グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

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気付けば1ヶ月経っていました。
何かと忙しくてこれからは不定期になりそうですが、必ず書き切ります。
約束します。



第16回「進・撃:アクセスコードは…」

「…おいおい……こりゃ一体、どうなってやがんだ…?」

「嫌な予感はしていましたが…これは想像以上に酷い状況のようですね……」

そう言いながら、怪獣優生思想の4人は街を見下ろし、街のど真ん中にある白い物体を眺めた。

 

「あれって、怪獣なの…?」

「多分、成長型の怪獣だよ。あれはまだサナギの状態……いつ成長して暴れるか分からないね」

ムジナの疑問に対しシズムが答える。

 

「……ってか、それにしてもあいつら…上手くやれてんのか?ダーガを探すとか言ってたが…」

「やはり今からでも追いかけるべきでは?」

「心配いらないよ。引き際は分かってるだろうし、それに……」

「……それに…?」

「…いや…実害も出てないしね。今は彼らを信じよう」

「…うん。そうだね……っ」

シズムの歯切れの悪い答えを聞いたムジナだが、そこでまた後ろから視線を感じた。

振り向くも、またもや誰も居ない。

 

「……?」

不思議な感覚と不気味さも相まって、ムジナは切り替えて視線を再び街に戻した。

 

 

「……ハァ……ハァ」

走るのは昔から苦手だった。

元々体力がある方でもないし、私には何かをやり遂げようと思った事が少ない。

マラソンも、勉強も、人間関係だって……

 

「…ハァ…ハァ…………アカネ……見てる…?」

だからこそ、あの文化祭は成功させたかった。

私が初めて何かに全力になれた。クラスとのみんな、夢芽ちゃんや蓬くんにちせちゃん、内海くんにグリッドマン。そして、裕太……

みんなの楽しそうな顔が見たくて…みんなに笑って欲しくて……

 

「……見てる……よね…」

私の高校生活、平凡に進んで平凡に終わるものだと思ってた。でも、勝手にそう思っていたのは私だ……

ひとつのきっかけで、人生は変わるんだ。私の人生を変えてくれたのは、きっと……

 

「……ハァ…ハァ…ハァ…」

この丘を登れば、裕太がいる気がした。

あともう少し…あともう少しで……

 

「……っ」

その時、私の背中を誰かが押した気がした。

振り向いても誰も居ない。でも、背中にはほのかな温もりを感じた。

 

「……やっぱ…見てんじゃん」

私は最後の体力を振り絞り、丘の頂上へと続く階段を登り切った。

 

「……ハァ…ハァ…」

「……やぁ…探し物は見つかった?」

「……やっぱり、ここに居た…」

丘の上にはダーガがベンチに座ってこちらを見て微笑んでいた。

 

「疲れたでしょ?隣座りなよ」

「……」

六花はダーガの言う通り、ダーガの隣のベンチに腰をかけた。

ダーガと同じ目線になる。その目線の先にはあの白い物体がただならぬ気配を醸し出しながら佇んでいた。

 

「…いい眺めだよねー、やっぱり怪獣の居ない世の中はつまらないからね〜」

「……」

目元の見えない彼は、口角をそのままに淡々と喋った。

 

「……安心してよ。今回は君達に慈悲なんて与えない。あの怪獣は必ず暴れさせる」

「……そう」

「…あれ、リアクション薄いなー」

「……あんたも、もう覚悟が決まったんでしょ?」

「……うん」

ダーガの雰囲気が変わった。やはり表情は読み取れないが、怪獣を見たまま何かを決意したような背中を見せた。

その背中は、裕太がグリッドマンとして戦うと決意したものと似ていた。

 

「……」

「どこに行くの?」

「……私には行くべき場所があるから。もうここには居られない」

六花はベンチから立ち上がり、身体の向きを変えた。

引き留めようともしないダーガをよそに、六花は足を進める。

 

「なら…!どうしてボクを探してたの?」

だが、声を高らせて、ダーガは六花の背に問い掛ける。

まるでその声は、助けを求めているようだった。

 

「……さぁ…」

そう首を傾けた彼女は、日の暮れた街を再び走り始めた。

彼女の姿が見えなくなり、やがて日は山の影に隠れる。

 

「……っ」

すると、ダーガはネイガストに変化が訪れたのに気が付いた。

さっきまでドームのような形だったのに対し、今度は8本の針のようなヒレと白い翼のようなものが生えていた。

 

進化の段階を踏んだのだろうと、ダーガは再びネイガストに手を添える。

 

「……はぁ…やっぱりダメか。これは少々、厄介な怪獣が生まれそうだ…」

そう言って手を下ろしながら、ダーガは何かに落胆したような表情だった。

 

「…流石は、キミの残した置き土産だよ……武史…」

 

 

「……ハァ…ハァ…っ!六花!」

「…っ…内海君…!」

リサイクルショップに向かっている最中、内海と合流した六花。内海も汗だくでダーガを探していたようだ。

 

「六花!そっちにダーガは居たか!?」

「……ううん、こっちには居なかった…」

「こっちもだ……くそっ…これじゃあこの街が奴にめちゃくちゃにされちまう…!」

「……ジャンクの所に戻ろう!シズム君達もきっと戻ってるよ!」

「…あぁ!」

リサイクルショップ急ぐ内海と六花。

 

「お待ちください!」

「「…っ!」」

すると、何者かがふたりの足取りを邪魔する。

だがふたりが振り向いた理由は、それに対する憂いでは無く、その美しい声に魅かれた為である。

 

「……おふたりの行く末を邪魔するつもりではありませんが…ひとつ、頼みたい事があります」

「…あ、貴女は…?」

その女性はこの時代には似合わない派手な赤い古代中国風の衣装に身を包み、顔は冠の帯で隠れてしまっているが、その声色と美形な輪郭から、相当な美人と推測出来る。

現に今のふたりも謎の動悸が止まらない程である。

 

「……名を名乗る程の者ではありません…が」

「……」

「…ひめ……私のことは、「ひめ」とお呼びください」

 

 

「「アクセス…!フラーッシュッ!!」」

ふたりの叫び声と共に、グリッドマンシグマは満天の星空の光から街へと降り立った。

 

『いいかシグマ?ああいう異形の怪獣程、何をしてくるか分かるねぇ…慎重に行くぞ!』

「あぁ、了解だ!内海!」

内海の忠告を聞いたシグマはその白い物体を注意深く監視した。

すると次の瞬間

 

「……BYAAAAA!!」

白い物体が卵の殻のように砕け、中から巨大な翼を持った背中に8本の棘を有する怪獣が飛び出してきた。

 

『出てきた!』

「来るぞ…!」

「BYAAAA!!」

シグマが身を構えると、ネイガストは空を飛びながら口から衝撃波を放って来た。

 

「ぐわぁぁっ!」

その攻撃を受けて後ろに仰け反るシグマ。

 

「BYAAAAAAAA!!」

だが、怪獣はそんな事はお構い無しとでもいいように追い打ちを掛け、翼をばたつかせて辺りに風を生み出した。

 

「…クッ…くくっ…!」

『ち…近付けない…!』

『これじゃあ攻撃すら与えられないぞ!?』

「BYAAAA!!」

怪獣の猛攻撃に悶絶するシグマ。だが、するとそこに一閃の光が怪獣を攻撃した。

 

「…BYAA!?」

「グリッドナイト…!乱れサーキュラーッ!!」

「BYAAAA!」

駆け付けたグリッドナイトによるアシストで、攻撃が止んだ。立ち上がったシグマはナイトに感謝の視線を送る。

 

「助かったぞ、グリッドナイト」

「お前達はその程度では無いだろう。この戦いで証明して見せろ、お前達の強さを!」

「…あぁ…そのつもりだっ!」

息を合わせながら怪獣に向かって行くシグマとナイト。

 

「BYAAAA!!」

怪獣が再び翼を羽ばたかせて突風を生み出す。これでは怪獣に近付く事さえ困難になる。

だが、今の彼はひとりでは無い。

 

「はっ!」

「よしっ!行け!シグマ!」

突然止まったナイトは腰を落としてバレーの様な手を上向きに重ねるように構えた。

その備えられた手の上に片足を載せたシグマは、上に飛び上がるイメージを浮かべる。

 

「はぁぁぁっ!」

ナイトが思いっきり腕を上げたことにより、シグマは中を飛ぶ怪獣よりも上の位置に飛び上がった。

 

「BYAA!!」

「シグマセイバー…!スラッシュッ!!」

「BYAAAAAAAA!!」

シグマの攻撃は見事に直撃し、ネイガストに斬撃を与え、爆発が起こった。

 

降り立ったシグマはナイトと顔を合わせる……だが

 

「…BYAAAA!!」

「なにっ!?」

「攻撃が全く効いていない…だと…!?」

シグマの攻撃をモロに受けたネイガストはピンピンしており、更に攻撃も止めずに仕掛けてくる。

 

「くっ…!アイツは、無敵なのか!?」

「…どうやら奴は、これまでの怪獣とは少し違うようだ…!」

「BYAAAA!!」

「ぐわぁぁっ!」

「ぬおぉぉっ!」

ネイガストの攻撃は凄まじく、徐々にシグマとナイトを苦しめていった。

 

 

一方、ジャンクの前でふたりの戦いを見守る怪獣優先思想の4人。

 

「やはり押されているようですね。ふたり共」

「なんか…手強そうな怪獣だね……」

「関係ねぇ…今度は全員で乗り込んで、あの怪獣を解放してやろうぜ」

「えぇ…」

「……よし…ジャンクの調整、終わったよ」

すると、ジャンクの調整作業をしていたシズムが顔を覗かせた。

 

「では、全員で行きましょう!」

「あぁ…!」

「…うん!」

「うん…!」

ジャンクに横並びに経つ4人。

だが全員が口を開くと、今度は店の入口から物音と透き通るような声が轟いた。

 

「待って…!」

「…っ!」

「……あ、貴方は…!」

全員はその人物に見覚えがあった。いや、むしろ見覚えしか無かった。

中でもシズムは、瞳孔を人一倍広げていた。

 

忘れる筈もない。

彼女はかつての自分達を死に追いやった人物なのだから。

 

「……ひめ…様…!」

「……皆に、聞いて欲しい話があるの…!」

 

 

「BYAAAA!!」

「…クッ…!」

「……クッ…ククッ…!」

ネイガストの猛攻に苦戦するシグマとナイト。

優雅に羽ばたくネイガストはふたりを見下し、ふたりは地に伏していた。

脳天のポインターが点滅し、危険信号を発信している。

 

「…お、おい…!まだ動けるか…!?」

「……あぁ……なんとかな…」

残っているエネルギーも少ない。

ふたりは虚勢を貼りながら足に力を入れて立ち上がる。

 

「奴め…何故あれほど攻撃を与えて無傷なんだ…!?」

「それはおそらく、奴の再生能力の高さが原因だろう。先程オレが与えた攻撃も、傷口がすぐに塞がっていた」

「…厄介な怪獣だ。しかも空を飛んでいるから攻撃を叩き込む事も難しい…!」

 

ナイトはシグマと相談しながら作戦を練っていた。

 

奴は攻撃を与えてもすぐに再生する。

更に奴は空の上から攻撃してくるからこちらが圧倒的に不利だ……

せめてゴルドバーンの力が借りられれば、何か起死回生の糸口が掴めると思ったが、それも今は叶わない。

かくなる上は、サウンドラスに乗り空まで飛んで一気に叩き込むか…?だがチャンスは1回……どうする…どうすれば…!

 

「…まぁそう焦ることもない」

「……なに?」

この期に及んで余裕な表情で怪獣を見上げるシグマ。

 

「忘れてはいないか?オレは独りじゃない。信じられるものが、今は沢山いる」

「……」

「…例え彼等が危険な存在であったとしても、オレは“今”を信じる。今の彼等を信じる…!」

「……」

「オレは使命を果たす為に、進み続ける。オレ達の“今”と、“これから”を守る為に!」

「……っ!」

すると、夜空に大きな赤い紋章が浮かぶ。

 

「おいおいシグマぁ!見てらんねぇなぁ!」

「助太刀に来ましたよ!」

「さっさとあの怪獣倒して、この街を静かにしてあげよう!」

地上に降り立つジュウガ、オニジャ、ムジナは咆哮を上げながらネイガストに向かって行く。

 

「あぁ…そうだな…!」

『…待って…!シズム君は…?』

当たりを見渡しても、あの3体以外のアシストアニマルの姿が見えない。もしや、シズムにはあの3人の様な変身能力が無いのか…?と、六花は疑問を顕にした。

 

「今あいつはお取り込み中だ!」

「きっと何か考えがあるのでしょう。ですが、この戦いには彼の力が必要です。今は俺達で時間を稼ぎます……彼を、信じてあげてください」

『…ジュウガさん……』

息を飲んだ六花、及びシグマは再び立ち上がる。

 

「BYAAA!!」

「…来るぞっ!」

ネイガストが叫ぶと、ナイトが周囲に呼び掛ける。

 

「オレ達で…あの怪獣を食い止めよう!」

『うん!』

『あぁ…!』

 

 

「……ひめ…様…!」

「……皆に、聞いて欲しい話があるの…!」

ジャンクの前で唖然とする4人とそれに対峙するひめ。

5人の中で、少しだけ時間が進んだ時、ひめが言葉を発そうと口を開く。

 

「……っ」

「今更何の用だ!?あぁ!?」

「…っ」

しかし、激昂したオニジャがそれを遮った。その形相にひめもたじろいでしまう。

 

「5000年前…俺達を殺した張本人が!」

「……」

「オニジャ、少し落ち着いてください」

ひめに迫ろうとしたオニジャを鎮めるジュウガ。そのままひめに視線を送った。

 

「ひめ様。貴女に聞きたいことは山ほどあります…ですが、今の俺達にも使命が出来ました。今貴女と話している余裕は無いんです」

「……」

「…それに、俺達は貴女と和解出来てるとは思っていません。5000年前貴女の国が俺達を殺した…貴女が俺達を裏切った事に変わりはありません。それを俺達は今までも、そしてこれからも忘れる事はないでしょう。貴女方に対する憎しみも」

「……」

ひめに向かって静かながらキツい言葉を掛けていくジュウガ。ひめは彼の言葉を静かに聞き留めた。

 

「……」

「……ですが、今なら解る。貴女にも、何か事情があったのではと」

「…えっ…?」

その言葉に、ひめは驚きを隠せていなかった。

 

「貴女は俺達を殺して、ガウマさんの後を追って死んだ。その行動の意味、俺達にはまだ分からないかもしれない……でも知りたい」

「……」

「貴女と和解は出来ない……ですが、分かり合える事なら…出来ると思います」

「……ジュウガ…」

ジュウガの言葉に、その場の誰もが唖然とする。

 

「……っ」

「…っ!」

すると、それまで静かだったムジナがいきなりひめに迫り、彼女の頬を叩いた。

 

ひめの表情は、申し訳なさや悔しさでいっぱいの様子だった。それを分かっていたムジナは、更にひめに言葉を掛けた。

 

「……痛い?」

「…うん……痛いよ」

「……私達は、もっと痛かったよ」

「……うん……ごめん…………ごめんなさい…」

俯く彼女の謝罪の言葉が、店内で何度も何度も木霊する。

 

『ぐはぁっ!』

ジャンクからシグマ達の苦しそうな声が聞こえる。

 

「…行きましょう。俺達には使命があります」

「……おぅ!」

「うん!行こう!」

「……」

ジャンクの前に再び立つジュウガ、オニジャ、ムジナの3人。だがシズムは立とうとしない。ずっとひめの方を見ていた。

 

「……シズム…?」

「……」

気にかけたジュウガだったが、彼の目を見て何かを確信し、再びジャンクに視線を移した。

 

「アクセスコード!ジュウガドラゴン!」

「アクセスコード!オニジャタートル!」

「アクセスコード!ムジナタイガー!」

3人の体は閃光となりジャンクに呑み込まれる。それを見届けても尚、シズムはひめと見つめ合っていた。

 

「……シズム…私は…」

「……」

うんともするとも言わないシズム。だがその目は憎しみや悪意のある目線ではなく、ただ受け止めようとしてくれているような、そんな優しさのある目だった。

 

「……私は、ずっとアイツと一緒に居たかった」

「……」

その目から悟ったひめは語り始めた。自分と恋に落ちた、とあるひとりの男との話を。

 

「私はアイツとの約束を守れなかった。愛も、何もかも……」

「……」

「……でも、ひとつ確かな事は……私の守りたかった最後のひとつは、きっと彼達が守ってくれるって事」

「……ずっと…俺達の戦いを見ていたんだね…」

「……」

その問いには応えないひめ。だが、その答えは彼には分かりきっていた。

 

「…俺にはまだ分からない。恋も友情も別れも……でも、分かりたいと思う。人の心が生み出す“何か”を……きっと、計り知れない事なのだろうけど…」

「……きっと分かるよ。シズムなら」

「…そうだね」

シズムは清々しい表情のまま、ジャンクの前に立った。

 

「…ねぇ、教えてよ」

「…え?」

「……この世の中で…約束と愛と、もうひとつの守るべきもの」

「……うん…それはね──」

 

その答えを聞いたシズムは、大きく胸を張って叫んだ。

 

「アクセスコード!シズムフェニックス!!」

シズムの身体は閃光となってジャンクに飛び込む。きっと、彼なら誰よりも胸を張って生きていけるだろう。

 

「……頑張れ、みんな」

ひめのその言葉だけが、最後に店内に静かに響いた。




次回

「これで君の力は、ボクのものだ」

第17回「共・鳴:決死のアクセスフラッシュ!」
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