グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story. 作:キャメル16世
物語も終盤なので、気合い入れて行きます!
「……シグマが…生まれる筈のない存在…?」
「…で、でも!グリッドマンの弟って…!」
シグマの突然の告白に、ふたりは動揺した。それもその筈である。今まで自分達が合体し戦いを共にした者が、作られた存在だとは気付く筈もない。
「確かにオレは、兄さん…グリッドマンの弟だ。だがそれは彼が作り出した、いわゆる「設定」というやつだ。ダーガが自分の事をハイパーエージェントと思い切っているのも、彼による記憶操作によるものだ」
シグマは自身を語りながら暗闇の中を進んで行った。
「……新条アカネみたいに、人の記憶に干渉してるって言うのか?」
「…あぁ。彼のものは新条アカネよりも強力だ。自分が作り出していない者の記憶まで改ざんする事が出来る。おそらく兄も、オレの事を本物の弟と認識しているだろう」
「…そ、そんなの…!会う前に言わないでよ…!」
「……っ」
六花の言葉に、シグマは思わず立ち止まってしまう。
だが、彼の覚悟は最初から決まっていた。
「……安心してくれ。例え事実と異なろうが、オレはグリッドマンの弟、グリッドマンシグマだ。それに嘘も偽りもない」
「……シグマ…」
「…さぁ行こう。この先に、まだ目を覚まさなければならない人間がいる」
「……あぁ…藤堂武史…!」
そして3人は気付かずに進んでしまっていた。
3人の死角に移された映像に、電光超人グリッドマンと色が異なる、『青き戦士』が映し出されていたことを……
3人が進むにつれて、奥で何か光るものが見えるのに気付く。それに近づく度に、ピコピコとキーボードを打つ音が大きくなって行く。
「……あれが…」
その光るものとは古いパソコンの液晶であり、その画面に向かって1人の少年がキーボードを打っていた。
「……武史…!」
ブレザー姿のメガネをかけた少年。先程の映し出されていた映像に映っていた少年と限りなく見た目が同じだった。彼が藤堂武史、ダーガとシグマを作り出した、今回の事件の根幹。
振り向いた武史は、面倒くさそうな顔をした後に、再び画面へと視線を戻した。
「後にしてくれないか?僕は今忙しいんだ。やっとカーンデジファー様がお喜びになりそうな怪獣が完成しそうなんだ。邪魔しないでくれるか?」
「…武史…!魔王カーンデジファーはもう居ない!君を縛る者はもう何もない筈だ!目を覚ませ!」
「……」
叫ぶシグマに、手を止める武史。
だが、彼の表情はシグマの顔を見ても変わる事は無かった。
「……誰だい君は」
「…クッ…武史……やはりオレの事まで……」
絶句するシグマに、ふたりは声を掛ける。
「どういう事?なんであの人、シグマの事覚えてないの?」
「……今の彼の記憶と姿は、本来のものでは無い。おそらく、長い期間ダーガの中にいた影響で、彼自身の心も不安定になり、本来の自分を見失ってしまったのだろう。魔王カーンデジファーの名が彼から出てきた時点で、それが証明された」
「……そ、そんな…」
「……っ」
だが、彼はまだ諦めていなかった。怯まず彼の元に足を進める。
「武史…!思い出してくれ。あの戦いで、君には3人の友が出来た筈だ…!そして君は思い知った筈だ!友のありがたみを!世界の美しさを!そして、君が独りでは無いという事を!」
「……」
「…もう、終わりにしよう。君はこんなところに居るべきじゃない!」
「…うるさい……うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!」
激昂した武史。
怒りの形相でシグマ達を睨み付ける。
「君に何が解る!?こうするしかないんだ…!こうでもしなきゃ、誰も僕を見てくれない……」
「……武史…!」
「これ以上僕の邪魔をするなら!容赦はしない!」
武史は右手を前に出すと、暗闇の中から足音がいくつも聞こえて来る。
「…っ!あれは!?」
暗闇の中から出てきたのは目を真っ赤に染めた、ダーガに囚われた裕太や蓬達だった。無表情のまま、その目だけは3人を見ていた。
「みんなっ!」
「…行け、僕の忠実なる下僕よ。僕の邪魔をする者を、一人残らず排除しろ…!」
武史が手を添えると、裕太達は一直線にこちらに向かって来た。
「グッ…!」
「ぐわぁっ!」
「きゃぁっ!」
新世紀中学生の5人はシグマを遅い、蓬や暦は内海、夢芽やちせは六花を襲って行った。
そして裕太は武史のそばでその様子を見ていた。
「……フフッ」
まるで3人を嘲笑うように見る武史。
すると、そんな武史の横に立っていた裕太がゆっくりと武史の方を振り向く。
「…な、なんだい…?」
「……っ」
何かに抵抗するように、裕太は武史に手を伸ばす。
「なっ…お前もか……お前まで僕の邪魔を…!」
「……っ」
何か言いたげな目をしたまま、裕太はゆっくりと手を伸ばしていく。
「……裕太…?」
「…裕太っ……」
裕太の異変に、内海と六花が襲われながらも気付く。
「……クッ…こうなれば、一か八かだ…!」
すると、シグマがそう言うなり、拘束されて上手く動かない身体をふたりに向けて視線を送った。
「…六花…内海…!お前達の熱い思いを、オレに貸してくれないか…!?」
「……シグマ…」
「オレは兄を……いや、兄と…世界を救いたいんだ!」
シグマの目から、本気が二人に伝わる。
彼の意志を受け取った二人は、力強く頷いた。
「…あぁ…行け!シグマ!」
「お願いシグマ!みんなを、助けて!」
「…あぁ…お前達の思いも、確かに受け取ったっ!」
武史に振り向いたシグマは、思いを武史に集中する。
「オレに兄と同じ力が備わっているなら……ダメ元だが、やる価値はある…!」
すると、胸のアーマーが展開し、グリッドマンと異なり金色のトライジェスターが現れた。
「…っ!」
その異変に気付く武史。シグマの方を振り返るが、彼は既に構えの体勢に入っていた。
「…フィクサービームッ!!」
「…グッ…!な、何だこれは…!?」
シグマのトライジェスターから放たれたフィクサービームに包まれた武史。何かにうなされるように、頭を抱える。
「…お、お助け下さいっ…カーンデジファー様…!」
《…この…能無しっ!》
「……あっ…」
《お前などもういらんっ!》
「……そ、そんな…!」
彼の脳内に、ひとつの記憶のようなものが流れる。今まで自分が慕っていた人物に見限られ、挙句の果てに捨てられた記憶だ。
「あっ……ああぁぁっ…!」
「……っ」
「……っ…あれ、私達なぁにしてたんでしたっけ?」
武史がもがき苦しみ始めると、裕太は気絶するように倒れてしまった。だが、それと同時に夢芽やちせ達の赤い目が元に戻り、我に返り始めた。
「…ってうぇぇ!?六花さん大丈夫ですかぁ!?」
「六花さん!?なんでボロボロなんですか!?」
「…う、うん…大丈夫……」
ふたりに襲われてボロボロになったとは言えない六花だった。
「内海くん…!」
「内海さん!?」
「…よ、よかった…みんな元に戻ったんだな……」
蓬と暦の肩を借りて立ち上がる内海。その視線の先には向かい合う新世紀中学生の5人とシグマが居た。
「…あれ、俺達何してんだ?」
「ボラー、踏んでる踏んでる」
ヴィットを踏んずけていたボラー、レックスとキャリバーはシグマの顔をじっと見る。
「…お前は誰だ…?」
「グ、グリッドマン…なのか…?」
「……オレはグリッドマンでは無いが、それに近い存在だ。オレはグリッドマンを救いに来たんだ。彼は今何処にいる…?」
「グリッドマンなら向こうに居る筈だ。おそらく暗い闇底に囚われている」
状況がすぐに判断出来たマックスがシグマに説明する。
気絶したままの裕太を拾い上げた一行はマックスの後を追うように暗闇を進む。
「…うっ…ううぅっ…!」
「……武史…」
「おいシグマ!急ごうぜ!」
「……あぁ、分かっている」
苦しむ武史を置き、彼等は更に奥へ奥へと進んで行った。
「GAOO!!」
「ゴルドバーン!無事だったんだ!」
一同と合流したビッグゴルドバーン。何故だか大きさが等身大へと変化していたが、ここではあまり気にしない方がいいのかもしれない。だが、グリッドマンの姿は見えない。
「…おそらく、今のグリッドマンは心を見失っている状態だ。彼の目を覚まさせなければ、彼が再び姿を現す事は無いだろう。今の裕太のように」
「…そ、そんな……」
マックスの説明で、その場の全員が絶句する。
「…そうか、そういう事だったのか」
と、シグマは何かに納得したかのようにみんなの方に振り向いた。
「グリッドマンを呼び覚ますには、お前達の熱い思いが必要だ。そうすれば、彼はきっと戻って来る」
「……なぁシグマ。気になってたんだけどさ…さっきから言ってる「熱い思い」って、結局なんなんだ?」
ここで内海は、以前から気になっていた疑問をシグマにぶつけた。
以前からシグマの口から度々出ていた言葉。その正体を掴めぬまま、内海と六花は彼の思いに応えていた。
「…簡単に言えば、お前達の情動だ」
「……えっ?」
とても曖昧な言葉。だが、その答えは単純なものだった。
「怪獣は人間の情動によって生まれる。だが、それはグリッドマンも同じだ。グリッドマンは元々、世界の平和や人間達の思いを糧に戦ってきた。借り物の姿、借り物の名で、彼は幾多もの怪獣と、その心を産んだ醜い情動と戦い続けた」
先程の記憶のような映像が、再びふたりの中で反芻した。
「彼は自身と人間達の思いを受けて強くなった。友情、信頼、そして…愛だ」
「……愛…」
シグマの言葉を、レックスが反芻する。
「…会ったばかりだが、お前達からは並々ならぬ情動…いや、熱い思いを感じる。オレがお前達の思いを受け取り、それを彼に伝えてみせる」
「「……シグマ…」」
すると、内海と六花が彼に向けてアクセプターを向けた。
「私はみんなを救いたい。でもその前に、ありがとうを言わなきゃいけない人がいるから」
「俺達の思いを受け取ってくれ!俺にはこんな事しか出来ない。でも今なら分かる…これが俺のやるべき事なんだって」
「……あぁ」
シグマはふたりの言葉に大きく頷く
「俺達の思いも、受け取ってください!」
「我々も、グリッドマンの一部だ。彼無しでは戦えない」
「大将の為だ!それに…愛、か。絶対に守んなきゃだもんな!」
すると、他のみんなもふたりに賛同するように声を上げる。レックスの言葉に、新世紀中学生の4人や蓬や夢芽、暦とちせから微笑みがこぼれた。
一同はそれぞれの右手を内海と六花の背に添えた。
すると、ふたりのアクセプターが淡い光を放ち始めた。
「……そうか…兄は、こんなにも頼りのある者達に囲まれていたんだな。羨ましい限りだ」
「…えっ…兄?」
「ありがとう。これだけの思いがあれば、きっと彼を呼び戻すことが出来る筈だ」
ふたりのアクセプターに自身のアクセプターを触れさせる。すると、その淡い光はアクセプターを伝ってシグマの全身へと流れる。
「…ゴルドバーン、と言ったな。お前の力も貸してくれないか?」
「GAOO!!」
ゴルドバーンに問い掛けるシグマ。ゴルドバーンは当然だとでも言いたげな顔をしてシグマを見つめた。
その咆哮を聞いたシグマは等身大のビッグゴルドバーンと合体し、ハイパーフィクサービームフォーメーションへと変化する。
「グリッドハイパー…!フィクサービームッ!!」
シグマとゴルドバーンから放たれる強力な修復光線。
それには彼等の思いが加わり、辺り一面の闇を打ち払うように放たれる。
真っ黒だった世界がどんどん真っ白に染まって行く。
それはこの世界だけに影響を及ぼしている訳では無い。現実の世界で戦っている、ダーガにその影響が出ていた。
「…グッ…!な、なんだ…!?」
「……ど、どうした…!?」
グリッドナイト、そしてキマイラゼノンと戦っていたダーガだが、突如として頭を抱えてもがき出した。
「…ま、まさか……彼等の心を…治したと言うのか…!?」
「ど、どういう意味だ…!?」
「…ま、まさか……君、なのかい…?武史…!……うっ…うわぁぁぁあ!」
と、ダーガの脳天のポインターからピンク色の光が飛び出して空にピンク色の光のカーテンを作りあげた。
「……も、もしかして…!」
「あぁ…帰って来るぞ…!俺達の…ヒーローが…!」
「……っ!?」
と、ピンク色のカーテンから2体の巨人がダーガに向けてダブルパンチを叩き込んだ。
「「はぁぁっ!」」
「ぐはっ!」
「……」
「……」
降り立った2体の巨人は、ナイトとキマイラゼノンの方に振り向く。
「…待たせてしまったな、グリッドナイト」
「……遅かったな、グリッドマン」
Universe Fighterの姿でツツジ台に降り立ったグリッドマン。そして横に立っているのは、当然グリッドマンシグマだ。
「ありがとう、シグマ。君が居なければ、私はダーガに取り込まれてしまっていた」
「オレはオレの使命を果たしただけだ。だが、戦いはまだ終わっていない。ダーガを倒して、武史の心を救おう…!」
「…あぁ!」
再びダーガの方に振り向くダブルグリッドマン。
『…行こう、内海…六花っ!』
『…うんっ!』
『…あぁ…!裕太!』
そして3人の心が、今彼等の思いと共鳴する。
次回
「怪獣は、どこまでも自由であるべきだ」
第20回「未・来:バトルゴー!託されたもの」