心配させまいと心の内に秘めていた。

グリッドマンの秘密を知ってからも……

 

「……一人でも案外出来るって思った。誰にも頼らず、自分に出来る事だけをやろうって……でも、私には皆が必要だった」

グリッドマンとの戦いを通じ、彼女は自分が誰かを必要としている事を知った。今ままで知らなかった、自分の奥底の事。

 

「……勉強、運動、人間関係、何一つ私ひとりで出来た事なんて無かった。私には皆が必要だし、皆にとっても、私はそういう存在でありたい。だから、シグマに私が必要だって言われた時……私、これでいいんだって思った」

自分を受け入れるようになった六花は、次第に誰かに必要とされる努力をしたいった。裕太に台本作りを手伝うよと言われた日は、有無を言わさず試作の感想を求めた。

 

「……私はもう、独りじゃない。皆は私の大切な仲間…ううん、友達だから!」

「……」

「……だから私の理想は…私と、私の友達で叶えたい。誰に何と言われても、これが私だから…!」

強い視線をダーガに送る六花。その目を静かに受け止めたダーガは、次第に腕を下ろし、その表情を明かすこと無く後ろに振り向いた。

 

「……君は強いね。それが君の強さか…」

「……」

「…交渉は再び決裂。でもこれで、ボクも迷いは無くなった」

「…え?」

「ありがとう。君には感謝するよ、六花」

ダーガはそれだけ言うと、水のペットボトルを飲み干してゴミ箱に綺麗に捨ててその場を去った。

 

「……」

なんとも言えぬ感情が、六花を包む。

複雑で、清々しくて、むず痒くて、不服な感情。人はそれを心の乱れと呼ぶだろう。ダーガの言っていることも一理あるのかもしれないと、六花は思うのであった。

 

 

次の日、京都の都に赴いたツツジ台高校の二年生達。

既に紅葉が当たりを紅に染め上げ、古風な街並みも相まってまるで異世界に来たような感覚になる。

 

「京都だぁーっ!」

「うわっ見て、舞妓さん居る!」

「ガチだぁ…!」

既に班行動に別れた一行。なみことはっすはその街並みを眺めてテンションを上げていた。

 

「写真撮って貰おうぜー!」

「ちょっ、お前らあんまり迷惑かけんなよォ…?」

「そんな事言わずに内海も撮ってもらおうよー!」

「えっ…あ、おぅ」

舞妓さんに陽気に近付くふたりを軽く注意した内海だったが、ダーガに背中を押されて促されていく。

 

「……」

そんな中でも、六花は昨夜の事を考えていた。

 

《でもこれで、ボクも迷いは無くなった》

 

「……」

あれ、どういう意味なんだろう…?

 

なにか危険な香りがする。

そんな危機感に苛まれながらも、六花は皆の前でも、もちろんダーガの前でも気にしてない振りをした。

 

「……」

だが、その違和感に気付いたのはシズム。

彼も昨夜のダーガの行動が気掛かりで、朝から気にしていたのは事実。六花の変化にも気が付いていた。

 

「…六花ちゃん?」

「……えっ?」

「皆で舞妓さんと写真撮ってもらおってさ。行こうよ」

「あ、うん…」

だからこそ気にかけるような声は掛けなかった。

彼にも信念がある。その信念の為にも、彼はふたりに昨夜の事は打ち明けないでいた。

 

その後、しばらく京都を観光して行った一行。

 

「映えるわー……」

「…お前、食う時くらいマスク外したら?」

「これでもウチ、名の知れた配信者なんで、ポーカーフェイス重要なんですわ。ターボ先輩はもっとネットリテラシー勉強した方がいいよ〜」

「余計なお世話じゃ」

 

和カフェにて和菓子をご馳走した後、金閣寺や清水寺などといった名所を巡っていった。

 

一通り街を巡っていた一行だったが、ある所で気付く。

 

「……あれ…裕太は…?」

響裕太の姿が無くなっていた事に。

 

 

「……」

その頃、とある建物の屋根の上に座り込み、片足をぶら下げた状態で街を見下ろすダーガ。

 

不服そうな表情のまま、彼は静かに目を閉じる。

 

そして暫くした後に、彼はまた静かに目を開けた。

 

「……さぁ、楽しい時間はもう終わりだ!この空間ごと君達を取り込み、ボクは本物のグリッドマンになる…!」

立ち上がったダーガは空を見上げる。

 

空から降ってくる怪獣。

額には二本の歪な角を持ち、以上に発達した腕を持っており、ゴリラのような牛のような印象を受けた。

 

「さぁ、楽しい修学旅行を汚されたくなかったら…全力でかかってこい…!インスタンス…ドミネーションッ!!」

「…BRR…BRRRRRA!!」

猪突猛進怪獣『ブルモウガ』は赤い目で荒れ狂い、辺りの高めの建物に突進しては破壊して行く。

 

「……ふふ…」

ダーガはその光景を眺め、不適に笑みを浮かべるのであった。




次回

「どうやら宇宙の混乱が、新たなる波紋を生み出したようだな」

第15回「帰・還:グリッドナイトファイト!」
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