グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story. 作:キャメル16世
街で突如暴れる怪獣を目にし、街はパニックに陥っていた。
舞妓さんは芸に勤しむことを忘れ、我先にと一目散に逃げて行く。
歴史ある建造物も、古民家も、全て怪獣が踏み荒らしていく。それを目の当たりにした内海と六花は固唾を呑んで見ていた。
「内海君…あれ…!」
「……あぁ…とうとう動き出しやがった…!ダーガの野郎!」
内海は溢れ感情を剥き出しに、拳に力が入る。
ふたりのアクセプターが警告を出すように鳴り、光る。
それを見ていたシズムはスマホを取り出し、誰かに連絡を取る。
「……っ…もしもし」
『おぅシズムか…こりゃとんでもねぇ怪獣が出て来たな』
「すぐに来れそう?」
『あぁ、今全速力で向かってるぜぇ!着くまで死ぬんじゃねぇぞ!』
「分かってる」ピッ
電話を切ったシズムはふたりに近付き声を掛ける。
「とりあえず今は逃げよう。君達の友達の命も危ないからね」
「…う、うん!」
「くそっ…待ってろよ怪獣め!」
「……」
3人はなみことはっすが逃げ遅れないよう、手を引いて怪獣から離れていく。
ひとまず安全な場所まで案内したところで、適当な理由を付けて再びさっきの道を戻る。傍から見れば怪獣に無謀にも向かって行く馬鹿な3人だ。だが、なみことはっすには、そんな3人から何か覚悟とか、勇気を汲み取った。
「よぉし!無事に来たなぁ!」
「…お待ちしておりました」
人気のない安全な場所でジャンクを積んだ荷台を運ぶ白スーツの男女。
ジャンクには既に電源が入っており、急いで起動する。
『…こ、ここは何処だ!?』
どこかデジャブなリアクションをするシグマ。状況は読めてなさそうだが、咄嗟に我に返る。
「行けるかシグマ!?」
「急いであの怪獣を倒そう…!」
『あぁ、勿論だ。共に行こう!』
そう液晶の中でガッツポーズを見せるシグマ。
「BRRRRRA!!」
しかし、ブルモウガの猛攻は止まる事を知らず、辺りの古民家をその剛腕で薙ぎ払った。
「…っ!危ない!」
その建物の一部が一行の所に向かって来る。危機を察知し咄嗟に声を上げたシズムだが、瓦礫はもうすぐ側まで迫っていた。
「………っ!?」
だが、一行に危害が加えられる事は無かった。何者かが、その瓦礫を木っ端微塵に切り刻んだからだ。
そして、馴染みのある風貌に深紅の剣。
「…どうやら宇宙の混乱が、新たなる波紋を生み出したようだな……いや、再来…と言うべきだろうか」
「アンチくん…!」
「ナイトさん!?」
逆光の向こうに佇んでいたのは、怪獣優生思想のメンバーを睨んだナイトだった。
シズムの事を横目で睨み、そして再び怪獣に目を向く。
「みなさーん!!」
と、後方から2代目の声が響く。
スーツケースを両手で引っ張りながら必死に駆け寄ってきてくれていた。
「皆さん!間に合ったようで良かったです〜…って……あ、貴方達は…!?」
と、2代目は六花の側まで来てようやく怪獣優生思想の存在に気が付いた。
「な、何故貴方達がここに!?」
「2代目、説明は後です。今は奴を倒します!ふんっ…!」
グリッドナイトに変身したナイトは、ブルモウガに立ち向かって行く。
攻撃を上手く否し、隙を狙っていく。
「その通りですね、ナイトくん!皆さん、今この空間は崩壊を始めています!」
「えっ!?」
2代目が一行に伝えた衝撃の事実に、一同が驚く。
「恐らく、ダーガが作り出した空中内で奴が怪獣を動かすと、空中を維持するエネルギーが持続せずに崩壊を招いてしまうのかもしれません!私は六花さん達のクラスメイトを連れてこの街から脱出します。皆さんもあの怪獣を倒したら、すぐにこの空間の外に避難してください!」
「…あいつも結構な覚悟でこの作戦を思い付いたのか……なら、全力で止めてやる!」
「2代目さん、なみことはっすを…お願いします!」
「はい!おふたり共、お気を付けて!」
空に浮かぶ空中戦艦『怪獣戦艦サウンドラス』に搭乗する2代目は内海と六花にガッツポーズを見せた後、ふたりが置いていったクラスメイトの元へと発進する。
後で色々と説明しとかないとな〜、と思っていると…
「ぐおっ!」
腕をぶん回したブルモウガの攻撃がナイトに直撃し、その影響で吹き飛んだナイトは地面に倒れてしまった。
やっぱりグリッドナイトだけではダメだと判断した内海と六花は、ジャンクに振り向き、シグマと顔を合わせ頷く。
「私も手伝うよ。私に出来ることをしたい…!」
「…はい、お願いしますっ!」
すると、ムジナが六花に声をかけ、ジャンクに向き合う。
修学旅行の事やダーガの事など、様々な感情を胸に、六花と内海はジャンクに身を投じて行く。
「グリッドナイトストームッ!」
「BRRRA!!」
「…クッ…やはりこれでは効かないか!」
グリッドナイトストームを放つナイトであったが、ブルモウガの剛腕で防御されてしまう。更には図体の割に素早い動きで、ナイトは強烈な攻撃と俊敏な動きでダブルパンチを受けていた。
「はぁっ!」
「なっ…!?」
すると、ナイトと怪獣の間にグリッドマンシグマが現れ、突進してくる怪獣を一身に受止めた。
「お、お前は何者だ…!?」
「……お前とは初めてだな、オレはシグマ。グリッドマンの弟だ」
「…グリッドマンに…弟が居ただと!?」
「その説明も後だ。とにかくオレはお前の味方であり、今の怪獣優生思想も、オレとは協力関係にある」
「……フッ…にわかには信じがたい話だな」
「信じなくてもいいさ。だが、オレはオレの信じられる者の為に戦う。お前も、お前の信じるものの為に戦え」
「……言われるまでもない…!」
背中を合わせたふたりは、怪獣に向かって行く。
俊敏なふたりの走りが、怪獣を翻弄していく。
「グリッドナイト…!サーキュラー!!」
「BRRR…!!」
「シグマセイバー…!スラッシュ!!」
「BRRRRA!!」
ふたりの猛攻撃に耐えかねた怪獣は身体を回転させて腕をぶん回し始めた。あんなものをモロに喰らえばタダでは済まない。
「GRRR!!」
すると、空中に赤い紋章が現れ、そこから白いトラ型の巨大メカが飛び出し咆哮を上げた。
「来たか、ムジナ!」
「おまたせ!さっさと合体するよ!」
「あぁ!」
トラ型怪獣メカへと変身したムジナは、シグマと合流するなり、身体の形状を変えて行く。
背中のパーツを前方に展開し、足を後ろに捻ったシグマとドッキングする。
トラの頭部は分裂しシグマの胸部と合体、前足の大きな爪はシグマの手に持たされる。
白いメットパーツを被れば、四足歩行のケンタウロスのような姿へと合体する。
「「白虎合体戦士!タイガーグリッドマンシグマ!!」」
機動力に優れたタイガーグリッドマンシグマ。ブルモウガの突進に対しても華麗に受け流す。それはさながら闘牛士の動きであった。
「BRR…!……BRRRRAA!!」
荒れ狂ったブルモウガは角の先端から淡いピンク色の稲妻を放出する。
「クッ…!」
「おのれ…!奴を調子に乗らすな!あれは放っておくと面倒になるタイプだ…!」
ブルモウガの異変に対し、ナイトはこれまでの異世界での怪獣退治からの経験上、この怪獣の段階パターンを悟った。
「ならば、力を合わせるぞ!グリッドナイト!」
「……仕方あるまい…!」
お互いに合意し再び怪獣に向かって行くシグマとナイト。
シグマはその機動力で怪獣の周りを旋回し怪獣を惑わせる。
「奴の力を使わせてもらう!グリッドナイト…!サンダーストームッ!」
ブルモウガの稲妻の能力をコピーしたグリッドナイトは、空中に飛び上がり空中から怪獣に向かって稲妻の雨を振らせた。
「…BRRRRRRAA!!」
ナイトの攻撃に悶絶するブルモウガはしばらく動けないでいた。
「今だよシグマ!決めるよ!」
「あぁ…!」
それを見逃さず、シグマは豪快な足音と共に怪獣に突っ込んでいく。
「グリッド〜…!」
「「タイガー!ストライクラーッシュッ!!」」
そのままのスピードで怪獣に向かって大きな爪「タイガークロー」で斬撃を与え、振り向いて更に斬撃を与え怪獣を木っ端微塵に切り刻む。
攻撃に耐えかねた怪獣は爆散し、この街に怪獣は居なくなった。
「……」
「……」
戦いが終わり、一行は2代目が迎えに来てくれた怪獣戦艦サウンドラスに搭乗し、身体を休めていた。六花達のクラスメイトは別室で休んでおり、安否に関しては確認済みだ。
ちなみに京都や奈良に居た人達は怪獣の出現と同時に消えてしまっていた。ダーガはこの街や人を創造し操っていたのだろうか。
だがそんな事より、少しだけしんみりムードの中、ナイトとシズムが向き合った席で無言で睨みあっていた。
ナイトの方は因縁のあるような睨み、シズムに至っては何か言いたげかと問いかけるような虚ろな目であった。
「かつての戦いで、お前達は消滅した筈だ。何故蘇った」
ナイトがそのままの表情で問う。
「シグマが俺達の希望を叶える代わりに、シグマに協力する為命を与えてくれた。ただそれだけだよ」
「……お前達怪獣優生思想の希望…怪獣の保護か」
怪獣優生思想の面々を見てナイトは納得し、シズムを睨むのを辞めた。
それは彼等が自分に敵意を示していない事を悟ったためであり、もう1つの疑問を解消する為でもある。
「…そして…改めて聞く、お前は一体何者だ」
『……オレは戦士「シグマ」。ダーガに囚われた兄を救う為、内海と六花と合体しダーガが操る怪獣から街を守っている』
「……そうか」
納得したような、解せぬような表情のまま目を閉じるナイト。
すると、六花がナイトに近付きナイトもそれに気付き目を開ける。
「アンチくん…今はまだ、状況が呑み込めないと思うし、昔のあなた達に一体何があったのか詳しくは知らないけど……」
「……」
「私も、裕太を救いたい。裕太だけじゃない、グリッドマンも、キャリバーさん達も、夢芽ちゃん達も、みんな助けたい。それにはきっと、アンチくんの力も必要……だからお願い!少しだけ、私達に力を貸して!」
「……」
「……六花…」
しばらくの間ナイトに頭を下げる六花。その様子を、他の仲間達は見守っていた。重力に従い髪がゆらゆらと揺れる。
「……断るとは一言も言っていない」
「…えっ」
「俺も怪獣の脅威から世界を守れれば……それに、俺も奴には借りがあるからな…!」
ナイトは遠くを見ながら拳にグッと力を入れた。
奴、というのはダーガの事だろう。ダーガに負け、仲間達を取り込まれてしまった悔しさの重圧が彼を苦しめているのだろう。
「…それにしても……あいつは一体何がしたいんだ?」
「……ん?」
すると、内海がボソッと呟き、シズムが反応する。
「あ、いや…修学旅行を企ててまで怪獣を呼び出した理由がいまいちピンと来なくてな……」
「…確かに……シグマの力が欲しいなら、ツツジ台で普通に怪獣を呼べば……っ」
単純で且つ当たり前のような考え。
だがそれが、自分達の迂闊さを際立たせる言葉だと言うことに、その場の全員が気付いた。
「……今、ツツジ台って……どうなってるの…?」
「……なーんだ…?あれ…」
街行く人達は皆立ちどまり、その存在に興味を示していた。
ある者はスマホをかまえ、ある者はぼーっと眺め、報道陣が殺到し道は車で埋まっている。
「……ふふ…」
ツツジ台に一足先に帰還したダーガは、ビルの上にあるクレーン車の上から街を眺めていた。
街のど真ん中にポツンと置かれたその存在は、まるで最初からこの街にあったかのような雰囲気を醸し出していた。
まるで白いドームのような半円球。
その存在が何者なのか、一体どんな最悪を生み出すのか…
「……きっと世界はより良くなる。キミの望む世界を…僕は与えよう」
日が沈むと、その白い円球は淡い光を放った。
「……鬼気森然怪獣『ネイガスト』…さぁ、これがボクらの……最後の逆襲だっ!」
そう言うとダーガは、その怪獣に手を添えた。
次回
「オレは使命を果たす為に、進み続ける」
第16回「進・撃:アクセスコードは…」