グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story. 作:キャメル16世
「…六花、マジで言ってる?」
「……うん」
放課後、内海を呼び出した六花は衝撃の告白をする
「……ま、まぁ…六花が決めた事なら俺は無理には止めないんだけどさ…それ、裕太にはキツいぞ?」
「わかってる…でも、ちゃんと話そうと思う」
「……分かった」
一体何の話をしていたのか、そんな事はどうでもいい
そんなふたりの間に、一人の存在が割って入った
「お話し中のところ申し訳ありません。六花さん、内海さん」
「アンチくん…2代目さん…」
ふたりに割って入ったのは新世紀中学生との話し合いが終わり、この世界にやって来たナイトと2代目だった
「少し話がある。着いて来い」
「…えっ?」
全く状況も読めず、2人は教室に置いた裕太の存在も忘れその場を後にした
「…う、宇宙が消えていってる…!?」
「あぁ、『マッドオリジン』との戦いの後、グリッドマンが創り出したマルチバースが次々と消滅している事が分かった」
「その原因の究明のため、残った宇宙を回ってみたのですが、一つ分かったことがあったのです」
「…それって…?」
「……全ての宇宙から、怪獣の存在が消えていた」
「「…えっ!?」」
一見聞けば、怪獣の存在がある方が不思議だ
だが、この世界に於いて怪獣が消えるという事の方がイレギュラーだった
グリッドマンが創り出した宇宙の幾つかには、怪獣がいた
それに従い、怪獣が現れる世界にはそれに対する抗体《アンチボディ》のようなものが存在していた
「怪獣が居ないとなれば、それに対するアンチボディも存在しない。もしこのままマルチバースの消滅化が進めば…ダイナゼノンも、ゴルドバーンも消えるかもしれない」
「そうなったら、蓬君達の世界は…!?」
「当然、消滅する」
「…っ」
ナイトの言葉に絶句するふたり
「だからこそ、今は私達でその原因を突き止め、早急に対処しなくてはなりません!」
「…でも、原因を突き止めるって…どうやって……」
「……」
すると、ナイトは六花の前に立つ
「…マルチバースの消滅化は、グリッドマンの心が影響している。だが、グリッドマンの心に影響を与えるのは、響裕太の心だ」
「……っ」
「…響裕太は今のままではダメだ。宝多六花、お前が響裕太の目を覚まさせろ。方法は問わない」
「……裕太の…目を…」
「……六花…」
顔を伏せて思い詰める六花
内海はそんな彼女を見て心配していた
「…六花さん、お辛いようであれば、無理にとは……」
「…いえ…ちょうど、考えてた事があります」
「…え?」
六花は顔を上げ、覚悟を決めたかのように目を見開いた
「例えそれが、間違いでも…」
「悪いな蓬、みんなを集めて貰っちゃって」
「それは全然良いんですけど…また何かあったんですか?」
レックスによって集められた麻中蓬、南夢芽、山中暦、飛鳥川ちせの4人
一連の流れと、事の重大さを伝える為、この世界に戻って来た
「単刀直入に言う……この世界の、いや…全世界の危機だ」
「全世界の…危機?」
「なんすか?それ?」
まるで話を聞いてない女子2人
「お前らァ…ちゃんと聞けって!」
「全世界…つまり、グリッドマンが創り出した世界全部が危ないって事ですか!?」
「その通りだ蓬…このままじゃ、お前も、お前の家族も、この街も、何もかも消える」
「…そ、そんな……」
レックスの言葉に絶望する蓬
「なにか対策はあるんですか?」
ここで暦が問い掛ける
「今新世紀中学生のみんなで急いで探してる最中だ。だが、原因として一番怪しいのが…裕太なんだとよ」
「…裕太が?」
ここでレックスはグリッドマンと裕太の心が繋がっている事、それによってグリッドマンの心が乱れ力が弱まってしまっている事、それによるマルチバースの消滅化が起きている事を説明した
「裕太さんが六花さんと付き合ったから、その影響でグリッドマンさんが平和ボケしてるって事ですか?」
「ま、簡単に言えばそういう事になるな」
「ちょっと待ってください!?って事は、この間の事件とは真逆の事が起きてるって事ですか!?」
そう、以前の『マッドオリジン』の事件は、グリッドマンの裕太に対する負い目が今回の事件の原因だった。だが今回は逆に、グリッドマンの裕太に対する自負心が原因である
それは故に、裕太に自身の力を行使する必要が無くなったという意思が芽生え、その力はだんだんと薄まっていく
「グリッドマンが本来の力を取り戻すには、裕太の目を覚まさせるしかない」
「…でも、そんなのどうやって…?」
「どうやら、立花にはその当てがあるらしい。今はそれを信じよう」
サングラスをクイッとあげるレックス
すると、レックスは気が付いた
「…っ!?」
「え!?ガ、ガウマさん!?」
「な、なんじゃこりゃァァ!?」
なんと、先程までスーツだった衣服が、黄色いさらしの巻かれた以前の姿に変わっていた
それは以前、「ガウマ」と名乗っていた自分の姿だった
今では過去を乗り切り未来を見るようになった彼だが、この姿を見れば過去を思い出さざる負えない
「どうなってやがる…!?」
「…も、もしかしてガウマさん……」
「…あ?」
「…今、ダイナレックスになれたりします?」
「あぁ?まぁ…この世界ならジャンクが無くても変身出来るぞ」
暦の質問に、愚問だなとでも言わせる口調で答える
ガウマは空を見上げ、その言葉を叫んだ
「アクセスコード!ダイナレックス!!」
「……」
「……」
「「「……」」」
だが、何も起こらない
空気の流れさえ変わらない
本来であれば、彼の身体は赤いドラゴン型の巨大メカ「ダイナレックス」へと変化する筈である
だが、その姿になれない。それはつまり……
「…ダ、ダイナゼノンの力が…消えた…?」
「…キャリバー〜!そっちはどうだー?」
「と、特に手掛かりは無い。きれいさっぱり消え去ってる」
「やっぱり手掛かりは掴めないかっ…まぁ、しょうがないよね〜この世界にももう怪獣は居ないんだし」
「もう少し手分けして探してみよう。私は向こうを探す」
「あ、おい!あんまり遠くに行くなよー!!」
ボラーのその言葉を背に、マックスは半壊した街を歩いていた
ここはつい先日まで怪獣がいた世界だ。街に蔓延る怪獣はグリッドマンと新世紀中学生の手で殲滅し、世界は平和になった
だが、やはり違和感がある。平和すぎるのだ
人々はもう怪獣に怯える素振りもなく、街から怪獣の痕跡は全て消えていた
これもマルチバースの消滅化が原因か…それとも……
「……ん?」
なんて考えていると、マックスは不意に立ち止まり、遠くに見えた人影を見詰めた
「……」
あれは…響裕太…?
なぜこの世界へ…?
遠くに見えた人影、霧に邪魔され上手く見えないが、外観の特徴は一致していた
強いて言うならば、髪の色が赤ではなく黒……
「…ねぇ、おじさん」
「……っ!?」
次の瞬間、マックスの背後に立つ件の少年
マックスは謎のプレッシャーと気迫により、まるで金縛りのように動かなくなる
「おじさん、グリッドマンの仲間だよね」
「……ぬっ…!」
その言葉を聞いた瞬間、マックスは右腕にガントレット「ドラゴントゥーススパイク」を武装し腕を振り払う
「……っ!」
「…ふふっ!」
だが、響裕太(?)はその攻撃をものともせず簡単に避けた
明らかに人間が成す技じゃない
声、外観共に響裕太にそっくりだ
だが髪の色はどこまでも黒く、目の色は金色。何よりその不気味な笑顔には身の毛もよだつ
「貴様何者だ!?グリッドマンに何をした!?」
「…ふふ…ボクは何もしてないよ。ただ、彼は目覚め始めたんだ…」
「…なにっ?」
「……人間の心の、素晴らしさに…」
響裕太(?)は再び霧に消える
周りを警戒するマックス。仲間に連絡する隙もない
「人間の心の素晴らしさだと…?」
「そうさ、彼は人間と関わり合う事で、人間と相違ない感情と心を手に入れた。これも全て、彼のお陰さ…」
「彼…響裕太の事か!?」
「…ふふ…本当に面白いよね、人間って」
「…っ!?」
再び背後を取られる
「だからさ、頂くね……君の力…」
「……っ」
「別れよう、裕太」
「……えっ…?」
帰ってくるなり、六花にそう告げられた裕太
あまりの突拍子もない発言に、一瞬頭が真っ白になった
「…り、六花…?今…なんて…?」
「……だから…別れようって、言ったの」
「……」
聞き間違いじゃなかった
この場に於いて「別れよう」の使用例は2つ、一つは交際を断ち切ること。もう1つは、恋人を辞めたいという意思表示
あぁ…俺、終わった……
まるで気絶でもしたかのように、俺は全てに力が入らなくなった
新学期が始まり、今学期は六花ととことん楽しむぞと意気込んだ最中の悲劇だった。一体何が不満だったのだろうか…俺のどこがいけなかったのだろうか…分からない。六花は普段から感情を表に出したがらない性格だから…いつも塩対応なのは分かっていたけど……
「……あーー…」
暗い暗い夜道を一人で歩いていく
慰めてくれる親友も今日は帰ってしまったし、もう涙すら出ない瞳には星一つ見えない暗い暗い夜空が映っていた
「……あーー……ん?」
すると、そんな暗い暗い道の真ん中に、一人青年が佇んでいた
それどころではないのは分かっている。でも何故だか目を惹かれる。彼は誰だろうか…なぜあんな所に……
「……ふふ…」
「…ん〜…?」
自分の目を疑って目を擦る。カラカラに枯れた瞳は擦りずらかった
道の真ん中には俺に似た青年が立っていた。髪は黒く瞳は金色。俺では無いが、そこには確かに“俺”がいた
「……やぁ」
「……君は…?」
「…ボクは…キミだよ」
「……え?俺?」
「ううん…君はボクじゃない。でも、ボクはキミだ」
「…???」
どんどん意味が分からなくなっていく
どうやら六花に振られたショックで、頭がおかしくなったみたいだ。だって今度はぼやぼやした幽霊を見たんじゃなくて、実態のある俺みたいな奴と意味不明な会話をしているのだから
「……っ」
「……ふふ…」
すると、近くの歩道橋の上からタタタタタッと誰かが足を駈ける音がし、白髪の青年が俺(?)に剣を振りかざした
それを軽やかに避ける俺(?)
「怪我は無いか!響裕太!」
「ナイトさん!?なんで!?」
「説明は後だ!」
ナイトは構わず響裕太(?)に剣を振りかざす
本物が自身の背後に立っている以上、姿が似ていようが有害な存在は排除する!
「……ふふ…グリッドナイト……グリッドマンもどきがボクになんの用かな?」
「貴様こそ、響裕太の姿に化け何を企んでいる…?まさか貴様がマルチバースを消したのか!?」
「ははは…それは早計だよナイトくん。ボクは別次元から彼の事を見守っていたに過ぎない。グリッドマンほど面白い存在はこの世にはないからねぇ…」
「……っ!」
すると、響裕太(?)は左腕に着けたデバイスをナイトや裕太に見せ付けた
「だから、ボクもなってみる事にしたんだ……グリッドマンに!」
「…ま、まさか…!?」
左腕に装着された、『プライマルアクセプター』に似たデバイスを天に掲げた響裕太(?)は、その言葉を叫んだ
「……アクセス…フラッシュ…!」
「…くっ…!」
「…うおっ!」
ナイトは本物の響裕太を抱え、遠くに飛び上がった
暗い暗い街の中心部に、光が注ぐ
だが、その光もまたどす黒く、この街を拒んでいるようだった
「…っ!?」
飛び降りた場所からその光の源を見つめる響裕太
「あれは…!?」
「……黒い…グリッドマン…!?」
街の中に佇んでいたのは、グリッドマンに似た巨人。グリッドナイトともまた違う。紫色のラインが全身を駆け巡り、漆黒に染った手足や身体。グリッドマンでいう赤い部分は金色に染まり、まるで別の存在のように見えた
次回
「私を求めた。私はそれに応えただけだ」
第3回「暁・闇:本物のグリッドマン」