グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

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シャドーバーン、カッコよすぎん?
あれでグリッドバーンナイトとかやったら神よな。(語彙力)

って事で続きをどうぞ



第18回「孤・独:アクセプターは鳴らない」

    

           *

       

   *

           

     

 

「……」

「…必ず僕が〜そばにいて〜…支ーえてあげるよその肩を〜……」

 

女が目覚めると、そこには見た事がない景色が広がっていた。

とは言っても、ここは何の変哲もない一般の家庭。

ただひとつ以上だとすれば……

 

「ふんふ〜んふ〜んふ〜〜んふふ〜ん……あ、起きた」

「……おはよう…ございます…」

何故か女はその家のソファで眠っており、赤毛の男子がそれを待っていた。

待っていたと行ってもパソコンをいじっていただけのようだが……起きた女を心配そうな目で見ていた。

 

「30分くらい寝ちゃって起きなかったんだよ〜?具合とか悪いの?」

「いや…特に痛い所とかは……」

「急に倒れて寝ちゃうからさ〜ホントにビックリしたよ」

「……」

「…顔洗う?洗面所、あっちだから」

 

女は男子に促されるまま、洗面所へと足を運んだ。

 

鏡には高校1年生程の黒髪の女が立っており、これが自分なのだと認識する。

そして今一度状況を整理する。水が流しっぱなしなのは致し方がない。

 

「……あの子…誰…?」

そう、私は何も覚えていなかったのだ。ここが何処で、私は誰で、彼が誰なのか。何も思い出せない。

これが記憶喪失、というものなのだろうか。

 

《……六花…!》

 

「……りっか…?」

必死に思い出していると、どこからともなく声が聞こえて来た。

 

《…六花…!》

 

「……私の名前…」

私はこれの主を探す為、洗面所を後にしドアを開けてのれんをくぐった。のれんの先には様々なジャンルの品が並べてあり、ひと目でリサイクルショップなのだと気が付いた。

 

《……六花…!六花…!》

 

そして、声はここから聞こえる。

古びた、まるで継ぎ接ぎのように配線や基板が丸見えの大きな機器。

 

「……パソコン…?」

 

          

     *

        

             *

    

          

 

「…き、君が裕太…?」

「記憶喪失っていうのはホントみたいだね〜」

玄関のドアを開けると、そこには俺よりも身長の低い赤毛の青年が立っていた。少し呆れた顔で、半笑いだった。

 

「俺の顔まで忘れちゃうなんてさー」

「…すんません」

しょぼんとする青年に対して、俺は素直な回答をする。

だって本当に覚えていないのだ、仕方ないだろう。

 

「まぁいいや、4月に知り合ったばっかりだし。もう1回友達になったって事で!」

「あぁりがとう……でさ…」

「…ん?」

「……俺ってさ、どんな人間だったの?」

「…えぇ〜?何その質問」

少し面倒くさそうにしながらも、裕太は優しく受け答えしてくれた。おそらく彼が記憶喪失前の俺の中で1番中が良かったのだろう。この数分の中でも、彼を信頼出来る理由はいくつでも出来た。

 

「内海の席、あっちだから」

教室に入り、席が分からない俺に裕太は教えてくれた。

裕太の視線の先は、教室の1番後ろの窓側から2番目の席。

 

「……」

隣の席には誰もいない。まだ登校して来てないのだろう。

だが何故だろう、その席には特別な何かを感じられた。

 

なにか……

なにか大切なものを、忘れている気がする。

いや、実際全てを忘れてしまっているのだから、当たり前のことなのだけれど……

 

「はい、内海」

「…えっ?」

お昼休み、裕太から俺の掌に置かれたのはひとつのホットドッグだった。

 

「どうせ、学校の事でいっぱいになってお昼用意してないんでしょ?俺のスペシャルドッグあげるから、今度俺にも何か奢ってよねっ」

「…あ、あぁ……」

杞憂だったかもしれない。

記憶喪失という事もあり、その後の授業などでは苦労したが、なんとか一日をやり過ごし帰宅した。

 

        

               *

     

           *

              

    

 

「……なんか、霧濃くない?」

「…そ〜かなぁ?」

結局頭を打ってるかもしれないという理由から、私は病院に行く事になった。

 

男子は私の質問には答えてくれるものの、半分受け流すように病院までの道を進んで行った。

 

診察が終わり、特に問題ない事が分かり、私は自分の家に帰ろうとした。だが、如何せん自分の自宅の住所が分からない。

 

「…えぇー……」

流石のこれには男子もドン引きの様子だった。申し訳なさと、何かこの展開に既視感を覚えたが、記憶喪失の為気のせいだと自己完結し彼に促されるがまま自宅までの道のりを辿った。

 

「…ねぇ、ちょっとお腹すいたからさ、コンビニ寄ってかない?」

「……コンビニ?」

彼がコンビニと呼んだ店に入り、寂れた見た目のドーナツをふたつ購入し店の前で頬張っていた。

 

「…なんで私、男子の部屋で寝てたの?」

「……「男子」じゃなくて、響裕太」

「…え?」

「俺の名前。六花、うちの前で倒れて寝ちゃって起きなかったんだよ?」

「…な、何それ…!?どういう関係?と、友達?」

記憶喪失と言えど、男女の関係性に対しての常識は残っている。言葉が話せたり理解出来るように、そういったものは現在のようだ。男子の家の前で女子が倒れる。一見すればとんでもない状況だ。ここで改めて彼との関係性を解き明かす必要がある。今後の為にも……

 

「……さぁ…?」

だが彼は私に背中を見せてそう首を傾げる。からかっているつもりだろうか。

 

「食べながら歩こう?夜も遅いし」

「…う、うん」

そう言いながら彼は夜道を進んで行った。関係性の分からない男子と夜道でふたり。やはりやばい状況だ。

 

「……ん?」

「…どうかした?」

「…あ…いや、なんでもない」

何処かで、誰かが見ている気がした。ストーカーか?と初めは思ったが、不思議とその視線には温もりを感じた。

 

「…ん、これ意外と美味しいな」

「……」

「……六花?どうしたの?」

「…なんだか、前も二人でドーナツ食べた気がする」

「……それって、六花が記憶を無くす前の話では?」

「あ、そうか。そうなるね…」

当たり前のような会話だったが、何故だか違和感を感じなかった。

 

彼とは、何故か長い間一緒にいたようで、それを感じさせない何かがあった。それが彼の魅力なのかどうか、それは私には計り知れないのだろうが、いつしか私は彼に心を許していた。

 

「……」

でも、何故だろう。

何かが足りないと思ってしまうのは。

これ以上求める物なんてないのに、何か大切なものが欠けている気がする。

 

「……っ」

ふと、自分の右手首を見つめる。

オレンジ色のシュシュ。さっきまで着けていなかった筈だ。

すると、彼女の頭の中にひとつの記憶が蘇る。

 

《六花には、それが一番似合ってるし……その方が絶対に可愛いっ!》

 

「……」

彼の笑顔。彼の声。脳裏に焼き付いた、あの情景。

そうだ。あの日、あの場所で、彼の言葉が私を変えた。

これは私の記憶。でも、()()は私のじゃない!

 

《……六花…!六花…!》

 

再び、あの声が聞こえる。シグマの声が。

 

「…六花?」

「……ごめん裕太。全部思い出したよ」

「……そう…」

私がそう言うと裕太…いや、ダーガは寂しそうに呟いた。

 

「ボクだと分かっても、裕太って呼んでくれるんだね」

「…確かに今のあんたは()()かもしれない。でも……」

「……」

「…私にとっての()()は、ひとりだけだから」

 

 

「今日は大変だったねー…」

「…あぁ……」

「みんな気にしてたっぽいねー、内海が記憶喪失になった事」

「気にしてたってか、哀れみみたいなものでしょ?」

「…なぁにその線引き」

「何となく分かるんだよ。記憶無くても、何となくね…」

自分が特別な人間じゃないって事くらい、記憶が無くても分かってる。そんな俺が記憶を無くしたところで、得する奴も損する奴もいない。

実際、俺が記憶喪失って言われて心配してくれたのはクラスでたった……

 

「……っ」

そうだ……たった一人だけだった。

俺が法事で休んだ日も、風邪だと勘違いしてなりふり構わず電話して来たバカ。ホントに熱が出た日は、家まで見舞いに来てくれて、その後自分も風邪が移って次の日声ガラガラにして登校して来たバカが。

どんな時も、俺の事を本気で心配してくれた()()が…!

 

「…内海?どうしたの?」

「……」

違う。こんな時裕太なら……

 

《内海!?大丈夫!?》

 

そう言う筈だ。そう言うに決まってる!

 

「……すまん裕太。俺、勘違いしてたみたいだ」

「……」

「…シグマの所に戻らないと、本物の裕太を救う」

「……相変わらずお節介だね、君は」

ダーガは俺に背を見せながら、声を漏らした。

 

「……お前に言われたくねぇよ…」

「…はぁあ!これで君との友達ごっこもおしまいかぁ〜」

「…違う。お前は…!」

「……じゃあ、ボクは君のなんなの?」

「……俺は…裕太の、友達だよ!」

ダーガの言葉に、俺は思いの丈をぶつけた。あの日、六花に言われて全てを吐き出したように。

 

「…じゃあその()()からのお願いだ」

「……」

「……さっさとボクの前から消えてくれ」

 

 

「……裕太…!」

きっと誰もが特別じゃない。でも、たった少しのきっかけで、人は誰かにとってかけがいのない存在になれる。

私にとって彼がそうであるように、私も…誰かの『特別』に…!そうなる為に、私にはやるべき事がある!

 

六花は右腕に着いたアクセプターを認識し、走り続けた。

 

「…裕太!」

たとえ自分が優れなくても、特別じゃなくても、出来る事がある。やるべき事がある!

 

内海もまた、アクセプターが振り解けそうなほど腕を振り、全力で走り続けた。

 

「「そうだろ!?シグマ!」」

彼等が向かう先はただ一つ。

 

「あぁ、行こう!共にっ!」

両手を差し伸べたシグマに、ふたりは手を伸ばす。

手を取り合い、やがて彼等の心はひとつとなる。

 

「「「はぁぁぁぁ!!!」」」

それぞれの縛りを超え、世界の境界はガラスのように砕ける。

すると、今度は3人は真っ暗な空間に飛ばされた。シグマは等身大の大きさでふたりの目の前に立っていた。

 

「……ここは?」

不思議そうに周りを眺める内海。

 

「…ねぇあれ!グリッドマンじゃない!?」

「ほ、ホントだ!…あれ、でもなんだか……」

暗闇の中に、液晶の画面のようなものが現れる。そこには電光超人の姿のグリッドマンが怪獣と戦っていた。

だがそれは内海や六花達の記憶に存在しない戦いだった。グリッドマンの他の世界での戦いだろうかと、ふたりは自己完結する。

 

「…なぁシグマ……」

「……先を急ごう。みんなはすぐそこにいる筈だ」

何故か歯切れの悪いシグマは、暗闇の中を進んで行った。

 

「……」

様々な映像が暗闇の中に映し出される。

それは3人の少年少女と、グリッドマン…そして怪獣との戦いを描いた物だ。アクセプターを着けた少年がグリッドマンと合体し、少女ともう一人の少年が彼の為に様々なアシストウェポンを作り上げグリッドマンを支援する。

襲いかかって来る怪獣の驚異から人間世界を守る為、彼等は日々奮闘するのであった……

 

「俺達の知らない所で、こんな事が起こってたなんてな…」

「……でもここって、ダーガの中なんでしょ?なんで私達の知らない戦いをダーガが…?」

「その答えは簡単だ」

「…え?」

六花の問に対して、シグマが食い気味に答えた。

 

「……この物語には、もう一人の少年の物語も詰まっている。黒幕に心を利用され、貴重な時間を怪獣と人間達への復讐に費やしてしまった。哀れな少年だ」

「……っ」

画面に映し出されたのは、眼鏡をかけたおカッパの青年。パソコンに向かって何かに取り憑かれたかのようにプログラミング作業をしており、そのパソコンの画面には怪獣が映っていた。

 

「…シグマ…なんでそこまで……」

「……」

六花はそこで言葉を止めた。それ以上言うと、彼の中の何かを壊しそうだったからだ。

 

「……その少年は3人の少年少女やグリッドマンによって改心し、失った青春を彼等と取り戻して行った。だが、大人となり再びこの世界の人間の醜さを目の当たりにし、彼は再び心を閉ざすようになってしまった…」

内海は画面の記憶を眺めながら、その状況を詳しく自分に説明した。

 

「彼は再び怪獣製作に撃ち込むようになり、その鬱憤を怪獣によって晴らしていた。だがある日、そんな自分の醜さに気付き、彼は怪獣ではない別の存在を作り上げた……それが……」

「……ダーガ……えっ?」

青年のパソコンに映っていたのは、明らかにグリッドマンダークだった。

 

「…つまり、ダーガはその人によって作られた存在…って事!?」

「ダーガがあの人の心を利用したんじゃなくて、この人自身がダーガを生み出して利用してたのか…!」

「……」

ふたりはシグマの元へ急ぎ、彼を問い詰めた。

 

「どういう事だよシグマ!」

「あの人の事、知ってるんだよね?説明して」

「……」

振り向いたシグマは、とても悲しそうな目をしていた。

そして同時に、覚悟を決めたような表情だった。

 

「…どうやら、全てを話す時が来たようだな」

「……」

「……」

ふたりはシグマの言葉を固唾を呑んで待った。

やがて、シグマはふたりに顔を向けて語り始めた。

 

「……ダーガは彼の醜い心によって作られた存在。彼はダーガの力を利用してグリッドマンユニバースをひとつの存在にしようとしている。そしてオレは、そんなダーガに対抗する為に、彼が無意識下の中で作り上げた存在……オレは本来、生まれる筈のなかった存在なんだ…」




次回

「オレはグリッドマンの弟、グリッドマンシグマだ」

第19回「救・済:キミを退屈から」
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