グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

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最終回「夢幻:さらば我らのヒーロー」

「…終わったのか……」

「…あぁ、ダーガは消滅した。きっと武史の心も開放されただろう」

「……本当に…終わったんだね…」

丘の上から朝日に黄昏ながら、シグマと内海、六花は戦いを振り返った。

 

「シグマ、改めて君の協力に感謝する。君がいなければ、あのダーガを葬る事は出来なかっただろう」

そこにグリッドマンや裕太を初めとする仲間達が揃い始めていた。

 

グリッドマンやシグマは実態化しており裕太や六花達とは分離している状態だった。原理は分からないが、等身大の姿であれば合体する必要はないのだろうか。

 

「いいや、お礼を言うのはオレの方だ。オレはこれまで、自分を武史に作られた虚構の存在と自認していたが、本物のオレは今も宇宙のどこかに居る。実在するということに気が付けた」

グリッドマンの弟、グリッドマンシグマは実在している。本物のシグマの力と姿を元に武史が作り上げたもの、それが今ここにいるシグマなのだ。

 

偽物でありながら、本物の心を取り戻したシグマだからこそ、起こせた奇跡と掴み取った勝利なのだ。

 

「そして何より、武史の心を救う事が出来た。きっと彼も、本来の自分の姿を取り戻せた筈だ。オレは、そうであったのなら、もう悔いは無い…」

「……悔い…?」

「……っ!シグマ!?」

すると、シグマの身体が光を帯びながら段々と消えていくのが分かった。

 

「……どうやら、オレの役目もここまでのようだ」

「どういう事だよ!?」

「……オレとダーガの存在は、武史からの存在意義に依存している。命が無い筈のダーガが消えた…それはつまり、武史がダーガを必要としなくなったという事だ。それはオレも同様、オレは武史にとって必要のない存在となり、オレも時期に消える」

「そんな……」

その新たなる真実に、一同は驚きを隠せずにいた。

 

「だが言った筈だ、オレも悔いは無い。オレの事をみんなが覚えていてくれれば、それでいい」

「……シグマ…」

「…シグマ……」

六花と内海は自然とアクセプターに触れる。そんなふたりを見たシグマは落ち着いた声でふたりを宥めた。

 

「…内海、六花。いつか、本物のオレが姿を現した時……その時はまた、オレと友になってくれるか?」

「…あったりまえだろっ…!」

「……うん…っ…!」

「……ありがとう、オレの友たち。お前達と出会えて、本当によかった…」

シグマは宙に浮かび上がりながらも、感謝の言葉を掛けていた。

シグマの光は一層増し、朝日の逆光に照らされる。

 

「オレは、この戦いを忘れる事は無いだろう。そして、お前達も忘れないで欲しい…!オレ達の心は、いつだってひとつだ…!」

「……シグマ…!俺、お前のおかげで自信が付いたんだ!俺はみんなの為に戦える!皆のそばに居ていいんだって!」

「…私も…!私に出来る事、まだあるって気付けた!だからこれからも見つけたい……私にしか出来ない、私のやるべき事…!」

シグマを追うように1歩踏み出す内海と六花。もはや眼から流れる涙は止まらない。そんなふたりを止める者も居ない。

 

「…あぁ…!お前達ならきっと大丈夫だ!オレが保証する!」

「…シグマ…!ありがとうっ!」

「……ありがとうっ…!」

「……さらばだ…!みんな…!」

大きく頷いたシグマは、右腕を突き出して天高く飛び上がって行った。

シグマは完全に消える姿を見せてはくれなかったが、天高く舞い上がった光が、四方に散るように消えていった事は分かった。

 

かくして、選ばれたふたつの魂をひとつにし、全てを総和する戦士の物語は、終わりを告げるのであった。

 

 

『……ここは…?』

彼が目を覚ますと、そこは見覚えのある場所だった。

 

液晶画面のような視界、目の前には逆向きに置かれたキーボード。

最初に目を覚ました時と同じ場所。

まさかここは……

 

「…やぁ、久しぶりだね。シグマ」

『武史…!?何故ここに…!?』

「……最後に、君に会おうと思ってね」

そこには、大人の姿となった武史が立っていた。ベージュ色のコートを羽織り、大きめのメガネにおカッパ頭など、昔の面影は残ったままだ。

 

『……待たせてしまって、悪かった。30年も、経ってしまったな…』

「あぁ…本当に長かった……でもその間ずっと、僕は君を待っていた気がするよ」

『……え?』

「シグマ…君に出会えて良かった。僕をヒーローにしてくれて、ありがとう。僕の友達になってくれて、ありがとう。僕を待っていてくれて、ありがとう」

『……っ』

武史の右腕にはアクセプターが装着されていた。30年経った今でも、変わらず持っていてくれたのかと、シグマは感動した。

 

「…出来れば聞かせてよ。君が見た30年間、何を見て何を思ったのか……もっと君を知れば、僕ももっと変われる気がするんだ」

武史は目を輝かせながら目の前のキーボードの前に座った。こういう時の彼の目は、30年前から何も変わっていない。

 

『……あぁ、勿論だ…!まずは──』

最後にシグマはそう呟き、彼と最期の時を過ごした。

 

これからも彼は、物語を紡いでいくのだろう。

 

 

「……んで、俺達これからどうするよ」

「ん〜…シグマは消えてしまいましたし、ダーガを倒した事で、恐らく俺達の目的も果たされましたからね」

シグマが去った後、オニジャはジュウガ達に疑問を持ち掛けた。

本来シグマに囚われた怪獣の解放を目的にシグマに協力していた彼らであったが、それが完了した今、途方に暮れている状態だった。

 

「じゃあいっその事、またみんなで死ぬ?」

「なにがいっその事だ!3回も死んでたまるかっ!」

ムジナの能天気な発言に、オニジャはツッコミを入れる。

 

「……じゃあさ、探そうよ」

「…あぁ?」

すると、最後までシグマを見届けていたシズムが背中で語り始めた。

 

「…怪獣だけの世界をさ」

振り返ったシズムは、笑顔でそう答えた。

希望を持った眼だ。

怪獣優生思想の面々はその表情に呆気に取られるも、互いに微笑み合い、シズムの同調の意志を見せた。

 

もう、彼らを心配する必要は無いだろう。

 

「……ふんっ……借りは返せよ…」

「あ、ナイト君!?何処に行くんですか?」

ナイトはシグマが去った後、そう言葉を零してその場を去って行き、2代目はそれを追いかける。

 

「……行っちゃったね」

「…うん……」

そしてシグマが去っても尚、空を見上げる六花に、裕太は声を掛ける。

 

「……ん〜…」

「…あれ、裕太さんどうしたんですか?もっと彼女の事労わってあげないと」

モジモジしている裕太に夢芽と蓬が近付きいつも通りのマウントを取ってくる。

 

「……そ、それなんだけどさぁ〜…」

「…ん?」

 

 

 

「「六花っ〜〜!!」」

「なみこ!はっす!無事だったんだねっ!」

丘の麓から息を切らしながら六花の元に来たなみことはっす。ボロボロな六花を見て更に驚く。

修学旅行での話や、なんやかんやと話したい事が多そうだ。

 

「えぇっ〜!?裕太さんと六花さんって別れたんですかぁ〜!?」

「ちょっ…夢芽声デカいって…!」

「六花さん集合!詳しく説明してもらいますよ!」

ワイワイと3人で揉める様子と裕太が顔を両手で抑える様子を見て、六花はそういえばそうだった、という表情でため息を着いた。

 

「…え、六花…まだ“説明”してなかったの?」

「ちょっと色々あってさぁー……まだ言えてないんだよねぇ…」

なみこの質問に六花は首筋をなぞりながら答えた。

六花は苦笑いで裕太の元に向かい、恥ずかしそうにしながらその“説明”とやらを始めた。

 

「…裕太、あれね……ドッキリなの」

「……えっ?」

「別れるって話……裕太が簡単に折れるか試す為に…なみことはっすと話しながら決めたの。最初はすぐに言おうと思ったんだけどね?…でもなかなか種明かし出来なくて……ごめんっ!」

六花は両手を合わせながら精一杯謝った。だが一方の裕太は放心状態で、内海に肩を揺すられても正気に戻らない程のショックを受けていた。

 

「…ハッ!…そ、そっかァ!良かったぁ〜…!」

なんとか我に返った裕太は胸を撫で下ろす。だが、今度は六花がモジモジしている事に気が付く。

 

「だ、だからね…!裕太……」

「…ん?」

「……こ、これからも……よろしくお願いします…」

「…アッ……こ、こちらこそ……」

互いに恥ずかしがりながら、まるで後夜祭の事を思い出させた。

 

そんなふたりを周りが冷やかす中、暦とちせ、レックスが見守っていた。

 

「……っ」

「……ん、隊長どうかしました?」

だがレックスは、どこからともなく聞こえて来たホトトギスの鳴き声に振り返ると、誰もいない街の方へと視線を移した。それに気付いたちせは、不思議そうに問い掛ける。

 

「……いや…」

だがレックスが見ていたのは、朝日に照らされる街。その中に居る、誰かだった。

 

「……()()()()に、見られてる気がしてな」

「……ん?」

そして、レックスが微かに笑っていた事も、ちせは気付いていた。

 

そんなレックスの視線の先、はるか先で彼女は見ていた。5000年に渡る変わらない想いの終着点を、見定めるように。

 

「……幸せになれよっ…ガウマ…」

静かに振り向いたひめ。衣装をフリフリしながら、上機嫌に歩き始めた。

 

……カニ〜食ーべ行こお〜♪はに〜かんで行こお〜♪

そして鼻歌を口ずさみながら、朝日が差し込む街並みを歩いて行った。

その後の彼女の行方は、まだ誰も知らない。

 

 

 

六花と裕太が無事に仲直りを果たし、蓬や夢芽、内海にはっす、なみこが二人を煽りちかす中、新世紀中学生とグリッドマンはそれを見届けていた。

 

「……なぁ、俺達いつまでこの惚気に付き合わされるの?」

「まぁまぁ、これが青春ってやつだよ」

「ふむ…やはりまどろっこしい奴らだな……」

「か、変わらないものもある…か……」

「……」

まるで保護者の様に見守る面々の中、グリッドマンだけは別の目線で見ていた。

 

「…んぁ?どした、グリッドマン」

「……私は…裕太が幸せになれれば、それでいいと思っていた」

グリッドマンだけは、この戦いを振り返っていた。以前のような負い目では無いものの、責任を感じているようだ。

 

「…だが、私が裕太の幸せを願うのと同時に…私は危機感を忘れてしまっていたのだろう。この世界以外の幸せも、守らなければならないという事を」

グリッドマンはこの戦いを通じて、改めて思い知らされた。自分達の使命を、戦う理由を、守らなければならないものが沢山あると言う事を。

 

「そうだぞ!そもそも今回のマルチバース消滅の件はグリッドマンと裕太に原因があるかもしれねぇんだからな!」

「す、すまない…!」

マルチバース消滅の件は消えていない。未だ元に戻っていない世界が多々ある事を、ボラーが指摘した。

 

「……まぁけんど、結果オーライってとこか?」

「うん。これで消えてしまった宇宙も全部元に戻ってくれればいいけどねぇ」

「そ、そんな簡単な話では無い」

「これからも忙しくなりそうだな。いざと言う時はよろしく頼んだぞ、グリッドマン」

「…あぁ、然るべき時が来たら…君達に協力を要請する!」

アクセプターは日光の反射で光り輝く。

 

それは内海と六花の右腕に装着されているアクセプターも同様だった。

 


 

10年後──

 

 

晴れ空の下、大きな協会の待合室。

正装となった響裕太は2つ折りにされた紙をめくりながら大きなため息をついた。

 

「……ううぅ…緊張するぅぅ…」

「大丈夫だって!言うて周り知り合いばっかだし、裕太が適任だって!」

「うん、俺も裕太くんがいいと思う」

嘆く裕太を、内海と暦が慰める。いずれも正装だ。

 

「な、何か困り事か…?」

「我々も何か力になれる事があれば、いつでも相談してくれ」

「って言うかそんな事よりさ!あっちにバイキングあったんだ!さっさと行こうぜぇ!」

「あぁーはいはい、式が終わってからねぇ」

すると、いつもの格好の新世紀中学生の4人が裕太の様子を見に来ていた。

 

「いや、困ってるって訳じゃ……」

「そう言いなさんなって、グリッドマンもお前の力になれなくて残念〜ってボヤいてたぜ?」

「はははっ…全くも〜グリッドマンは相変わらず律儀なんだからァ…」

「…ナイトさん達は?」

ボラーがグリッドマンをからかうと、裕太は苦笑いで頭をかいた。

暦はこの場に居ないメンバーが気になったのだろう、ナイトの事をキャリバーに質問した。

 

「そ、外で見回りだ。怪しい人物が居ないかな…」

「いやいや、あんな剣持ってる人の方が不審者でしょ」

協会の外にスーツ姿の剣を持った青年。傍から見たらとんでもなく不審者に見えるが、その後騒ぎを聞き付けた2代目とレックスがナイトを連行した事はまだこの場の誰も知らない。

 

「う〜ん…でも、ホントに俺なんかで良かったのかなぁ」

「裕太だから良いんだよ」

まだ自信が湧かない裕太。そんな不満そうな裕太に優しく言葉をかけたのは、白いタキシードできっちりとした身なりの蓬…とオニジャ、ジュウガ、シズムの4人だった。

 

「どうだぁ!俺様が着付けてやったんだぜ!?」

「貴方は自分の身だしなみ整えてただけでしょう」

「どう?俺達なりにアレンジしてみたんだけど」

確かにシズムの言う通り、蓬のタキシードには赤、黒、水色、黄色のラメの入ったラインがあり、怪獣優生思想のかつての軍服のような印象を受けた。

 

初めの頃は新世紀中学生と怪獣優生思想の面々の衝突は激しく、怪獣を倒す側と保護する側で(主にボラーとオニジャが)対立しいがみ合っていたが、10年という時の流れの中で、いつしか和解し今では怪獣関係の任務は共に行う事が多くなって来た。

 

「…蓬…!いいじゃんそれっ!」

「ありがとう。ならこれで、“友人代表の挨拶”、やってくれる?」

「……本当に俺で良いの…?」

「うん。裕太にしか、出来ない事だよ」

「……そっか…!」

その言葉を聞いた裕太は嬉しそうに顔を上げ、笑顔で答えた。

 

「なら、やるっきゃないね!俺のやるべき事を!」

「……変わらないね、裕太。10年経っても」

「…へへっ!……蓬、遅くなったけど」

「…ん?」

「…結婚、おめでとう!」

「……うんっ!ありがとう!」

 

 

 

一方別の待合室では、ウエディングドレスに身を包んだ女性の髪を、1人の女性が梳かしながら何かを話していた。

 

「……よしっ…出来たよ、夢芽」

「…六花……私、変じゃない?」

「……うん。可愛いよ…可愛い可愛い」

「…ありがとっ」

椅子から立ち上がった夢芽に、六花はベールを被せる。

 

「……ブーケトス、絶対受け取ってよね」

「…ありがとう……でも、多分大丈夫」

「…え?」

「……今日は私にとっても、大切な日になると思うから…」

六花はそう言うと、俯き右手のシュシュに視線を移し、それを優しく触っては微笑んだ。

 

「……画になるなぁ」

そんなふたりの様子を見ていたちせは、夢芽のウエディング姿を見ながらスケッチブックに鉛筆を走らせていた。

 

「何描いてるの?」

それをムジナが興味津々に覗く。

 

「……う〜ん…簡単に言えば、“未来”ですかね」

「……?」

そんなちせの答えに対して、キョトン顔を見せるムジナであった。

 

 

 

「それでは、新婦のご入場です」

多くの人が席に座る中、協会の後ろの扉が開かれ、新婦が入場して来る。バージンロードを進むその姿は、席の人々の視線を奪った。

 

「……わぁぁぉ…」

その可憐な姿に、思わずなみこは声を漏らし、はっすはその姿に見とれていた。

ベールで区切られた先にある瞳は、新郎の待つ祭壇へ向けられていた。

 

「新郎、麻中蓬。あなたは新婦南夢芽を妻とし、病める時も健やかなる時も、貧しい時も富める時も、これを愛し、これを敬い、慈しむ事を誓いますか?」

「誓います」

「…新婦──」

「誓います」

 

蓬が花嫁のベールをめくると、そこにはエメラルドグリーンの瞳を輝かせた夢芽が上目遣いで蓬を見詰めていた。

 

「蓬…緊張してるの…?」

「……」

彼女はいつだって彼を支えてくれた。

それは未来(これから)もきっと、変わらないのだろう。

 

ふたりが誓いのキスをして、会場は拍手に包まれた。

 

「…よく出来ましたっ」

小悪魔的な顔で、夢芽は蓬を見つめる。

 

好きな人がこんなに近くに居るっていう幸せを、俺はいつまでも感じていたい

あの日に出来た傷は未だ治らない

でもこれでいいんだ

 

誰かが居る。

信じられる仲間や、家族や、親友達が居るから。

 

華やかな式場で沢山の拍手に囲まれながら、挙式は無事に終わった。

 

「蓬ぃ…!グスッ…夢芽ぇぇ!」

レックスが鼻水を垂らしながらこれを歓迎したのは、また別の話。

 

どうやら彼も彼なりに、幸せを感じているらしい。

 

 

 

「……なぁ六花、マジでやる気か?」

「…うん……私にも、やるべき事があるから…!」

そんな拍手の中でも、内海と六花はある人物にバレないように小声で何かを企んでいた。

 

 

「…え〜だいぶ盛り上がって来たところですが!ここで友人代表のスピーチを行いたいと思います!響くん前へ!」

「は、はいっ!」

司会のなみこがマイクに元気よく言葉をかける。

指名された裕太は台本の紙を持ちながら緊張した面立ちでスポットライトに当てられたマイクの前に立つ。

 

式場のみんなが彼を見る。

新郎新婦はもちろんの事、暦やちせ。ナイトに2代目。裕太の高校時代の同級生や蓬の友達と思われる人達。新世紀中学生に、怪獣優生思想の人達。そしてきっとどこかで見ているであろう、この世界を作った神様。

 

「……ふぅ〜…」

深い深い深呼吸をしてから、裕太は今は何も着いてない左手首に触れ、台本の紙を広げる。

 

「ちょっと待ったァァ!!」

「えっ!?」

すると、裕太の後方。派手な演出でそこにスポットライトが当てられる。

 

そこには全身を怪獣のようなデザインの装飾で身を固めた内海がドヤ顔で佇んでいた。

 

「内海っ!?」

「ちっがぁぁう!俺様は怪獣っ!この結婚式をめちゃくちゃにしに来たのさぁっ!」

「えぇ〜っ…?」

内海の謎行動に困惑する裕太。だが何故だろう、この雰囲気にどこかヒーローショーのような空気を感じた。いつぞや内海の家で鑑賞したヒーローのステージショーのようだ。

 

その証拠に周りの人達もこの状況を不思議そうに思っていない。みんな心地よい笑顔でその光景を見守っているようだった。

 

「そうはさせないっ!」

「こ、今度は誰ぇ!?」

今度は内海の逆側、これもまたド派手な演出で会場に出てきたのは、全身にグリッドマン風な衣装を見に纏った赤面した六花だった。

 

「……り…六花ぁっ!?」

「ゆ、裕太!この怪獣は、私達の力がなければ倒せない!私と共にあの怪獣と戦ってくれ!」

「な、何してんのさ…!?」

 

一切状況を読めない裕太は困惑しっぱなしだ。

ぐるぐるした頭を抱えながら、必死にこの状況を整理する。

 

「……っ」

この感じ、文化祭の時の演劇のようだと、裕太は気付く。彼女等のこの行動には何か理由がある。そう汲み取った裕太はこの演技に乗る事にした。

 

「わ、わかったよ!具体的には何をすればいい?」

「……っ」

すると、その言葉を聞いた六花は言葉を詰まらせた。

 

裕太が不思議そうにすると、六花は意を決して顔を前にあげた。

 

「…あの怪獣を倒すには、私達の愛のパワーが必要だ……そのアクセプターのボタンを押して、私に対するを叫ぶんだっ!」

「……え?」

「……っっ」

更に顔を赤らめる六花。

 

そもそも俺の腕にアクセプターは装着されていな…

 

「よいしょ…よいしょ……」

「えっ!?蓬何してんのぉ!?」

「まぁまぁいいですから。さっさと言っちゃってくださいっ!」

「…2人とも絶対グルでしょぉ……」

いつの間にか蓬が裕太の左手首に、ハートマークでデコレーションされた手作りのアクセプターを装着させた。ドレス衣装の夢芽が裕太にガッツポーズをする。

 

「……」

みんなに背中を押されている気がした

そう、俺はいつだって時期を逃して来た

 

俺が六花に告白出来たのも、みんなの支えや応援があったからだ

みんなはいつだって俺達を想ってくれてる。最高の仲間達だ

 

「……」

やろう……

俺にしか出来ない、俺のやるべき事を…

 

「……六花…」

「……」

俺は六花と対峙した。向き合い、お互いの目を見つめる

 

「……俺と……結婚してくださぁぁい!!」

アクセプターに触れながら、俺はそう叫んだ

この会場中に届くように、もう時期を逃さないように、逃れられないように……

 

伝えるのは、たった一人の女性だけど

それでも、俺のやるべき事は決まっている

 

「……はい!よろしくお願いしますっ!」

「……っ」

あの日とは違う。晴れた笑顔で、六花はそう答えた

 

「行こう裕太っ!私達の愛の力、見せよう!」

「うんっ!」

並び立った二人はアクセプターを内海に向けた。

 

「「グリッドォォ…!ビィィィィムッ!!」」

「ぐわぁぁあっ!……二人の愛の力にィ……やら…れたァ〜…!」

不思議な照明技術によって本当にアクセプターからビームが放たれたかのようだった。

グリッドビームに攻撃された演技をした内海は、そのままバックヤードにわざとらしい大袈裟なリアクションを取りながら去って行った。

 

「……っ」

会場から拍手が飛び交う。

全てを終えて、俺は六花の顔を見た

 

「……へへっ」

彼女は嬉しそうに俺に顔を向けた

本当に素敵な笑顔を、俺に向けてくれる

 

「……っ」ゴクッ

このパターンの場合、やる事の相場は決まってる

俺は真剣な顔を六花に向けて、彼女の両肩を持つ

 

「……っ」

六花も俺が何をするのか分かったのだろう。顔を赤らめて驚いている

目を閉じた俺はゆっくりと顔を彼女へと近付けさせる。すると不意に、唇に柔らかいものが触れる

 

「……え」

目を開けると、触れたものが彼女の手のひらということが分かった

 

「…な、なんでっ!?」

「……そ、()()()……今じゃないから…っ」

「……えぇぇぇ〜…」

恥ずかしそうに顔を背ける六花と、困惑と混乱の表情を見せる裕太。

周りの人達はみんな笑っている。彼等の幸せを願うように…

 

「「……っ」」

不意に、神様が微笑む声が聞こえた

それに気が付いた俺と六花は、キョトンとした顔を見せ合い、吹き出すように笑ってしまった

 

そして一緒に神様にお願いした

こんな日々が、ずっと続きませんように……

 

……なんてねっ!

 

 

 

いつか、みんなが幸せになれるように

グリッドマン達はこれからと戦い続ける

みんなの心と、熱い思いを守り続ける

熱い思いがひとつになった時、きっと彼らは現れる

 

君達の熱い思いが、ヒーローを呼んだ。

 

「アクセス・フラーシュッ!!」

 

この声が聞こえたら、思い出して欲しい

みんなの幸せと平和を守る者たちが居ることを

 

そして、ヒーローはみんなの心の中に、常に居るということを

 

大きな希望をその腕に

彼らはこれからも、物語を紡ぐだろう──

 

 

 

グリッドマン ユニバース

:Selected of two Souls Sigma Story.




あとがき

まずは今作を最後までご覧いただき、誠にありがとうございました!

SSSSシリーズで何か二次創作を描きたいと意気込み、始めたのが今作の執筆です。ですが完成されすぎたこの作品をどう二次創作しようかと考えた結果、『グリッドマン ユニバース』のその後を描く結論に至りました。

個人的に描きたかった要素は3つ、1つ目はSSSSシリーズで触れられなかった「グリッドマンシグマ」の存在。2つ目はグリユニで登場してこなかった怪獣優生思想の面々の復活。3つ目はウルトラシリーズお馴染みのニセモノの登場。
あと、グリッドマンシグマを語る上でやはり藤堂武史の存在は外せませんでしたね。

色々な要素を詰め込んだ今作となりましたが、いかがだったでしょうか。
よろしければ評価・感想をお願いします。

これからもこういった二次創作を書くつもりなので、よろしければ他の作品も覗いてみてください。

最後に、グリッドマン最高っ!! by キャメル16世
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