グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

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第22回「総・和:SSSS.GRIDMAN Σ(SIGMA)

「メロディックナイト…サーキュラーッ!!」

「「「「パワードブレイカーッ!!」」」」

グリッドサウンドラーナイト、パワードゼノンがダーガに攻撃を仕掛ける。だが……

 

「そんな攻撃…!痛くも痒くもないねぇッ!!」

「ぐわぁっ!」

ダーガに足蹴にされてしまう。パワードゼノンはダーガの攻撃によって地面に倒れてしまう。

 

「みんな…!」

「大将!悪いが他の心配してる場合じゃないぜ…!」

「……あぁ、分かっている」

数百体もの怪獣の力を取り込んで絶大な力を手に入れたダーガ。こうなってしまってはもう太刀打ち出来ない。

だが、彼等は決して諦めなかった。

 

「ローグカイゼル…!」

「ダイナミック…フルバーストッ!!」

全身からあらゆる砲撃やビームを解き放つグリッドマン。

 

「…クッ……!」

攻撃をダーガの顔面に集中させ、ダーガの視界は黒煙で見えずらくなる。

 

「グランドシグマ…!シグナルスパイクッ!!」

それを目眩しに応用し、今度はシグマがダーガの腹部目掛けて飛び蹴りをして見せた。

グランドグリッドマンシグマは特定の武器を持たず、肉弾戦と砲撃による遠距離攻撃を得意としていた。

 

「はぁぁぁぁっ!」

「…グッ…!」

ダーガの腹部に突撃したシグマは連続蹴りでダーガを牽制した。

 

「…クッ…ふんっ!」

「ぐはぁっ!」

だがすぐさま回し蹴りを喰らい、シグマは地面に叩きつけられてしまった。

地面にクレーターが出来上がり、そこに力なく倒れる。

 

「シグマッ!」

「俺に任せろっ!」

シグマに声をかけるグリッドマンだが、ナイトはすかさずダーガに向かって突き進む。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

両手の砲門から紫色の光弾を発射しダーガに命中させる。

 

『艤装展開ッ!!』

サウンドラスの全砲門にエネルギーを溜め込むナイト。操縦席では2代目が発射レバーを力強く握る。

 

「ナイト爆裂…音波弾ッ!」

全ての砲門から紫色の光弾が一斉に放たれ、命中した光弾は波紋のように広がりその衝撃波がダーガの身体に轟く。

 

「……クッ…調子に乗るなっ!」

「ぬあぁぁっ!」

『きゃぁぁっ!』

しかし、ダーガの攻撃により跳ね除けられてしまう。

 

「…フッ!…たぁぁぁあっ!!」

次にローグネイルを展開したグリッドマンがダーガの頭部へと接近する。

 

「ローグネイル!出力上げます!」

「グリッドマンさん!アイツに特大のお見舞いしちゃってくださいよォ!」

暦の声と共に、ローグネイルは更に大きく展開され、ちせが煽る。

 

「グリッドォォ…!クロスネイルスラッシュッ!!」

グリッドマンは空中で縦回転に回ると同時にローグネイルをエックス字型に切り付けた。

 

「クッ…!」

怯んだダーガだが、すぐに体制を立て直し胸を突き出す。ダーガの胸部の眼のような小窓が萌葱色に淡く光り始めた。

 

「え…なんかこれ狙われてない!?」

「蓬、なんで分かるの…!?」

「見た感じそうでしょ!」

眼の輝きは一層増し、明らかにエネルギーを貯めているようだった。

 

「グリッドォォ…!ブレストフェードッ!!」

「ぐわぁぁぁぁあっ!!」

放たれた萌葱色のビームがグリッドマンを襲う。

 

「……クッ…兄さん…!」

堕ちていくグリッドマンを目で追う満身創痍なシグマ。視界が霞み、動かない身体を必死に起こす。

 

「……っ」

そして自分の目の前まで来ていたダーガの存在に今更気付く。

 

「…シグマ。君達の敗因は、自分達の力を過信した事だ。結局人は力に抗う事は出来ない。友情、信頼、約束、愛、そして思いなんてものは、強大な力の前では無力。君達は最初からボクに負けていたも同然なんだよ」

「……ヌッ!クッ…!」

「…どれだけ這い上がった所で、君はボクには勝てない」

「……そんな事はないっ!」

見下しながら呼びかけるダーガに、シグマは反論した。

 

「……お前も…兄さん達の戦いを見守って来ていた筈だ。そして…その戦いの多くで、彼らが幾多もの奇跡を起こしている事を知っている筈だ!新庄アカネを救ったのも、怪獣優生思想を撃ち破ったのも、グリッドマンを利用した強力な怪獣を倒したのも、彼らが起こした奇跡のおかげだ!オレは…その全てを信じる!彼らに残された力を……彼らの奇跡を起こす力を…!」

ボロボロな身体で起き上がるシグマ。もう残されている力は少ない。それを見ただけでもわかるような状態だった。

 

「……そんなボロボロな身体で、何が出来る…?グリッドマン達が起こした宇宙の奇跡など、所詮偶然が重なっただけだ。彼ら自身の力じゃない。だから言ってるだろう…君達は自分達を過信している」

「……オレ達は互いの弱さを受け入れ、強さを見出している。だからオレ達は共に戦い、共に強くなっていく……例えどんな壁に隔てられても、必ず乗り越えていく。それが、オレ達の強さだ!オレ達の思いだっ!」

ダーガに向かって力強く吐くシグマ。その姿に、ダーガは怒りの形相を見せる。

 

「…そうかい…!ならば今回も、その奇跡ってやつを……起こして見せろぉぉぉ!!」

「……っ!」

足を振り上げたダーガはシグマを踏みつけようとする。視界が真っ暗になったシグマはその刹那の中、悠久の時を過ごしていた。

 

 

『……ここは…?』

彼が目を覚ますと、そこは知らない場所だった。

いや、彼は何もかもを知らなかった。まるでこの世に生まれた雛のように、未知の世界が広がっていた。

 

「はじめまして、シグマ」

『……シグマ…?』

すると、彼の目の前に一人の人間が顔を覗かせた。しかし不思議だ。まるで自分の視界がテレビの液晶画面そのままのような感覚なのだから。

 

「あぁ、君の名はシグマだ」

『……お前は…誰だ』

「僕の名前は、武史。藤堂武史だ、よろしくね」

人間は自身をそう名乗った。

 

『……武史……オレは、何故ここに居る…?』

「そうだな…まずはどこから説明しよう……う〜ん……いや、簡潔に話すね。シグマ、君に使命を与えるよ」

『……使命?』

「うん。ダーガに囚われた、僕の心を救い出してきて欲しい」

『……何を言っている?』

「話すと長くなるんだけどね……とにかく、君と似たような存在に、僕の心が囚われてしまったんだ。それを君には救い出して欲しい」

『……お前はここにいるだろう』

「…うん、でも…僕はここに居ないよ」

『……え?』

「今の僕は、彼に残っている僅かな心が君に見せている“幻”。そしていずれ僕は消える。」

『……』

何一つ話についていけてないと言いたいような顔のシグマ。そんな彼の顔を見て、武史は吹き出してしまう。

 

「…ぷはっ…まぁ今全てを理解するのは無理だから。実際に君のお兄さんの戦いを見ながら、ゆっくり使命に近付いてくれたら嬉しいよ」

と言いながら武史の空間にある壁や床や天井に記憶のような映像が流れ出す。まるで継ぎ接ぎに編集された総集編のようだった。

 

「シグマとは、総和を意味する言葉だ。君が皆の心をひとつにし、世界を救う事を願っているよ」

武史はその言葉を最後に部屋を後にしようとした。だがシグマはそんな彼の背中を見て気付けば声を掛けていた。

 

『…待ってくれ…何故お前は、オレを知っているんだ?何故だか分からないが、オレも…お前の事を知っている気がする』

「……僕と君が友達だから…って事でいいんじゃないのか?」

『……友達…』

「…誰もが皆な、ヒーローになれる。それを教えてくれたのは君だから」

『……分からない…』

「……きっと…思い出すよ。君の、本当の思いを…本当の使命を…」

武史は何も着いていない右手首を擦りながら、過去を思い出すようにそう言った。

 

「……シグマ。君は、自分の信じられるものの為に戦え…君の使命は、君が決めろ…」

 

 

「……っ!」

ダーガが振り下ろした足は、完全に下がる事は無かった。

 

「…クッ…ぐおぉぉぉぉおおお!!!」

「…な、なに…!?」

ダーガの押し潰してくる足を抑えながら、シグマは必死に耐えていた。その最中で、シグマはある事を思い出した。

 

「思い出したぞ、武史…!オレの、本当の思いを!」

「…クッ…!このぉっ!」

ダーガは更に力を入れる。だがシグマもそれに負けじと押し返す。

すると、いずれ力はシグマの方が勝り、ダーガの足がどんどんと浮いて行く。

 

「なんだと…!?」

「たぁぁぁぁあああっ!!!」

「ぐおぉっ!」

完全に押し負けられたダーガはバランスを崩し倒れてしまう。

 

するとシグマは天高くへと舞い上がり、アーマーを解除した。

シグマの身体に亀裂が入り、まるでメッキように外装が剥がれた。

 

その姿は電光超人グリッドマンの姿と酷似し、全体的に青を基調とする姿で両腕両足に赤が、胸部や肩に銀色が配置され、胸部のトライジェスターや目の色は金色に輝いていた。

そう、これがグリッドマンシグマの本来の姿。本来の力を取り戻したシグマの姿だ。

 

「…そうだ…!オレは以前にも戦った事がある!武史と合体し、ネオカーンデジファーを倒し、再び地球に平和をもたらした…!オレはグリッドマンの弟…そして、世界を守る……“戦士”だっ!」

シグマはそのままトライジェスターに力を貯めて一気に放つ。

 

「グリッドォォ…!フィクサービームッ!!」

その光は街中を包み、ビルなどの建造物、山々の自然、更には倒れている仲間達の傷をも癒していく。

 

「…傷が癒えている……」

「シ、シグマが…フィクサービームの力で治した」

「流石はシグマさんっ!」

「シグマ……ようやく思い出したか、君の使命を」

フィクサービームを放ち終わったシグマはすぐさま外装を纏い、アーマーを逢着しグランドグリッドマンシグマへと合体する。

 

降り立ったシグマはグリッドマンの目を見る。

 

「…兄さん、俺は…あいつを救わなければならない」

「あぁ、勿論だ…!」

再び並んだグリッドマン、シグマ、パワードゼノン、サウンドラーナイト。

 

起き上がったダーガを見ながら、最後の決意を下す。

 

「行くぞ!みんな!」

すると、ローグカイゼルグリッドマンのビッグゴルドバーンが声に反応し、本体から黄金色のビームが放たれる。そのビームがパワードゼノンを包むと、パワードゼノンの大きさが変わった。

 

「…ねぇ、なんか俺たち…デカくなってない?」

「ど、どうやら…俺たち全員の大きさが、通常の出力スケールの100%まで拡大したようだ」

「これがゴルドバーンの力か……」

自分達の変化に感心する新世紀中学生。

 

「そんじゃ、試しにアレやってみるか!」

「あぁ〜、アレね」

「ア、アレか…」

「よし、フォーメーションを変えるぞ!」

するとパワードゼノンは形態を変え、巨大な戦艦のような見た目へと変化する。

 

「「「「合体戦艦!パワードフォートレス!!」」」」

パワードフォートレスへと変形した新世紀中学生はグリッドマン達に視線を送る。

 

「みんな!乗れ!」

「あぁ!」

「おぅ!」

「ふんっ!」

パワードフォートレスの上に乗り込んだローグカイゼルグリッドマン、グランドグリッドマンシグマ、グリッドサウンドラーナイト。全員の心をひとつにを具現化したような形態だった。

 

「シグマ、俺を使え」

『シグマさん!これを使ってください!』

2代目からレプリナイトキャリバーを受け取ったシグマは大きくなったキャリバーとレプリナイトキャリバーを薙刀のように持つ。

 

「…クッ…!させるかぁ!」

全員を乗せたパワードフォートレスはダーガへと突っ込んで行く。

だがダーガも黙っちゃいない。両腕を変形させてロケットパンチの要領で飛ばして来た。

 

「はぁぁっ!」

「はぁぁっ!」

だが刃先を前方に向けられたダイナミックビッグブレードとキャリバーによって爆散させられる。

 

「……っ」

攻撃をものともしない彼らを見て、ダーガは動揺した。

 

何故だ…!

何故こんな事が起こる…!?

 

これが彼らの奇跡の力なのか…?

そんな曖昧なものに、ボクは負けるのか…!?

 

嫌だ…ボクは…!

ボクの使命を…!

 

《……諦めよう》

「……え?」

 

 

 

「「グリッドォォ…!!」」

「ユニバースドリーム…!」

「「「フィニーッシュッ!!」」」

全員がエネルギーを溜め込むと、彼らの周りにピンク色のオーラが纏まり、それが次第に形を帯びていく。

 

「あれは……巨大なグリッドマンの…幻影…!?」

ひとつの大きな人影となったグリッドマン達の攻撃。大きさはガイストグリッドマンダークに匹敵し、それはまるで、左腕を前に突き出しパサルートを越える際のポーズをしたグリッドマンのようだった。

 

「「「はぁぁぁぁああっ!!」」」

「クッ…!がはぁっ!」

突き出された拳がダーガに直撃する。

ダーガは爆散すると共に、アーマーが解除され通常のグリッドマンダークの姿と大きさに戻っていた。

攻撃の影響で仰け反り、脱力する。

 

だが、彼もここで諦めるほどやわでは無い。

 

「……ま…まだだぁっ!」

ダーガは左腕のアクセプターからグリッドマン達に向けてビームを放つ。

攻撃は命中し、彼らの悲鳴が聞こえる。

辺りに爆煙が広がり、ダーガは勝利を確信する。

 

「……フフッ……っ!?」

ダーガが綻んだのも束の間、爆煙の中から二人の影が飛び出して来た。

 

「「はぁぁぁああっ!!」」

アーマーが解除されたダブルグリッドマンがダーガに向かって突っ込んで来る。

 

「…なっ…!?」

その姿に、ダーガは驚きを隠せずにいた。

それと同時に、彼の脳内に声が聞こえる。

 

《諦めよう。僕達は負けたんだよ》

「…な、何故だ…武史!ボクは…君の為に…!」

脳内で武史と対峙するダーガ。

武史の眼は以前のような虚ろな眼ではなく、決意をした力強い眼をしていた。それは今のダーガにとってとても眩しいものであり、その姿に狼狽えてしまう。

 

「彼らのおかげで、やっと取り戻せた。自分の心を…自分自身の力で……」

「…何を言っている…?君は、ボク無しではもう生きられない筈だ…!ボクと君は一心同体!君にはボクが必要だし、ボクには君が必要だ…!」

「……あぁ…そうかもね。でも、僕はもう…君を頼らない。これからは、自分を信じて…僕を信じてくれる人を信じて、生きて行く」

「……そんなの…」

武史の言葉に、ダーガは絶句する。それは彼の心の変化に対する悔しさや憎しみなんかでは無いことを、彼は自覚していた。悔しさや憎しみではない、喜びに近い何かを感じていたからだ。

 

「…無理だ…!君には、ボクが必要だ…!」

「……ダーガ…君も、きっと変われる。君を生み出したのは僕だ。だけど…君と、別れを告げなきゃいけない…!」

「……っ」

武史が今思い浮かべている人物が、ダーガにも分かっていた。

 

「僕を信じてくれている、僕の友達の為にも…!僕は負けられない!だから……」

かつて自分を救ってくれた3人の友人、グリッドマン、そして……

 

「……ダーガ。僕と、友達になってくれて…」

武史は眼に涙を浮かべ、笑顔で彼にこう囁いた。

 

「……ありがとう」

「……武史…」

武史の本心を聴いたダーガは、不覚にも全身の力が抜け、もはや戦う意思などは消えていた。

ただ、目の前にいる

自分にとってのたった一人の友人の涙を、受け止めるのとしか出来ない現実に、苛まれてしまっていた。

 

「……そうか…もう君は、独りじゃないんだね」

 

 

 

「「はぁぁぁぁぁあああ!!!」」

「ぐはぁっ!!」

ダブルグリッドマンはダーガに渾身のダブルパンチを叩き込み、ダーガを怯ませる。その拳に、武史の意志と姿が重なった事を感じ取った二人のグリッドマンは、そのまま体勢を変えて、それぞれのアクセプターをダーガに向ける。

 

「『ハイパーァァ…!』」

「『『ダブルグリッドォォ…!』』」

「「『『『ビィィィィィィムッ!!』』』」」

二人のアクセプターから放たれた強力な破壊光線はV字に展開しながらダーガに向かって行く。

二人に加えて裕太、内海、六花の意志が重なり、攻撃は更に大きくなっていき、いつしかダーガを呑み込んだ。

 

「グッ…ぐわぁぁぁぁあああっ!!」

最後の攻撃により、断末魔と共に完全に消滅したダーガ。再生する様子もなく、戦いは幕を閉じた。

 

闇が晴れ、朝日に照らされるツツジ台は

今日もキラキラと煌めいていた。




次回

「それは、今じゃないから」

最終回「夢幻:さらば我らのヒーロー」
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