グリッドマン ユニバース:Selected of two Souls Sigma Story.   作:キャメル16世

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黒裕太……マックスや響裕太の目の前に現れた謎の存在。裕太と瓜二つな容姿だが、髪の色は黒く瞳は金色にどよめいている。

グリッドマンダーク……黒裕太が変身した黒いグリッドマン。能力、姿共にグリッドマンに酷似している。グリッドマン同様アシストウェポンとの合体が可能。触れたアシストウェポンは闇に染まり意思を失ってしまう。

ダーガ……元ハイパーエージェント。大昔にハイパーワールドで大罪を犯しハイパーワールドから永久に追放となった存在。グリッドマンの戦いを見て自身がグリッドマンになろうと企んでいる。



第7回「一・心:熱いハートと共に」

ジャンクのモニターからことの成り行きを全て見守っていた内海と六花。そこで起きた事実を受け止めきれられず、今では何も映っていないジャンクを見つめていた。モニターに反射する唖然とした表情の自分を意識しても、そこから視線を外す事が出来なくなっていた。

 

「……今……えっ…嘘…でしょ…」

先に声を出したのは六花だった。今起きた事が夢ではないかと確認する為に、内海に答えを求めた。

 

「……グリッドマンが…裕太が…悪のグリッドマンの中に…」

簡易的ではあるものの、内海は今起きた状況を整理し自分に説明した。だが、何度整理しても受け入れられなかった。あの時とは何か違う…グリッドマンが初めて負けた時の絶望感とは違う。もっと、心の臓から震えるほどの恐怖と絶望に打ちひしがれていた。これはきっと乗り越える事が出来ないと、内海は咄嗟に悟った。

 

「……っ」

崩れ落ちる六花。自分の目の前で愛する人間が消えた。あの時の蓬の気持ちを理解した六花は、徐々に顔を踞せ、やがて瞳から涙を流した。

自分でも分かっていた。自分が泣く事はとても珍しい。どれだけ辛い事があっても、悲しい事があっても、六花は泣く事は無かった。だが、ここで久しぶりに流した涙は頬をヒリヒリする感覚に陥らせ、その痛みが、辛さが身に染みて来た。

 

「…もう…グリッドマンも…新世紀中学生の皆も…蓬君達も居ない。ナイトさんも戦闘不能…もう、俺達が奴に対抗する手段は無くなった……」

それっぽいことを言い終わった内海。椅子に倒れ込み、天を仰いだ。親友達の死に、報いる為に。

 

「……負けた…完全敗北だ」

「……」

夜明けは過ぎた。それでも晴れない彼らの心は、開店したリサイクルショップの中に重い空気を漂わせた。

 

 

その日の朝。昨夜の騒動はメディアに報道され、現在は消息を絶った黒い巨人の正体を考察する為様々な専門家がニューススタジオに集まり、国家では巨人の行方を巡る言い争いが勃発し、被害の遭った街では取り残された人達の救出作業や復興作業が進められていた。

以前の戦いではグリッドマンのフィクサービームによって街も元通りになっていた。しかしそれも叶わない以上、あとは人間の手で何とかするしかなくなっていた。

 

「ねぇねぇ昨日の夜の巨人達見た〜?」

「えー私寝てた〜」

「うっそあの状況で普通寝る〜?」

クラスの連中はいつも通りに脳天気な会話を繰り広げていた。昨夜の事を話題に、笑ったり驚いたり、感情豊かに話す姿を見て、内海と六花の心は更に傷んだ。

 

「なぁなぁ内海〜響君知らねー?」

何故か裕太と同じクラスの筈の奴が内海に質問しにくる。

 

「……」

「…内海〜?」

「…え、あぁ…裕太なら、体調悪いって休んだよ……」

心ここに在らずな内海だったが、その男子生徒の声で我に返る。みんなが裕太を忘れていないという事実だけが収穫だったが、それだけで彼の心は晴れなかった。咄嗟に嘘をつきその場を誤魔化した。

 

「なんだよ風邪か〜?」

「まぁ季節も変わり目だしなー……」

「……」

なんだかんだと言いながら内海の教室を後にするふたりの男子生徒。内海はその姿を見ることも無く、ただただ俯いていた。

本当の事は言えない。言ったところで信じてくれないだろう。でもいずれバレるであろう嘘を、内海は平気でついた。そうすれば、裕太が帰って来てくれる気がして。

 

「りっかー彼氏くんは〜?」

「……裕太は…もう私の彼氏じゃない」

「えぇうっそ!?もう響と別れたの!?」

「…なみこうっさい」

六花の突然の告白に彼女の友達のなみこがオーバーリアクションで驚く。驚いて入るものの平然を装うはっすはなみこを落ち着かせる。

 

「……ごめん、私も体調悪いから…今日は早退するね」

「あぁ……何があったんだろ?」

「…まぁ、六花と響の事だし…すぐに仲直りするよ」

「そだねっ!」

「……」

自身の席を立つも2人の会話が聞こえてしまった六花。その仲直りさえももう出来ない事を、六花は悔やんだ。

内海もその様子を伺った。深刻な面立ちで教室を後にする六花を慌てて追い掛けた。

 

 

「……」

晴れ空の真下。学校の渡り廊下の屋上で手すりに足を掛けた六花は被害の遭った少し遠くの街を見つめた。

 

「……」

「……」

後ろに内海の気配を感じたが、それも気にせずただただ街を見つめた。それは内海も同じだった。

 

「……学校に被害が出なくてよかったなー…おかげで授業は通常運行。普通なら学校閉鎖だっておかしくない状況だ」

「……」

内海はその場の空気を戻そうと、話題を持ちかける。だが、六花がそれに反応する事もなく、静かな空気が流れた。

 

「……内海君なにしてんの…授業は…?」

「……俺も六花と同じだよ。サボり」

「…私はサボりじゃないし」

「サボりじゃん。早退とか言って普通に校舎居るし」

「……」

「……」

二人でいると、いつもこうだ。まるで進展のない話をダラダラと進める。誰も得しない、そんなつまらない会話を。

 

「……前にも、こんな事あったよね」

「…そうだな…あん時は俺が衝動的になって、「グリッドマン同盟は解散だ」なんて言ったけどさ……」

「私がそれじゃあ裕太の帰る場所が無いって言って、止めたんだよね……」

「そうそう…六花、あん時から裕太の事好きだったの?」

「……分かんない。だんだん好きになったのは確かだけど、あの時の裕太はグリッドマンで、今の裕太を好きになったのは…」

すると、六花の言葉が詰まる。内海はそれを不思議そうに聞く。

 

「……ううん、ごめん。嘘ついた」

「…え?」

手すりから降りた六花は、自身の右手首に巻いたオレンジ色のシュシュを握った。

 

「……私、初めは裕太の事…なんとも思ってなかった」

「……」

「…でも、私気付いてなかっただけなのかもしれない」

「…え」

「……あの日、裕太がわざわざ家まで来て、無くしてたこのシュシュを届けて来てくれて…」

「……」

「…そしたら、いきなり倒れちゃって……でも、倒れる前に裕太言ってたんだ。本人は覚えてないけど、私ははっきりと覚えてる」

「……裕太、なんて言ったんだよ」

「……」

 

《六花には、それが一番似合ってる》

 

「……それだけ?」

「…それだけ」

「……そっ…か…」

「……」

 

シュシュを優しく握った六花は、過去の事を思い出していた。

グリッドマンが裕太に宿る直前。お気に入りのシュシュを無くしてしまった六花だったが、実際本人はそこまでのこだわりはなく、帰宅後も気にせず過ごしていた。

だが、いきなり家のインターホンが鳴り、玄関に出るとそこにはクラスメイトの裕太の姿があり、手には自分が無くしたシュシュが握られていた。

 

「…ありがとう響君!これ見つけてくれたんだ!」

「う、うんっ!放課後六花、なんか探してたみたいだし…六花が喜んでくれて、良かった!」

シュシュを受け取った六花はすぐさま自分の右手首に装飾する。だが、そのシュシュを擦りながら苦笑いで声を上げた。

 

「…でも、こんな安物…また新しいの買ったのに〜……」

「だ、ダメだよそんなの!安物でも自分のモノは大切にしないと!……それに…」

裕太はそんな事を言う六花に声を弾ませて答えた。そして言葉を濁すと六花が顔をのぞかせに来た。

 

「……それに?」

「…六花には、それが一番似合ってるし……その方が絶対に可愛いっ!」

「……っ」

「…あ、いや…ごごごごめん!いいい今のは違くって!」

自分で言っといて自分で顔を赤らめる裕太。だが、その瞬間、裕太は意識が忽然と消えるように眠りに着いた。

 

「えと、その……っ…」

「…響君…?響君っ!」

 

突然倒れた裕太を介抱した六花。小一時間経ち、目覚めた裕太には、自分とそれ以外の記憶がなかった。自分の事を可愛いと言った発言を忘れるとは、なんと罪な男かと思ったが、六花はその日からそのシュシュを肌身離さず身に付けている。これは彼との…彼とだけの大切な記憶が詰まった、大切な代物だ。

 

「……きっと、裕太は生きてる」

「…あぁ俺達の裕太がこんな所で終わる筈がない……」

「…でも…私達に出来ること、まだあるのかな…?」

 

六花はシュシュの付いた右手首を摩る。これは、目覚めた裕太がしばらくの間していた仕草とよく似ていた。目覚めた裕太にはグリッドマンの記憶がなく、グリッドマンが宿っていた2ヶ月間の記憶も無くなっていた。当然と言えば当然であるが、その2ヶ月は裕太と六花を繋げるかけがえのないものとなっていた。

 

もうすぐ正午に差しかかる。そんな空から、一筋の光が降り注いだ。その邪悪なオーラを放った光が実体を持つと、姿を消していたグリッドマンダークが現れた。既に半壊した街に降り立った彼は、そこに佇んでいた。

 

「…あれは…!」

グリッドマンダークの存在に気が付いた二人。渡り廊下から見渡せる距離にいたそいつを、憎たらしくも睨んでいた。だが、自分達に出来ることはほぼない。悔しさの末、手すりを強く握る事しか出来ずにいた。

 

 

「…さぁ、ようやくボクの準備も整った。コンピューターワールドを侵略し、全てを未曾有の恐怖に陥れてやる!」

そう独り言を零したグリッドマンダークは、街に向かってグリッドダークビームを放つ。放たれた光線に従って被害を受ける街並みを見て優越に浸る。

 

「…くっそッ!許せねぇ…!せっかくグリッドマン達が守ってくれたこの街を…あいつにめちゃくちゃにされちまうなんて…!」

それをただただ見守ることしか出来ないふたりは、なんとも言えない感情に苛まれていた。

 

《……内海…!……六花…!》

 

「……えっ?」

すると、そんなふたりの頭に声が響いた。

 

《……内海…!……六花…!》

 

「…な、何この声…?」

「え、六花にも聞こえてる…!?」

「えっ内海君も…!?」

裕太ではない。グリッドマンでもない。ましてやふたりの知っている声では無い。何者かは分からないが、何者かがふたりにメッセージを送り続けていた。

 

《……内海…!……六花…!》

 

「……ねぇ、もしかしてこの声…」

「……ジャンクから…!」

ふたりの意見が一致した。目配せをしたふたりは本格的に授業をサボる事にした。校舎を後にし、向かった先は六花の家が営むリサイクルショップ。

ジャンクの前に立ったふたりは、息を飲む。

一体これから、何が始まるのか。何が起こりえても不思議ではない。更なる宇宙の危機かもしれない。もしかしたら裕太やグリッドマン達を救えるかもしれない。ふたりはその可能性を後者に賭け、電源の入ったジャンクを見つめた。

 

「……っ」

「……っ」

そこに映し出されたのは、グリッドマンやグリッドナイトとよく似た《超人》だった。その目は確実にふたりを捉え、この時を待っていたかのようだった。

 

『オレはハイパーエージェント。囚われた兄を救う為、お前達に協力を要請するッ!』

「グリッドマン!?」

「…いや、違う。グリッドマンに良く似てるけど、雰囲気も言葉遣いも違う」

始め、グリッドマンによく似た風貌に驚くふたりだったが、冷静に状況を読んだ内海は、それがグリッドマンでもグリッドナイトでも、ましてやグリッドマンダークとも違う事を悟った。

 

『オレは兄の危機を察し、ハイパーワールドからやって来た戦士。ダーガに囚われた兄を救う為、オレと協力してくれないか』

「兄…って事は、グリッドマンの弟!?」

「グリッドマンに家族がいたのか!?」

『説明は後だ!今奴を退けられるのは、お前達の心だけだ!』

「…一体、どういう事…?」

『オレは兄より不完全な存在。お前達ふたりと合体しなくては、実体化する事は出来ない…』

「…俺達が…裕太みたいに、合体するのか!?」

『裕太…それが誰かは知らないが、戦ってくれ!お前達の熱い思いが必要だ…!』

ふたりに懇願する謎の戦士。もしかしたらダーガの味方かもしれないが、それを考慮してもなお利害は一致している。

 

「……私達に、裕太を救えるの…?」

『…お前達にしか、出来ない事だ』

その言葉が、六花の心に火を付けた。

 

「……行こう、内海君」

「えぇ!?良いのかよ!」

「…私達に出来る事、きっとまだあるよ!」

六花の視線は内海ではなく、ジャンク…戦士に向かっていた。

 

「……」

本当にやる気かよ、と心配そうに六花を見る内海だが、やがて自分に裕太を救えるかもしれないという可能性を信じる心が芽生え、内海も戦士に目を移した。

 

「……分かったよ…分かりましたっ!戦うよ。俺達にしか出来ないことがあるなら……やってやる…!」

ふたりの心がひとつになった。それを悟った戦士は、大きく頷き感謝の意を述べた。

 

『…ありがとう。お前達に感謝する!』

「…っ!」

「…うおっ!」

すると、ふたりの右腕に『プライマルアクセプター』とよく似た色違いのデバイスが装着された。

 

『やり方はもう、分かっているな…?』

「……うんっ!」

「…あぁ!」

右腕を掲げたふたりは、揃って声を上げた。裕太がいつもやっていたように、その使命を背負った。

 

「「アクセス…!フラーッシュ!!」」




次回

「例えそれが、強さを投げ捨てる言葉だとしても」

第8回「戦・士:グリッドマンシグマの誕生」
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